第4弾 強き剣士、弱き弾丸
詩乃Side
ようやく解放された今日の授業、陰鬱とした気分で私が通う高校の校門から出る。
今日も今日とてなんら変わる事のない1日だった。
いつものつまらない学校生活、やっぱり私の居るべき場所はあの銃の世界、GGOなんだと思う。
この現実世界、最近で楽しい事なんて1つも……そこまで考えて、楽しい事があったのを思い出した。
「夏休み、楽しかったなぁ…」
思い浮かべたのは夏休みに私が想いを寄せている1つ年上の幼馴染、景一が一緒に連れて行ってくれた奈良県への旅行。
彼の友達もたくさんいて最初は戸惑ったけれど、みんな良い人達だった。
男子達は景一の武術仲間で、女子達は男子達の恋人兼ゲーム仲間。
ALOという魔法と剣の
羨ましい、ただそう思っていただけなのに、女子達……明日奈達は私に凄く良くしてくれた。
彼女達と電話番号やメアドの交換をしたので連絡も取り合っている。
だけど奈良の宿泊地でみんながALOをやっている時はその輪に入りたいと思ったけど、
私がやっているゲームは女性がほとんどプレイしていない銃の世界だ。
結局、私は自分から輪の中に入らずにいた。それでも、みんなと過ごした時間は凄く楽しかった。
冬休みになったら、また会えるかな?
そんな風に考えながら文房具店でいくつかの買い物を終え、スーパーで夕食の材料を購入しようと思ったその時…、
「おい、朝田ぁー」
最悪なのが現れた。
小さな路地から現れたのは遠藤という女子、その後ろには2人の女子。
同級生と呼ぶのも甚だしく、友人だったと思うと過去の自分を殴りたくなる汚点的存在。
何度も私からお金を集った、私の家に見知らぬ人間を連れ込んだ、そして……私の過去を全校生徒に向けて暴露した。
それによって私の生活は中学時代と変わらなくなってしまった、元から対して変わってはいなかったけれど…。
「金貸してくれよ、1万」
「嫌…。貴方達に貸すお金はない」
路地に無理矢理連れられ、言われてみれば金を貸せ。今までにも集られ、渡した事はある。
だけど強くなりたいと思い、平静を装ってそう言葉を振り絞った。
そして私は取り囲まれ、遠藤は指と拳で銃を形作り、私の額に向けて人差し指を向けて…、
「ぱぁんっ!」
「っ!?」
それだけで私の全身から力が抜けた。
心拍が上がり、呼吸が乱れて、強烈な吐き気に襲われ、体を折り込む。過去のトラウマが押し寄せてきた。
「兄貴がさぁ、モデルガン持ってんだけど今度学校で見せてやろうか? お前好きだろ、ピストル?」
さらに放たれた言葉に心が壊れそうになる。
逃げたい、ここから逃げ出したい、だけどそれは出来ない。
そんな思いが反芻してくる、誰か助けて…。
「たす、け……ケ、イ…」
「はっ、じゃあ今持ってる分だけで許してや「……ほぅ、誰が誰を許す、と…?」るっ!? だ、誰だ、お前!?」
漏らした一言に遠藤が答えたけど、誰かが介入したみたいで遠藤は驚いている。
この声は、もしかして…。身体の辛さを我慢して顔を上げてみると、そこにいたのは…。
「……もう一度だけ問う、誰が誰を許すんだ?」
「あ、う、は…」
「ケ、イ…?」
私の1つ年上の幼馴染のケイこと国本景一だった。
遠藤と2人の女子はまるで金縛りにあったかのように動けなく、喋れなくなっているみたい。
ケイはそのまま遠藤に近づき、彼女が銃を形作った腕を掴みあげて締め上げた。
「は、離せっ!? い、痛っ!?」
「……痛い、か…よくもぬけぬけとそんな言葉を言えるものだな。
人の心の傷を抉っておいて、自身が痛みを伴えばその様か…」
抵抗しようとした遠藤が痛みを上げるほどに腕を締めている。
そんなケイの纏う空気はまるで抜き身の刀、触れれば斬り裂かれてしまいそうな錯覚を覚える。
「え、遠藤を離せよ!」
「警察、呼ぶわよ!」
「……呼びたければ呼べばいいさ…。だがその場合はこちらも最大限の力を行使させてもらう。
お前達が彼女にしたことを公表させてもらおう、私は彼女を守る為なら仲間にも協力を仰ぐし、
師でさえも利用しよう。警察に顔が利くからな…」
2人の女子がそう叫ぶがケイの言葉を聞いてすぐさま顔色を青くさせた。
そういえば、明日奈は結城家のお嬢様で、雫さんは朝霧財閥の御令嬢だったっけ?
武術の師匠である八雲さんも凄い人らしいし…。
「……分かったならさっさと去れ。次、詩乃に同じことをすれば……容赦はしない…」
「「「ひっ!?」」」
最後にケイが睨みを利かせると、3人は必死に逃げていった。
私は深呼吸をしながら心を落ち着かせる。
「……詩乃、大丈夫か?」
「……だいじょうぶ、ありがと、ケイ…。でも、どうして…」
「……メールを送ったのだが、何も無かったから少し気に掛かったんだ」
そう、だったんだ…でも、情けないところを見られちゃった…。
「……いつもなのか、こういうことは?」
「いつもってわけじゃないわ。今日は偶然こうなっただけ、学校に連絡してもアテにならないし…」
また彼に心配されてしまった、ケイにだけはこんな姿見せたくなかったんだけどなぁ。
アイツらが走っていった後、地面に座り込んだ私に手を差し伸べてくれたので掴んで立ち上がる。
「……家まで送ろう」
「うん、あ…先に買い物を済ませてもいいかしら?」
「……あぁ、構わない」
買い物に付き合ってくれた上に、バイクの後ろに私を乗せてアパートまで送ってくれた。
「態々ありがとう、送ってくれて…」
「……困った事があったらすぐに連絡を入れてくれ。絶対に行くから…私じゃなくても、明日奈達でも構わない…」
「うん、そうするから……だから、心配しないで…」
SAO事件の時は私が心配していたのに、無事に帰ってきたら私の心配ばかり。
大丈夫だと伝え、微かな笑みを浮かべたケイはバイクで帰っていった。
自室のドアを暗証番号と鍵で開け、中に入ってロックの確認をしてから誰もいない部屋に向けて「ただいま」と呟く。
スーパーで購入した冷蔵食品を冷蔵庫に入れてから通学鞄を床に置き、私服に着替えた。
遠藤達を相手に少しでも立ち向かえたのは1歩の前進だと思える、
それに彼女達がいなくなるまでは立っていられた……ケイが本当に助けに来てくれたのは、予想外だったけど///
2日前にはGGOで屈指のプレイヤーの1人である『ベヒモス』という男も倒す事ができた。
今なら自分の
『プロキオンSL』、GGOに登場する光学銃のモデルガンだ。
GGO内で行われた大会『バレット・オブ・バレッツ』、通称『BoB』の参加賞として受け取ったものである。
PTSD(トラウマ)を克服する為に始めたGGOでの成果をこのモデルガンで試してみたのだけど、結果は散々。
だけどいつまでも逃げるわけにはいかないので、今日は向きあってみよう…。
だけどそれと直接向き合った瞬間、
「うっ…!」
動悸が激しくなり、呼吸が乱れ、眩暈や吐き気が押し寄せてきた。
すぐさまモデルガンを箱に入れ、すぐさまユニットバスに駆け込んでそこの便器の蓋を上げて、何度も嘔吐した。
体内のものを全て吐き出すように…。
それからフラつきながらも眼鏡を外して洗面台から流れる水で両手と顔を何度も洗い、
口を漱いでから綺麗なタオルで拭く。
自分でもわかるほど覚束ない足取りでベッドの上に沈み込む。
「また、無理だった…」
そう呟く。いままでに何度も同じようなことをしてきたけど、未だに乗り越えることが出来ない。
どうしても、どうしても乗り越える事ができない…。
「誰か…助けて…。だれ、か……たすけ、て…よ…」
私はそのまま涙を流して枕に顔を埋めた。思えばあの日から、私の全てが始まった…。
詩乃Side Out
To be continued……
後書きです。
雑種(遠藤)を撃退したのは我らが景一君でした~w
だから言ったっでしょう? 恭二君?なにそれ、美味しいの?な話しだとw
次回は詩乃の過去話です、こちらも原作を読んでいない方々の為に必要な部分を書きました。
その代わり、原作とは違う過去になっていますよ。
それでは・・・。
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第4弾です。
今回は詩乃視点からになります。
どうぞ・・・。