No.601461

末終之界世 その3

暴力より話し合いをしようの巻

2013-07-25 16:09:18 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:272   閲覧ユーザー数:272

 

「ふんっ、他愛もない」

 地球外生命体が現れて約五年。様々な出会い、別れを経て俺たちは強くなっていった。

「さて、基地に帰るか」

 俺たちは三人のメンバーで化け物と戦っている。

 一人は俺、秋葉御徒町。前線を走る戦闘員。

 次に工藤雄介。俺と同じく前線で動く戦闘員。

 最後にリーダーの八咫烏真紀乃。死んだ雪乃の姉で、司令塔だ。

「秋葉、オレはちょっと康のところに行ってくる」

 基地の入り口に着くと工藤はそう言って俺たちと離れた。

 康――山田康は三年前の最強の戦士だ。

 康は地球外生命体の総本山に単身で乗り込み、敵大将と刺し違えた。

 それによってこの戦いは終わりを告げるかと思われていた。しかしそれは違った。

 彼らは大将をやられたことで士気を上げ、無差別攻撃を始めた。

 その結果、戦闘はより過激になり、平和とは程遠い世界になってしまった。

「どうした秋葉?」

 八咫烏が俺の顔を覗き込む。

「いや、なんでもないさ」

 俺はただ悔しかった。康の死は無駄に終わってしまったばかりではなく、より悪い方向へと行ってしまったことに。

 そんな俺の下に運命を変える手紙がやってきた。

「ここか」

 手紙の内容は簡単だ。

 お前がほしい。

 取り合えず事情を聞いてみることにした。

「秋葉だ」

 指定されている家の扉を叩く。

 扉は数秒で開け放たれる。そしてブラックホールのように俺を吸い込む。

「ようこそ第三勢力の基地へ!」

 俺を連れ込んだ犯人は扉を勢いよく閉めると両腕を羽のように伸ばして俺を歓迎する。

「第三勢力?」

「ヤー! ザッツライッ!!」

「日本語でおけ」

「はい、その通りです」

 取り合えずこいつが変質者であることはよくわかった。

 正直言って殴り倒して基地へ連行するのが一番だと俺は思う。しかしそんなことができなかった。

 ――胸のバッジ。あれは俺たち地球防衛連合第三番隊の大将の証だ。しかも三年前の代物。

 三年前の康の死と同時に姿を消した者たちが何人もいることは聞かされていた。

 もしかしたら姿を眩ませた人々は皆、この第三勢力という怪しい場所に籍を置いているのかもしれない。ならば調査をしなくてはならない。

「ところであんたは誰だ」

「んんん! よく聞いてくれた! 我が名はスノウ・ザ・サン!」

「……そうか」

 どう考えても偽名なので深くは追求しない。

「で、俺はなぜ呼ばれた?」

「よくぞ聞いてくれた。それには深い訳があるんだが、まずはこの組織について話そう」

 スノウ・ザ・サンはさっきまでとは打って変わって真剣な眼差しを俺に向ける。

「……ああ」

 俺は唾を飲み、次の言葉を待つ。

「この組織はまだ特に活動を行っていないのだ」

「……は?」

「人材不足でなぁ。人が欲しいと思った次第だよ」

「……ぶっ飛ばしていいか?」

「ニー。痛いじゃん」

「だから日本語」

「いいえ。痛いではありませんか」

 それはそうだ。

「というわけで仲間になってください」

「俺に利益はあるのか?」

「今までの組織の階級から二階級特進です」

「よし乗った」

 というわけで俺は地球防衛連合代三番隊をこっそり抜けてこの謎の第三勢力に身を置くことにした。

「オタク上等兵、ところで他にも仲間にできるという人間は本当にいるのでしょうか?」

「スノウ准尉、確かにここにいます」

 オタク上等兵こと俺は大将でもなんでもなかったスノウ准尉と共に工藤と八咫烏を抜き取ることにした。

「……堅苦しいからやめよっか、オタク」

「そうだなスノウ」

 ちなみにオタクというのは俺のコードネーム。かっこいいので気に入っている。

 康の墓前にいるはずなんだがな……

「おっ、八咫烏じゃん」

 八咫烏を発見した俺は草むらから出て彼女に手を振る。

「出たな、裏切り者っ!」

「えっ、えっ?」

 八咫烏は腰の銃を抜く。冗談きつ――

 そこで俺の命は尽きた。

 

 
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