No.585581

ゼロの使い魔……にはならなかった 1

ネメシスさん

どうもお久しぶりです、ネメシスです。
以前パソコンがご臨終してしまい、保存していたデータすべておじゃんになってしまい茫然自失していたネメシスです。
いつかはポケモンも学園黙示録も完成させたいとは今でも思っていますが、考えがほとんど浮かんでこない始末。
まだ待ってくれているという酔狂な方には本当に申し訳ないと思います。

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2013-06-09 21:29:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7073   閲覧ユーザー数:6885

 

 

“サモンサーヴァント”

 

 

それはこのトリステイン魔法学園で、1年生のメイジ達が2年生に上がるときに行われる伝統的な行事だ。

この日、一人の少女がサモンサーヴァントを行った。

生まれてからこれまで、初歩の魔法ですらほとんど成功させることができなかった彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはやはりというか、今回行われたサモンサーヴァントでも何度繰り返しても一向に成功する様子も見せなかった。

教師であるジャン・コルベールも授業時間が過ぎそうということもあり、日を改めて行うように言うが最後にもう一度だけやらせてほしいという彼女の願いを聞き入れた。

今日最後のチャンス、そのことで今まで以上に想いを込めて呪文の詠唱を始める。

それが良かったのかどうかはわからないが、その最後のチャンスを彼女はものにした。

サモンサーバントは成功、無事使い魔を召喚することができて本来ならここで自らの使い魔と契約を結び、サモンサーヴァントが終了する……ハズだった。

 

「……誰よ、あんた達」

 

「「「「……はい?」」」」

 

通常サモンサーヴァントとは単体のものを召喚するのであり、複数を召喚するものではない。さらに言うならば犬や猫、珍しいところではドラゴンなどが召喚される。

しかし、この時サモンサーヴァントで召喚されたのは、少年が一人と少女が三人だった。

 

「ネギ先生、ここは一体どこなのでしょう?」

 

剣らしき物を持つ少女が周囲に気を巡らせつつ、ネギといった少年に聞く。

 

「さ、さぁ、僕にもさっぱり」

 

「なんですって!? じゃあどうやって帰ればいいっていうのよ!」

 

「お、落ち着いてください!」

 

「これが落ち着いていられるか!」

 

ツインテールの少女ネギにつかみかかりグラグラと勢いよく揺らす。

 

「まぁまぁ、アスナもそないいわんと。ちょっと冷静になろ、な?」

 

「お嬢様の言うとおりです。アスナさん、こんな時だからこそ冷静にならなくては」

 

「うぅぅ、わかったわよぉ」

 

他の二人の少女にたしなめられアスナと呼ばれた少女も渋々ネギから手を離した。

 

「だ~か~ら~、あんた達は一体なんだっていうのよ!!!」

 

と、今までネギたちの話を聞いていたルイズが怒鳴った。

 

「え、え~と、そうですね。自己紹介がまだでしたね。僕はネギ・スプリングフィールドと言います。そちらにいるのは神楽坂明日菜さん、近衛木乃香さん、桜咲刹那さんです」

 

「よろしく」

 

「よろしくな」

 

「ま、よろしくね」

 

アスナ達もそれぞれ挨拶をする。

 

「それで、あなたは?」

 

「え? る、ルイズよ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ド・ラ・ヴァリエール……って、そうじゃなぁぁぁぁぁい!!!」

 

ネギの純粋な笑顔により相手のペースにのってしまい、つい答えてしまっていた。

 

「私がいいたいのは何であんた達が召喚されんのかってことよ! それも平民で四人も!」

 

「さ、さぁ? いきなり目の前に光の入り口みたいなものが現れて、アスナさんがそれに触ったら引きずり込まれそうになったので、みんなで助けようとしたのですが結局引きずり込まれてしまいまして、今に至った訳です」

 

「よく分からないものに触ってんじゃないわよ!」

 

「し、しょうがないじゃない! なんか気になっちゃったんだから!」

 

「あぁもぅ! ミスタ・コルベール!」

 

ルイズはこれ以上こいつらと話してもどうしようもないと思ったのか、コルベールに向き直った。

 

「もう一度サモンサーヴァントのやり直しを要求します!」

 

「残念ながら、その要求は受け入れられません。サモンサーヴァントは神聖な儀式なのです。あきらめなさい」

 

「そ、そんなぁ」

 

ルイズは見てわかるくらい大きな溜め息をもらし肩を落とした。

 

「あ、あの、一体どういう事なんですか」

 

ネギは訳が分からないといった様子でコルベールに説明を求めた。

 

「君達にも悪いとは思うけど、あきらめなさい」

 

「え?」

 

「さぁ、ミス・ヴァリエール。コントラクトサーヴァントを」

 

コルベールはネギの話を聞こうとせずどんどん話を進めていく。

 

「うぅ、わ、わかりました」

 

まだ納得していないようだったがルイズはコルベールに答えてネギに近づいてきた。

 

「ちょっとおとなしくしてなさいよ」

 

そう言い両手をネギの頬にそっと添えゆっくりと顔を近づけてきた。

 

「ぅえ? えぇぇ!!! ち、ちょっと待ってくださいよ! い、いきなり何を!?」

 

「ちょっとだまんなさいよ。わ、私だって恥ずかしいんだから!」

 

そう言いさらに顔を近づけてきた。誰もがそれを見つめていた。アスナ達もそれを見ていた。ルイズのいきなりの行動に固まっているようだ。そうしている間にルイズとネギの唇はふれ「「って、ちょっと待てぃ(待ちなさい)!」」 『ズビシッ!』

 

「はぅ!」『ズザザザッ!!!』

 

……触れそうになった瞬間、奇跡的にもアスナと刹那の意識は同時に覚醒し、これまた同時にルイズにつっこみを入れ突き飛ばしネギから遠ざけた。

ただ一人、木乃香だけはそれを見て面白そうにしていたが。

 

「い、痛いじゃない! 何すんのよ!」

 

突然のつっこみに驚きながらもいってきた。

 

「何すんのよ、はこっちのせりふよ! 何でいきなりネギにキスしようとしてんのよ!」

 

隣で刹那も何度も頷き同意を示してきた。

 

「それは契約のためです。サモンサーヴァントにより召喚された者は召喚したものと契約の証に口付けを交わすのです」

 

ルイズに任せるとうまく説明できないと踏んでか、ただ説明したかっただけかわからないがコルベールが間に入って説明してきた。

 

「契約って、それを交わしたらどうなるんですか?」

 

「契約を交わすことにより、あなた方はミス・ヴァリエールの従者になります」

 

「「「「……従者」」」」

 

四人はその言葉に固まった。その言葉にはかなり聞き覚えがある。

 

「かなり不本意だけど、つまりあんた達は一生私の《下僕》になるという事よ」

 

……ピクッ

ルイズのその言葉にネギは反応した。

 

「……ルイズさんといいましたね。今何ていいました?」

 

「は? 何てって、あんた達は一生私の下僕だって言ったのよ!」

 

「……ふざけるな!!!」

 

「な!?」

 

ネギの突然の怒声に近くにいたルイズやコルベールはおろか、周りに集まっていた生徒達も体を震わせた。

 

「アスナさん達は僕の大切な生徒で大切な友達で大切な仲間だ! アスナさん達にひどいことをしようという人は僕が許さない!」

 

ネギの怒声がまるで空気を揺るがすようにビリビリと響き周りの生徒達に届く。

 

「ネギ先生、私達は大丈夫ですからもうそのへんで」

 

刹那が怒ったネギの肩に手を置きなだめる。

 

「……刹那さん」

 

振り向くとアスナも木乃香もうんうんと頷いていた。それになんだか三人とも少しうれしそうだった。それはネギが自分達のことでこんなにも怒ってくれたからだ。

 

「……ふう、すみません、取り乱してしまって」

 

そう言うとネギから発せられていた怒気は少し和らいだようだ。

 

「でも、やっぱり従者になることは出来ません。僕達には帰る場所がありますしそこには僕たちの帰りを待ってくれている人達もいます。

少しでも早く帰らなくてはいけません。そちらにも都合があるでしょうけど、こちらの都合も理解してください」

 

「それは……そうかもしれないが……しかし」

 

さっきのことがあってか正当な理由だったためかコルベールは歯切れが悪くなる。

 

「その少年の言うとおりじゃミスタ・コルベール」

 

どうしたものかと迷っていると、学園の方から一人の老人が飛んできてコルベールに話しかけた。

 

「オールド・オスマン!」

 

「ミスタ・コルベール、確かにサモンサーヴァントは神聖な儀式じゃ。しかし本人達の意思は尊重されるべきではないかね? 犬や猫でもあるまいし。

それに聞くところによるとこの子達には帰らなくてはならない所があり、そこで待っている者達もおるそうではないか。それでは儂等の都合を押しつける訳にもいくまい」

 

「はぁ、それは確かにそうですが」

 

オスマンの言葉にコルベールはとりあえず了承する事にしたようだ。

 

「うむ。君達、これからのことについて色々と話もあるだろう。ここではなんじゃからゆっくり話のできる場所に移動せんか? ミス・ヴァリエールもな」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「……わかりました」

 

二人が応えるとオスマンは頷きネギ達を引き連れ学園の方に向かい歩き出した。

来るときに飛んできたのに? そうネギは思ったが、こちらも自分以外は飛ぶことができないため、特に何か言うことはなくオスマンの後に続いた。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

オスマンに連れてこられた場所は学院長室であった。

 

「さて君達、今回召喚してしまったこと本当にすまなかった」

 

みんなが用意されていた椅子に座って少し落ち着いた頃合いを見計らい、オスマンは謝罪をのべた。

 

「いえ、そのことはもういいです。こちらこそさっき取り乱してしまって」

 

「いや、非はこちらにある。なんと文句を言われようとなにも言い返せん。じゃから詫びとしては何じゃが、儂ができることは何でも協力するつもりじゃ」

 

そう言うとオスマンはニコッと人の良さそうな笑顔を見せた。

 

「ありがとうございます! じゃあ早速ですけど、ここは一体どこなんですか?」

 

「うむ、ここはじゃなぁ、ハルケギニアがトリステイン王国、トリステイン魔法学院じゃ」

 

「「「「……?」」」」

 

ネギ達は聞き覚えのない単語に首を傾げる。

 

「は、ハルケギニア? トリステイン王国? トリステイン魔法学院?」

 

「うむ」

 

バッと四人は顔を近づけた。

 

『な、なぁせっちゃん、ハルケギニアってどこの国なんやろ?』

 

『さ、さぁ、私も聞いたことがありませんが』

 

『ちょっとネギ! ハルケギニアのトリステイン王国ってどこの国なのよ! 私地理は苦手なんだから! ……いや、だからって他の教科が得意って訳じゃないけど』

 

『ぼ、僕も知りませんよ! というか地球にハルケギニア、トリステイン王国なんて国はないはずですが』

 

『じゃあ、あれじゃないの? ほら、前に話してたでしょ? 魔法界とかなんとか』

 

『た、確かに魔法界というのはありますけどそれでもハルケギニアなんて聞いたことないですよ!』

 

ネギ達が突然ひそひそと話始めたのを不思議に思いオスマンとルイズは訝しげな顔をした。

 

「どうかしたのかの?」

 

「ぅえ!? あ、え、えっと……」

 

突然話しかけられたことに驚いたのかネギは過剰に反応してしまった。

 

「え、えっと、日本はここからどれくらいなんですか」

 

「ニホン? はて、聞いたことがないが」

 

「私も聞いたことないわね。どこの田舎なの? そのニホンて」

 

(日本を知らない?)

 

知らないだけならもしかしたらものすごい田舎にとばされたのかと思うだろう。

しかし彼等はどう見ても魔法使いだ。魔法使いなら日本を知らないのはおかしい。

日本とはそれだけの魔法国(もちろん裏の世界でだが)なのだ。

ネギの中に、もしかしたらという予感が生まれた。

 

「えっと、失礼ですが地球はどこにありますか?」

 

「はぁ? ちょっとネギ! なにふざけたこと聞いてんの!?」

 

ネギは真面目に聞いたのだがアスナにはふざけていると思われたようだ。

 

「はて、チキュウとな? ……うぅむ、聞いたことがないのう。それは何処なんじゃ?」

 

「「「は?」」」

 

オスマンの返答にアスナ達は唖然とした。

 

(もしかして年取り過ぎてぼけてるとか、それともふざけてるの?)

 

「あんたさっきからなに訳の分からないことばっか言ってんのよ。ニホンだとかチキュウだとか。それってどこなのよ」

 

ルイズの口調を聞く限り、どうやらぼけてるわけでもふざけているわけでもないようだ。

 

「やっぱり……そうなんだ」

 

ネギは納得したといったような顔をしていた。

 

「ちょっとネギ、なに一人で納得してんのよ! どういうことかちゃんと説明しなさいよ!」

 

「……わかりました」

 

そう言うとネギはみんなを見渡し話し始めた。

 

「どうやら僕達は僕達がいた世界とは違う世界に来てしまったようです」

 

「「「……は?」」」

 

「君達のいた世界……とな?」

 

「はぁ!? 何それ、異世界ってやつ? 物語じゃないんだからそんなのある訳ないじゃない!」

 

ルイズが『何いってんのこいつ。頭おかしいんじゃないの』みたいな目でネギを見てきた。いや、みたいじゃなく本当にそう思っているのだろうが。

 

「信じて貰えないのも仕方ありませんが事実です。それに証拠とは言えませんが、オスマンさん。この世界の人たちは魔法の存在を知っていますか?」

 

「うむ。どんなに田舎でも知らない者などそうはおるまい」

 

「……僕達の世界にも確かに魔法は存在します。しかし魔法が実在していることを知っている人なんて一部の関係者くらいです」

 

「なんと」

 

オスマンはふむと考え込んでしまった。

 

「オールド・オスマン! こいつの話を信じるのですか!?」

 

「ミス・ヴァリエール、君にはこの少年が嘘をいっているように見えるのかね? 儂にはそうは見えん」

 

「そ、それは」

 

確かにルイズにもネギが嘘をいっているようには見えない。語るネギの目は真剣そのものだ。しかし異世界など物語の中でしかしらないのだ。

 

「わかった。君のいっていることを信じよう。初めにもいったがこちらもできるかぎりの事はしよう。元の世界に戻るときまでこの学院で生活するといい」

 

「ありがとうございます」

 

「他に何か必要なことがあったら何でもいってくれてかまわんよ」

 

「そうですか? では早速なんですが……他の生徒達が終わってからでもかまいませんので教室を貸していただけませんか?」

 

ネギの言葉に部屋の中にいるみんなが黙り込んだ。あるものはこんな時に何で教室? と、あるものはやっぱりやるんだこの勉強の鬼! と、その他色々な考えが入り交じっている。

 

「・・・べ、別にそれはかまわんがどうするんじゃ?」

 

「え? いやだなぁ、教室を借りると言ったらやることは勉強しかないじゃないですか。いつ帰れるかわからないけど、だからといって勉強を怠るのはいけませんから」

 

なにやらネギを睨みつけている人もいたがオスマンはこれをスルーした。

 

「そうか、それはよい心がけじゃ。学生の本分は勉強じゃからのぅ」

 

「ははは、そうですね」

 

オスマンとネギはおたがいに愉快そうに笑っていた。一人『鬼ぃ』と呟く少女の声は二人には届かなかったようだ。

そのあと話の合った二人が延々と勉学とはについて話し、終わる頃には夕方になっていた。ちなみに他の四人はスゥスゥと寝息をたてて寝ていたりした。刹那め最初の二時間は我慢していたようだが結局寝てしまった。

そんな彼女達を起こしルイズに部屋に案内してもらうためオスマンに挨拶をし出て行こうとすると、オスマンに呼び止められた。

 

「そういえばネギ君、あちらの世界では魔法は存在しても人々に隠している、そう言ったのぅ。そうなったのは一体なぜなんじゃ」

 

「……うぅん、僕もそう教わってきただけですから詳しくは。ですが、魔法は強い力です。強い力は使う人次第で救う力にも壊す力にもなります。救う力として使うならとてもいいことだと思いますけど、世の中いい人ばかりではありませんから。

悪い人に魔法の存在を知られてしまったら、きっと多くの被害がうまれてくる。だから昔の人たちは魔法を表の世界に広めないようにしたんじゃないかと思います」

 

それを言うとオスマンに一礼して、ネギは部屋を出て行った。

 

「……ここよ」

 

ルイズに案内されたのは学院内にいくつかある客室だそうだ。中は大きなベッドが一つとテーブルに椅子、あとこれまた大きなクローゼットがあった。

 

「夕食はあとでメイドが持ってくるから」

 

「はい、色々ありがとうございますと言うかごめんなさいと言うか……。なんか神聖な儀式を台無しにしちゃったみたいで」

 

「ふん、全くよ。まぁでも、早く帰れるといいわね。じゃ、私もう行くから」

 

そういい返事を聞かずにさっさと出て行ってしまった。

その後三十分ほどしてシエスタと名乗るメイドが持ってきた食事を食べ、その日はみんな疲れたと言うこともあり早々にベッドに入った。

 

 

 

 


 
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