No.601741

IS−インフィニット・ストラトス−黒獅子と駆ける者−

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!

2013-07-26 10:30:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:537   閲覧ユーザー数:519

 

 

 

episode194 変わってしまった気持ち

 

 

 

 ―――――場所は変わってIS学園―――――

 

 

 

 

「・・・・」

 

 シノンは腕を組んでベッドで眠っている颯を見る。

 

 颯はあの時のダメージがまだ完治し切れて居ない為に眠ったまま。

 怪我は自己修復機能と束の手によって修復されているも、意識は戻っていない。

 

(主戦力が多く抜けている中、エースがこれでは後々の戦いに支障が生じるな)

 

 シノンはため息に近い息を吐く。

 

 今現在専用機持ちの大半が居ない。

 ラウラ以外の代表候補生は国から召集が掛けられ、それぞれ一時帰国しており、企業所属のエリーナと日本代表候補生の簪も召集が掛けられてIS学園に居ない。

 楯無は状況を考えてIS学園に残っている。と言うより、本当の所は専用機を失っているので帰る事ができない。

 

 千冬もあの時の戦闘で怪我を負い、さらにエピオンが中破した為に戦闘に参加できない状態になっている。

 一夏と楯無は言わずとも専用機を失っている。

 

 現在は隼人、シノン、ユニコーン、バンシィ、輝春、箒、リインフォース、ツヴァイ、マドカ、山田のみしか戦える者が居ない。

 

 アーロン達は今現在ネェル・アーガマの修復の他、少し調べる事があってどこかへ行っている。

 ちなみにナンバーズのシスターに不意打ちを受けて重傷を負ったクロエは命に別状は無いとの事。

 

 

 戦力的に不足しているわけではないが、決して多いとは言えない。

 

 

(戦闘機人達もさすがにあの事実を知ってから意気消沈か。まぁ当然か)

 

 あの戦闘の後楯無よりあの事実を知らされて、戦闘機人達は衝撃を受けていた。

 もちろん最初は誰も信じようとはしなかったが、楯無が持っていたボイスレコーダーに録音されている会話の内容を聞いて、リアスは心当たりがあったようで、認めている。

 しかし他のメンバーは信じようとはしなかったが、リアスの言った言葉はありえなくもないので、リアス以外は気を落としている。

 

(これからどうしたものか・・・)

 

 シノンは腕を組んでため息に近い息を吐く。

 

(それに、ゼロがあの状態では・・・今後どうなるか・・・)

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

「・・・・」

 

 所変わってIS学園の格納庫。

 そこに隼人は居た。

 

 投影型モニターを出し、投影型パネルでデータを打ち込むとそれを実行に移させる。

 

 

 

「隼人君」

 

 と、格納庫にユニコーンが入ってくる。

 

「・・・・」

 

 隼人は振り向きもしない。

 

「・・・・」

 

 ユニコーンは少し呆れてため息を付くも、数歩前に出る。

 

「何をやっているの?」

 

「・・・計算に基づいた試作データのテストだ」

 

「試作データ?」

 

 ユニコーンは隼人の近くまで来る。

 

「水中ではビームが減衰するという点を思い出してな。それをデータ内での計算で少し試している」

 

「・・・・」

 

「もちろん普通の水ではビームを完全に防ぐ事は不可能だ。

 防ごうもんならかなり分厚い水が必要になるから、今試しているのは普通の水ではない」

 

「・・・ナノマシンかそんな所の物を含んだ特殊な水なの?」

 

「察しがいいな」

 

 隼人は身体を少し動かして後ろを見る。

 

 その右目の瞳はいつもの色ではなく、本来のISまたは戦闘機人としての時になる金色に変色していた。

 あの日からずっとこの状態なのだ。悲しみの感情を失い、悲しいのに悲しめない苛立ちにより感情制御が出来なくなっている為である。

 その為に隼人の性格も変わってしまっている。

 

「だが、普通のナノマシンではビームマグナムほどの出力のビームを減衰出来てはいるが、防ぎ切れない」

 

「最初からマグナムの出力でやるって・・・」

 

「そうでないとビームを完全に防ぎ切れる保障は無い」

 

「・・・だから、どうするの?」

 

「ナノマシンのコーティングや様々な特殊機構を用いる事でようやく防ぎ切れるまでに至っている」

 

「・・・それで、その機構を搭載するのにこの機体を使うの?」

 

 ユニコーンは右の方に視線をやると、そこには束より譲り受けた一体のフォビドゥン・ヴォーテクスがハンガーに固定されていた。

 

「こいつが持っている特殊シールドは使える。それに楯無さんのミステリアス・レイディのパーツを組み込んで、仕上げに有人仕様に改装すれば完成する」

 

「・・・つまり、今作っているのは更識さんの・・・新しい専用機ってわけね」

 

「そうだ。だからこそ残されていたミステリアス・レイディの残骸を使わせてもらっている」

 

「・・・・」

 

「まぁ、新たに作った『アクアウォール』には大きな問題が生じている」

 

 隼人はパネルのデータを操作し、その結果をモニターに表示させる。

 

「エネルギーの消耗があまりにも激しい。これでは稼動時間は十分も持たない」

 

「それはあまりにも欠陥が大きいね。いや、欠陥機の他でもないよ」

 

「普通ならな。だが、これがあれば万事解決だ」

 

 隼人の視線の先には、小型の動力機関があった。

 それは白式が生み出し、完全なものになった無限動力機関である。 

 

「こいつならエネルギー問題は解決され、無限にナノマシンを生み出せる」

 

「・・・最強の水の壁ってわけね。

 でも、だからと言って白式の無限動力機関のデータを使ってアルタートゥムで性能を完全に再現したレプリカを製造するなんて、思ってなかったよ」

 

 少し前にアルタートゥムで通常では製造できない無限動力機関を作り出していた。

 しかし、この無限動力機関を作るのに隼人は抵抗感が無かったらしい。

 そう。IS以上に戦争の火種になりかねない代物を作り出すのに・・・

 

「必要だからな。あいつらをぶっ潰す為にはな」

 

 隼人の声には少し重みがあった。

 

「それで、アルタートゥムの準備は出来ているな?」

 

「まだ時間は必要だよ。システムの安定やエネルギーの出力調整など、色々とやる事があるんだから」

 

「・・・なるべく急げよ。今は一秒も時間を無駄にしたくないからな」

 

「・・・・・・本当にやるの?」

 

「当然だ。戦えるやつが居るのに何もさせないわけにはいかんからな。このヴォーテクスもそうだ」

 

「・・・まぁ、一夏君や更識さんの気持ちに沿ってはいるけど―――――

 

 

 

 ―――――今の君はただ戦力増加の事しか考えて居ない・・・よね」

 

 後半からは険しい表情になって言う。

 

「・・・・」

 

 隼人は何も答えない。

 

「以前の隼人君だったら、仲間の為に何とかしようとしただろうに」

 

「・・・・」

 

「今の隼人君には・・・そんな想いが見られない。バインドを滅ぼそうとしか考えて居ない」

 

「・・・だから、何だ」

 

 隼人は素っ気無く言う。

 

「・・・いいや。なんでもない」

 

 ユニコーンはため息を付く。

 

 

 

 

「それで、お前達が回収したあのカプセル。調査は終わったのか?」

 

「何とかね。膨大な量のデータがあって、調べたら中身は確かに凄いものばかりだよ。今の戦況を覆す位の技術が積み込まれている」

 

「・・・・」

 

「でも、今の隼人君には見せたくないね。中にはとてつもない被害を生じる兵器データだってある。

 バインドを滅ぼそうとしか考えていない隼人君はそれを使うかもしれないからね」

 

「・・・ふん」

 

 隼人は不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

 

 

「ところで、隼人君は信じているの?」

 

「何をだ?」

 

「もちろん、あの四体が言っていたバインドの秘密前線基地についてね」

 

「・・・・」

 

 

 それはあの海底調査が終わった直後の事だった。

 

 隼人達の前にバインドのハルファスとフェニックス、フリーダムと共に居たノアとグリッター、そしてティアが現れたのだ。

 もちろん最初はバインドという事もあって警戒し、特に隼人はバンシィ・ノルンに変身して襲い掛かろうとしたが、ティアの説明と説得もあって戦を交える事は防がれている。

 

 話によれば、ハルファスとフェニックスは実際はバインドの一員ではなく、ノアとグリッターが送り込んだスパイであり、長い間バインド内でデータを集めていた。

 しかし最近になってスパイであると疑われ出し、そのまま集めたデータを持ち出して逃走し、ノアとグリッターを合流した。

 ティアが一緒に居たのは別方面での調査の為に一緒に行動しているとの事。

 

 

 その四体は協力を申し出した他に、とある情報の提供をした。

 

 その情報こそがバインドが本拠地からこの世界の中継ポイントとして使っている秘密前線基地である。

 場所についてはユニコーンとバンシィしか伝えていない。場所を知れば絶対隼人は無理をしてまで一人で前線基地に向かうに決まっているからだ。

 それと同時にヴィヴィオの正体であるマテリアルについても話されている。

 

 四体は他に調べる事があると言って立ち去っている。

 ティアは自分で調べるものがあると言って四体と別れている。 

 

 

「君の気持ちは分かるけど、一人で突っ込んでも返り討ちに遭うのがオチだよ?」

 

「・・・・」

 

「分かっていると思うけど、ヴィヴィオを助けるのも無理だからね」

 

「・・・ふん」

 

 

「・・・本当に・・・変わってしまったんだね、隼人君」

 

「・・・・」

 

「そんな戦いの事ばかりを考える人じゃなかったのに・・・」

 

 ユニコーンは少し悲しそうな表情を浮かべる。

 

「・・・・」

 

 その後隼人は全く口を聞かなくなった。

 

 

 

(ここまで変わってしまうなんて・・・それほどヴィヴィオの事が大切だったんだ)

 

 過去に颯が連れ去られた時もあったそうだが、その時は自分は居なかったのでどれほどの状態だったのかは分からない。

 

(以前のように暴走しないだけマシ・・・かな)

 

 しかし今の隼人は実質それよりタチの悪い状態とも言える。

 

(今の隼人君は・・・いつ爆発するか分からない爆弾みたいなもの・・・いつ暴走を起こしてもおかしくは無い)

 

 何をするか分からないので、ユニコーンは今の所隼人の言う事に従う事にしている。

 

(同時に、いつ壊れてもおかしくは無い)

 

 この状態が続いていると、人としての感情が失われて、やがて冷酷なマシーンに変貌する恐れがある。

 ようやくナハトヴァールと言う名の障害が取り除かれたのに、これでは以前と同じ結果を招く。

 

(それこそ連中の思惑通りになってしまう。でも、今の隼人君の身体の事を考えると、無茶は出来ない)

 

 色々と考えながらユニコーンはある場所へと向かう。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「・・・色々と・・・あったんですね」

 

「あぁ」

 

 IS学園の職員室で、千冬と山田先生が話していた。

 千冬の額には包帯が巻かれ、左頬にガーゼがテープで貼り付けられている。

 

「そういえば、神風君ずっと格納庫や地下の秘密区画に篭っている事が多いですね」

 

「あぁ。一応言う事は聞いてはいるが、部屋に戻ってもずっと寝て居ないのだろうな」

 

「・・・・」

 

「それに、あいつの感じも変わってしまった」

 

「はい。以前よりも気難しい感じ・・・ですね」

 

「あぁ」

 

 千冬は最近の隼人の様子を思い出して目を細める。

 

「・・・それほどヴィヴィオって子が大切だったんですね」

 

「そうだろうな。保護責任者と言っても、実の子のように扱っていたからな」

 

 実際の所二人は遺伝子上実の親子なのだが、そこは伝えていない。

 

「それに、ユニコーンとバンシィの二人と地下の秘密区画で何をやらかしているのか怪しい所だ」

 

「織斑先生にも言わないんですか?」

 

「昔から強情な性格だって言うのは知っているが、今の隼人はそれ以上だ」

 

「・・・・」

 

「今の状態で深追いすると、何をするか分からないからな」

 

「・・・・」

 

「少なくとも、何か策を立てているのは確かだろうな。まぁあまり良い事じゃないのかもしれんがな」

 

「・・・・」

 

「それで、綾瀬達は?」

 

「今は政府に招集を掛けられて戻っています。事が済み次第こちらに戻るそうです」

 

「そうか」

 

「後、政府より色々と言われています。

 『篠ノ之博士の協力の申し入れ』や『神風隼人の黒獅子のデータ提出』や『戦闘機人に関するデータの提出』、それにユニコーンとバンシィ、リインフォースさんと妹のリインさんの事についての説明などが届いています」

 

「ふん。他にやる事が多いのに、なぜ上の連中はそういう事はすぐにやるのだろうな」

 

「そうですね」

 

「全部無視しろ。今はそれどころではないと言ってな」

 

「いいんですか?そんな事して?」

 

「構わんさ。向こうだってこっちが唯一の対抗手段である事は知っている。無闇に手を出そうとは思わんだろう」

 

「は、はぁ」

 

 山田先生は苦笑いする。

 

 

 

 

(しかし、こんな時にあいつは何所に行ったんだ)

 

 内心で束に文句を呟く。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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