No.618131

ALA ~書き込みダイヴ編~ 仲良し四人組 完結編

ワニナミさん

やっと完結しました。
一つにまとめましたのでご覧ください。

後二つ短編頑張ります。
それ終わればALA書き込み編は終わりです。

続きを表示

2013-09-10 17:57:10 投稿 / 全29ページ    総閲覧数:715   閲覧ユーザー数:715

 2102年 2月24日 1DLK 自宅

 俺はいつものように、ALAに必要な粉末と天然水の割合を測り、病院で使われてる注射器に注ぐ。

 表沙汰に出来ない【仕事】をしてる俺は、この世界で大事な【信用】を保つ為に薬と水の分量に気をつける。

「ちと水増ししすぎたな、これじゃ直ぐに薬の効能が無くなってしまう。それに傷の治りも遅い」

 俺の商売道具は、ALAと言う粉末の薬とアミノ酸を多く含んだ天然水、この二つだ。

 ALAとは、世界的有名な学者グループが、2000年頃に【人類不老不死計画】を世界に提示し認められ、これによって世界各国のバイオセーフティーが緩和された。

 それにより世界各国のDND研究が盛んになり、2100年 5月に正式的投与可能となった液体型薬物。

 

 正式名称 アムリタ(amlita)略してALA。

 名前の由来は、インド神話に登場する神秘的な飲料の名で、飲む者に不死を与える効能と類似した為、今の名称になった。

 

 効能については、夢のような薬だ。

 肉体的老化の停止(成長停止や老化防止)

 軽傷や火傷など完治(高速治癒)

 

 だが完全な不老不死よりも三つの欠落した部分があった。

 

 一つ目が、内蔵機能の衰退までは防げない。

 

 二つ目、大怪我には高速治癒は適応されない。

 

 三つ目、薬を服用した時点の記憶より新たな知識の取得が出来ない。

 

 後は、例外的問題で『分量』を間違えると効能が直ぐに消えてしまう。それに薬は一度使用すると定期的に薬を体内に取り込まないと生きていけない体になる。

 

 そして、完全な薬では無いから開発されて一年も経たずに各国で麻薬指定され、購入者と売人には重い罰則が定められている。

 

 だが発売当初の購入者が、日本の全人口6割を占めてる。

 

 現在、使用者には罰則は無い。

 但し売人(販売側)に即死刑にされるという理不尽な法律が発案されている、恐らく今年には確定するだろう。

 

「全く理不尽にも程があるぜ、俺らがいるから、外見不老者が生きてゆけるのによ」

  俺はそんな事を吐露した間に、配分調整した薬は完成する。

 

 腐りきった影な商売をしている俺は、他の売人達とは、違う楽しみ方を最近この仕事を通して覚えた、お金で女を買う以外の楽しみ方だ。

 商売仕立ての頃は、大金を使い気晴らしに『酒、女、ギャンブル』を楽しんだ。

 しかし、そんな俗物的娯楽なんて一般の気質が楽しむ遊びであり、俺らみたいな闇家業には刺激が足りなすぎる。 

 

 だから刺激を補う対象がALA使用者の狂乱行為を監察し、記録して酒の肴にする。

 薬を売った購入者を四六時中監視して、そいつらが人生を駄目にする瞬間を楽しむ。

 これが俺のマイブームであり、俺がこの仕事に縋り付いてる理由でもある。

 その記録を今日このサイトに三つの話を綴ろうと思う。

 

 

 今まで一番心に残ったベスト3を発表するぜ。

 

 

 

―― ケース① 仲良し四人の男の友情 ――

 

 ここは、都会のとある中学校。

 その近くにある新築3年くらいのアパート二階、そこから双眼鏡と盗聴器、学校に仕掛けてある監視カメラの映像が常に流れているパソコンを眺めながら、俺はコンビニ弁当を食す。

 俺が何故ここにいるかと言うと酒が美味しくなりそうな、ALA使用者が俺の運営しているサイトに薬を注文して来たからだ。

 まず俺が、監察する為にする事がある。

 

 まず、学校内に協力者を何人か金で釣る。

 彼らに30万渡し、学校の敷地内全てに百八個の小型カメラと盗聴器を設置させる。

 無論他言する事は、死を意味すると脅してある。

 

 次に、俺からALAを購入する奴を特定する為に発送前の一週間前に現地に趣く。

 発見次第、使用目的等を割り出す為に行動一つ一つに記録を撮る。

 

 主に二つの事前準備は必ず行う。

 ここまで徹底しないと面白くないからだ。

 

 そして発送前の一週間、多大なる労力を駆使した甲斐があり購入者を特定と使用目的も大体把握出来た。

 

 購入者の名前は、飛田 勝海。

 恥ずかしがりやで臆病だが、自尊心は異常に高く短気な面がある。

 

 使用目的は、購入者含め四人が卒業前に不老者として永遠の友情を誓うと言う馬鹿げた内容だった。

「子供の考える事は、いつもぶっ飛んでいるな」

 口元を緩めながら俺は、彼らの説明を記録する。

 

 まず、谷原 聡。

 元気活発で四人の中心的存在と見える、遊ぶ場所など決定打を委ねられるリーダーだと思われる。

 

 次に、豊部 淳平。

 その場の雰囲気に流されやすい馬鹿、自分の意見が余り無いのだろう、いつも問題があると責任転嫁をしてるようだ。

 

 最後に、四人の中で一番落ち着いた表情をしてる、向井 徹平。

 こいつは、一週間の監察中に同じ中学に通う女子、五人から告白されている。

 美少年で秀才という全てを手に入れている、リア充男子だ。

 いつかボコボコに殴り倒してやりたいと私的感情が炸裂しそうだ。

 

 だが俺は冷静に淡々と彼らの行動を監察しこのサイトに鮮明に記録する。

 【狂乱の記録者】として裏設定も考えながら、俺は大好きなテキーラをショットグラスで飲み干す。

 

 そして使用理由として成立してるか定かでは無いが、彼らの言い分を説明しよう。

 彼らは、中学三年生で卒業を期に肉体の時間を止め【永遠の15歳】を目指そうとしている。

 昨今法律でALA使用しても売人しか裁かれない法律を知っての行動だろう。

 行動の発案者は、もちろんいつも行動的な谷原だ。

 彼は、自分の父親が同窓会で友達の変わり果てた姿に絶句し溜め息を吐いていた。

「見た目も変われば中身も変わるな」

 呟いている親父を目撃して、寂しさを感じたらしい。

 

「そりゃ、年齢重ねれば姿も変わる。でもそれで友情が無くなる訳じゃあ無いのにな」

 俺は先ほどコンビニで買った二つ目の唐揚げ弁当に手をつける。

 部屋中弁当の空箱で埋め尽くされている、小さい蝿も何十匹か飛び回っている。

 およそ人間が過ごす生活では無い。

 

 だが、彼らの人生の転落を、誰よりも俺の瞳で監視する方がセックスより楽しいと本気で思う。

 多分俺の神経は、狂ってるんだろうと自分の悲劇を鼻で笑う。

 彼らの薬の入手方法を一覧でまとめた、向井だけ記載できなかった理由としては、また話が進むにつれ分かってくるはずだ。

 

 その前に、奴らの行動する場所仕込んでいた。

 盗聴器の音声をサイトにアップロードしてある。

 形式はMP3なので大概の人は、ダウンロードできるはずだ。

 

 そこに、彼らが喋った事など鮮明に記録されている。

 

 ここをクリックしてくれ→【四人の会話】 ――――――――――――― ポチ

 

「俺らの友情は、永遠だな」

 突然、谷原の会話から始まった。

 どうやら卒業前に仲良し四人を集めて友情の意思確認を促してるように取れる。

 

「だな」

 豊部は明るい声で相槌を打つ。

 

「・・・うん」

 飛田は、小さめの返事をした。

 

「そうだね、いきなりどうしたんだよ。改まってさぁ」

 向井が疑問に思う、半音上げた疑問文を読むとき独特の声色だ。

 

 谷原は、少し間を空けて発案する。

「俺ら姿が醜くなるの嫌だよな、俺皆の老けたおじさんになった姿なんて見たくないんだよ」

 

 他三人は、最初何を言ってるのか分からなかった。

 

 すると感の鋭い向井が、大きな溜息を吐きながら発言する。

「谷原、お前ALA使用する気か? 確かに今も多くの不老者を出してるし、最近では使用者を擁護する法律も出来た。でもさ・・・」

 

 谷原は向井の言葉を最切り力のこもった声で言う。

「年齢の老化は、友情の風化に繋がるんだよ。姿形が変わることで俺らは子供の時のような振る舞いは出来ない」

 

 飛田は谷原の言葉に感銘を受け、谷原に賛成する。

「僕は、谷原君の意見に賛成だな、友情とかも大切だけどさ。僕良く考えるんだよ【老化した自分】について今は若くて肌も綺麗で、体力もあるけど二十歳から老化が始まり、どんどん自分が醜くなる事って現段階では想像の余地すら無いけど、実際になった時、僕は凄く寂しくなるような気がする」

 

 豊部は飛田の言葉を余り理解してないような不抜けた声を出す。

「おっおう、俺も谷原に賛成だよ。だって年齢重ねた自分より若い時の方が女の子にも、モテるっしょっ。お姉さま達にもムフフな事しまくれるっしょっ」

 

 卑猥すぎる発言は誰も何も触れずに無視される。

 

 谷原が少し笑顔を見せる、そんな吐息が聴こえた。

「3対1で決まりだな、向井嫌なら良いよ俺らだけでやるからさ」

 

 向井は、またも大きな溜息を吐き言う。

「わかったよ、形だけでもやらせて貰います。俺も歳重ねるのごめんだしな」

 

「もちろん、なんか、分かんないけど。俺もやるよ」

 豊部は取り敢えず皆に乗っかった。

 

――――――――――――――――――――――――― プチ!! ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 さてと続きを読んでくれてありがとう。

 それでは、先ほど少し俺は話の中で垣間見せた。

 

 入手方法の一覧に、ついて説明しよう。

 彼らは卒業の日、3月1日の卒業式が終わった後に体育館裏の桜の木の下でALAを使用する事にした。

 そして先ほどの会話していた日が、2月24日。

 

 つまり卒業まで各自で薬の手配をしなくてはならない。

 購入の仕方には、三種類ある。

 路地裏購入、病院不正購入、ネット闇購入。

 

 そして彼らは、偶然にも購入方法が異なった。

 俺は、彼らに愛情的な何かを抱かせず得ないくらい楽しい狂乱ぶりを発揮してくれた。

 その悪趣味とも言える記録を一覧にしてまとめた。

 それが下に記載してある。

 

2102年 2月25日 入手方法 豊部 淳平の場合 ―― 病院不正購入 ――

 新宿駅近くの総合病院に豊部はお腹を押さえながら入っていく。

 俺はその光景を少し後ろのタクシー乗り場で眺めながら後を追う。

 

 こいつにしては、よく考えた方法だろう。

 俺は豊部を見直した、短期だが監察している時彼は、自発的に発案する事をしなかった。

 そしていつも、責任は他人に押し付け自分は相手の意見に乗っかっただげと責任を逃れていた。

 

 しかし彼は、ALAを手に入れるため仮病を使い病院に忍び、違う目的に使用するはずだったALAを大量に強奪した。

「やったぞ、俺出来る子じゃん。皆大丈夫かな?」

 双眼鏡越しに豊部の浮かれた表情、病院の薬だから俺ら闇家業が取り扱う薬(ブツ)よりも良い品物だろう。

 

2102年 2月25日 入手方法 谷川 聡の場合  ―― 路地裏購入(特殊) ――

 こいつは、少し特殊だ。

 

 谷川って名前聞き覚えがあると思っていた。

 しかしまさか日本が誇る谷川財閥の息子だったなんて信じられない。

 彼はお金の価値観が人より外れてるらしい。文房具買うのにブラックカードを持ち歩くなんて。

 

 こいつにしたらALAなんて楽勝に手に入るだろう。

 ALAの相場は、100リットル、300万円。

 路地裏購入に、眠らない街、新宿歌舞伎町にある一風変わった風俗店【デブ専】と液晶看板に大きく表示されている店の角に成金なおじさんがタバコを吹かしていた。

「おう、ボーディーガード無しでご来店ありがとうございます。世間知らずな金持ちぼっちゃん」

 財閥の息子という自覚がなさすぎるなと俺は、風俗店の二階から見下ろしている。

 もちろん隣には、おデブちゃんが横たわってポテトチップスを頬張りながら寝ている。

「あんた、変態だね」

「君ほどでは無いよ」

 時々しつこい問いかけに俺は優しくも返事を返してあげる。

 

 それよりも谷川は、堂々とALAを路地裏売人と取引をして薬を手に入れていた。

 

「あいつ将来絶対大物になるよ」

 俺は密かにそう呟いた、今の日本の総理大臣もこのくらい器があれば日本はこんなにも澱んで無いだろう。

 

 

2102年 2月26日 入手方法 飛田 勝海の場合 ―― ネット闇購入 ――

 俺から購入した飛田は、もちろん配送待ちで自宅待機している。

 一様俺は飛田が待機しているであろう飛田家へと向かう。

 JR新大久保駅から徒歩20分。

 駅から物凄く離れている、通学はいつも電車だろう。

 家の前に来た時、俺は衝撃を受けた。 

 飛田の家は、ボロボロの一戸建て。

 どうやら父親がいなく、母親の収入で三人の子供を育ててる、そんな雰囲気を醸し出してる。

 

 そこで俺は、不思議に思った。

「俺は薬を安くで提供してるが、それでも100リットル 100万で前払いだ。飛田家の経済力では到底用意出来ない品物だ。しかも飛田は谷川の提案よりも早くに薬を頼んでいる」

 俺は監察に夢中になるあまりに、大事な事を見落としていた。

「飛田は俺から薬を購入していない? そんなはず無い。しっかりと顧客名簿から住所を割り出し配送した、宛名も飛田・・・」

 人間誰しも間違いはある。

 

―― それを咎めるものは、人では無い ――

 

 宛名の名は、飛田 勝夜(ひだ まさや) しかも、年齢38歳とおじさんだ。

 漢字一文字違い、俺は失敗してしまった。

 

 しかし、どうあれALA使用者である。

 しかも、こちらの方が面白い。

 

「じゃあ、今飛田は薬をどうして手に入れるんだろうか? 流石に家にカメラも盗聴器もしかけてない、油断していた、これでは飛田がどう手に入れたか分からない」

 俺は悔しさのあまり、下唇を噛み切ってしまう。

 口元から大量の血が流れる、だが俺はALA売人だ。

 ALAは体験済みであり、このぐらいの怪我なら直ぐ治る。

 数秒したら、下唇はトカゲの尻尾のようにブクブク音を上げながら再生していった。

 

「我ながら気持ち悪いな」

 俺は飛田がどうやって購入したのか知りたかったが、後から調べればいいかと諦めてアパートに帰宅した。

 

 そして運命の3月1日。

 

 四人が薬を一緒に服用すると誓った日。

 

 【永遠の少年】になろうとしている、笑いすぎて腹が痛くなる。

 俺はテキーラをショットで一気呑みしながら、奴らの動きを監視カメラ映像で調べる。

 

 彼らが【永遠の少年】として選んだ場所。

 

 通う中学校の体育館裏側にある桜の木の下だ。

 

 ここに入学当初四人は、仲間の証に名前を掘っていた。

 

 その場所で皆注射器を手に取り、天に掲げ友情を誓う。

 

 そして彼らの手首の少ししたに浮き出ている動脈に注射針を差し込む。

 

 ゆっくりと、注射器から押し出される液体が酸素を含んだ血液と共に体中を巡る。

 

 俺はその光景を監視カメラで、テキーラを口に含みながら笑みに満ちている。

 これから【永遠の少年】を手に入れた人間の狂気の沙汰が垣間見えるからだ。

 

 その映像を録画してお前らに見せてあげようと思う→ 【ここをクリック!!!】

 

 軽傷遊びの全貌1/2

 

 映像の中で四人の少年が、興奮気味で自分の躰を見ていた。

 

「これで俺ら不老不死だよな。ずっとこのまま【永遠の少年】として生きれるんだ」

 谷川の躰は興奮により、震えが止まらなかった。

 

「不老不死じゃないよ、ただ、外見年齢が上がらなくなった事だよ」

 向井が谷川の言葉に補足を加える。

 

「マジか!! スゲースゲー」

 豊部が、馬鹿丸出しの感想を呟く。

 

「こんなに安価な薬で良いのかな?」

 飛田は、変化のない体の感覚に違和感を覚えていた。

 

 四人の中で向井だけが、いつもより無口で俯きがちになっている。

 

「なんか実感沸かないな」と、豊部が気の抜けた声で呟く。

 

「そうだな、もっとこうアクション系の映画みたく、血流から激痛か快楽か変化に伴う代償みたいな。感覚があるのかと思っていたな」

 谷川は腕の注射痕に血液の点が、浮き出てくるのを黙って眺めていた。

 

 すると、その痕がどんどん塞がっているような感覚が自身の腕に起こる。

 

「おい、おい何か腕が凄く変な感じなんだけど」

 騒ぎまくる豊部、その興奮気味な呼吸音が変体オヤジみたいに、ハァハァと気持ち悪くなる。

 

「あっなんか痒い」

 とっさに飛田が注射痕を撫ぜるように掻く。すると痕が消えていた。

 

「消えてる!!!!!」

 

 向井以外は、同時に騒ぐ。

「個人差があるみたいだな」

 笑いながら向井は、ズボンのポケットから消毒液と絆創膏を取り出し応急処置をした。

 

 まるで自分は治らないと予感してたように。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ここで映像は途切れた。

 

 さて、良いところで映像が途切れてしまった事に最初にお詫び申し上げます。

 すいませんでした。

 

 いつもは、こんなに頻繁にミスしないのだが、この時はトラブルが立て続けに起こってしまった。

 

 ここで体育館裏の二階の窓外に貼り付けてあった監視カメラが、風の影響か分からないが落下して壊れてしまった。

 しかも体育館裏に仕掛けてあった数十個の監視カメラ全てだ。

 

 多分原因は、前に話した協力者が俺の指定した通りの手順を踏まずに貼り付けたみたいだ。

 普通だとこんな事故は無い、絶対無い。

 

 だから餓鬼は嫌いなんだ。

 

 それから、俺は急いで現場に急行したんだ。

 

 しかし急行したのは、いいが肝心の彼らの姿が無い。

 

 そう俺は、見逃してしまったんだ、俺のテンションはガタ落ちだ。

 

 「こうなったのも餓鬼を信用した俺が悪い、餓鬼が俺の言う通りに動く訳が無いんだ。子供というものは無責任な奴が大半を占めるからな」

 

 俺は、こうなれば飛田を脅しても事の詳細を聞こうと思い、スマートフォンに入っている俺独自に作り上げたシステム、番号アプリを経ち上げた。

 インターネット上に書き込まれた電話番号を全て読み込み、少しでも検索キーワードに引っかかった番号を提示してくれるシステムだ。

 

 ネット購入する者は、必ず電話番号と名前と住所を打ち込む。

 つまり、名前で調べ住所で特定させれば、番号なんて直ぐに分かるんだ。

 

 このアプリケーションを作るのが一番苦労した。

 全財産の半分を資金にしてプログラマーたちにプログラムを組んでもらったんだ。

 

 そのアプリで彼の、番号を特定し控えて近くの公衆電話まで足を運んだ。

 そしてドアを開け、その番号に電話する。

 

 

トゥルルル  トゥルルル  耳慣れたコール音が鼓膜を震わす。

 

 しかし、幾度と待てど相手は電話を取る事はしなかった。

 

―――――――――――――――――― 俺は完全に奴らを見失った ――――――――――――――――――――――

 

 3月12日 あれから11日間、俺は彼らを探した。

 それぞれの家を見張ったり、行きそうな所を回ったり。

 しかし、家は飛田しか知らない、学校内の協力者もそんなに親しくないとの事で情報が無い。

 

 ただ無意味に時間を浪費してしまった。

 

 しかし、意外な情報元から吉報が届いた。

 

 今日向井を見たという情報が舞い込んできた。

 

 情報元は、SNSで向井ファンの女子が居場所を呟いていたんだ。

 

 個人情報が漏洩しやすい現代のネット環境に感謝しつつ、現場に急行した。

 駅前のカフェで向井を見つけたと表記されてた。

 

 俺は行き着くまで彼が、その場に居るか心配だった。

 

 だが向井は、まだ駅前のカフェの中で、ココアを飲んでいた。

 

 しかし少し前の彼とは、印象が違うみたいだった。

 

 目の下にクマが出来、少し痩せたみたいで、何かぶつぶつ呟いていた。

 

「アイツ等はドが過ぎたんだ、あんなのは友情じゃない。じゃあ本当の友情って何だ?」

 向井は自問自答の嵐だ。

 

 俺は奴の狂気が垣間見て胸の鼓動が高まった、自分でもクレイジーだと思う。

 

 俺は向井がカフェから出てきた瞬間を狙って、後ろから首筋に護身用で販売されているスタンガンを押し当てる。

 電撃が舌打ちのような唸り声を響かせ、向井を襲う。彼の躰は痙攣を幾度となく繰り返し倒れる。

 

「おい! 飲み過ぎだぜ」等と周りの通行人にバレないように俺は一芝居うち、アパートに連れ込む。

 

 向井が目を覚ます。辺りを見渡して自分が今どこにいるのか、何をされるのか不安な表情を浮かべる。

 

「ここは、僕は何をされるんだ。もしかして誰か見てたのか? まて僕は何もしていない! 寧ろ被害者は僕だ」

 

 目隠し、手錠、椅子の前足に両足をつながれ。

 惨めな吠え面を見せる向井、美少年顔が見るに耐えない醜悪な表情へ変わっていた。

 

 俺は向井の左肩を力の限りローキック。椅子は勢いよく倒れ、向井の右半分に多大なる衝撃を与える。

 

―― 痛い ―― 

        ―― 止めてくれ ―― 

 

―― ぐふ ――

        ―― 止めてくれ ――

 

―― やめろ ――

          ―― オイ ――

                   ―― 止めろ ――

                            ―― 痛っ ――

 何度も何度も向井の悲鳴を、激高を、狂乱を、音色を、絶望を、泣き顔を、何度も何度もテキーラを呑みながら。

 

 あの時は楽しかった。

 ただの暴力、理由も無い暴力、紛れもない犯罪行為。

 

 本当にALA売人で良かったと思ったね。

 顧客は耐えないし、お金も掃いて捨てる程稼げる。

 ―― そして趣味も充実する ――

 

「さてと、アレ? 向井君生きてる? 君に聞きたい事があるんだよ。君たちの友情は、どういう風に破綻したの?」

 向井は半殺しされ、膨れ上がった頬が邪魔で喋れない様子だった。それをみた俺は、可哀想になり頬をナイフで切り裂いてやった。

 血がドロドロと、滴り床一面真っ赤に染まるかのような勢いで流れるようだった。

「流石にヤバイか」

 

 ALA売人特典真骨頂。

 ALAの純度を濃くする事により、より不死に近くなる治癒力を持てる。

 つまり、半殺しの向井を元通りの姿に戻す事が出来る。

 

「もう普通の人間には戻れないけどな」俺は、薬を取り出し注射器に吸い上げる動作の最中に向井を鼻で笑う。

 そして、向井の首元にある太い動脈に純度BクラスのALAをブチ込む。

 

 それで、お前らにも楽しんで貰いたいのでALAの高速治癒を動画に撮影した。

 心臓の弱い奴は、視聴しないでくれ、マジ凄いからさ。

 

 グロ注意→「高速治癒 純度Bクラス」をクリック!!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 映像に映る華奢な少年、両手両足縛られ椅子に腰を下ろしている。

 

 カメラ正面に顔や体全体が判別出来るくらい、緻密な位置で固定されているようだ。

 

「もう、ひゃめてくだふぁい」

 少年の頬は腫れあがり、上手く喋ることもままならないみたいだ。

 

「痛い、もうボクは友達なんかいらない。人は仲良しを強制したがる、これだけ同じ時間を過ごしたのだから運命を共にしてもいいだろってな具合に」

 先ほどまで聞き取りづらかった喋りが、見違える程改善されていく。

 

 体中に黒く痣のような打撲も、まるでコーヒーにミルクが投入されたように色が薄れていく。

「まっまさか、ボクの体にALAを入れたのか? 僕が友情を捨て彼らを見殺しにした。心苦しい選択を無駄にするような事を」

 

 カメラの右端にアロハシャツの20歳半ばの男が、不気味な笑みを浮かべながらひょうきんに返事する。

 

「うん、そだよ。どう? どんな気持ち? 後何が君達に起こったの? 全部教えてくれたらALAの効力を無しにする方法教えてあげる」

 

 男は、子供みたいに燥ぎながら少年の前髪を鷲掴み、彼の頭上に引っ張る。

 

「痛い痛い痛い、話すからやめろ」

「分かった」

 

 男は、掴んだ手を離し少年を解放する。無論拘束はしている。

 

 そして、もう一つ無論→男の目は黒い帯上のラインがあった。

 しっかりとAV男優のようなモザイク加工が・・・。

 

「3月1日に僕ら四人は、ALAを体に服用させたんだ。言葉可笑しいだろうけどALA使用する時は注入よりも服用を使うらしいんだ。体に飲ませるって意味らしい」

 少年は丁重に説明してくれている、ぷち。

 

 そして、ここで映像が途切れた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 見てくれてるお前らの為に俺が、掻い摘んで話をしてやるよ。

 映像見せてもいいんだが、何て言うか一から説明されると面倒臭いだろ?

 

 さて、日付に合わせて話させて頂くぜ。

 

 まずは、3月1日だ。

 カメラが壊れた後、特に大きな事件は起きず各々帰宅したんだと。

 そして彼らは、自分の体の治癒について知りたくて自傷行為をしてしまったんだ。

 向井はメールでの情報しか知らないみたいで、俺にメールを見せてくれた。

 

 それじゃ載せて行くぜ。

2102年 3月1日 18:02

[豊部 淳平]

[件名] すげー すげー すげーよ

 Σ(゚д゚lll)驚愕 (つд⊂)感動 (゜∀。)疑問

 俺すげー驚いた。だってさ、傷がみるみる治るんだぜ。

 感動したよ。本気(マジ)でwwww

 後は疑問なんだけど、こんな都合の良い薬なら大きな副作用って

 無いのかな? めっちゃ心配なんですけどwwww

 向井ちゃん、ALAについて調べてみて。お願いしますm(_ _)m

 

2102年 3月1日 18:25  

[谷川 聡]

[件名] 何十回も腕を切り刻んで傷つけたのに元通り

              本文

凄いよ向井、何度試しても元に戻るんだ。

ヽ(´▽`)/なんかラノベの主人公になった気分だぜ!!!

昔怪我した部分とか治らないから、多分薬を飲んだ状態から変化の

干渉を受けないんじゃないかな?

お前どう思う?

2102年 3月1日 18:54 

[飛田 勝海]

[件名] 僕、家事を手伝ってたんだけど火傷してしまったのに直ぐ完治した

               本文 

向井君、僕おっちょこちょいだから直ぐ怪我とかしてたんだけど

薬のおかげで薬を飲んだ時から、傷が増えていない。

僕もあえて傷つけたりしたんだけど、軽傷ぐらいなら直ぐに治るよ。

谷川君が「ALAを使おう」と言った時は、凄く嫌な気分だったけどさ。

今はALAに感謝してるよ。

 

 ここまでは、想像通りの展開だ。俺は向井のスマートホンをひたすらスクロールする。 ―― この先の展開が狂気じみてるからだ ――

 

2102年 3月2日 18:12

[豊部 淳平]

[件名] すげー すげー すげーよ

 Σ(゚д゚lll)驚愕 (つд⊂)感動 (゜∀。)疑問

 俺すげー驚いた。だって、傷が直ぐに治るんだぜ。

 感動したよ。本気(マジ)でwwww 漫画みたいだぜwwww

 後さぁ、疑問があるんだけどさ、こんな都合の良い薬って絶対大きな副作用

 あるよな? めっちゃ心配なんですけどwwww

 向井ちゃん、ALAについて調べてよ。頼みますm(_ _)m

 

2102年 3月2日 18:32  

[谷川 聡]

[件名] 何十回も腕を切り刻んで傷つけたのに完璧元通り

              本文

凄いよ向井、何度試しても元に戻るんだ。 ありえないよww

ヽ(´▽`)/なんかラノベの主人公気分だぜ!! 楽しいFu~☆彡

でも、やっぱ昔怪我した部分とか治らない、多分薬を飲んだ状態から変化

しないんだな?  お前どう思う?

2102年 3月2日 19:02 

[飛田 勝海]

[件名] あのさ、今日って3月1日だよね?

               本文 

 向井君、僕おっちょこちょいだから、日にち間違えたのかな?

 お母さんや兄弟から、今日3月2日って言われたんだ。

 僕さ昨日薬使ってから後の3月1日の記憶が無いんだ。

 向井君さ、覚えている? 昨日の事?

「ALAの副作用による狂気の始まり、始まり」

 俺はスマートホンを弄りながら、ニヤリと頬を緩め満面の笑みを浮かべた。

2102年 3月3日 18:01

[豊部 淳平]

[件名] MAXすげーよ

 Σ(゚д゚lll)驚愕

 (つд⊂)感動 

 ゜∀。)疑問? 俺すげー驚いた。

 だって、物凄く早く傷が治るんだぜ。

 感動したよ。

 本気(マジ)でwwww 漫画みたいだぜwwww

 でもさ、疑問があるんだけどさ、こんな都合の良いALAって絶対大きな副作用

 あるよな? めっちゃ心配なんですけどwwww マジ死ぬとか嫌よ俺

 向井ちゃん、ALAについて調べといてよ。頼みますぜm(_ _)mぺこり

 

2102年 3月3日 18:17  

[谷川 聡]

[件名] 何十回も腕を切り刻んで傷つけたのに完璧元通り|゚Д゚)))

              本文

 凄いよ×2 向井、何度試しても元に戻るんだ。 恐いくらいありえないよww

 ヽ(´▽`)/なんかラノベの主人公気分だぜ!! これぞ厨二病Fu~☆彡

 でも、やっぱ昔怪我した部分とか治らない、まぁこの傷は俺の俺である証だけどなwww

2102年 3月3日 19:22 

[飛田 勝海]

[件名] あのさ、卒業してから今日ってどれくらい経ったんだっけ?

               本文 

 向井君、僕おっちょこちょいだから、日にち勘違いしてるのかな?

 お母さんや兄弟から、今日3月3日って言われたんだ。

 僕さ昨日薬使ってから後の記憶が無くなってるんだよ。。

 向井君さ、覚えている? 昨日の事? ってかタイムトラベルしてない?

2102年 3月4日 18:52

[豊部 淳平]

[件名] オイ!! 向井 俺変なのかな?

 家族から不審な目で見られるんだ。

「昨日は卒業式良かったよなww 担任の高橋なんてさ涙溢れながらさww」

 卒業式の話しただけで、家族皆黙りなんだよ。

 俺さALAの副作用について調べたんだよ。

 そしたら知恵袋とかに書いてた衝撃のリスクがあったんだよ。

「ALAは使用した時から記憶を新たに覚える事が出来なくなります。記憶力が無くなる訳では無く、脳が記憶として変わろうとするのでALAの効能で元に戻す・・・」

 とかなんとか記載されてたんだよ。

 向井ちゃん、俺らヤバイんじゃない?

 ALAについて俺に分かりやすいように説明。頼みますm(_ _)m

 

2102年 3月4日 19:02  

[谷川 聡]

[件名] 緊急招集《゚Д゚》 とにかく明日桜の木の下に集合

              本文

 ちょっと相談したい事があるんだよ。頼む皆来てくれ

2102年 3月4日 19:21 

[飛田 勝海]

[件名] あのさ、今日って3月1日だよね?

               本文 

 向井君、僕おっちょこちょいなのかな、日にち間違えたのかな?

 お母さんや兄弟から、今日3月4って言うんだ。

 それに昨日や一昨日僕同じようなメール送ってるよね?

 もしかしてALAの副作用かな? 助けてよ向井君

 このメールのやり取りは、3月9日まで同じような内容のメールが続く。 ――――――――――――――――――――

 

 彼らはループ状態に陥っていた。

 そして、やはりとでも言うべきか谷川が自分自身に日々メモを残す事で、微かな記録作り、それを伝い一度皆で集まる機会を何とか取り持った。

 

 これは、ALA使用者が良く使う技だ、『明日の自分自身にメモを残す』この延長線上が俺の『記録(ブログ)』だ。

「俺もALA使用した時は、凄く苦労したな。谷川のように頭がキレる奴でもなかったから今の記憶の取次方に辿り着くまで大変だったな」

 少し昔の自分に酔いつつも、俺は向井のスマートホンから手を離し、彼に投げ飛ばすように返却する。

 

 

「ちょっ、俺まだ縛られているって」

「あっ、忘れてた。ごめんねぇ」

 

 

 

 ―― 空を舞いフローリングに激突する高性能小型電話機 ――

 

 

 

「別にアレぐらいじゃ壊れないよ・・・多分な」

 場違いな照れ隠しの際に頭を掻くような行動をしながら俺は微笑する。

 

 

 

「それよりも続きを読者は所望してるんだよ、俺のキャラたちなんて誰も望んでない。今はな」

 俺は向井を思いっきり『再度』右『SIDE』を蹴り飛ばす。

 

 

 

―― ぐぁぁぁ、やめろぉぉぉぉ ――

   ―― 分かった、分かったから ――

 

 

 

「さて、よりリアルに映像を残したい俺は、ビデオカメラにお前を収めるから動くなよ。後な、お前五月蝿い、大家さん恐いから静かにしろよ」

 

 ―― 我ながら無茶を言う ―― そう俺は、心の中で呟いてみる。

 

 

 誰だって物語の中心核にいる主人公orヒロインになりたい。

 誰だって永遠の若さを欲してる。

 誰だって無機質な人格なんかで収まりたくない。

 

 

 君だから選んだ、貴方しか出来ない、彼は天才だよ。

 

 

 そう褒められてたい、俺は褒められて伸びる子だ。

 

 

 誰だって子供の時、今の自分の姿なんて想像だにしなかっただろう。

 

 

 いつだって ―― 現実は非常で ――

―― 未来は墓標で ――

                 ―― 過去は過剰で ――

 

 それでもストレスを何かで発散しながら今を何とか生きている。

 そして、仲良し四人組も何とか生きて少し踏み間違えただけで現実が壊れてしまう。

 

「さて、向井お前喋れお前が友達に何をしたのか?」

「僕は何もしてない、ボクがしたんだ」

「ん? 何言ってんだ?」

 

 性格の分裂、責任転嫁の為の自己防衛本能。

 

「分かった、ボクが何をしたのか教えてやる。僕がな」

 彼は狂ってる、それだけは分かる、彼の独壇場が始まった。

 

 

――――――――――――― さて、ここからラストに向けて彼が喋り通す→ここをクリック♡ ――――――――――――――

 

 

 

 3月10日 午前9時

 僕は目覚めた。朝起きて夜間の仕事で疲労気味の母親へ囁かな朝食を作るべく台所に立つ。

 

 一唱三嘆、眉目秀麗、質実剛健、才色兼備、智勇兼備、聖人君子。

 

 どんな角度からでも僕を褒める大人たちの声が、耳に残る。

 完璧にして美少年、まさにパーフェクト。

 

 毎朝、母親や父親の為に親孝行として朝食作りに休みの日は家事を手伝う。

 近所の評判は上々。

 

 こんなエリート真っしぐらな僕が、こんな明眸皓歯な美のカリスマな僕が、最近『罪』を犯してしまっていた。

 

 仲良し四人が友情を永遠にする為の契。

 ALA使用を僕は裏切ってしまった。

 

 ALA使用者は【日本の全人口6割を占めてる】そうネットで説明されていた。

 その6割の人間が、社会的差別にあっていると彼らは知らなかった。

 

 肉体の時間を止める。

 しかしALAは、完全に止まっている訳では無い。

 外見だけ若いまま、それがALAを使用しない、出来ない人々から嫉妬を買った。

 

 成功者が少しのスキャンダルにより、揚げ足を取られるようにALA使用者が起こす事件は取り分けマスコミから批難の声を誘発していた。

 

 このまま完璧な僕の人生の設計を、世間知らずな餓鬼の友情の為に、狂わす訳にはいけない。

 

 卒業の日、ALA使用に見せかけて僕が体に投与したものは、【血漿】だ。

 投与したからといって何も変化なんか起こらない、血液の成分の一部だからだ。

 

 僕はALAを使用してない、だからあの日奴らに会うのが非常に怖かった。

 

 3月10日 約束の午後3時、体育館裏の桜の木の下。

 

 谷川が誰ひとりとして欠けずに来てくれた事に、喜びを笑顔で表現してメモを見ながら話を進めた。

「あーなんか変な気分だろうが、俺ら9日間会ってなく今日久しぶりに再会した訳だが」

 

「昨日ALA使用したばかりだと思うが、周りが皆口を揃えて俺らを騙そうとしてる意味も無いしな」

 豊部が首を傾げながら、不服気味に納得しているように見せる。

 

「僕さ谷川君みたいにメモ残すようにしたら、何となくだけど時間は進んでいるんだなと分かるよ」

 飛田が、シンプルなポケットメモを取り出して自慢げに豊部に見せる。

 

「俺もやろうかな」 

 ポケットメモを羨ましそうに眺めながら豊部が言う。

 

「でも向井君は、凄いよね記憶しっかりあるんだもんね」

「・・・うん。ほらインフルエンザの予防接種も個人差あるじゃん、予防してるのに病気になるみたいなさ」

 飛田の返答に微妙な答えを出してしまう僕は、何とも誤魔化すのに限界を感じていた。

 

 そんな中、他人が創った台本を読むみたいに谷川は、メモ用紙を指示を読み上げる。

「まずは、俺らの治癒力を確かめたいと思う。これから俺が一人一人、このバタフライナイフを使い手首を切る。それで現段階のALA効力の残りを測る」

 

「そのぐらいなら楽勝でしょ」

「来る前に一度自分で試したよ」

 

 飛田と豊部は全然怯えてない、実際に治癒している事実があるから自身が持てるのだろう。

 

 だがしかし、僕は【ALAを使用していない】つまりは確実に治癒される訳が無い。

 そんな分かりきった事実に僕は身を震えるしか出来ない。

「皆治癒できるのは、分かりきってるだろ。谷川次進めろよ」

 俺は焦りを感じろられないように強気で進行を早めようとヤジを飛ばす。

 

「それもそうだな、えっと次だな次っと」

 谷川は特に不満無く進行を早めた。

 

 彼が皆のALA効力を測りたがるには、それなりの理由があった。

 谷川が四人を集める前に、ALAを定期的に使用しないと副作用で死ぬとネットに情報が落ちてあったからだ。

 自分の身勝手な友情論の為に仲間が危険な副作用に侵されるなんて、耐えれなかった。

 だから自分の持ってるALAを定期的に仲間に渡そうと考えていた、その為にはどうしても治癒の個人差を知っておかなければならなかった。

 

 つまり彼は、こんな奇妙な薬に手を出した事に後悔してるようだった。

 

 

 

 それに引き換え僕は、自分以外の事なんてどうでもよかった。

 

 頭の中は常に、この場を切り抜けようと必死に平和的解決を模索していた。

 

 だが、反らせない運命が恐れていた事態を引き起こす。

 

「次は治癒しやすい左側を火傷させてみよう、傷が治るのは分かったしな。俺から行くぞ」

 谷川の感覚のズレた発言で僕は背筋が凍る恐怖を味わう。

 彼は、コンビニで購入したであろう100円ライターの火力レバーを全開にして、左手首部分を炙り出す。

「あー温かいな、これにも慣れたな」

 谷川の異常とも取れる反応。

 ALA使用者の精神的副作用とでも言おうか、『痛みが快楽に変わり、頻度が増えるにつれ感覚が麻痺する』つまり痛いを忘れる。

 実際は凄く痛いのだろうが、その痛みにマンネリ化を覚え飽きてしまう。

 そして更なる刺激に飢える。

 ALAの隠された副作用であり、使用者は自覚なく常人と価値観が変わる。

 それが社会的批判を受けた理由の一つでもあった。

 

 

 そして僕は初めて知る、人間が焼ける臭い。

 火葬場などで臭いがすると言う輩が世には沢山いる。

 

 しかし、実際 爪や髪を燃やした時のようなタンパク質による悪臭がする訳でもない。

 

 言うならば【無臭】臭うとすればライターの燃料の臭いだけ。

 

「俺これ何度もやったよ」

 豊部は流れ作業をするように、自分の左手を炙る。

 海苔を炙るように、両面とも均等に真っ黒に。

 

「僕した事ない、だって恐いんだもん」

 そう飛田は心配になりながらも、左手首にライターの火を当てる。

 

「熱っ!!!!!!」

 通常の反応に俺は、少し嬉しくなり頬を緩めた。

 

――――――――― それも束の間、飛田は叫びだす、ライターから手を離し急いで近くにあった給水器から水を出して冷す。 ――――――――――――――

 

 どうやら火傷が直ぐに治りにくいらしい、時間が経てど経てど火傷は引いてかない。

 

「痛いよ、凄くヒリヒリする。谷川君、助けてよ」

「待て、治癒には個人差がある。少し経過を見よう」

 

 谷川は飛田の左手を掴むと、まじまじと眺める。

 

 飛田の手首が、フツフツと皮膚が泡立つように湧き上がる。

 小さな破裂音が耳の鼓膜を伝い、その場に鳴り響く。

 

「飛田、お前が持って来た薬、ALA微量と塩を混ぜたバッタモン掴まされたんだな」

 谷川は飛田を哀れんだ視線で見つめ、溜息を吐く。

 

 彼らの考えが、少しづつ狂気地味ている、僕は恐れを抱く。

―― 記憶は3月1日から少しも変化していないのに、一日終わったらリセットされてるのに、心に残る『狂気』は今なを彼らを蝕んでいる ――

 

 そして僕の順番がやって来る。

 

「ほら、次向井の番だぜ」

「向井君、大丈夫。痛みなんて直ぐ慣れるよ」

 

 当たり前のように谷川が、俺にライターを手渡す。

 彼の目は、捨てられた猫を虐めるように冷めた目をしていた。

 友達の手を焼く行為に罪悪感は抱いてない、そんな冷徹な目だ。

 

「ああ、分かった」

 僕は覚悟を決め皆と同じように左手の手首を焼こうと、ライターを持っていく。

 

 ALA使用していない僕は、火傷は直ぐに治らない ―― 普通の人間だ ―― 治ると確証が有れば簡単にライターを発火させる動作が出来るだろう。

 

 それに加え、僕は嘘つきで、裏切り者で、自己中で、卑しくて、糞野郎な人間だ。

 ライターに火を点けるよりも、『彼ら』を『殺す』行為を優先した。

 

 ALAを使うフリをする時から、薄々この運命になる覚悟はあったのかも知れない。

 

 ワリと、カンタンに、ジブンは、サツジンキになれた。

 僕は『ボク』に責任を押し付けた。

 

――――――――――――――――――――――――――― グサ、ドカ、バキ、ムキ、ボリ、バリ、ベキ。

 

 まず、ボクは谷川を殺す。ライターを使い殺す。

 ファイヤーダンスのような曲芸みたく、口にガソリンを含み奴目掛けて火を噴く。

 奴は全身火傷を負う、だがそれだと数分で完全治癒してしまう。

 殺せないので彼の首の右面目掛け、あらかじめ耳の裏に隠して置いた6センチの長釘を突き刺す。

「向井何してんだ」

 苦痛を耐えながら谷川は膝末く。

 

 そして、ボクは精一杯力を込めて突き刺した釘目掛けて蹴る。

 釘は奥まで刺さり、谷川は何も喋れなくなる。―― つまり彼は、死んだ ――

 一時的にだが、谷川は死んだ。

 

「一人目死亡、次豊部」

 

 唖然と仁王立ちしてる呑気な豊部にボクは、谷川がALA使用の為、持っていた注射器を出して『空』のまま心臓目掛け彼に突き刺す。

「うううっ、何してんだよ向井」

 見事に刺さる、グサッと、ブスッと。

 豊部は動くと酷い激痛が胸を過ぎるので、手出しできない状態だ。

 躰はボクになすがままだ。

 注射器には、大量の空気を吸い込ませ、それを彼にブチ込む。

 心臓に空気が注ぎ込まれ、得体の知れない圧迫感に襲われる、それが鼓動の邪魔をしだす。

「ぐぁぁぁ、おえぇぇぇ止めろ!!!!」

 人生で味わう事の無い痛みが彼を侵食する、そして数秒後動かなくなる、まるで屍のようだ。

 

                           ―― つまり、また殺した ――

 

「次、飛田だ。アレ? どこ行ったんだ? オイ逃げんなよ」

 目の前から飛田は消えていた。

 逃げた方向も分からない、二人の屍の横でボクは泣きじゃくる。

 

 サツジンキと化した『ボク』は、晴明に頭が冴えてる。

 頭が狂ったよりも、心が狂う。

 

 喜怒哀楽が激しくなり、秒刻みに表情が変わる。

「人を殺した時の表情の作り方が分からない」

 

 体育館の裏の桜の木。二人はそこに眠る、五体を切断され中身を抜き出され。

 二度と復活出来ないよう、永遠に。

 

 俺は空を見上げ自分を憎む、人格が二つに割れた。

 『常識人』と『殺人鬼』の自分。

 

 俺は心に化物を飼ってしまった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「気持ち悪いな、お前。最高にイカれてやがる」

「だろう? 僕はボクで、ボクは僕で、両端の気分は破綻し落胆する」

 

「そろそろ潮時か、面白い狂気話が聞けたよ。有難う」

「・・・ボク酷い友達の殺し方したかな?」

 

 古びた家賃4万前後の1DK。

 そこで売人の俺は見極める、ALA使用者は【それぐらいでは死なない】

 

「その答えは彼らに聞けば良い、もうすぐ此処に来る」

「そうか、生きてるんだ。なぁALAってさ【まじもんの不老不死】なんじゃねぇ?」

 

 俺は荷造りをしつつ向井の素朴な疑問に答える。

 

「まだ、途中段階だよ。でも殺すには特殊な殺し方(やりかた)があるんだよ」

 

 俺は荷造りし終わると大きな黒いカバンを右肩に掛け、向井に手を軽く振る。

 

 それは、『さよなら』でも有り『意識を確かめる仕草』でも有る。

 

 挨拶が終わると向井は、俺の仮住まいに一人きりになる。

 

 俺は古びた建造物の在り来りな階段を下りながら、少年三人とすれ違う。

 

     ―― 嫌、詳しく述べるなら、肉塊二人と一人の健常者だ ――

 すれ違い際に俺は彼らを見る、その肉塊は少しづつ躰を修復している。

 

 実に吐き気を促すような気味悪さで、それを平気で両手で抱えてる貧弱な少年も異質な恐怖を抱かせる。

 

 肉塊が気持ち悪いのは、分かるが普通の少年が恐怖なのは、衝撃を覚える経験だと俺は興奮した。

 

 一つ目のALA小噺が幕を閉じる。

 化物を生み、狂乱娯楽を魅せられ、ますます売人にドハマりしてしまった。

「狂乱こそ人間の賛美される美徳と思うんだがな」

 

 夜は濃く、昼は酷く、薬に溺れ、娯楽に溺れ。

 憂き世の楽しみとは、今日蘭(狂乱)の華に尽きる。

 

 そう、この時の俺は愉快に詩を綴ってた。

 仲良し四人組 完

 

ヽ(*´∀`)ノ一旦Tchの掲示板に戻ります。

ここ→http://tch.ala\mdr.com/ アクセス×2


 
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