No.61812

じまんのジンジャークッキー

みぃさん

クリスマスのほのぼの恋愛ショートです。

2009-03-06 12:26:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1085   閲覧ユーザー数:1042

「♪ジングルベール ジングルベール すずがなる~」

 

 

ジンが無邪気に笑いながらツリーの周りをどかどかと大きな音を立てながらまわってる。

 

 

「こ~ら! あんまりうるさくするとサンタさんきてくれないよ!!」

 

 

私はクリスマスのごちそうを作りながら、ジンを注意する。

 

 

「サンタさん、いつくるの?」

「ジンが眠ってるころかな」

「え~サンタさんに会いたい!」

「サンタさんは忙しいの!」

 

 

サンタ役のお父さんは今日も仕事が忙しい。

夜中にならないと帰れないって連絡があったから、きっとジンは待っていられない。

それは仕方のないこと。ジンと私のために、一生懸命働いてくれるのだから。

 

 

「おねいちゃん、おなかへった~」

「はいはい、もう少しでできるから待ってね」

 

 

そろそろクッキーも焼きあがる時間かな。

時計を見ると7時ちょうど。

そっか。クラスのみんながパーティーを始める頃だ。

 

 

…と、思った自分を戒めるために、頬をたたく。

いけない、「羨ましい」なんて。

ジンと二人のパーティーだって、楽しみだったんだから。

 

 

お母さんが死んでから、私はジンの母親代わり。

学校が終わったらすぐにジンを保育園に迎えに行って、家事をする。

毎回友達の誘いを断るうちに、いつの間にか誘われることもなくなった。

クリスマス会だって、私一人がいないことに気づいてくれる人はきっといない。

 

 

 

 

 

そう思ってたんだけど、たった一人だけ、声をかけてくれる人がいたことに、逆に驚いてしまった。

 

 

「クリスマス会、出ないのか?」

 

 

クラスの中心にいる男の子。たぶん、幹事をやってるから気にしてくれたんだろうけど。

 

 

「もしや、彼氏と二人?」

「ううんまさか! 弟と、二人」

 

 

そっか、とつぶやくと、彼は机に開いていた私のお手製お菓子のレシピ帳に目を向けた。

 

 

「これは?」

「弟がお菓子好きだから、いろいろ考えて作ってるの。これはクリスマスに作ろうと思ってるジンジャークッキー。毎年作ってる自慢のクッキーなんだ」

「なんだ、授業中真剣にノートとってると思ったらこんなの書いてたのか」

「だって、眠くなっちゃうんだもん」

「俺は堂々と寝るけどな」

 

 

あはは、と笑ったら、笑顔を返してくれた彼。

人気があるのも、頷ける。

 

 

「クリスマス会もさ、時間あったら、ちょっとでも顔出せよ」

 

 

その言葉に応えられないのは悲しい。

でも、仕方のないことだから。

 

 

 

 

 

クッキーが焼きあがった。

冷ますためにテーブルに置く。

 

 

「ジン、そろそろご飯にしようか」

「うん!!」

 

 

ジンはどんな手抜きの料理だって、おいしいといって食べてくれる。

だから、今日は思い切り手間をかけて作ったんだ。

食べてくれる人がいるって、すごく幸せだ。

 

 

ピンポーン

 

 

チャイムにジンが反応した。

 

 

「おねいちゃん、きっとサンタさんだよ!!」

「違うよ、きっと新聞の勧誘とか…」

 

 

それでもジンは、ウキウキとした顔で玄関に走り出した。

 

 

 

 

 

「ほら、おねいちゃん、サンタさんがきてくれたよ!!」

 

 

玄関には、真っ赤な服を着た人が確かに立っていた。

 

 

「君がジン君かな。はいこれ、いい子にしてたからサンタさんからプレゼントだ」

「ありがとー!! おねいちゃん、これみて」

 

 

ジンが差し出してきた大きな箱とサンタを見比べる。

なぜ、彼が?

 

 

「どうしたの? パーティーは?」

「いや…あのさ、自慢って言ってただろ? ジンジャークッキー、食べたいと思って…さ。だめかな?」

「いいんだけど…そのカッコでここまできたの?」

「あぁ! 似合うだろ、これ!! …はっくしゅん!!」

 

 

もう、外は寒いのに…

 

 

「ちょうどうちもパーティーにしようと思ってたの。調子に乗ってたくさん作っちゃったから、上がって食べていって。できたばっかりだからあったかいよ」

「やった! おしかけてみるもんだな」

 

 

はははと声をあげる彼の笑顔が、やっぱり、好きだ。

 

 

「急にごめん。これはお前にプレゼント」

「え? そんな、悪いよ」

「お前用なんだから、もらってくれないと困るんだよ」

 

 

 

 

 

プレゼントなんて、いらないのに。

だって、来てくれた彼が私にとっての一番のプレゼント――


 
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