No.62254

死神と道化師

呂布さん

『三人の御遣い』の続きです。
文章が稚拙です。
今回は前話の少し前の話になります。
それでも大丈夫という方は…

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2009-03-08 21:18:39 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5250   閲覧ユーザー数:4151

―――数刻前―――

 

 

「不審者ですか?」

月が伝令に来た兵士に尋ねる。

「はっ!ここより、五里先の地点にいるそうなので、捕獲して頂きたいのですが…」

「抵抗したらどないすんの?」

「その場合は、攻撃もやむを得ないという事になります。」

「どの程度の人数なんだ?」

「報告によれば二人だそうです。」

「二人…なんですか?」

「そのぐらい、私たちでなくともその辺の兵士に任せておけば良いだろ?」

「ですが、命令ですので…」

「ハァ…仕方ないわねぇ。」

「……行く?」

恋が詠に聞いてきた。

「命令だもの、行くしかないでしょ?」

「部隊を分けるか?」

華雄の質問に詠が首を横に振る。

「念のため全軍で向かいましょう。」

「たかが不審者、されど不審者やな」

「そういうこと。それに、今のボク達の手勢は少ないし、部隊を分けて撃破されるよりはマシよ。」

そう言って詠の指揮の下、董卓軍出発!

…詠は後に後悔した

この時、全軍で向かったことを。

一部隊…せめて月だけでも残さなかった事を…

 

 

「………ふぅ。」

「………。」

あっ読者のみなさんはじめまして。

僕、東堂大河と申します。以後御見知りおきを。

「??どうした?」

「あぁ、いえ。なんでもありませんよ。」

「…そうか。」

こちらの若干寡黙な方は、僕の兄、東堂鋼牙といいます。

とてもお強い自慢の兄です。

「…ん?」

おや?兄上の足が停まりましたね。

「どうか致しましたか?」

「…砂塵だ」

兄上に言われた方に目を向けると…

確かに砂塵ですね。

しかもかなりの。

「…また賊徒の類でしょうか?」

「…わからぬか?」

「え?」

兄上には、砂塵の正体がわかるのでしょうか?

「明確にはわからぬが…できるぞ。」

「数は?」

「できるのが三人。雑魚が百人前後。」

…今更ですが、何者ですか兄上?

…と、そんな漫才をしていると、目の前に砂塵の正体が停まりました。

…う〜ん。なんでしょう。

「兄上?」

「なんだ?」

「いえ。先程兄上に数を聞きましたよね?」

「あぁ。」

「その時、兄上は百人前後だと…そうおっしゃいましたね?」

「…何か問題があるのか?」

「大有りですよ!倍近く違うじゃないですか!」

まったく…

「おい。」

「…なんです?」

僕が不機嫌そうに答えると、銀髪の女性が、こう言った。

「おとなしく縛につけ。」

…………………は?

何をおっしゃっているんです、この人は?

「抵抗せん方が身のためやで?」

どうしましょう?

僕たちは殿下を捜さなければなんですが…

「すまぬがそれはできぬ。我らは人を捜しておるのでな。」

おぉ!兄上にしてはまともな反論です!

「…ナニカ、イッタカ?」

すみません、ごめんなさい、もうしませんからどうかお許しを!?

「どうする?賈駆っち?」

「仕方ないわねぇ。…全員武器を取れ!」

ジャキッ!

「おや?武力行使ですか?」

「…やれやれ。」

「えぇ、そうよ。死にたくなければ、さっさと縛についてちょうだい?」

…仕方ありません。

「…兄上。」

「解っておる。」

「では、将兵は任せますね?」

「ならば、指揮官はお前がやれ。」

そう言って兄上は目を閉じ、静かなそして純粋な殺気を放った。

「うぐぁ!」

「かはっ!」

「おぶぉ!」

近くにいた兵士達が次々と倒れて行きます。

さてと。僕も始めますか。

そして、僕はおもむろに右手を上げ――

ここからは、我が話を進めよう。

それと我が名は東堂鋼牙。以後御見知りおきを。

「この野郎!」

…む?雑魚が斬り掛かって来たか…

「…遅い。」

そう言って我は半歩下がり、その者の首に手刀をいれた。

「ひでぶっ!」

ドサッ。

「…まだ、やるか?」

我が聞くと、

「ひ、ひいぃ!」

「お、お助け…」

ハァ、つまらん。雑魚の相手は退屈だ。

「ホントにつまらん。」

そう呟いた時だった

「ならばこの私が相手をしよう!」

ん?

「そなたが我の相手だと?」

「そうだ!」

「話にならんな。」

「なにっ!?」

「女、子供を倒したとてなんの誉れにもならん。他の者にも『早急に去るが良い。』と伝えておけ」

「残念やけどそれは無理やなぁ。」

「……無理。」

…ん?知らぬ間に増えとるな。

「張遼!呂布!」

「おぅ、華雄!」

…ふむ。勇将華雄に神速の張遼、更には天下の飛将軍呂布。

楽しみたいのは山々だが…時間切れか。

「も、申し上げます!」

「馬鹿者!今は戦いの最中…」

「賈駆様が呼吸困難を訴えておられるのです!」

「なにっ!?」

「賈駆っちが?!」

「…ッ!?」

「やっとか…」

我がそう呟くと、

「貴様ァァァ!賈駆に何をした!」

「我ではない。やったのは弟だ。恐らく四半刻程前から発症していたはずだ。」

目の前の三人が兵士の方に振り返った。

「はい、その者の言う通りです。」

「…やめて。」

呂布と言われた少女が我に言ってきた。

「私からも頼む。どんな物でもくれてやる。だから…」

そう言って三人は土下座をして、

「頼む!」

「この通りや!」

「………」

…古代中国では、土下座とはかなりの覚悟がいる。

それをしているんだよほど大切な仲間なのだろう。だがこのまま帰すのは些か危険だな…

ならば、

「我らに全面降伏せよ。そうすれば、すぐにやめさせよう。」

「「「…ッ!?」」」…まぁそうなるであろうな。

「どうした?仲間を助けたいのだろう?」

「……わかった。おい、貴様!」

「はっ!」

「董卓様に全面降伏の意図を伝えろ!」

「で、ですが!」

「早くしろ!」

「ぎ、御意!」

タッタッタッ…

 

 

―――数刻後―――

「………」

目の前の儚げな少女が警戒した目でこちらを見据える。

「…ハァ……ハァ」

その近くで眼鏡をかけた少女が息を切らして…

「そやつが賈駆か。具合はどうだ。」

ギロッ!

「ふむ。警戒されておるな。無理もないが。」

「当然…よっ!……ハァ…こんな…妖術みたい…なの…ハァ…使う奴…警戒する……わよ…ゴホッ!」

「詠ちゃん!?」

「いかんな…」

あの馬鹿…

「大河!大河はおるか!?」

…ダダダ!キキーッ!

「御呼びですか、兄上?」

「御主、この者になにをした?」

「??少々呼吸を止めただけですが?」

「馬鹿者がァァァ!?」

「うぉわ!」

「そこまでする必要など無かろうが!何を考えとるんだ御主は!見ろ!御主のせいでこの者は虫の息ではないか!」

「ちょっ!どこですかその人は!?」

「…そこの眼鏡の少女だ。」

そう言った途端に、大河は少女の元に駆け付けた。

「ハァ…ボク達に……ハァ…近寄…るな…!」

「そうは参りません!これもすべては僕の未熟さが招いたこと。せめて、治療だけでもさせていただきます。」

そう言うや否や、大河は賈駆の背中に手を翳した。

「はぁ…ッ!」

大河が喝をいれると大河の手が淡い光を放ちはじめた。

「…『再』!」

大河がそう唱えた瞬間―――――――ッ!「ふあ…」

賈駆が変な声をだして倒れた。

「!?詠ちゃん!?しっかりして詠ちゃん!」

董卓が賈駆の方へ行こうとした時、

ガシッ!

大河がその肩を掴んだ。

「!?放して!」

「賈駆殿ならば大丈夫です。術の作用で少し眠っておられるだけですよ。」

「…本当…ですよね?…信じて…良いん…ですよね?」

董卓は泣きながら聞いていた。

 

 

次からは大河にモノローグを任せる。では、よろしく頼むぞ。

え?!ここで僕に任せるのですか?

まったく…

 

 

 

目の前の少女…董卓さんでしたか?その人が泣きながら僕に尋ねてきました。

「えぇ、勿論ですとも。それと、賈駆殿ですが、時期に目を覚ますと思いますので、それまで安静にしておいてくださいね?」

「……はい。グスッ」

おや…賈駆殿の無事がよほど嬉しかったのでしょう。涙を流しながら微笑んでいます。

良いですね、美しい友情って。

「おい、大河。」

「ん?なんです兄…上?」

「??御主こそどうかしたのか?そんなけったいな物を見るような目で人を見て。」

「なんと言いますか…その格好は一体?」

「…鎧だが、見て解らぬか?」

「いえ、そんなことは百も承知です。僕が言っているのは、何故そのような格好をしておられるのかという事なのです。」

「…気づいておらぬのか?」

「…何にですか?」

「この天幕、賊徒に囲まれておるぞ。」

…………………は?

「それを早く言って下さい!」

まったく!すぐに撃退せねば…って!

「何なさっているんです兄上?」

「いや、この鎧が少し重くて邪魔だから脱ごうかと…」

「だったら最初から着けないで下さい!」

―――数分後―――

「ゼェ…ハァ…で、では参りましょう。」

「辛そうだな。」

誰のせいですか!

…とまぁ、そんな漫才を終え天幕をでたさきの光景は―――

「…ほぅ?」

「…黄巾党、でしたっけ?」

目の前に広がるのは一面の黄色。…花畑とかの黄色なら良かったんですがねぇ?

「…殺るか。」

「そうしましょうか…すみませんが、そこの黄巾党の皆さん!」

「あぁ?なんだよてめぇら?」

「僕達はそこの天幕の者です。」

「…なんか用かよ?」

「いえ、用というか願望なんですが…」

「ほぅ?言ってみろよ。」

「では、単刀直入にいいます。」

そう言って僕は一息ついてから、

「目障りなんで消え失せてくれませんか?」

「「「………」」」

おや?言葉が通じてないのでしょうか?

ですが、そんな僕の考えは杞憂に終わります。

「てめぇら!人が下手に出たら調子にノリやがって!」

「ぶっ殺してやるから覚悟しやがれ!」

「「………」」

あっ、これは僕達の三点リーダーです。

「ヒャハハ!ビビって声もでねぇか!」

「ハァ…何で僕達がたかが賊徒に脅えなければならないのですか?ですよね、兄上?」

「まったくだ。」

「んなっ!?」

「減らず口を!てめぇら二人だけで俺達一万の軍勢を倒せる訳が無いだろ!」

「一万…ですか?」

「ふむ。」

という事は…

「一人五千人ですね兄上。」

「もう少し欲しいところだが…無念だ」

おや?黄巾党の皆さんが呆然としていますね?

「…そろそろ食事の準備をしなければなので、」

「…いざ、参る!」

こうして、一面黄色だった土地に、グロテスクな赤が混じったのです。

―――数刻後―――

「ふぅ…なんとか夕飯の準備に間に合います。」

「御主はどこの主夫だ?」

とりあえず今のツッコミはスルーしておきましょう。…と、天幕に着きましたね

「「「「…………」」」」

…なんですか、この空気は?葬式並の重さですよ?!

あれですか?やはり先の戦が原因なのですか?!

あぁ、どうしましょう!…そうです!兄上になんとかしてもらいましょう。

そう思い、兄上の方をチラッと見たのですが…

「スゥー」

この空気で寝てる?!

というか、いつの間に眠れるような所に移動を?!

いけません、万策尽きてしまいました。

…と、

ぎゅるるるぅぅぅ

…なんです?今の音は?

「……んぅ?」

あ、兄上も目を覚ましましたね。

にしても、今のは…

「………ッ!///」

…呂布殿の腹の虫でしたか。

「クスッ。今何か作りますから少々お待ちを。」

そう言って僕は夕飯の支度を―――ん?

「おぉ!すっかり忘れてました。」

そう言って僕は近くにいた元・董卓軍兵士に次のような噂を広めるように操りました。

『董卓率いる軍勢は不審者二人に全面降伏。更に、呂布、張遼、華雄の三名は、不審者の手により、処刑された』と。

誰です?今僕の事外道とか最低とか言ったのは?

…まぁ否定はしませんがね。

さて。いい加減夕飯に致しましょうか。

「はぐ…もぐ…はぐ、もぐ…ごくん………お代わり。」

「え、えぇ。今お持ち致します。」

呂布殿って大食いだったんですね。

…追加、お作りした方がよろしいでしょうか?

「お〜い!大河ぁ!酒がきれたでぇ?」

…あっちは筋かね入りの飲ん兵衛ですか。

「ハァ…」

華雄殿?溜め息ツイてないで張遼殿を止めて下さいよ!

「詠ちゃん…」

ピシッ

「「「………」」」

おぉ!皆さんの動きが一斉に止まりましたよ董卓殿!…ついでに時間も停まりましたけど。

「…詠、まだ起きない。」

「あれから結構経っているんですが…」

そう言って董卓殿と呂布殿が暗い表情になりました。

「「………」」

はい、そこ!僕の事を睨まないで下さいよ!

ですが…確かに目覚めませんね。これは一体…?

僕が原因を考えていると、

「シッ。」

兄上が、静かにするように指示してきたので僕達はそれに従いました。すると…

「…スゥ…スゥ」

…眠ってらしたんですね。

「良かっ…たぁ…」

おやおや。ついに董卓殿が泣き崩れてしまいました。

董卓殿は、本当に優しい子なのですね。

その時――――――

「…んぅ?月ぇ?」

「グスッ……ふぇ?詠ちゃん?」

御目覚めの様ですね

「ヒック…グスッ…詠ちゃ〜ん!」

「え?ちょっ!え?なんで月が泣いてんのよ?!誰よ、ボクの大事な月を泣かしたのは!」

それは、なんと言いますか、その、ねぇ?

その後は、賈駆殿が必死に董卓殿を宥めて、その光景を肴に張遼殿と華雄殿が酒を飲み、呂布殿は、先程よりもハイペースで食事をとっていました。

兄上?隅っこでうずくまりながら寝てますよ。彼、女性が苦手なんでね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一刀達の所に今回の事が伝わったのだが、そのことを鋼牙達は知る由も無かった…


 
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