No.622883

太守一刀と猫耳軍師 第28話

黒天さん

今回は霞と季衣+華琳なお話です。

2013-09-26 22:54:59 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:8803   閲覧ユーザー数:6555

今日は朝議に曹操と許褚を呼びつけていた。まぁ罰則をみんなの前で言い渡すためなんだけど。

 

「というわけで、罰則が決まった2人に罰則を言い渡すよ。まず許褚は3日間飯抜き」

 

「えええええっ!?」

 

それを聞いただけで絶望的な表情をする許褚。目に涙すら浮かべがっくりと項垂れる。

 

相当食べる方らしいと牢番から聞いてたし、食べたいだけ食べさせるというわけにはいかなかったが、ある程度おかわりOKになってたし。

 

牢屋から出してから食べる量が増えたとの話しも聞いた。

 

「で、曹操にはこの貂蝉と一週間過ごしてもらおうと思う」

 

「酷いわぁ、私が罰則扱いなんてっ」

 

柱の影からぬっと現れる巨漢。っていっても、俺の位置からは隠れてるの丸見えだったんだけど。

 

「……ひっ!」

 

今、華琳がすごい声だしたな。後、曹操とよんだのは、みんなの前で真名で呼ぶのはまずいかなって思って自重してるから。

 

ちなみに貂蝉との交換条件は、今度一緒に飯を食いに行くこと。まぁその程度ならってことでお願いした。

 

「あ……あわ……わ。な、な……なんなのこの醜いバケモノはっ!」

 

「ンまぁ、失礼ねっ!」

 

「こ、こんなのと1周間も一緒に過ごすなら、あなたの肉奴隷にでもなったほうが百倍マシよっ!」

 

「あら、何てうらやましいコトいうのかしら、このコは! むしろあたしがなりたいのにぃ♪」

 

「ま、コレは罰則だから頑張ってとしかいえないな。というわけで貂蝉、申し訳ないけど一週間よろしくね」

 

「はぁい、ご主人様と一緒に食事にいけるのを楽しみにしてるわぁ」

 

と、取り敢えず罰則を言い渡した所で朝議を締めて、それぞれが仕事に散っていった。

───────────────────────

 

それから3日後、俺はたまっている仕事を少しでも減らすべく、必死に仕事中。

 

呉との同盟も結べたし取り敢えずしばらくは安全だろうと思う。

 

戦後処理は大方終わってるとはいえ、まだまだ仕事は山積み、取り敢えず外の心配が少ないうちに国を安定させないと……。

 

仕事をしていて、お昼前に一段落ついた頃を見計らってだろう、霞が俺の部屋にやってきた。

 

「ご主人様、夏侯惇はまだなーんも言うてこーへんの?」

 

「ん、何もいってこないなぁ……」

 

「……いっぺんシメなあかんかなぁ」

 

「まぁ、まだ気持ちの整理が付かないんだろ。約束を破るとは言ってないし、気持ちの整理がつくまで保留って事で待つとするよ。

 

それに、あの状態じゃ、させる仕事も無いしな」

 

なかったことにしたい、と華琳に言ったというのは本人の本心で、悩みの吐露といった所だろう。

 

名に賭けて言ったからには、渋々でも履行する気はある、と俺は思ってる。

 

「あー、なんか燃え尽きたみたいにポケーっと空見てるん、よー見るわ。まぁあんなんやったら邪魔なだけやしなぁ」

 

ちなみに現在夏侯惇は華琳達とは別の離れに移している。あの離れじゃ部屋の数が足りないし。

 

秋蘭も、華琳が罰則中の一週間は墓参りに同伴するとき以外は基本的に顔を合わせてはいけないことになっているので別室待機。

 

これが思いがけず、秋蘭にはこたえたらしいというのは一週間経ってからわかった。

「それよりぃ、ご主人様ぁ?」

 

何故か霞が猫なで声を出しながら擦り寄ってくる。何だか嫌な予感。

 

「桂花の事、抱いたやろ」

 

「ぶっ!」

 

耳元でささやかれた言葉に思わず吹いた。確かに抱いたけど。桂花に好きって言われた後に。

 

「やっぱり図星か、このー! まさか、いの一番にあの桂花に手ぇ出すとは思わんかったわ」

 

肘で俺をつついてくる、ちょっと痛いんだけど……。

 

「なんで知ってるんだよ!」

 

「なんでって何か最近、桂花の雰囲気変わったし、絶対なんかあったんやろなーっておもてな」

 

「ぐぬぬ、カマかけられたのか」

 

「そーいうこっちゃ。でもええなー。ウチもご主人様の事ねろてたのに~」

 

「……、知ってるよ」

 

机の引き出しから、壊れた鉄扇を取り出してそれを机に置いて。

 

「俺が矢を受けた後、眠ってる時に夢を見てさ。白装束の奴らが俺を殺しにかかってきたんだ。

 

俺はその夢のなかで、今までの戦いで死んだ兵士の軍を率いて戦った。

 

そのとき、この鉄扇から、みんなのきもちが伝わってきてさ。夢のなかでは、この鉄扇はこわれてなくて、

 

頑丈で、すごく頼りになったんだ。みんなが隣で俺を支えてくれてるみたいで」

 

「へぇ、その鉄扇がな。って白装束の奴らって洛陽で宦官そそのかした奴らと一緒の奴らやろか?」

 

「それはわからないけど……。だからさ、霞や華雄達が俺のこと、すごく思ってくれてるのは知ってるよ。

 

だからちょっと修理に出すの、躊躇しちゃってるんだけど。修理に出したらこの名前、消えちゃうしね」

 

鉄扇に書かれたみんなの名前を撫でるように、手を鉄扇に載せる。

「アホ、名前ぐらいまた書いたるやん。そんなん無かったってウチらの気持ちが変わるとおもてるワケちゃうやろ?

 

それに、ウチは修理して大事にしてくれたらそのほうが嬉しいしな」

 

「じゃあ、近いうちに修理にださないとな」

 

鉄扇を大事に引き出しに片付ける。

 

「しかし、あんとき、大変やってんで? 桂花はご主人様が気を失ったあと、半狂乱になっとって、

 

下手人捕まえた後に合流したとき、落ち着かせるん大変やったんやから

 

ま、桂花がそんなんやったからウチもなんぼか冷静でおれたんやけど」

 

「そういえば、霞もあの直後は大変だったらしいじゃないか。

 

なんで護衛についてて俺にかばわれたんだとかって、随分責められたって聞いたぞ?」

 

「う……、誰や、ばらしたん」

 

「桂花だよ。紫青と朱里に聞いたら、間違いないっていってたし。

 

何ともないようなふりはしてるけど、きっと傷ついてるっていってた」

 

立ち上がって、ぽんと霞の頭に手をのせて、軽く撫でる。

 

あの直後の行き場のない怒りの矛先が、その時俺と一緒に居た霞に向いてしまったのだろう。

 

特に俺が絡むと瞬間湯沸器になる愛紗あたりは言いそうだとは思う。

 

「霞がいなきゃ、第二射で俺は確実に死んでただろうし、桂花も危なかったとおもう。

 

だから霞は護衛の役割をきっちり果たしてくれたとおもってるんだけどな」

 

「そない言うてくれたら救われる気ぃするわ。頭撫でてくれるんも悪い気せーへんし」

 

頭から手を離して、座り直す。

 

「そういや、許褚の刑期は今日で終わりだっけ?」

 

「ん、そやな。今日で三日目やし。見に行く?」

 

「そうだな、昼前に済ませちゃうか。昼からは行きたい所あるし」

 

「墓参り?」

 

霞の問いかけにかるく頷いて見せると、渋い顔。

 

「えー……、ウチが護衛すんの?」

 

「イヤ?」

 

「イヤとちゃうけど、ちょっとまだ気ぃ重いなぁ」

 

「そう言わないで頼むよ、帰りに菓子でもおごるから」

 

「しゃーないな、ほんなら菓子に釣られとこか」

霞と話しをつけてから、取り敢えず牢屋に行き掛けに食堂により、

 

許褚が来るから量を確保しておくようにと指示を出して、牢屋に向かう。

 

勝手に物を食べたりしないように、許褚は牢屋送りになっていた。

 

「うぅ、お腹すいたよ~……」

 

なんて声が牢屋の中から響いてきた。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、兄ちゃん。ボクお腹すいて死にそうだよ……」

 

鉄格子の向こうからえらく憔悴した顔でこちらを見上げてくる許褚。何かすっごい罪悪感が

 

「もう出したるんやろ? 三日目やし」

 

「うん、そのつもり」

 

霞がポイと投げた鍵束を受け取って牢を開けて。

 

「許褚、飯いくぞ」

 

そう声をかければパァっと効果音が出んばかりの満面の笑み。

 

食堂に連れて行って許褚が来たと言えば出てくる大量の食事。許褚はそれをすごい勢いで平らげていく。

 

「なんか見とるだけで胸焼けしそうやわ……」

 

「まぁ、3日もご飯たべなきゃこうもなるだろ、元々かなり食べる方らしいし」

 

俺と霞はその横で普通の量の食事を食べている。

 

普通に考えたら絶対食べきれないだろこの量は……。というか、この小さな体のどこにこれだけの量が入るんだ。

 

「ごちそうさま」

 

食べ終わったのは俺達とほぼ同時。許褚の前に置いてあった皿はすべて空になっていた。

 

「さて、それじゃそろそろ出かけるかな」

 

食べ終わって立ち上がると許褚がこちらを向いている。

 

「兄ちゃんどこかいくの?」

 

「ん、町に墓参りにな」

 

「お墓? 家族かだれかの?」

 

「いや、戦死した兵達のだよ」

 

と、軽く説明すると許褚もついてくるといったので連れて行く事にした。霞は、やっぱり渋い顔をしていたが……。

───────────────────────

 

墓に到着するといつものように墓に水をかけ、軽く掃除をし、香を炊いて、菓子を供える。

 

「いつもこんなことやってるの?」

 

「週に1回ぐらいかなぁ、だいたい」

 

日本の墓のような、四角柱の墓石の正面には、戦場で果てた英雄の墓、と書いてある。

 

「許褚も参っていったらどう?」

 

「え、でもボク、魏の将だったんだよ?」

 

「別にそんなのは気にしないでいいよ。どこの誰の墓ってわけじゃないんだから。

 

それにほら、横に回ってみなよ」

 

墓の横側には、災厄の犠牲者の墓、と書いてあり、そちらから見ても正面から見たのと同じ様子。

 

この災厄というのが指すのは、疫病、飢饉、洪水、盗賊被害とかそのあたり。

 

背面から見れば、良き親友、逆の側面から見れば、最愛の家族。

 

あまり大きく場所を取るのもなんだったので、墓一つで4用途で参れるようにしてある。

 

「どこの誰が参ってもいいお墓なんだよ、ここは。

 

もちろん、下に死体があるわけじゃないから本人の墓に参るようなわけにもいかないけど。

 

例えば、お墓を作るお金のない人とか、交易を生業にする商人とか、普段墓参りがしづらい人が、

 

いつでも寄って、参っていっていい。そういう場所なんだよ。

 

だからあえて、北郷の兵達の墓、とかそういう範囲をせばめるような言葉は書いてないんだ」

 

「へー……。じゃあ、ボクもそうしようかな」

 

軽く頷いてから、お供え用の菓子と香を差し出すと、

 

それを受け取って向かう先に書かれた文字は、最愛の家族。

「しかし、この墓で襲撃かけようっちゅう不届きもんがおるとはなぁ……」

 

「申し訳なかったわね、私の部下の監督不行き届きのせいで」

 

振り返るとそこには華琳と秋蘭の姿。貂蝉もそこにいる。

 

「華琳か」

 

「あ、華琳様。ていうか兄ちゃん、今さらっと真名で呼ばなかった? しかも呼び捨てで」

 

「いいのよ、それは私が認めたのだから。秋蘭もね」

 

「じゃあボクの事も真名で呼んでよ。ボクは季衣だよ」

 

「ん、了解」

 

華琳は墓の前に歩いていき、墓の周囲をぐるっと回る。

 

「あなたが掃除したのなら、私は掃除しなくていいかしらね」

 

「したいと思えばすればいいし、そう思わないならしなくていいよ」

 

そう返事を返せば、華琳は軽くだけ墓石の周囲の落ち葉を拾ったりする程度に掃除し、墓の前で手をあわせる。

 

その様子を、俺と霞は少し離れたところから眺める。

 

「なぁ、ご主人様、いつの間に曹操の真名呼ぶようになったん?」

 

「ん、ついこの前。自軍の独力で魏を破ったんだから認めるに値するんだってさ」

 

結構真剣にその墓に向かう曹操を眺めているとなんだか不思議な気分になる。

 

まずは戦死者を、次に家族を、次は災厄の犠牲者。

「この墓がどういう墓だかは、貂蝉から聞いたわ。

 

あなたがこの墓の前で泣いていた事があるのもね。

 

ここに来る道すがら、町であなたの評判も聞いた、随分と評判がいいようじゃない。

 

あなたが殺されかけた時の兵や将の怒りの理由がわかる気がするわ」

 

墓の方を向いたまま、華琳が言葉を続ける。

 

「だからこう思うのよ。魏は、北郷一刀という王ではなく、北郷一刀という人間に負けた。

 

王としては失格だとおもうわ。あなたは大きな王ではなく小さな人間。

 

持たざる者のことをよく理解して、それの求めにこたえる。だから、これほどまでに人を惹きつける。

 

あなた自らが求めれば、今まであなたが与えた以上のことをみなが返す。

 

そうしてこの国は成り立っているのではなくて?」

 

「どうだろうな、俺はただ、仲間のため、友人のためと思ってやってきただけだし

 

ただ、芯のところに「情けは人の為ならず」っていう考えはあるけどね。

 

情けを人にかければ、それはいつか自分に帰ってくる。そういう考えがね」

 

「ここはあなたの国なのだからあなたの自由にすればいい。

 

威厳も誇りも必要ないというならそれも結構。それで国が成り立つのなら不要なのでしょう。

 

でも、王としての自覚は必要だとおもうわよ?」

 

「王の自覚っていわれてもなぁ……」

 

いまいちそういう実感も無いし、成り行きでやってる感が今でもあるし。

「ま、悪い頭でよく考えるのね。どうしてもわからないなら、私が教えてあげてもいいわ。

 

その時は私に教えを請いにいらっしゃい。

 

秋蘭、季衣、帰るわよ」

 

「御意」

 

「あ、はーい!」

 

貂蝉に、あなたは寄るんじゃなわよ! なんて言いながら墓から去っていくその背をしばし呆然と眺める。

 

「やっぱりいけすかんなぁ……。まぁ色眼鏡で見よるとこもあるんやろうけど」

 

「でも、あれ? ひょっとして……」

 

「ん? どないしたん?」

 

「……、俺が頼めば、俺の仲間になってくれるってことかなぁ、最後のあれ」

 

「えー……。そうは聞こえんかったけどなぁ。ちゅうか、ご主人様、曹操まで抱き込むつもりなん?」

 

「え、だめ?」

 

俺の言葉に霞が苦笑を返してくる。

 

「んー、ウチも董卓軍から引きぬかれたもんやし、

 

あかんとはいわんけど、絶対愛紗とかは猛反対してくるとおもうで?

 

一応ご主人様は生きとった、っていうても、ウチもまだあいつらのこと許そうって思えへんのは事実やし」

 

「どうしようか?」

 

「そーいうのは、ウチに振らんと軍師に振りーや。お気に入りの桂花とかな」

 

霞の言葉に俺は苦笑を返すのだった。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回は微妙に華琳のデレ成分だせたかなーなんて思ってます。

 

次回は紫青の回にしようかなー、なんて思ってます。彼女もまた、一刀が死にかけた事で態度をかえている……予定です。

 

さて、今回は他に特に書くことがないので、文章を書く時にこころがけている事でも少し書こうかと思います。

 

まず、擬音をなるべくつかわない。

 

ということを心がけてます。自分の作品にはあまり似合わない気がするのですよね。

 

次に、///等の表現も同じ理由でつかわないようにしています。

 

あと、読みにくくなると思っての事で三点リーダ(…←コレです)を少なめにこころがけてます。

 

こんなところでしょうか?

 

私は案外古いタイプの物書きなのかもしれないですね。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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