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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第十二回 在野フェイズ:高順①・怪我と??と黄巾賊と(前編)

stsさん



みなさんどうもお久しぶりです。

今回は最後の在野フェイズ、オリキャラ高順ことななのターンです。

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2013-06-18 00:00:17 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:7135   閲覧ユーザー数:5903

 

 

益州にある洞窟の中、北郷の側に横たわる高順は、毒による熱にうなされながら、過去のとある夢をみていた。

 

 

 

 

 

<蒼天すでに死す!黄天まさに立つべし!>

 

<父様!母様!>

 

<順、私と母さんを置いて・・逃げなさい>

 

<嫌です!父様も母様も一緒に逃げましょう!>

 

<順、母さんはもう・・・私も時間の問題だ・・・>

 

<何を言っているのですか!気をしっかり持ってください!>

 

 

<順・・・お前は・・そこらの・・男連中・・よりも・・ずっと・・強い・・・その力・・きっと・・この乱世を・・鎮めるために・・

 

役立つ・・はず・・・いいかい・・必ず・・生き残って・・私や・・母さんの・・ような・・ことが・・二度と・・起きない・・ように

 

・・・・・・>

 

 

<父様!いやあぁああああ!!!>

 

 

 

 

 

高順「(・・・父様・・・母様・・・)」

 

 

 

うわ言のようにつぶやいた高順の瞳から、一筋の涙が伝った。

 

 

 

 

 

 

【益州、とある森】

 

 

 

荊州の長沙から順調に旅路を進み、ようやく益州に入った呂布一行は、黄忠に言われた通り、

 

巴城の厳顔の元へ向かうため、巴郡を目指して深い森の中を歩いていた。

 

 

 

陳宮「みんな、はぐれないように気を付けるです」

 

 

 

陳宮は一団の先頭を歩きながら他の4人に語りかけた。

 

 

 

張遼「けど、ホンマにこの道であっとるんかいな?っていうかこれ道ですらないやんか」

 

陳宮「まあ、地元の人間が言うことなので間違ってはいないはずです」

 

 

 

呂布達は、巴郡へ向かう途中、道に迷いそうになったため、近くにあった村に立ち寄って道を聞いたのであった。

 

しかし、聞いた道を実際行ってみると、御世辞にも道とは言い難い険しい山道が待っていたという訳である。

 

 

 

高順「恋様、北郷様、この先は崖になっているようです。気を付けてください」

 

 

 

ちょうど呂布一行は崖になっている道に差し掛かっていた。

 

そこは人が一人通れるくらいの道幅になっており、その道っぽい道を、陳宮に続き、呂布、張遼、北郷、高順と続いていく。

 

崖の下を北郷が覗き込んでみると、そこは足がすくみそうなほど深かったが、よく見ると下の方で川が流れているのが確認できた。

 

 

 

北郷「ななも気をつけろよ。落ちたら簡単には上がってこれそうにもないぞ」

 

高順「ご心配には及びません。私はこういう地形には恐らくこの中で一番慣れています」

 

張遼「ななはいろんなとこに偵察しに行くさかいな」

 

高順「そうです。ですから―――」

 

 

 

高順が最後まで言葉を発することはなかった。言い終わる前に突然足元が崩れたのだ。

 

どうやら、この前の雨で足場が崩れやすくなっていたようで、陳宮を先頭に、呂布、張遼、北郷と通って、最後に高順が通った時に、

 

耐え切れず崩れたようだ。

 

高順はとっさのことに反応できず、重力に従って崖下へと落ちていく。

 

 

 

―――しかし

 

 

 

北郷「なな!!」

 

 

 

北郷の反応は早かった。

 

北郷は落ちそうになった高順の手をとっさに掴み、なんとそのまま遠心力に任せて足場のあるところへ投げたのだ。

 

とても一高校生のなせる動きではなかったが、そのような奇跡的な動きが最後まできれいに決まるわけもなく、

 

そのまま遠心力に従って、北郷は先ほどまで高順がいた足場のない所へまわり、今度は北郷が重力に従って落ちていってしまった。

 

 

 

北郷「うわあぁああああッッ」

 

高順「ほ、北郷様!!」

 

 

 

零コンマ数秒遅れてようやく事態を把握した高順は、北郷を救うべく手を伸ばすが、どう考えても届きそうにない。

 

すると、届かないと判断するや、高順も北郷の後を追うように崖下へ飛び降りてしまった。

 

 

 

陳宮「一刀殿!!なな!!」

 

張遼「何ちゅー無茶を・・・!!」

 

呂布「・・・!!」

 

 

 

すると、呂布がとっさに二人を助けるために一緒に飛び降りようとするが、高順が落ちながらも、

 

 

 

高順「恋様!ここは私に任せて先に巴城に行っておいてください!大丈夫です、すぐに追いつきます!」

 

 

 

と叫んで呂布を制止した。

 

そうして二人は崖下へと落ちていき、ドボンという川に落ちたであろう音が後になって聞こえてきた。

 

 

 

張遼「ど、どないすんねん!?」

 

呂布「・・・ななと一刀を助ける」

 

 

 

そう言って再び崖下に飛び降りようとした呂布を、張遼が必死に止める。

 

 

 

張遼「アカンアカン!ここから飛び降りたらいくら恋でもただじゃ済まへんで!ねね!」

 

 

 

張遼はこれからどうするべきかという判断を陳宮に委ねた。

 

こういう時に、集団の中に一人でも冷静に判断できる人間がいるのは非常にありがたいことである。

 

 

 

陳宮「ななは自分の不注意で一刀殿が崖下に落ちてしまったことを気にしてるです。ななの性格上、助けに行くと怒るでしょうな・・・

 

ですが、やはりここはどうにかして下へ降りて、一刀殿とななを助けるべきです」

 

 

張遼「ほならすぐ降りよ。さっき下に降りる道があったやろ。かなり戻らなアカンけど、ここから飛び降りて、案山子の火消になっても

 

かなわんからな。ええか、恋?」

 

 

呂布「・・・(コクッ)」

 

 

 

今後の行動方針を決定した三人は、急いで来た道を戻り、下へ降りる道を目指した。

 

 

 

 

 

 

高順が目覚めると、自身が川岸に打ち上げられていることに気づいた。

 

高順は一瞬頭がぼんやりして思考が停止していたが、すぐに先ほど起きた出来事を思い出し、辺りを見回して北郷を探した。

 

すると、少し離れたところに、同様に川岸に打ち上げられて、伸びている北郷の姿が確認できた。

 

急いで近づき、呼吸を確認すると、しっかりした呼吸を確認でき、生きていることが分かった。

 

高順はひとまず安心した後、北郷に声をかけてみたが一向に目覚めそうな気配がしない。

 

そのため、結局高順は北郷を背負って先に進むことにした。

 

しかし、背負って進むのはいいのだが、ここが今どこなのか、どこまで流されたのか分からなかった。

 

そのため、取り敢えず高順は誰かこの辺りの地理に詳しい人を探すことにした。

 

 

 

 

 

が、その時、突然高順の目の前に全身を黒っぽい体色に白の縞の入ったうろこでおおわれた、細長い生物がシュルシュルいいながら

 

ひょっこりと草むらから首を出した。

 

そして、その生物、つまりは蛇を高順が視認したその刹那、あろうことか何の躊躇もなく高順の足首付近に噛みついてきたのだ。

 

 

 

 

 

高順「痛ッ・・・」

 

 

 

すぐさま高順は袂に忍ばせた小刀で全長1メートル強ほどの蛇を撃退したが、その時見間違いであってほしいという高順の思惑は、

 

もろくも打ち砕かれてしまう。

 

 

 

高順「・・・これはまずいですね」

 

 

 

高順はその蛇に見覚えがあった。

 

元々高順は戦闘において、毒の類もよく扱うのだが、そのため、日頃から毒について研究しており、色々と毒に関する書物を読んでいた。

 

そして、今自身に噛みついたその蛇は、間違いなく毒蛇図鑑で見た蛇の絵と全く同じであった。

 

 

 

高順「くっ・・・い、意識・・・が・・・」

 

 

 

突然のめまいが高順を襲い、高順は敢え無くその場に倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

高順が倒れたことで衝撃を受け、北郷はようやく目覚めた。

 

そして、北郷は起き上がろうとしたその時、高順が自身の下敷きになってしまっていることに気づいた。

 

 

 

北郷「うわっ!?す、すまんなな!大丈・・・夫・・・な、なな?」

 

 

 

ものすごい速さで高順から飛びのいた北郷であったが、その時、高順の様子が変であることに北郷はすぐ気付いた。

 

よく見てみると、高順の息づかいが妙に荒いことが分かった。

 

 

 

北郷「なな!おい!しっかりしろ!」

 

 

 

落ちた時の打ち所が悪かったのかと、北郷は打ち所を探そうとしたが、詳しく調べるまでもなかった。

 

高順の足首は、靴下の上から見ても分かるほどに、太もも程に腫れ上がっていたのだ。

 

骨折か?と一瞬思ったが、よく見ると釘でも刺さったかのような穴が二つあいていた。

 

 

 

北郷「何かにかまれたのか・・・!」

 

 

 

すると、北郷の気配を感じてか、高順が意識を辛うじて取り戻し、意識が朦朧とする中北郷に語りかけてきた。

 

 

 

高順「・・・ほ・・んごう・・・さま・・・・・・」

 

北郷「なな!何があった!?」

 

高順「・・・どく・・・へびに・・・すみま・・せんが・・足を・・・縛っ―――くあぁああッ!!」

 

 

 

北郷に事情を説明する最中、高順は急に患部を抱え込むようにうずくまりながら痛々しいうめき声をあげた。

 

 

 

北郷「なな!待ってろ!」

 

 

 

北郷はそう叫ぶと、高順のはいていたニーソックスを脱がせて毒が回らないように縛った。

 

そして、何を思ったのか、北郷は躊躇なく患部に自身の顔を近づけていった。

 

高順は北郷が何をしようとしているのか理解できなかった。

 

 

 

高順「・・・!?ほ・・・北郷・・・・様・・何を・・・!?」

 

北郷「毒を吸い出す。少し我慢してくれよ」

 

 

 

毒のせいか、ただでさえ青かった高順の顔色が一層真っ青になった。

 

 

 

高順「い・・いけま・・せん・・・・毒が・・・・北郷・・様の・・・お体に・・・・!」

 

 

 

高順は何とか体を動かして北郷を止めようとするが、痛みで体が言うことを聞かない。

 

 

 

北郷「飲み込まなければ平気だよ。それに万一飲み込んでも、胃液が分解してくれるしね」

 

 

 

とは言ったものの、たとえ理論上はそうであったとしても、素人がそれを実行するというのは非常に危険である。

 

しかし、北郷は元の世界で祖父に昔教わったうる覚えの対処法を信じて実行する。

 

 

 

高順「ほ、北郷様・・・・・くっ・・・あぁあああッッ!!」

 

 

 

高順はなすすべもなく、北郷に毒を吸い出されていく。痛みに耐えかねて叫んだ高順の悲鳴が森中にこだました。

 

 

 

 

 

 

北郷「とにかく早く血清を打ってもらわないと。近くの村に血清があればいいけど・・・」

 

 

 

どうにか無事毒を吸い出すことに成功し、北郷自身にも害はなかったようなので、北郷は川で口をすすいだ後、

 

高順を背負って村を探すために歩き出していた。

 

 

 

高順「北郷様・・・すみません・・・」

 

 

 

高順は北郷に背負われながらポツリポツリとつぶやく。

 

本来、毒を扱うものは、自身が毒の被害を受けるという最悪の事態を想定して、血清の類を持ち歩いているのだが、

 

運悪く、この毒蛇に対する血清を高順は持ち合わせていなかった。

 

 

 

北郷「謝るのはオレの方だって。オレがドジして崖から落ちていなければ、こんなことにはならなかったんだから」

 

 

 

北郷はフォローを入れるが、高順はさらに伏し目がちに自身の非を吐露した。

 

 

 

高順「いえ・・・そもそも・・私が・・最初に・・崖から・・落ちそうに・・なったのを・・・北郷様が・・助けて下さったの・・

 

ですから・・・やはり・・私に・・落ち度が・・あります・・・」

 

 

北郷(まずい・・・ななは相当弱気になってるな・・・それに、早くしないと毒の回りが・・・)

 

 

 

 

 

しかし、事態はさらに悪い方へと進む。突然雨が降り出したのだ。

 

北郷は上着を脱いで合羽代わりに高順に被せてやる。

 

しかし、雨は収まるどころか徐々に強くなり、ついには豪雨へと変わってしまっていた。

 

 

 

高順「北郷様・・・御体に障ります・・・あそこに・・洞窟があるようなので・・・雨宿りをしましょう・・・」

 

北郷「オレのことなら心配するな。それよりも急がないと―――」

 

 

 

しかし、高順は譲らない。

 

 

 

高順「北郷様が無理をして・・・今倒れられてしまわれたら・・・私がのたれ死んでしまいますよ・・・」

 

北郷「なな・・・」

 

 

 

その高順の言葉は北郷のことを気遣ったものだというのは誰が聞いても一目瞭然だった。

 

そんな高順の気遣いに北郷は心打たれるものがあった。

 

 

 

高順「それにこの雨脚だと・・・恐らく通り雨です・・・」

 

 

 

高順は北郷に心配をかけまいと、無理して笑顔を作って見せた。結果、北郷もそんな高順の意図をくみ取ることにした。

 

 

 

北郷「・・・わかった。一度雨宿りをしよう」

 

 

 

 

 

 

【益州、とある洞窟】

 

 

 

北郷は高順を背負ったまま近くにあった洞窟に入った。

 

以前洞窟に入ったら山賊のアジトだった、いうパターンがあったのだが、幸い今回はそれに当てはまることはなかった。

 

しかし、雨宿りをするとはいえ、誰もいない洞窟の中はひんやりとしており、雨でぬれた体には非常に堪えた。

 

そこで、高順の提案もあり、北郷は高順の持っていた火打ちを使って火を起こし、お互い冷えた体を温めることにした。

 

 

 

 

 

しばらく温まっていると、ひとまず安心したのか、高順は北郷の隣で横になって眠りについていた。

 

しかし未だに息は荒く、時々痛みにあえぐ声を洩らしている。

 

さらに、何か悪い夢でも見ているのか、痛みとはまた別のうなされ方をしていることもあった。

 

そんな高順の辛そうな様子を見た北郷は、乱れて顔にかかった綺麗なブロンドの髪を整えてやりながらも、

 

何もできないもどかしさを感じていた。

 

 

 

 

 

しかしその時、突然洞窟の外から物音が聞こえてきた。その音は何かの足音のようで、ヒタヒタと徐々に中の方へと近づいてくる。

 

北郷だけでなく、高順もそれに気づいたようで、目を覚ましていた。

 

 

 

高順「北郷様・・・御下がりください・・・ここは私が・・・痛ッ」

 

 

 

高順は痛みを押して袂から三節棍を取り出すが、痛みで落としてしまう。

 

すると、そんな様子を見た北郷が突然、高順の手を握った。

 

 

 

高順「ほ、北郷様!?」

 

 

 

突然手を握られた高順は、珍しくうろたえていた。

 

 

 

北郷「ななは絶対安静だよ。大丈夫、こういう時のために、オレは霞の鍛錬を受けてたんだからな」

 

 

 

北郷はしっかりと高順の手を握り締め、安心させるようにニッと笑い、高順の頭を撫でた。

 

そして、あっけにとられている高順をしり目に、一転真剣な面持ちになり、腰から直剣を抜いた。

 

近づいてきたのはどうやら人影のようである。

 

 

 

北郷「誰だ!!」

 

 

 

北郷は相手になめられないように、自身ができ得る最大限のドスの利いた声で威嚇した。

 

 

 

??「待ってくれ!怪しいものじゃない!」

 

 

 

すると、その人影は意外にも両手を挙げながら敵意がないことを示してきた。

 

 

 

??「少し雨宿りをさせてくれないか?」

 

北郷「なんだ・・・雨宿りか」

 

 

 

北郷は安心してその場に座り込んだ。

 

現れた人物は、赤みがかった髪色に、凛々しい顔つきの男で、北郷と同じか、或いは一つか二つほど年上かと思われる青年だった。

 

 

 

男「すまない、急に雨が降ってきて―――おい!そっちの女の子、怪我をしてるじゃないか!」

 

 

 

その男は、北郷に近づくことで、傍らで横になっている高順に気づいたようである。

 

 

 

北郷「ああ、さっき毒蛇にやられてね。これから血清を探しに近くの村に行くところだったんだ」

 

 

 

すると、男は予想外のことを言ってきた。

 

 

 

男「けっせい・・・?何なんだ、そのけっせいというのは?」

 

北郷「え?・・・血清っていったら、もちろん血清治療に使われる血清―――」

 

 

 

その刹那、北郷に電流走る。

 

 

 

北郷(そうか、まだこの時代には血清療法は発見されてないのか・・・!)

 

 

 

血清療法の発見は、十九世紀末の出来事であり、当然三国時代の人間が知っているはずもなかった。

 

しかし、男は更に予想外のことを言ってきた。

 

 

 

男「今毒蛇にやられたと言ったな。ちょっとその子の怪我の具合を見せてくれないか?俺は医者なんだ!」

 

北郷「医者!?本当か!?」

 

 

 

医者という救いの言葉に北郷は喜んだが、よく考えれば、見ず知らずの男に高順を託すのは危険極まりなかった。

 

しかし、北郷は現状この自称医者の男に頼るしかなく、結局高順を託すことにした。

 

北郷の了承を確認すると、その自称医者の男は手際よく高順の患部を見始めた。

 

 

 

男「この釘を刺したような独特の大きな歯型、それにアンタの見たって言う毒蛇の外観から考えても、アンタの想像通りの種だな。けど

 

よかった、こいつの治療は以前したことがある!それに、うん、うまく応急処置ができている。これなら問題ないな!」

 

 

北郷「本当か!よかった・・・」

 

 

 

じいちゃんありがとう、今ほどじいちゃんの無駄知識に感謝したことはなかったよ、と北郷は心の底から祖父に感謝しながら、

 

胸をなでおろした。

 

 

 

男「それじゃあさっそく治療をするから少し離れておいてくれ!」

 

北郷「わかった」

 

 

 

しかし、北郷が離れたのを確認すると、急に男はとても治療とは思えないような奇妙な行動に出た。

 

 

 

男「いくぞッ!はぁああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

 

 

男はどこからか取り出した針?(正しくは鍼だろうか)のようなものを持って気合を入れ始めたのだ。

 

 

 

北郷「・・・んん??」

高順「・・・??」

 

 

 

北郷は一瞬、これがこの世界での治療のスタイルなのかと納得しようとしたが、高順も理解できないというような顔をしていることから、

 

やはり普通ではないことは明らかであった。

 

 

 

男「我が金鍼に全ての力、賦して相成るこの一撃!俺達の全ての勇気、この一撃に全てを賭ける!」

 

 

 

そのように男が何かを唱え始めると、突然目には見えないプレッシャーのような不思議な力を北郷は肌に感じていた。

 

漫画的表現をするなら、何か気のようなオーラが男の体中をまとい、その気が鍼の先に集積していく、といった妙な感覚に襲われていた。

 

よく見ると、男の瞳がメラメラと燃えているような気もした。

 

それほど、その男の気迫は凄まじいものであった。

 

 

 

北郷「ア、アンタいったい何を!?」

 

 

 

しかし、男の耳に北郷の声は届かない。

 

 

 

男「我が身、我が鍼と一つとなり!一鍼同体!全力全快!必察必治癒!・・・・・・病魔覆滅!」

 

 

 

そして、何やら必殺技を放つ前の決めゼリフのような文言を叫んだかと思うの、高順に狙いを定めて鍼を大きく振りかぶった。

 

 

 

北郷「や、やめろおぉおおおおッ!!」

 

 

 

一体何が起きているのか理解できない北郷であったが、何か高順の身が危険にさらされるのではという直感から、

 

男の行動を止めようとする。

 

 

 

男「げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 

しかし北郷の制止は間に合わず、男の振りかざした鍼は寸分の狂いもなく高順の患部に命中した。

 

 

 

高順「きゃあぁあああッ!」

 

北郷「ななぁぁぁっ!!」

 

 

 

高順の悲鳴が洞窟内にこだました。

 

終わった。俺のせいでななが取り返しのつかないことに、

 

と不用意に得体の知れない男の言葉を信じた己の愚かさを悔いようとした北郷であったが、

 

 

 

高順「・・・あれ?痛みが引いています」

 

北郷「へ?」

 

 

 

高順に新たな怪我はないようである。というより、先ほどよりも顔色がよくなっているようにも見えた。

 

そして、そのままゆっくりではあるが、体を起こすこともできるようである。

 

つまるところ、男の治療は成功していたのだ。

 

 

 

男「ふぅ。よし、これで毒素は抜けたはずだ。ついでに病魔も祓っておいたし、もう大丈夫だろう!」

 

 

 

男は一息ついて治療の完了を告げた。よく見ると全身汗びっしょりである。

 

 

 

 

 

 

高順「助けていただきありがとうございました」

 

北郷「本当に助かりました。ありがとうございました。ですが今の治療といい、あなたはいったい・・・」

 

 

 

北郷は礼を述べると共に、当然の疑問を投げかけた。

 

 

 

華佗「俺は華佗。大陸一の医術にして仁術、五斗米道の継承者だ。今の治療は、五斗米道の秘術なんだ」

 

 

北郷(華佗と言えば、たしか麻沸散っていう麻酔を生み出した三国時代の名医だったっけ?まさかこんなところで会えるなんて・・・。

 

あれ?どうでもいいけど華佗は男なんだな・・・武将じゃないからかな・・・)

 

 

高順「五斗米道(ごとべいどう)・・・聞いたことがあります。確か益州は漢中辺りで生まれたという―――」

 

 

 

しかし、そこで高順の発言が華佗によってさえぎられる。

 

 

 

華佗「ちがぁぁう! “ゴッドヴェイドォォ!” だ!」

 

高順「え?だから五斗米(ごとべい)―――」

 

華佗「ちがぁぁう! “ゴッドヴェイドォォ!” だ! “ごとべいどう” だと違う流派になってしまう!」

 

高順「??」

 

 

 

いったい何が違うのか高順にはまったく理解できなかった。しかし何が違うのかに勘付いた北郷は高順に説明する。

 

 

 

北郷「なな、発音の問題だよ。 “ごとべいどう” じゃなくて “ゴッドヴェイドォォ!” だよ」

 

華佗「おお!この発音を一度で!アンタなかなか見込みがあるな!」

 

 

 

華佗はなぜか非常に感動しており、北郷の両手をつかみブンブン振ってくる。

 

何の見込みだよ、と北郷はツッコみそうになったが、話が長くなりそうだったのでツッコまなかった。

 

 

 

北郷「けど五斗米道(ゴッドヴェイドォォ!)の医術はすごいですね。毒以外でも治せるんですか?」

 

華佗「もちろんだ!我が五斗米道(ゴッドヴェイドォォ!)に治せぬ病などありはしない!」

 

 

 

華佗の熱い反応や、さきほどの五斗米道の発音の一件から、北郷は直観的にこの華佗と言う男が、

 

よく言えば熱い、悪く言えば暑苦しい男なのだと悟った。

 

 

 

 

 

 

雨がやむまでの間、三人は暖を取りながら語り合っていた。

 

特に北郷は、この三国時代に来て以来、まともに男と、しかも同年代の男と会話していなかっただけに、

 

新鮮な感覚を得ており、いつの間にか華佗と親しくなっていた。

 

 

 

北郷「じゃあ、この辺りに来たのは・・・」

 

華佗「ああ、近くの村が黄巾賊に襲われたらしく、怪我人がいるそうなんだ」

 

 

 

どうやら、華佗は病気や怪我で苦しむ人々を救うために大陸中を歩き回っているらしかった。

 

 

 

高順「黄巾賊ですか・・・」

 

北郷「・・・なな?」

 

 

 

北郷は、 “黄巾賊” という言葉を聞いた時の高順の反応にやや違和感を覚えたが、高順は北郷に構わず華佗に質問した。

 

 

 

高順「ですが危険ですね。恐らくその村は黄巾賊の根城と化しているのではありませんか?」

 

 

 

しかし、華佗は高順の指摘を肯定しながらも、次のように高らかに宣言した。

 

 

 

華佗「ああ、そうかもしれない。いや、恐らくはそうだろう。だが、俺は行かねばならない!医は仁術なり! 世界の全てにあまねく

 

平安をもたらすため、俺は戦う!」

 

 

 

華佗の強い気迫、そして決意に思うところがあったのか、北郷は高順に切りだした。

 

 

 

北郷「なな」

 

高順「そうですね。少し寄り道になりますが、恋様たちには先に巴郡に向かうよう言ってありますので。恩返しといきましょう」

 

 

 

高順も北郷の目を見て、その意図するところをくみ取る。

 

 

 

華佗「どういうことだ?」

 

 

 

華佗はどういうことなのか理解できずポカンとしている。

 

 

 

北郷「オレたちにも手伝わせてくれよ」

 

高順「戦闘方面の腕なら覚えがあります」

 

 

 

そこまで聞いて、ようやく意図を理解した華佗は心底うれしそうな表情を浮かべた。

 

 

 

華佗「本当か!?すまない!実は黄巾賊の規模がそこそこ大きいらしいんだ。だから、戦闘経験のある人に手助けしてもらえるのは

 

とても助かる!悪いけどお言葉に甘えさせてもらおう!」

 

 

 

そうして、雨が止んだ頃合いに三人は洞窟を後にし、目的地である村へと向かった。

 

 

 

【第十二回 在野フェイズ:高順①・怪我と華佗と黄巾賊と(前編) 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

第十二回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

今回はオリキャラ那々那の拠点ということで、ななの本編では見えないキャラクター性が決まってしまう重要な回でもありました。

 

一刀君との絡みはどうなるのかは、後編でのお楽しみと言うことで。

 

はたして、ななもまた、ほかの呂布陣営の人たちのように落とされてしまうのでしょうか?

 

 

ちなみに毒蛇応急処置云々は俄知識によるものですので悪しからず、、、

 

良い子はマネしちゃダメ、絶対。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

次回は陷陣営が火を吹くぜ、、、!

 


 
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