「飛び降りるんですか?」
ふと後ろを向く。そこには若い男性が。
「いえ、そんなつもりは・・・」
嘘だ。この世界にはもう生きられる場所がなかったんだ。生きていたい場所がなくなったんだ。
「ウソですね」
ビックっと震える。図星だったからだ。
「何があったんですか?」
ため息をついて
「よくあることですよ。一生懸命頑張って夢を叶えようとして、踏みにじられて、夢が夢でなくなって
それでも叶えてしまった。」
そう、叶えてしまったことが間違いだった。壊れた夢を続けているうちにどうしたいかわからなくなった。まるで機械のようだった。おんなじことを続けて笑顔を貼り付けてそんなことを続けてきた。
「そうですか」
「それから、その夢の場所で頑張れなくなったんです。もういいかなって…。これ以上迷惑かけたくないし。」
自嘲気味に笑う。間違えた。間違えた。間違えた。それだけ。ただそれだけだった。
「夢ですか、羨ましいです。」
「何が羨ましいんですか?こんなもの持ってても何の役にも立たない。息をするだけで辛くて…。どうしょうもなくて…。でも捨てられなくて。」
力が入る。他人だ。今日初めてあった他人だ。なのに、どうしてこんなにも苦しくなるのだろう。
「まだ、諦めてないのでしょう?ずっと持ち続けていたあなたの夢で。苦しいのなら少し避けておきましょう。」
何を言って…。
「生きるために、夢をおいておけばいい。死ぬには少し早すぎます。あたなたはまだ、あがいてないじゃないですか?では…。」
そう言って去っていった。したを見れば街の灯りが。楽しそうな世界だ。上を見れば暗い空。
世界が明るすぎて、綺麗なものを見逃している。この空には確かにあったはずだった。少し、綺麗なものを持ち過ぎていたのかもしれない。大切にしすぎて、汚れてしまったのだろ。一度手放してみよう。もう一度見つけるために。
そうして、この場所には誰もいなくなった。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
短編です。