No.618977

真・恋姫無双 ~乱世に吹く疾風 平和の切り札~第8話 桃園の誓い

kishiriさん

第8話です。今回はきりの良いところで切ったので短めです。

最近モンハン4が待ち遠しくて落ち着きません。
早く14日にならないかなー( ・Д・)ソワソワ

2013-09-13 02:18:14 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1685   閲覧ユーザー数:1577

 

 

 

関羽と張飛の来訪と同時に発生した、ティーレックス・ドーパントの襲撃はひとまず幕を下ろした。

 

幸い今回の盗賊襲撃では、一刀たち4人の働きのおかげで村への被害は完全に0。

まさに無傷(鈴々が軽く怪我しているが、大した傷では無い様子)の勝利に終わった。

 

外部へこの情報が漏れたら色々と面倒な事になりかねないが、前述のとおり派手な被害も無く事を済ませたお陰で、その心配も杞憂になりそうだという。

既に2年前の噂もあるので、これ以上諸国に目を付けられてしまっては、村人たちも安心して過ごすことは出来なかったであろう。

 

 

 

それは一先ず置いておくことにし、先ずは賊たちと戦った一刀たちは村へと帰還した後の所まで視点を変える。

 

村へ戻った4人がまず初めに体験したのは、村人たちによる盛大なお出迎えだった。

また村を救ってくれてありがとう、また無茶しやがって、怪我などはしていないか、力になれなくてすまなかった……老若男女から多種の言葉が飛び交ってきた。

一刀と桃香は大げさな出迎えに苦笑しつつも皆の言葉を受け止める。

関羽は自信の功績を謙遜しつつも村人たちの対応に困惑し、張飛は皆と一緒に笑顔で喜び合う。

 

 

 

そしてそれから2時間後、一刀たちは劉備の家(正確には劉紀の家だが)に戻ったのだが……

 

 

 

「お願いします劉備殿、一刀殿!どうか我らを、貴殿の配下へと加えていただきたい!」

「鈴々もお姉ちゃんたちと一緒に行きたいのだ!」

 

関羽、張飛の2名はそう言って目の前に居る二人に頭を下げた。

そしてその2名とは言わずもがな、一刀と桃香の事である。

 

「……え、えーと…」

 

突然二人に頭を下げられ、要領が得られない桃香は困惑した様子で関羽たちと一刀を交互に見る。

 

一刀も桃香と同じ感想を抱いてはいるのだが、このままでも話が進まないので二人に声を掛ける。

 

「とりあえず二人とも顔上げて……っていうかどこで聞いたんだ?それ」

「うんうん、私も一刀さんも一言も言ってなかったよね?そろそろ旅に出るって事」

 

桃香の言う『旅』とは、匪賊が跋扈する今の世を終息にするために彼女が前もって考えていたプランだ。

2年前、一刀に出会った時の盗賊の襲撃に加え最近世間で暴れ回ってる盗賊たち、そして今回の襲撃。

もう既に漢王朝には賊の暴走を止めるような力が存在しておらず、官軍の力も総合的に見て衰退。

おまけに官軍は自分たちの身を守る事に手いっぱいで、村々を助けるような素振りは殆ど見せていない。

 

遥か上に立っている者達は、最早己の足場しか見えていない状態だった。

 

だからこそ、そんな状況を覆そうと桃香はとある決心をした。

 

 

 

自分が皆の力になって、飢餓や内乱に怯えなくてもいい安心して暮らせる世の中を造ろう、と。

 

 

 

 

そして彼女のその決心をいの一番に聴いた一刀もまた、このように語った。

 

『ま、元々俺もガイアメモリで理不尽に苦しむ人たちを助けるために来たしな……それに、それが相棒の願いだって言うなら、ただ俺は手助けするだけさ』

 

この男、偶に決めよる。

そしてこの台詞を聞いた桃香は感動と感謝で心を潤わせた。

 

こうして二人は時が来たら、天下平定とガイアメモリの回収(破壊)という二つの目的を持った旅に出ることを約束した。

 

ちなみにこの話は別に村の皆に秘密にしていたわけでもなく、村の中では割と知られている話題となっていた。

そして関羽が旅の事を知っているという事は……

 

「はっ、村の者達からお二人の旅の事を耳にしました」

「「ですよねー」」

 

つくづく口の軽い村の人たちだと改めて認識した一刀と桃香は、揃って呆れてしまう。

とは言うものの、別段隠して困るようなことは何もないので、村人たちを咎めるようなことを二人は考えていないが。

 

「劉備殿は賊徒が蔓延る今の世を憂い、それを救わんと旅に出ると聞きました。民の為に力を使う御心に心打たれ、劉備殿の傘下に加わる事を志願したく!」

「どこまでチクってんのあの人たち」

「で、でもいいのかな…私なんてまだまだみんなを助けるための力とか持ってないし、それにこれからどう動くかも決めてないし――」

「決めてないの!?近いうちに旅なのに!」

「い、いやぁ~…具体的にどうすればいいのか分からなくて…」

「あぶねぇ……もう少しで飢え死にの未来になるとこだったかも……まぁそれはひとまず置いといて、どうするんだ?桃香」

 

目の前にいる少女…関羽、張飛の二人をどうするのか。

 

一刀はこれからの旅の軸となるべき人物である桃香にその判断を託した。

便宜上、一刀も桃香に付いて行くような形となっているので彼にその決定を起こすわけにはいかない。

本当に決めるのは、沢山の人々を助けたいという大きな夢を持つ彼女出なくてはならないからだ。

 

そして一刀から判断を託された桃香は、少し考えたようなそぶりを見せた後、表情を改め、二人の方を見据える。

 

そして、その口をゆっくりと開いた。

 

「…本音を言うとね、さっきも言ったんだけど私は武芸の心得もないし政(まつりごと)だって前に私塾で習った程度の知識しか持ってないの。一刀さんもガイアメモリの回収と一緒に手伝ってくれるらしいんだけど、それでもみんなを助けるためにはまだ力が足りない……」

 

悔しそうに唇を噛み、僅かに俯く桃香。

しかし直ぐに面を上げて関羽たちにその瞳を向け直す。

 

「だから……だから、私は関羽さんと張飛ちゃんの力を借りたい!たくさんの人たちを守れる力を持っている二人と一緒に、平和な世を造りたいの!」

 

その瞳は真っ直ぐで、穢れのない。

自分の本当の気持ちを誠実に口にしている彼女には嘘も偽りも在りはしない。

 

「関羽さん、張飛ちゃん…お願い!私と一緒に、困ってる人たちを助けてください!」

「劉備殿……」

「劉備お姉ちゃん……」

 

頭を下げる桃香と、そんな彼女の姿に小さな言葉を零す二人。

 

 

 

 

 

 

「……ぷふっ」

 

そして何故か吹き出した一刀。

 

「え、ちょっと一刀さん!?なんで急に笑ったの!?」

「いや……もともと関羽さんたちからお願いされてたのに、急に桃香が頼む立場になってるからな、つい」

「え………………あっ」

 

そこを指摘され、桃香はあんぐりと口を開く。

 

元々この話は関羽が劉備の傘下に加わる事を題に、関羽たちからの要望として始まった。

しかし、いつのまにか桃香自ら彼女たちの力を求め、力添えを頼み込む形となってしまっていたのだ。

 

これからたくさんの人たちを纏めて行くのに、初っ端から上に立つ者として相応しそうに見えない姿を見せた桃香。

本当にこれで大丈夫なのかと、それで一刀は思わず笑ってしまったのだ。

 

「…でも一刀さんだってこの間、クモくんの糸で木の枝にぶら下がったまま降りられなくなって、村で大きな人に救助されたよね」

「えふっ」

 

心の内を読まれたうえでの反撃に思わず咳き込んでしまった一刀であった。

 

 

 

笑われたことが恥ずかしくて少し赤くなった頬を誤魔化すような咳を1,2度行うと、桃香は改めて二人の方へ向き直る。

 

「えっと……それで二人とも、どうかな?」

 

それは勿論、仲間に加わってはくれないかと言う意味。

そしてその答えも当然のものが返ってきた。

 

「劉備殿直々に臣下として誘(いざな)って下さったこと……この関雲長、大変嬉しく存じます。その御勧誘、謹んで承らせていただきます!」

「うん、よろしくね関羽さん♪」

「鈴々たちも、劉備お姉ちゃんたちに付いて行っていいのだ?」

「もっちろん♪これからは仲間として、一緒に頑張ろ!」

「やったーっ!」

 

こうして、関羽と張飛は晴れて一刀と劉備の仲間になる事が出来た。

 

 

 

 

 

 

翌日、4人は村から少し離れた所に桃の花が咲き並ぶ場所があると聞き、揃ってその場所へ赴いた。

向かう最中、一刀の手には一本の酒瓶が、関羽の手には4枚の盃が収められていた。

もし聞いた話が本当ならばやっておきたい事があると、桃香が提案してきたのだ。

その内容を聞いた一刀たちは喜んで賛同し、こうして準備をしてきたのだった。

 

 

 

村を経ってから一刻程度過ぎた頃。

通称、桃園と呼ばれるそこに辿り着いた4人は、その光景に思わず息を呑んだ。

 

目の前に悠然と広がる桃の木に、美しく咲き誇る花々。

花は空を泳ぐように舞い散るものもあれば、地に舞い降りてその色を桃色に敷き詰めるものまである。

桃園と呼ばれる理由をまざまざと思い知らされる、艶美な景色が4人の目の前に広がっていた。

 

「…綺麗だね」

「…ええ、そうですね」

「日本の桜よりも艶やかだな……けど、十分綺麗だ」

 

劉備、関羽、一刀。

3人は目の前に在る美しい風景をその眼に映し、そして素直に称えた。

 

そして一方で、花より団子精神が最も強い張飛はというと…

 

「酒だー!酒なのだー!」

 

この始末。

もう桃園の景色を存分に感じたのか、それともただ単に見るだけじゃ飽きて来たのか。

両手をガーッと挙げて3人に酒を飲みたいというアピールをし出した。

 

「こら鈴々。お前はもう少しこの景色を楽しむ感性をだな……」

「そんなのよく分かんないのだ!鈴々、桃の花をじっと見てるよりもこっちの方が楽しいのだ!」

「あはは……張飛ちゃんにはまだちょっと早かったかな?」

「ま、そういうのは時間が何とかしてくれるだろ。関羽さん、盃を」

「……仕方ないですね」

 

妹分の非を詫びると、関羽は皆に盃を手渡す。

 

そして一刀も酒瓶の口を開き、皆の盃にトクトクと音を立てて酒を盛っていく。

全員に酒が回ったところで、一刀は自分の分の酒も用意し、皆の様子を窺う。

 

「よし……みんな、酒は持ったな?」

「うん♪」

「ええ」

「ちゃんと持ってるのだ!」

「みんな準備いいみたいだな。…それじゃあ桃香、頼むぜ」

 

 

 

「私の名前は劉備、字は玄徳。真名は桃香!」

「我が名は関羽、字は雲長。真名は愛紗!」

「張飛と翼徳、真名は鈴々!」

「姓は北郷、名前は一刀。字と真名は無いけど、ここでは一刀の名を真名とさせてもらう!」

 

桃の木の下、4人は高らかに誓う。

 

「大陸に住む人たちを助けるために、私に力を貸してくれる皆に私の真名を預けます!」

「我が武を必要としてくださった主と、主の力となってくれる仲間たちに、我が真名を預けさせていただきたい!」

「これから鈴々と一緒に戦ってくれるお姉ちゃんたちに、鈴々の真名を預けるのだ!」

「俺を受け入れてくれた相棒と、相棒の助けになってくれる二人に俺の真名を預ける!」

 

生まれも育ちも異なるが、志を共にする仲間として。

 

同年同月、同日に命を得られずとも。

 

同年同月、同日に死せんことを願い。

 

 

 

「「「「……乾杯っ!」」」」

 

 

 

事前に一刀より教えられた、酒飲みの際に行う言葉と風習。

各々胸に大志を抱いた4人は高らかに掲げた盃を小さくぶつけ合い、小気味よい音を桃園に響かせた。

 

 

 

こうして184年4月初頭、幽州涿郡のとある場所にて桃園の誓いが結ばれた。

 

 

 

 

 

【あとがき】

 

はい、前回は尺の都合上あとがきが書けませんでしたが、今回はちゃんと書きます。

と言う訳で、第8話にして漸く桃園の誓いが書けました。

 

ここまで妙に長かったなぁ……ティーレックス・ドーパントとの戦闘とか入れちゃったせいもあるですよね。

でも愛紗や鈴々に一刀たちの事情、実力を知ってもらうためにも必要だったので仕方ないっちゃ仕方ないのですが^^;

とにかく、これで漸く公孫賛(賛はこの字でいきます、龐統も『龐』の字も恋姫式の『鳳』で取り扱います)のところへ行くことが出来ます。…早い人だと8話でもう独立~反・董卓連合まで行ってるんだろうなぁ。

 

それは一先ず置いておいて、この作品では一刀に対する呼び方が原作と違ってきてます。

桃香は『ご主人様』から『一刀さん』に、愛紗は『ご主人様』から『北郷殿(次回から一刀殿)』、鈴々だけ変化しません。

 

原作では桃香と同格の立場として動きを見せていますが、ここでの一刀はあくまで相談役として動くので、『ご主人様』と呼ばれることは多分、恐らく、決してありません。

あの呼ばれ方が好きな人の期待に添えることが出来ないのは私の責任だ、だが私は謝らない。

 

( 0M0)< ショチョォ!

 

戯れもさて置き、一応『天の御使い』と言う設定をどうするかは次回で明らかにしておきます。まぁその名を使うか使うまいか、それだけですけどね。

 

ちなみに今回のタイトルがW式のものではないのは、ドーパントが全然出て来たないためです。無いのにアルファベット書いても無意味に等しいし……それに各キャラの拠点フェイズでも同じようになりますし、気にしなくても問題ありません。

 

それでは、本日も読んでくださってありがとうございます。

次回もよろしくお願いします!

 

 


 
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