No.585226

下吏の使い方

nebokoさん

潁川郡で働く軍師たちのヒトコマ。メイン荀彧で郭図と辛評、オチが荀諶ですw

2013-06-09 00:55:11 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:578   閲覧ユーザー数:578

本棚の低いところへ左手をかけ、つま先立ちになり背筋を伸ばす。

ぐっと右腕を伸ばしたものの、そこでようやく上段の棚に指がひっかかる程度。

残念だがこれではその上に乗せられている書簡は取れない。

「はぁ…」

諦めたようにため息を漏らし、先程使った棚の傍にある踏み台を取ろうと背後を振り返った。

すると、丁度部屋に入ってきた下吏が慌てて駆け寄ってきた。

「どれをお探しでしょうか?」

「……左から2つ目です」

「はい、どうぞ、荀彧様」

ニコニコと笑顔で差し出してくる。

その悪意のない笑顔に舌打ちしたくなるものの、ぐっとこらえて「ありがとうございます」と一言告げると、下吏は満足そうにそのまま部屋の片隅にある自分の机に戻り、部屋に入る前から手にしていた3つの書簡のうち一つをカラリと音をたてて広げた。

荀彧も何も言わずに、部屋で一番豪華な執務机に書簡を置くと、椅子に腰かけた。

まだ作られたばかりの新しい竹簡を手にとり、横に置かれた筆に墨を含ませると一気にサラサラと走らせる。途中、先ほどとってもらった書簡を広げようと筆を降ろした右手を伸ばす。だがその束の太さに片手でつかめないことに気付くと、諦めたように左手に持っていた竹簡も置いた。

両手で取り寄せた書簡をカラカラと音をたてて開けば、ふと自分の小さな手が目に入る。

先程この書簡を差し出した下吏の手は、この書簡を簡単に片手で掴めるほど大きかった。

(今更ですけど…)

どうせなら、あと少し成長してから秘術を受けるのであったと後悔したことは幾知れず。

自分の周囲には同じように軍師の才を見出され、秘術を受けたものは少なくなかったために、これほどにコンプレックスを意識させられることはなかったが、さすがに『大人』に囲まれれば意識せざるを得ない。ましてや政庁は『大人』向けに作られているものばかり。当然といえば当然なのだが、ふとしたときに不便さを痛感させられるのだ。

 

 

「そんなもの、周囲の下吏どもを顎でこきつかえばよい」

平然とそうのたまったのは、計吏の郭図である。

彼は潁川でも屈指の有力豪族郭家出身だ。

周囲に傅かれる生活に慣れているのだろう。

荀家も有力豪族ではあるものの、その権勢は郭家に遠く及ばない。

「そのようなくだらぬことに割く労力のほうが無駄じゃ」

「ま、そうは言うが慣れるのに時間はかかるさ」

と弁護したのは辛評である。

「ただ、郭図の言う通りだ。下吏にできないことを任されているのだから、下吏にさせるべきことは彼らにやらせたほうがいい。それより、潁陽の件だけどな…」

これでこの話はおしまい、とさっさと切り上げた辛評。

もともとその話をするために郭図の部屋を訪れていたのだ。

そこへ荀彧が両手に書簡を抱えて入ってきたため、先ほどの話となったわけである。

だが辛評の話題は再び遮られることとなる。

丁度荀諶が部屋に入ってきたためだ。

「あ、みんなここにいたんだ。お菓子あるけど食べる?」

「おい、今仕事中だろうが。お前の仕事はどうした」

「終わったからお茶にしようと思って」

ニコニコと笑顔を浮かべる荀諶。

外見や言動に騙されがちだが、実は非常に有能な官吏の1人である。

その気になれば、その日一日の仕事を1時間とかからずに片してしまうこともしばしばだ。

今日もそんな日だったのだろう。

だが荀彧が気になったのは、荀諶が手にしている菓子の方だった。

「そのお菓子どうしたんですか」

「買ってきて貰ったんだ♪」

誰に。

とは聞くまでもない。

おそらく背後で荷物を抱えて青い顔している下吏だろう。

荷物の中には、荀諶が手にしているお菓子が大量に入っているものと思われる。

そこでようやくそれまで黙っていた郭図が口を開く。

「背後の下吏は仕事を終えておるのか」

「まだだよ。でも自分で買いに行ったら怒られるし、こんなにいっぱい持てないし。結局ついてきて貰うことになるから、だったら買ってきて貰った方が効率がいいと思って」

さも当然のように説明する荀諶。

先程の郭図の言葉からすれば、効率的で正しいのだろうが、明らかに使用用途を間違えている。

ビシッとこめかみに青筋を浮かべたのは、もちろん郭図ではなく辛評で。

 

「お前なあああ!!!」

「だ、だって!……だって!」

 

とたんに始まる怒号と悲鳴。説教と鳴き声。

言葉を先んじられた郭図は開こうとした口を一文字に閉じると、チラリとその弟の様子を伺う。

(変に影響を受けねばよいが)

だが郭図の心配は少しだけ遅かった。

荀彧は感情をめったに浮かべることのない口元を少しだけ動かし、

「なるほど、確かに効率的ですね」

そうつぶやくのだった。

 

潁川郡で働いている軍師たちですw

明らかに軍師の外見年齢に差があるのが気になりました。

荀攸・沮授・荀諶<荀彧・郭図<郭嘉・審配・田豊・逢紀・辛評<許攸 かなぁ、と。

いったいどういう基準で、荀攸や荀彧はこの年齢で成長止めちゃったんだろうと思ったわけです。

そんな疑問から生まれた話なので、あんまり中味ないです、すみませんw

 

あと、このメンツで書くと、辛評が面倒見のいいお兄ちゃんで、郭図がリーダー格になりますね。荀攸は鐘ヨウが出てこないとポジションつかみづらいです。次巻あたりで帝と一緒に出てこないかな。


 
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