No.605293

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第八十九話 うーみー!!

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-08-05 00:07:33 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:24962   閲覧ユーザー数:22246

 「うーーーー…んんっ!!!」

 

 ここは海鳴市の海水浴場である砂浜。海水浴目当てで大勢の人達が海で戯れている。

 思いきり背伸びをするのはアースラ管制官のエイミィさん。

 

 「いやーーーっ!夏といえば海だよねーーー!!」

 

 「…そうですね」

 

 「むうーー、元気無いぞ勇紀君」

 

 「いや…いきなり『海に行こう』なんて言われたもんですから。俺の予定も確認せずに」

 

 それに俺、この間はリンスとプールで泳いだからなぁ。

 

 「う…それはゴメンって」

 

 「はあ…もういいですけどね。けど海鳴の海水浴場で良かったんですか?」

 

 下手したら銀髪トリオと遭遇するんだけど。

 

 「多分勇紀君が心配してる事だったら大丈夫だよ。勤務シフト調べたけどあの3人なら皆管理局の仕事でミッドに行ってるからね♪今日遭遇する事はまず無いよ(ついでに言うとなのはちゃん達やシュテルちゃん達も。今日は私が独占独占♪)//」

 

 その言葉を聞いて一安心した。

 朝一にエイミィさんから『今日は絶好の海水浴日和だね!だから海に行こう!勿論勇紀君は大人モードでね♪』なんてメールが届いたもんだから多少愚痴りながらも俺は付き合っている。

 ていうかシュテル達と暮らし始めてから海鳴の海水浴場に来たの初めてだな。

 近場なのに来るのが4年ぶりとか……。

 

 「じゃあ早速着替えよう!そして遊ぼう!!」

 

 「そうですね」

 

 「あ、何なら一緒に着替える勇紀君?お姉さん、サービスしちゃうよー♪////」

 

 「……………………」

 

 ああ…もうエイミィさんはこの暑さで頭をやられてしまったのか……。

 

 「えっと…どうしてそんな哀れむ様な目で見るのかな?」

 

 「エイミィさん。無理はしないで下さい」

 

 「一体何の心配!!?」

 

 「エイミィさんの頭の心配です」

 

 「ズバッと言われた!!?私は平常運転中だよ!!」

 

 平常運転出来てる人が年頃の男を着替えに誘うかね?

 

 「ちょっとした冗談のつもりじゃん(2割程度は)////」

 

 「冗談じゃ無かったらマジで心配しますけどね」

 

 「むう~…勇紀君はクロノ君みたいに慌てたりしないなぁ」

 

 いや、俺とクロノを比べられても…。

 クロノだったら慌てたり……するんだろうなぁ。顔を真っ赤にして反論しそうだ。

 

 「クロノ君なら『ぼ、僕をからかうのもいい加減にしろ!!』とか言ってきそうなのに」

 

 「あ、俺もそう思いました」

 

 「だよねー」

 

 マジメだからねぇ…クロノは。

 

 「勇紀君もクロノ君みたいな反応すると思ったんだけどなぁ」

 

 やや不満そうに言葉を漏らすエイミィさん。

 

 「はいはい。そんな事より早く着替えに行ったらどうです?」

 

 「そうだね。そうするよ」

 

 更衣室へ向かうエイミィさんを見送ってから俺はシートとパラソルを設置し始める。

 既に俺は家で海パンに履き替えてからきたので、後はシャツと短パンを脱げばいつでも泳ぐ準備が出来るのだ。

 後はスイカ。どう見てもスイカ割りをやるための物。これはエイミィさんが用意してた。スイカを割るための棒も目隠し用の手ぬぐいもちゃっかり準備してくれている。

 

 「(俺が来れなかったら1人で来る気だったのかな?)」

 

 うーん…それは無いかな。

 エイミィさんにだって知り合いはいっぱいいるだろうし、別の人と来ただろう。

 せっせと準備しながら短パンとシャツを脱ぎ、ブルーシートを敷いてパラソルを設置し、私物が盗難に遭わない様、軽い人払いの結界を掛けてからブルーシートの上に置く。

 そして空気入れを使って浮き輪を膨らませ始める。

 『シュコッ…シュコッ…』と音を立て、膨らみ始める浮き輪。

 

 「…ふぅ…ふぅ…」

 

 膨らましていると息が上がり始める。

 ……暑い。

 日差し…もう少し弱くならないかなぁ?

 

 「おっ待たせーー♪」

 

 そこへ着替え終わったエイミィさんの元気な声が届く。

 

 「どうかな勇紀君?この水着…似合ってるかな?////」

 

 エイミィさんが着ている水着は花柄がプリントされたビキニタイプ。

 

 「似合ってますよエイミィさん」

 

 「そ、そう?良かった~(3時間掛けて選んだ甲斐が報われたよ~♪)////」

 

 素直に褒めるとエイミィさんは照れた表情を浮かべる。

 

 「(しかしエイミィさんって意外にスタイル良いんだな)//」

 

 普段着ている私服や管理局員の制服姿の時はそれほど大きく見えない胸も今みたいに解放的な水着姿だと、本当の大きさが分かる。

 腰も細く脚もスラッとしてるし、着太りするタイプなんだなエイミィさんは。

 

 「あ、あの勇紀君…そんなにジーっと見られると恥ずかしいよ////」

 

 「あっ、すみません//」

 

 慌てて視線を海の方に向ける。ついでに中断していた浮き輪の膨らまし作業を再開する。

 しばらくして浮き輪を膨らませた後、砂浜でエイミィさんと一緒に準備体操をする。

 

 「さあて……しっかりと身体もほぐした事だし、早速やろうかスイカ割り!!」

 

 「えっ!!?泳がないんですか!!?」

 

 拳をグッと握って宣言するエイミィさんの言葉に聞き返す。

 何のための準備体操だったんだ?

 

 「最初に泳がなきゃいけない決まりなんて無いでしょ?」

 

 「いや、そうなんですけどね…」

 

 俺は浮き輪を使ってプカプカ浮くのが好きなんですよ。プールや川、海へ行く時は絶対浮き輪持っていくし。

 

 「海に入るのなんて後でも出来るんだからまずはスイカ割りやろうスイカ割り!!」

 

 「……了解ッス」

 

 テンションが上がって来てるエイミィさんのご要望通り、スイカ割りの用意をする。

 エイミィさんの視界を手ぬぐいで塞ぎ、肩を掴んで

 

 「ていっ!」

 

 「わわわっ!!」

 

 グルグルと回す。

 しばらくして止まったエイミィさんは立ちながらもフラフラとしている。

 スイカも砂浜の上に設置して準備完了。

 

 「オッケーですよエイミィさん」

 

 「う、うん。じゃあ始めようか(あうー…まだ頭がクラクラするよ)」

 

 エイミィさんは少しずつ前に歩き始める。

 と言っても俺から見たら見当違いの方向に進んでいるが…。

 

 「エイミィさん、少し右に行き過ぎです。進路を左に取って下さい」

 

 「左?こ、これぐらいかな?」

 

 少しずつ進行方向を修正していくエイミィさん。

 

 「ストップ!!そのまま前進です!」

 

 「このまま真っ直ぐだね!よーーーっし!!」

 

 本人は更に気合を入れ、前に進む。

 お?結構良い感じに進んでるぞ。スイカへと近づくエイミィさん。

 

 「エイミィさん、そこから4歩進んでから振り下ろして下さい」

 

 「4歩だね?1……2……3……4っと、ここだ!!」

 

 『えーい!!』という掛け声と共に大きく棒を振り下ろすエイミィさん。

 『バゴッ!』という音と共にスイカは割れる。

 

 「おお!一発で割る事に成功したよ♪」

 

 手ぬぐいを外し、目隠しを解いてスイカを見たエイミィさんは嬉しそうに言う。

 

 「おめでとうございます」

 

 「ふっふーん♪これぐらい余裕余裕♪」

 

 「じゃあ、そのスイカとっとと食べます?」

 

 「そうだね。このまま放置なんて出来ないし」

 

 割れたスイカをエイミィさんと2人で処理する。

 

 シャクシャクシャク…

 

 うーん……塩があれば良かったな。けどよく冷えていて美味しいからいいか。

 

 「で、スイカ割りの後の予定は?」

 

 スイカを頬張りながらエイミィさんに尋ねる。

 

 「え?海に来たんだから泳ぐでしょ?」

 

 『何言ってんの?』みたいな表情で返された。だって、準備体操してすぐにスイカ割りやるもんだからまだ泳がずに別の事でもするのかと思ったんだもん。

 

 「(でもやっと海に入れる)」

 

 まずは適当に泳いで身体を動かしてから浮き輪を使ってプカプカと浮こう………。

 

 

 

 ~~エイミィ視点~~

 

 私は今、浮き輪を用いて緩々な表情を浮かべている勇紀君をすぐ側から見る。

 

 「勇紀君、もう泳がないの?」

 

 「しばらくしてから泳ぎますよ。現在は休憩中です」

 

 うーん……ゆっくりするのも悪くはないけどやっぱ2人で来たんだから一緒に遊びたいよね。

 

 「(……そうだ!!)」

 

 トプンッ…

 

 私は静かに海の中へ潜る。勇紀君は気付いていないみたいだった。

 そして勇紀君の真下に来ると

 

 「(うしししし♪)」

 

 水中で『うしし』と軽く笑った後

 

 「(うりゃ~~~♪)」

 

 「うわわわわっ!!?」

 

 そのまま勇紀君の身体を押し上げる。

 

 ドボンッ

 

 浮き輪から落ちた勇紀君は

 

 ザバアッ

 

 「ぷはあっ!!」

 

 すぐさま海面に顔を出した。

 

 「あはは、どう勇紀君?ビックリした?」

 

 「い、いきなり何するんですか!?」

 

 勇紀君はややお怒り気味。

 

 「だってー、私がヒマなんだもーん」

 

 「だからって人をいきなり突き落としますか?」

 

 『むう~』とジト目で睨んでくる。

 

 「休憩なんて後でいいでしょ?もっとはしゃいで遊ぼうよ!」

 

 「いや、さっき言ったじゃないですか。『しばらくしたら泳ぐ』って…」

 

 「エイミィさんはその『しばらく』まで待てないんだよ」

 

 先程まで勇紀君が使っていた浮き輪が波に流されていきそうだったので、浮き輪を掴んで勇紀君に返す。

 

 「はあ…分かりましたよ。で、何して遊ぶんです?」

 

 「そうだねー……お?」

 

 私の視界に映ったのは遊泳可能な範囲を示すブイだった。

 

 「あそこのブイまで競争ってのはどうかな?」

 

 「別に良いですけどあの辺までいくと結構深いですよ?」

 

 「大丈夫だよ。泳ぎが苦手なんて事はないから」

 

 「いえ、俺が心配してるのはそういう事じゃなくてですね…」

 

 「それより勇紀君、浮き輪は置いて来た方が良いんじゃない?それ使って泳いだりしないでしょ?」

 

 「……そうですね…置いてきます」

 

 「あ、ちなみに負けた方は『今日のお昼奢り』っていうのはどうかな?」

 

 「奢りですか?まあ、それぐらいなら…」

 

 「で、副賞として『勝った方の言う事を何でも1つ聞く』って事で」

 

 「えっ!!?ちょっ!!?」

 

 「よーい…どん!!」

 

 ザバザバザバ!!

 

 私は勇紀君が何か反論してくる前にスタートを切ってブイを目指す。

 勇紀君は浮き輪を置きに一旦戻るだろうからこれでかなり差を開けられる。……ていうか圧勝できるね♪

 

 「(と、とりあえず今度またデートする約束でも取り付けないとね)////」

 

 今度は今日みたいに突然じゃなく事前から約束しておけば勇紀君も文句言わないでしょ。

 うーん…何処に行こうかな?動物園や遊園地、水族館辺りが定番だよねぇ…。

 ……あっ!!映画を観に行くっていうのも良いかも。

 朝から一緒にウィンドウショッピングでもして色々な店を見て回って…。

 お昼ご飯を食べて映画館へ行って一緒に映画を観て……。

 

 「(れ、恋愛重視のラブストーリーがいいかな?いやいや、敢えてホラー系を選んで怖がったフリをして勇紀君にそれとなく抱き着くのも…)////」

 

 わ、悪くない…悪くないよ!!

 私は泳ぎながら次のデートの時のプランを徐々に練っていく。

 ブイにも段々近付いていたその時だった。

 

 ズキンッ

 

 「(えっ!?)」

 

 足に痛みを感じると同時に動かせなくなった。急に足が攣り出したのだ。

 

 「(う、嘘っ!!?)」

 

 私はこの状況に動揺する。ちゃんと準備運動は済ませていたから足が攣る事はないと思っていたのに。

 突然泳げなくなった私の身体は海底に引きずり込まれるかの様にゆっくりと沈んでいく。

 

 「うぶっ!!」

 

 バシャバシャ!!

 

 必死に手を揺らし、誰かに気付いて貰える様に大きく水面を叩くがここから他の人達がいる場所までは距離があり過ぎる。

 体力を無駄に使っただけだ。

 

 「ゴボッ…ブクブク…」

 

 やがて私の顔も水面から完全に沈んでしまい、海の中に潜る格好になってしまった。

 

 「ブクブクブク……」

 

 必死に顔だけでも水面の上にあげようともがく。このままだと…

 

 「(で、溺死なんてしたくないよーーー!!!)」

 

 心の中で叫ぶも状況が変わる訳でも無い。何で私がこんな目に…。

 

 「(これも私がフライングダッシュしてまで勝とうとしたせいかな?)」

 

 息が出来ない状況……段々と意識が遠のいていく。

 

 「(ああ……結局勇紀君とイチャ……つけな……かった…な…)」

 

 そこで私の意識は途絶え、身体は海の底へ沈んでいくのを感じた………。

 

 

 

 「ぶはっ……ごほっ…ごほっ…」

 

 突然胸に感じる強い圧迫感のせいで私は目を覚ます。

 

 「っ!!エイミィさん!?大丈夫ですか!?」

 

 「え?あれ、ここは?」

 

 最初に視界に映ったのは心配そうな表情で私を見ている勇紀君の顔だった。

 

 「えっと…」

 

 私はゆっくり上半身だけを起こす。

 

 「良かった。エイミィさん、自分がどうなったのか覚えてます?」

 

 「覚えて?……確か……」

 

 えーっと…ブイに向かって泳いでいた筈だよね?それで…

 

 「………あ」

 

 そうだ思い出した。泳いでいる途中で急に足が攣ったんだった。

 

 「それで…私溺れて……」

 

 「その通りです。エイミィさん、いきなり沈んでいくからビックリしたんですよ」

 

 どうやら勇紀君はその光景を見て浮き輪を持ったまま私の所まで助けに来てくれたらしい。身体強化まで使って。

 海から砂浜に敷いてあるブルーシートまで私を連れて戻って来た時には呼吸しておらずかなり危ない状況だったとか。

 で、勇紀君が人工呼吸や心臓マッサージを行って適切な処置をしてくれたらしいけどもし、そう言った処置を行ってくれなかったら…

 

 「…今頃、私は新聞の一面記事に載っていたんだね」

 

 「一面は無いと思うんですが…」

 

 ていうかこんな事で新聞に載って有名になんかなりたくないよね。助かってよかったと本気で思うよ。

 

 「あれ?じゃあ競争のご褒美は?勝てたら何でも言う事聞いて貰えたのに…」

 

 あとお昼ご飯も奢りなんだけど、コッチはついでだからどうでもいいんだよね。

 

 「途中で溺れた人が何言ってるんですか。中止になったんだから無効に決まってます」

 

 だよねー。

 

 「とにかく、しばらくは身体を休めて下さい。俺は海の家で昼食でも買ってきますから」

 

 「うん、お願いするよ……っと、勇紀君ちょっと待って!!」

 

 「何ですか?」

 

 腰を上げて歩き出そうとした勇紀君を私は呼び止める。

 

 「ちょっと確認したい事があるんだけど…//」

 

 「はあ…」

 

 「さっき勇紀君が『人工呼吸』と『心臓マッサージ』の処置をしてくれたって言ったよね?それって私の意識が無い内にく、唇を合わせたっていう認識でいいのかな?////」

 

 「……………………////」

 

 勇紀君の頬が赤く染まり出す。

 この反応…言葉には出さなくても肯定してる様なものだよね。

 

 「そ、それに心臓マッサージって事はわ、わわ私の左胸を触ったって事じゃあ…////」

 

 それどころか、も、もも、揉まれてたりとか…。

 

 「さささ、触って無いです!!胸骨を圧迫するためだったので手を置いたのは胸の谷間の部分で………あ……」

 

 「む、胸の谷間!!?谷間に手を置いてささ、触ったの!?私の谷間を堪能したの!!?////////」

 

 「そそ、そんな…堪能なんてしてないです!!エイミィさん助ける事で頭が一杯だったから邪な思いは抱きませんでしたから!!コレ本当ですから!!!////////」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶ様に言う勇紀君。

 でも私の顔も多分真っ赤だと思う。自分から聞いておいて何だけど…。

 

 「と、とにかくお昼買ってきますからエイミィさんはここから動かずにしっかりと休んでいて下さい!それじゃ!!////」

 

 早口で言うと勇紀君はこの場から逃げ去る様に走って行ってしまった。

 

 「(うう~……人工呼吸……マウストゥマウス……キス……)////////」

 

 そんな勇紀君の後ろ姿を見送りながら自分の唇を左手の人差し指でなぞり

 

 「(む…胸の谷間にも……)////////」

 

 右手で自分の胸を水着越しに軽く揉む。決して小さくは無いのだが勇紀君に好意を持つ子は皆スタイル良い子が多いし…。なのはちゃん達も中学生の割に発育は良い方だしね。

 …自分のスタイルに自信が無くなってきたよ。

 

 「(それにしても…何でキスした時に限って私の意識は飛んでたのよぅ…私の馬鹿馬鹿!!)////」

 

 しかも私ファーストキスだったのに。もっと甘い雰囲気の時に捧げたかったのに。

 私は自分の足が攣った事を激しく呪うのだった………。

 

 

 

 「「ふう~……ご馳走様でした」」

 

 海の家で買ってきてくれた昼食を食べた私と勇紀君。

 勇紀君が戻って来た時も最初は気恥ずかしかったけど昼食を食べている内に段々と普段通りに戻る事が出来た。

 私は水筒のお茶を紙コップに注ぎ、勇紀君に手渡す。

 

 「はい勇紀君。冷たいお茶だよ」

 

 「あ、ありがとうございます」

 

 紙コップを受け取り、グイッと飲んで喉を潤す勇紀君。

 

 「さて…と、勇紀君、ちょっといい?」

 

 「何です?」

 

 「私達の周囲に認識阻害の魔法張ってくれないかな?」

 

 「はい?何故ですか?」

 

 「説明はするからまずは張ってほしいかな」

 

 首を傾げ、疑問に思いながらも認識阻害を張ってくれる勇紀君。

 

 「これでいいですよね。それでわざわざ認識阻害使わせた理由は何なんです?」

 

 「うん。実はコレ(・・)を塗ってほしいなあ…なんて////」

 

 私はカバンの中から日焼け止めのクリームを取り出し、勇紀君に見せる。

 

 「日焼け止めですか?」

 

 「うん。私は肌を焼くつもりは無いから」

 

 「それは分かりますけど何で俺が?」

 

 「だって、勇紀君以外にここに頼める人いないじゃない。それに自分で背中に塗るのは大変だし」

 

 手の届かない場所だってあるし、満遍無く塗れないし。

 

 「だからコレ塗って!お願いします!!」

 

 両手で日焼け止めを勇紀君の方に差し出して頭を下げ、お願いする。

 

 「……上手く塗れるか分からないですよ?」

 

 そう言いながら渋々といった感じで日焼け止めを私から受け取る勇紀君。

 私は背中を勇紀君の方に向け、上の水着を外す。

 

 「って、何でいきなり上を外すんですか!!?////」

 

 「水着着けたまま塗る訳にいかないじゃない////」

 

 「そ、それはそうですけど…////」

 

 それに勇紀君の認識阻害のおかげで周囲の人達には私が水着を外した瞬間は見られてないし。

 よっこいしょ…っと。

 私はブルーシートにうつ伏せになる。

 

 「じゃあお願いね////」

 

 「わ、分かりました(落ち着け俺。エイミィさんはうつ伏せで寝そべってるんだ。前は見えない前は見えない…)////」

 

 私が横になって少しすると

 

 ピトッ

 

 「んっ…//」

 

 背中に少しひんやりとしたモノが触れる。

 そして背中の中心から少しずつ広げる様に日焼け止めを塗っていってくれる勇紀君。

 

 「ん……ふぁ……////」

 

 あ…このひんやり感が何だか気持ち良い。

 

 「んしょ…んしょ…」

 

 勇紀君は肩から腰の辺りまで丁寧に塗ってくれる。ムラが無い様均等にじっくりと…。

 

 「うーん…こんなものかな?」

 

 勇紀君が手を止める。どうやら塗り終わったみたい。

 

 「エイミィさん、終わりましたよ」

 

 「ありがとう。それじゃあその…ま、前もお願いしていいかな?////////」

 

 「は?」

 

 私は首を捻って顔だけ後ろに振り返り、大胆なお願いをしてみる。

 

 「つ、ついでに…ね?////////」

 

 「いやいやいやいやいや!!!無理!!流石にそれは無理です!!!////」

 

 慌てた様子の勇紀君が言い返す。

 

 「むぅ…良いじゃん別に塗ってくれたって//」

 

 「無理と言ったら無理です。日焼け止め返しますから自分で塗って下さい。俺、後ろ向いてますから//」

 

 日焼け止めを私の傍に置き、後ろを向きながらお茶を飲み出した勇紀君。

 私はそのまま起き上がってゆっくりと勇紀君に近付き

 

 「えい♪」

 

 ギュウッ!

 

 「ぶふっ!!!?」

 

 勇紀君の背中に抱き着いた。勇紀君は飲んでいたお茶を吹き出す。

 

 「お・ね・が・い♪エイミィさん、勇紀君に日焼け止め塗ってほしいな~♪////////」

 

 自分の胸を押し付ける様に強くしがみつく。

 

 「ちょちょちょちょっとエイミィさん!!!?背中に何か柔らかいモノが当たってるんですけど!!!?(む、胸が…)////」

 

 「そりゃあ、勇紀君に抱き着いてるからね♪胸が当たるのも仕方ないよ(ていうか当ててるし♪)////////」

 

 ふにゅっ…ふにゅっ…

 

 「うう…いくら水着越しだからっていってもそんな安易に異性に抱き着くのはどうかと思いますけど?////」

 

 「え?私今水着着けてないけど(・・・・・・・)?」

 

 「…………ナンデスト?」

 

 もしかして勇紀君は私が水着を着直してから抱き着いたと思ってたのかな?

 

 「じゃ、じゃあ今この背中に当たってるのは?////」

 

 「私のな・ま・ち・ち♪////////」

 

 『うりゃうりゃ』と一層私の胸を意識させる様に押し付ける。

 

 「……………………」

 

 ありゃ?勇紀君、沈黙しちゃった?

 

 「勇紀君?おーい?」

 

 「…………ぶはっ////////」(ブシャーーーッ)

 

 「うええええええっっっ!!?」

 

 突然勇紀君が盛大に鼻血を噴き出して気絶する。

 や、やり過ぎちゃった!?

 私の方に体重を預ける様にもたれかかりながら勇紀君は目を回している。

 

 「と、とりあえず横にしてあげた方がいいよね?」

 

 私は勇紀君の頭を自分の膝の上に乗せてタオルで顔を拭いてあげる。顔に付着していた鼻血は綺麗に取れた。

 

 「勇紀君…純情(ウブ)だねぇ」

 

 普通の男の子なら『ラッキー♪』とか思ってもう少し、胸の感触を堪能したりするものじゃないのかな?

 

 「自分に向けられる好意に対して超鈍感な上に私の事を意識させようと直接接触させたら気絶なんて…」

 

 どう攻略すれば良いんだろう?

 勇紀君という難攻不落の存在を再認識して私は溜め息を吐く。

 

 「むー…ただの知り合いだという認識ならここまでやる女の子なんていないんだから、少しぐらい私の気持ちに気付いてくれてもいいんだぞ。このこの!」

 

 勇紀君の頬を指で突きながらぼやく。

 『うー…』と呻きながら眉を少し顰める勇紀君。

 

 「(そ、そう言えば私、意識が無い間に勇紀君に唇を奪われたんだっけ…)////」

 

 勇紀君の唇を見て人工呼吸してくれたらしい事を思い出し、サッと頬に赤みが増す。

 

 「(い、今は勇紀君の認識阻害がある訳だし…)////」

 

 私はゆっくりと勇紀君の顔に自分の顔を近付けて彼の唇を奪う。

 

 「んふっ……////////」

 

 しばらくは彼の唇を堪能し、顔を離す。

 

 「こ、これでお相子…だね////////」

 

 気絶してる勇紀君の顔を見ながら言う。

 

 「ていうか他に誰からの邪魔も入らないなら……もっと堪能しても良いよね?////」

 

 再び勇紀君の唇を頂こうと顔を近付けるが

 

 「あの~…」

 

 突如、第三者の声が聞こえたので私は勇紀君の顔に近付けていた自分の顔をバッと引き離した。声の主は見知らぬ女性…水着を着ているコトから私達と同じで海水浴に来た人だろう。

 

 「なな、何でしょうか!?(うー…良い所だったのに)////」

 

 「その…水着はちゃんと着けた方がいいですよ。注目、浴びてますから…」

 

 「え?」

 

 女性に言われて初めて周りの視線が集まっている事に気付く。視線の主は全員が男性。コッチ……というか私をガン見している。

 

 「(何で!?勇紀君が認識阻害をちゃんと……あ)」

 

 そう言えばその勇紀君自身は気絶してるんだった。そのせいで認識阻害の効力が無くなったんじゃあ…。

 それに人払いの結界も張っていたらしいからよく考えたらこの女性が私達の方に来ていたのも可笑しい。

 つまり、今の私達の状況は周りにはっきり認識されていて私は上の水着を着けていない…

 

 「お…おい。アレ見ろよ////」

 

 「すげー堂々と見せてるな////」

 

 「だが見せびらかせる余裕も分かるぜ////」

 

 「ああ…あの胸の色といい形といい、ピンク色の先っぽといい、どれを取っても素晴らしいの一言に尽きる////」

 

 「大き過ぎず小さ過ぎずの手頃なサイズ……まさに美乳と呼ぶに相応しい////」

 

 「お、俺ちょっとトイレに…////」

 

 「ぼ、僕も…////」

 

 そんな会話が聞こえてきて

 

 「い……嫌ああああああああああっっっっっっ!!!!!!!!!!////////」

 

 私は両手で胸を隠し、絶叫を上げるのだった………。

 

 

 

 ~~エイミィ視点終了~~

 

 「グスッ…」

 

 目を覚ました途端、最初に見たのは水着を着直し、バスタオルを肩から掛けて体育座りをしながら俯き、グズっているエイミィさんだった。

 何かあったんだろうか?

 

 「あの…エイミィさん?」

 

 「…………何?」

 

 暗いな!?

 『いつものテンションは何処へやら?』といった感じだ。

 

 「あの…俺、いつの間に寝てたんでしょうか?何か記憶が少しあやふやで…」

 

 ただ寝る直前に良い思いをしてた様な気がしなくもないんだが霞がかった様にどうも思い出せない。

 

 「……しかも覚えてないし。私の行動は何だったの?(溺れたり大勢の人に胸見られたり…今日はツイてないよ。キスぐらいじゃ元が取れてないよ)」(シクシク)

 

 「はい?」

 

 俺に聞こえないぐらいの小声で何か呟いたけど?

 

 「…もういいよ。勇紀君、とりあえず今日は帰ろう?」

 

 エイミィさんは立ち上がるも、肩を落としながら更衣室へ向かって歩き出した。

 

 「……本当に何があったんだ?」

 

 俺の呟きに答えてくれる者は誰もいなかった………。

 

 ~~あとがき~~

 

 服越し、水着越しならかろうじて耐えられる勇紀でも生乳を直接押し付けられたら流石に無理なのです。今の勇紀では理性が切れる前に意識が飛んじゃいます。

 それと前話のコメント数がとんでもない事になっていてビックリです。しかも結構混沌としていたし……。

 今後も混沌になり過ぎるのもアレなので匿名での投稿を拒否にするかどうかちょっと検討中です。

 


 
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