No.610251

ALO~聖魔の剣~ 第23剣 スィアチの置き土産

本郷 刃さん

第23剣です。
前回の話からそのまま続いています、キリトさん大活躍w

どうぞ・・・。

2013-08-19 10:15:39 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:9624   閲覧ユーザー数:8848

 

 

 

 

 

 

 

第23剣 スィアチの置き土産

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

酒場を訪れた俺は片っ端からNPCに話しかけたが、

『硬い稲光を放ちし魔の剣』の情報については得られず、別の宿屋にあるレストラン兼酒場へと向かった。

けれど、そこでも大した情報が得られないと思われたが、NPCの店主に話し掛けるとそれらしき情報を得ることが出来た。

 

「霜の巨人族の1人、『大公スィアチ』の居城が残っているんだが、

 そこに闇のエルフの鍛冶師『ヴェルンド』が連れていかれたらしいぞ。

 ソイツなら強い剣を鍛えられると聞いた」

「そうか、ありがとう」

 

NPCとはいえこの世界の住人であることに変わりはないので、礼を告げておいた。

しかしヴェルンドか……確かこのゲームにおいて『偽剣カリバーン』を作った人物だったはず。

そのカリバーンをスィアチが虐殺系(スローター)クエストの報酬にしていたが、結局は誰も手に入れられなかったのだ。

そのヴェルンドが何故そこに留まっているのかは知らないが、

もしかしたら何かの手掛かりになるかもしれないので向かってみるとしよう…。

ヴェルンド、彼の伝説については詳しく覚えてはいないんだよなぁ~。

物語が『ヴェルンドの歌』というもので、妻にワルキューレがいることくらいか…。

こんなことならティアさんからもう少し詳しく聞いておけば良かった。

そう思いながら街の外へ向けて歩みを進めようとしたところ、

ある一件の店の前に立ち尽くしているワルキューレの女性が目に付いた。

どうやらその店は鍛冶屋のようだが、閉まったままになっているらしい。

もしやと思い、女性に声を掛けてみる。

 

「どうかしたのか?」

「夫がこの店を営んでいたのですが、私がこのヨツンヘイムを離れている間に店が閉店してしまったようなのです。

 夫を探そうにも、私がここを離れたのは数年前なので…」

 

その会話の後、女性の頭を上に“!マーク”が出現した。これはクエスト開始の分岐だ。

ここで彼女を助けようとする言葉を発すればクエストが始まり、逆に断るような言葉を発すれば始まらない。

ここは取り敢えず、受けてみよう。失敗すればまた挑戦出来るだろうし…。

 

「なら、俺が一緒にその人を探そう」

「まぁ、ありがとうございます!」

 

―――クエスト・[戦乙女の帰還]開始

 

俺の視界の左上にクエストのスタートログが流れた。

 

「私の名は『Hervor Alvitr(ヘルヴォル・アルヴィト)』と申します」

 

彼女が自身の名を告げると、俺の前にパーティーへの加入ダイアログウインドウが出現した。

HPゲージがイネーブルのNPCか……ということは、彼女の夫と会うにはモンスターとの戦闘があるということか…。

 

「夫の名前はなんていうんだ?」

「鍛冶師でヴェルンドという名前です」

「……………はい?」

 

不意打ちな展開に思わず間抜けな声を出してしまった…。

そのあと、意識を正常に戻した俺は彼女と連れだって、

今はこの地から去っていったスィアチの居城『スィアチの館』へ向かうことになった。

 

 

目的地への移動途中、小型のモンスターと戦闘になった。

 

「ハァッ!」

 

俺は純白と翡翠の剣『イノセントホープ』を右手で持ちながら振るい、ダメージを与える。

その一方で、俺は彼女の方がある意味で凄いと思った。

 

「ヤアァッ!」

 

さすが、ワルキューレであるヘルヴォル・アルヴィトは兜と甲冑と白鳥の羽衣を身に纏い、

大きなランスを持ち、なんと天馬に跨りながら勇ましく戦っている。

この地下世界における飛行は水晶の陽光により可能となったものの、飛行時間制限があるので長くは飛べない。

そんな中で彼女のように天馬に跨っての飛行などは羨ましい。

乗せてもらえたりするのだろうかと気になったり…。

 

「「セェイッ!」」

 

最後に俺が敵を斬り裂き、彼女がランスで突き刺したことで、モンスターを葬ることができた。

彼女の戦闘能力は高い、まぁワルキューレなのだから当然なのだろうけど。

特に風属性魔法と聖属性魔法の威力は高く、支援魔法の効果も高い方である。

実に心強いと言えよう。

 

彼女の移動は俺に合わせたものになっていたので、歩いて移動すれば同じ速度で天馬が歩き、

飛行で移動すれば同じ速度で飛行していた。

何度か小型モンスターとの戦闘を繰り返し、動物型邪神達とエンカウントしないように慎重に進んだことで、

大体1時間過ぎくらいの時間で目的地であるスィアチの館へと辿り着いた。

 

「デカいな…」

「ここに、あの人が…」

 

さすがはこのヨツンヘイム最大の城塞なだけはある、いや城塞だったと言うべきかもしれない。

もう城主であるスィアチどころか、部下の霜の巨人族すらいないのだから。

そういえば、このスィアチの館(城だけど…)には前に偽キャリバー入手の依頼があったので、

他のプレイヤーが侵入済みのはずだが、内部の調査などはどうなっているのだろうか?

ま、抜け駆けになるから今回は用事だけを済ませよう。

俺とヘルヴォル・アルヴィトは巨大な門を潜り、城内へと入った。

 

「もう一度言おう、デカいな…」

 

改めて呟いたその言葉、スリュムヘイムと同じように天井までがかなり高いのだ。

上は目指さずに牢獄があると思われる地下に向かおう、ヴェルンドは連れて行かれたそうだからな。

敵の居ない城内を進む俺と彼女は地下への階段を探し周り、20分ほど時間を掛けることで、ようやく牢獄へと辿り着いた。

 

霜の巨人族がいなくなったにも関わらず、ジメジメとした空気と嫌な雰囲気に包まれている。

雫が滴り落ちる音は溶けた雪や氷の音なのだろう。

奥へと進む俺とヘルヴォル・アルヴィト…そんな時、カンッ、カンッ、カンッ、という何かを叩く音が聞こえてきた。

 

「なんの音だ…?」

 

その音の正体を確かめる為に、俺達は音の聞こえる奥へと足を進める。

次第に大きなる音は、何処かで聞いたことのある音……仲間の誰かがよくやる…。

そう、ルナリオとリズがやる……っ、鉄を叩く音だ!

それに気付いた俺は駆け出し、彼女もまた駆け足で俺の後に続く。

そして辿り着いた牢獄の一室、鉄格子の中には髪と無精髭がボサボサのまま長々と伸び、ボロボロの服を着ている男がいた。

彼は俺達に気付いた様子もなく、ただ黙々と金槌で鉄を叩いている。

 

「ヴェルンド!」

「む…私の名を知っているのは誰だい?」

 

ヘルヴォル・アルヴィトが夫の名を呼び、男はそれに反応した。ということはやはり彼が…。

彼女は自身の兜を外し、顔を完全に露わにする。

 

「お、おぉ…キミは、ヘルヴォル・アルヴィト…! かえって、帰ってきてくれたのか…!」

「っ、はい、そうです! 街に戻ってきたのですが、店が閉まっていて、

 この妖精の剣士様が貴方の居場所を教えてくださり、ここまで案内していただいたのです!

 さぁ、このような場所にいつまでも居らず、私達の家に帰りましょう?」

 

再会を喜ぶ2人。しかし、彼女の最後の言葉を聞いたヴェルンドはその表情を暗くした。

 

「それは、出来ない…。私はここから動くことは出来ないのだよ…」

「そんな…なぜっ、なぜなのですか!?」

「私は、スィアチに腕輪や剣を作らされる為にこの地へ連れて来られた。

 奴は私を逃げられなくする為に、膝の腱を切り、この牢獄へと閉じ込めた」

 

なるほど。だから奴らが居なくなったあとも、この地で延々と鉄を打ち、過ごしていたのか。

まてよ……ということは、彼をここから連れ出すには…。

 

「剣士様。よろしければ、彼を外まで連れ出してもらえませんか? そこからは私の天馬に乗せられますので…」

 

だよな……はぁ…。俺と彼女で鉄格子の扉を破壊し、中で座り込んでいる男を背負い、俺達は牢獄から出た。

その時にパーティー加入ダイアログが現れ、『Volundr(ヴェルンド)』が加わったのは言うまでもない。

 

地下から入り口に戻ってきたが、なんと入り口は堅く閉ざされていた。

 

「なんで入口が閉まっているんだ…?」

「他の出口を探すしかありませんね…」

「それならば、確かこの城の最上…玉座の間が外に直接続いていたはずだ。そこからなら出られるかもしれない」

 

俺とヘルヴォル・アルヴィトの言葉にヴェルンドがそう言った。

おそらくはそれしかないだろうし、嫌な感じはすれども絶望的なものでもない。

彼の言葉に従い、俺達は階段を上って城の最上階である玉座を目指した。

階段は多かったものの、迷うものではなくすぐ側にあったお陰で、難なく上がることが出来た。

あとは脱出あるのみ……と、いきたいところだったんだが…、

 

―――クアァァァァァッ!

 

そうは問屋が卸してくれなかった。

玉座の間に着いた俺達を待っていたのは、外へと続く大きな窓の前に立ち塞がる巨大な大鷲だった。

名を〈Mirage Of The Thiazi(ミラージュ・オブ・ザ・スィアチ)〉といい、意味は『スィアチの幻影』、HPバーは2本、

おそらくスリュムほどではないだろうが、あのスリュムヘイムにいた邪神ボス並みの強さではあるだろう。

問題はコイツに対してどのように戦うかということだ…。

プレイヤーは俺1人、仲間のパーティーの内残る2人はNPC、しかも1人は移動不可……どうしろと?

 

「俺がタゲを取るしかないか。あとは彼女が上手く動いてくれることに期待しよう」

 

そう言葉にしてから背負っていたヴェルンドを柱の陰に隠し、『イノセントホープ』を片手に敵へと向かう。

 

「さて、どこまでやれるかは分からないが、頑張って戦ってみよう」

 

NPCつきとはいえ、ソロでボスに挑むなんてSAO以来だろうな……さぁ、楽しむとしよう!

 

 

「でやぁっ!」

 

まずは接敵して一撃、力を込めた一撃を斬り下ろしてダメージを与える。

減少率からして防御力はそう高い方ではなさそうだ。

まずは防御と回避に徹して攻撃パターンを見切らなければならない。相手は(くちばし)による突きまたは連続突き、

そして足による踏み付け(ストンプ)と引っ掻き、巨大な翼による叩き付けが主な打撃のようだ。

俺はヘルヴォル・アルヴィトの支援魔法(バフ)を受け、タゲを取りながら少しずつ攻撃を見極め、僅かだが反撃も加えていく。

どうやら巨人並みの攻撃力はあるが、防御力が高いわけではない。

彼女の援護攻撃の陰で順調にダメージを与えていく。

 

「はぁぁぁ、はっ!」

 

彼女はスペルを唱えた後に魔法を放った、あれは結構な威力のある風魔法のはず。

与えられるであろうダメージに一瞬期待したが、それが無駄であることに気付かされた。

なんとその風魔法は無効化された。

 

「ちっ、風属性無効化の能力か!」

 

奴は風耐性持ちのようだ。

水妖精族(ウンディーネ)が水魔法耐性に強いように、水竜が水系魔法をHP回復吸収に変換するように、このボスは無効化の類らしい。

だが彼女の魔法には聖属性の魔法もある、そちらに期待しよう。

そして、奴の攻撃パターンの中で俺が絶対に回避しているモーションがある。それは奴が足で俺を掴もうとする動きだ。

これは多分、足で掴んだまま締め上げ、ダメージを与えるもののず。そう考えると絶対に捕まるわけにはいかない。

 

最初の攻撃パターンを完全に覚えたのでタゲを取りつつ、ヘルヴォル・アルヴィトと共に反撃を行った。

しかし、丁度1本目のゲージが半分を超えたところで新たなモーションが加わった。

奴は大きく翼をはためかせ、俺達に向けて突風を巻き起こした。

 

「「くっ!」」

 

自然と防御姿勢になってしまい、隙が出来てしまう。そこにさらなる追撃が仕掛けられてきた。

 

―――キュアァァァァァッ!

 

その雄叫びと共に強烈なブレスが奴の口から放たれた。

防御態勢のままなので直撃してしまったものの、凌ぐことは出来た。けれどHPが半分近くは持っていかれたぞ…。

すぐさまポーチに収めているポーションを取り出して飲み干し、瓶は投げ捨てる。

問題はワルキューレである彼女のダメージの方だが……その時、彼女の身体を光が包み込んだ。

俺の身体も光に包まれている、これは回復魔法のライトエフェクトだ。

もしやと思い背後を振り返ると、柱の陰からヴェルンドが魔法を使用したようだ。

そういえば、彼はエルフだったな…それならば納得だ。

彼は距離が離れたところにいるから、少なくとも先程のブレスも受けることはないだろう。

 

再び攻撃へと転ずる俺とヘルヴォル・アルヴィト。

俺達のHPが半分を切るとヴェルンドが回復魔法をかけてくれるので、なんとか戦闘を進めることが出来ている。

現在までの攻撃パターンは全て見切ったので、回避と防御によってノーダメージで戦えている。

けれどそれも、一旦ここまでだろう。既に奴のHPバーは1本目を切ろうとしているからだ。

 

「てぇあっ!」

 

彼女の槍による突きの攻撃が命中したことで、ボスのHPバーは残り1本となった。

さて、どんな攻撃パターンが加わるのか、そう思っていた瞬間…!

 

―――ギュアァァァァァッ!

 

今度は耳を(つんざ)くような雄叫びを上げ、翼をはためかせて空中へと飛び上がった。

 

「ここで空中戦かよ!」

 

悪態を吐くしかない。なんせここは建物の内部、言い換えればダンジョン内と言っても過言ではない。

その為、俺は飛行を行うことが出来ないので空中戦は行えない。

魔法スキルも多少は上げているが、遠隔攻撃魔法ではないので地上からの砲撃も行えない。

唯一空中戦が行えるのはヘルヴォル・アルヴィトだけだが、彼女だけではおそらく無理だ。

ならば、方法は1つ…!

 

「っ、おぉぉぉっ!」

 

気合いの声を上げながら、俺はボスが空中で羽ばたいている近くにある柱を思いきり駆け登った。

久しぶりの、SAO以来の秘技・《壁走り(ウォール・ラン)》だ。

ALOでは軽量級妖精の共通スキルとなっている。

 

「せぇぇぇあっ!」

 

―――ギュアッ!?

 

一定の高さまで登り詰めた俺はそのまま柱から蹴り上がり、ボスへと飛び掛かりながら剣を振るった。

すれ違いざまに斬りつけたことで俺は奴の背後へと周り、そのままボスの背中に着地、攻撃を重ねる。

単独での飛行も可能であるヘルヴォル・アルヴィトもランスで突き刺したり、聖属性魔法を放つことでダメージを与えていく。

奴は羽ばたいているので碌な反撃も行えず、ダメージを受けていたが、

ついに体を回転させて急降下を行ったことで、俺を振り落としてきた。

彼女も同時に俺の近くへと降下してくる。もう1度、奴のいる高度へと柱を駆け登ろうとした時、

空中にいる奴が大きく息を吸う体勢を取った。

アレは不味いっ!そう思い、すぐさま防御姿勢を取った。

 

―――ギュラアァァァァァァァァァァッ!

 

そして強烈な咆哮と共に放たれたブレスは先程までのものとは違い、ダメージを与えるだけの風のブレスではなかった。

風の刃(カマイタチ)が混ざっている、斬撃(スラッシュ)ダメージまでも付加されているのだ。

思わず顔が引き攣るのがわかるが、そんな風に思っている場合じゃない。

どうせ防御姿勢ではブレスは捌けないし、いっそのことカマイタチだけでも防いだ方がマシだな!

 

「ふっ、はっ、せぃっ!」

 

俺はヘルヴォル・アルヴィトの前に立ち、こちらに向かってくるカマイタチを斬り裂く。

なんとか終わった空中からのブレス攻撃だったが、かなりのダメージを受けたな…。

奴のHPバーは残り半分に近いが、いまの攻撃が来たらさすがに防ぎきれないぞ…。

 

「そこまでだ、スリュムの影よ!」

 

柱の陰に居たヴェルンドがいつの間にか這い出てきたのか、柱に凭れ掛かりながら魔法を発動した。

瞬間、火炎の嵐が巻き起こり、大鷲に向けて放たれた。

 

―――ギュガアァァァァァッ!?

 

それが直撃したことで大ダメージを負い、怯みが入ったことでそのまま墜落した。

今がチャンス! 墜落した奴に一気に接近し、攻撃を与える。

斬りつけ、斬り下ろし、斬り上げ、突き刺し、薙ぎ払い、ヘルヴォル・アルヴィトもランスで連続攻撃を決めていく。

そして12連撃ソードスキル《スターサークル・レイン》を放つことで、ついに奴のHPは0になった。

 

「ふぅ……疲れた…」

 

俺は空中に現れた[Congratulation]の言葉を後目に、溜め息を吐いてそう言った…。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

ふぅ~、やはりオリジナルの話は書くのが大変でした・・・これがまだ数話ほどつづくw

 

オリジナルキャラといいますかオリジナルNPCとして、以前にウルズが言っていたヴェルンドとその妻を登場させました。

 

そして珍しくヴェルンドに関する神話がうろ覚えなキリトさん、こういうこともある!

 

それではまた次回で・・・。

 

 

 

 

 


 
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