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真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第七節:覇王の帰還、動く三国

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-06-03 07:57:36 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:5424   閲覧ユーザー数:4027

まえがき コメントありがとうございます。五月終了前のこの時期に真夏日で気温が30度超えるとかいう日本オワタ宣言に絶望感を覚えているsyukaです。さて、皆さんのコメントから私も改めて思ったこと、覇王軍強すぎっすわ!6人、二刻で30万の五胡兵殲滅とか・・・(合掌)。それではごゆっくりしていってください。

 

 

そわそわ。そわそわ。

 

「ご主人様、もう少し落ち着こうよ~。」

「敵兵が三十万もいるのです。流石に二刻やちょっとでは、まだ時間が掛かるでしょう。」

「いや、そうだけどさ・・・。」

「一刀、ただいま~♪」

「へっ?」

 

婆ちゃんたちが戻ってきた。・・・婆ちゃん以外全身血まみれなんだけど・・・。

 

「五胡は?」

「殲滅してきたわよ。きっちり三十万全員ね。」

「・・・。」

「た、たった六人で三十万の兵を殲滅して来たのですか?」

「えぇ、意外とあっけないものだったわ。」

「最後の八万ほどは美桜が一人でやってしまったがの。」

「美桜様の百花繚乱・・・あれは美しかったわ。」

「使ったのは久しぶりだったから、少し疲れたわ。」

「ところで・・・爺ちゃんは?」

「ここにいるじゃない。」

 

婆ちゃんが指差す先にはどこかで見覚えのある少年が一人。・・・え?

 

「見た目・・・っていうか、年齢からして若返ってるよね?」

「体内の気を限界まで高めて覇王現界を使ったからのぉ。今日中はこの姿のままじゃ。」

「一刀のお爺さま、若い頃の容姿は一刀に似ているのね。・・・それもそうよね、お爺さまなのだから。」

 

一人でうんうんと頷いている。そっか、見覚えがあると思ったら俺自身だったのか。爺ちゃんの若い頃なんて俺が見たはずもないわけで・・・。

 

「一刀様、お一つお願いがあるのですがよろしいですか?」

「? 何ですか?」

「私を、この管轤を一刀様の兵として陣営に加えていただきたいのです。久しぶりに戦場に出て、スリルのある世に身を置いておきたいのです。」

「管轤、本音は何かしら?」

「私は美桜様、影刀様のサポート役としてお二人に仕え、乱世を駆け抜けました。そして、今は一刀様がその立場におられます。この世に一刀様を召喚した者の責任も兼ねて、一刀様のお側で力になりたいのです。美桜様、影刀様、一刀様、お許しをいただけないでしょうか?」

「私は構わないわよ。あなたはいつも神出鬼没だったのだし、それなら居場所がわかる方が安心するもの。」

「そうじゃな。じゃが、儂らの世との行き来は大丈夫なのか?」

「それはご心配なく。一刀様のお部屋にある鏡で繋がっていますので、いつでも連絡可能ですよ。それに貂蝉と卑弥呼が持っている端末に連絡いただけばいつでもそちらに伺いますので。」

「そうか。それは安心じゃな。」

「俺も良いですよ。あとは桃香が承諾してくれれば・・・」

「管轤ちゃんなら大歓迎だよ~。管轤ちゃん、これからよろしくね♪」

「はい、よろしくお願いします。一刀様、桃香様。」

「あれ?桃香と管轤さんって知り合いだったりする?」

「うん。ご主人様と会う前に会ったことがあって、少しの間だったけど一緒に旅したの。」

「へぇ~。」

 

意外な繋がりもあるんだな。婆ちゃんたちに縁のある人が桃香の知り合いだったなんて思いもしなかった。

 

「私がいなければ祝融が寂しくて泣き出しそうですからね。」

「そんなこと言っちゃって、あなたが寂しくて私の側にいたいって言うと思っていたのだけど。」

「まぁ、そう言う事にしておきましょう。」

 

管轤さんと祝融さんがお互いをからかい合いながら談笑している。ほんの些細なことだけど、これだけで仲の良さが垣間見える。

 

 

「とりあえず、婆ちゃんたちは一刻も早くお風呂に入ったほうがいいよ。流石に全身血まみれじゃ下手に市にも行けないでしょ。紫苑、お風呂にお湯を張って来てもらっていいかな?」

「分かりました。」

「一刀、久しぶりに一緒に入る?」

「な!何言ってるのさ!?//」

「あら、昔は毎日一緒に入っていたじゃない?何を今更恥ずかしがるのかしら?老後の楽しみで可愛い孫とお風呂っていうのも乙だと思うのよ。」

「婆ちゃんは全然老後とか言う年には見えないの!!というか、分かってて言ってるよね!?」

「ふふっ。さて、何のことかしら。」

「くぬぬ・・・あぁ言えばこう言う。」

「諦めるんじゃな。美桜に口で勝てるものなど存在せんわい。」

「・・・。」

 

そう言えばそうだった。婆ちゃんはこちらがどう言おうと何かしらの手段で言いくるめてくる。・・・これは諦めたほうが良さそうだ。

 

「まぁ、一刀の恥ずかしがる顔も見れたし満足したわ。祝融、管轤、一緒に入りなさい。」

「えぇ。」

「お供します。」

「それでは浴場へ案内しますね。」

「よろしく頼むわね。」

 

婆ちゃんたちは謁見の間を抜け、浴場へと向かった。

 

「この流れだとかげっちは私と卑弥呼と三人で・・・ぐふふっ♪」

「こ、これ貂蝉!そのように破廉恥なことを言うでない!影刀殿の、しかも良い男子の肉体に戻った体など直視した日には儂は・・・//」

「一言断っておくが、儂は一人で入るからの。儂の奥義で消し炭に変えられるから覚悟があるのなら入ってくるが良い。」

「薔薇と劉弁様はあんなおぞましい物見たらいけませんよ。」

 

俺は近くにいた二人の視界を俺の手で妨げた。卑弥呼が腰をくねらせて頬を染めている姿など、絶対に見せたくない。それに加えて、俺も見たくないから視線を外している。

 

「面白い方々ではないですか~。」

「姉様、確かに色んな意味で面白いですが・・・。」

「劉弁様、教育上よろしくありませんので無闇に視界に入れぬようお願いします。」

 

馬騰さんも俺と同意見みたい。

 

「劉弁様は何でも吸収してしまいそうですからね・・・。良い意味でも悪い意味でも。」

「それだけ純粋なのだよ。お二人を自分の愛娘のように教育係をしているつもりだが、男っけ勝りの娘のようには育って欲しくないのでな。」

「悪かったな、男勝りで。どうせ色気なんてねぇよーだ。」

「翠、お前が悪いんじゃない。こんなお袋に育てられたんだ。仕方ないぜ。」

「あんた、どの口がそんな事をほざくんだい?北郷殿のように女の子の一人でも捕まえてから言うんだね。」

「あ、兄貴を引き合いに出すのは卑怯だと思うぜ?」

「ほら、清羅ちゃんとかどうだい?元はあの子の部隊で働いてたんだろう?脈はないのかい?」

「ありゃ駄目だ。兄貴に会ってからの姐さんはメロメロ全開だからな。隙あらば兄貴目掛けて一直線だしよ。」

「ご主人様は頼りがいがあるんだよね~。それに優しいし~、からかい甲斐もあるしね~。」

「蒲公英、なんか星に似てきてないか?」

「星お姉様の話って役に立つんだよ!恋愛のイロハも教えてくれるしね♪」

「・・・星ならやりかねないな。」

「容易に想像できるぜ。」

 

そんな他愛ない会話を聞きながら陽が暮れ、夜となった。

 

・・・

 

俺は食事を終え、夜の庭を散歩していた。

 

「ふぅ、最近の夜風は少し身に染みるな。」

 

 少しずつ寒くなってきたこの頃。もうすぐ秋が終わり、冬に近づくんだろう。こっちの冬は雪とか降るのかな?

 

 

「一刀、奇遇じゃの。」

「ん?爺ちゃんか。どうしたの?夜風にあたりにきたの?」

「そんなとこじゃ。美桜と同じペースで酒を飲まされては堪らんからのぉ。」

「はははっ!爺ちゃんがそんな困った顔をしてるの久しぶりに見たよ。」

「まったく、笑い事ではなかぞ・・・。」

 

 見てくれは俺と同世代くらいなんだけど、言葉の端々から爺ちゃんなんだなぁと実感できる。俺たちはゆっくりと進みだした。それにしても、久しぶりに爺ちゃんの鹿児島弁を聞いた。親しい人と二人で話すときはいつもこの口調になるんだよな。

 

「こっちん生活はどうじゃ?もう慣れたか?」

「すっかり慣れたよ。流石にこっちに来た当初は結構戸惑ったけどね。」

「そうか、そいなら良か。」

「爺ちゃんたちはどう?何か変化はあった?」

「特になか。そう言えば、先月に霧刀たちの家に遊びに行ったど。」

「へぇ、珍しい。」

「霧刀も菊璃さんも鞘香も元気だったぞ。」

「父さんや母さんは特に変わりなさそうだね。鞘香はちょっと心配だけど・・・。」

「鞘香も相変わらずじゃ。うぬが戻ってきた時ん反動は凄そうじゃがの。」

「あ、あはは・・・。」

 

 まぁ、予想の範疇かな。

 

「それに、もし今ん子たちを全員妻にして戻ってきたんなら、数十人の義姉が出来るわけじゃから・・・そん時ん反応が楽しみじゃ。くっくっく、儂のひ孫も何人出来るか楽しみで仕方ないわい。」

「・・・まぁ、誰かと結ばれるかどうかは分かんないけどね。」

「時代が現代ならまだしも、後漢の時代じゃ。王として、側室として迎えるのなら何人でも大丈夫じゃよ。」

「う~ん、確かに皆のこと大切だけど・・・。」

「こげなこつは自然に身を任せておけばよか。」

「そんなもんかね~?」

「そげなもんじゃよ。」

 

 俺が誰かと結ばれる・・・かぁ。あんまり実感ないけど、爺ちゃんの言うとおり自然に身を任せようかな。

 それからも十数分、二人で庭の周りを談笑しながら歩き続けた。

 

・・・

 

「そろそろ俺は部屋に戻るね。」

「もう戻るんか。」

「薔薇と劉弁様が待ってるからね。以前に俺の戻りが遅かったときがあって、戻ってくるまで寝台に座って待ってたんだ。」

「ふむ、健気なもんじゃな。うぬにはもったいなか。」

「うん、自分でもそう思うよ。じゃあ、あんまり待たせちゃ悪いから。」

「そうじゃな。」

「おやすみ、爺ちゃん。」

「おやすみ、一刀。」

 

俺は爺ちゃんにそう言い残して自室へと向かった。

 

「美桜、木の裏に隠れとるんは分かっとるど。出てこんか。」

「あらあら、バレていたのね。」

「おいが気付かんとでも思うておったか。」

「いえ、全然。」

「うぬは昔っから食えんおなごじゃ。」

「そんな女にあなたは惚れたんでしょ?仕方ないわ。」

「そげな恥ずかしかこつ、おいには言えん//」

「ふふっ♪」

 

 こやつは分かりきっとる上で聞いてくるんが質ん悪か。おいが美桜に惚れ込んだんは否定せんが。

 

「ところで、久しぶりに一刀と二人っきりで話してみてどうだった?何か感じたことはあった?」

「本質的な部分は特に変わっとらんかった。これはいいことじゃな。それに加え、相手を思いやる心が想像以上に成長しとった。」

「それがあるからこそ、あの子は皆に慕われているのよ。」

 

 

「そげなこつは分かっとる。人ん上に立つもんが持ち合わせるんは強さのみじゃいかん。皆を愛し、そん全てを支えるこつん出来る器が必要じゃ。」

「あなたの目から見て、一刀はどうだったかしら?」

「合格じゃ。じゃが・・・おなごばかり集めるんはどげんかと思うぞ。」

「集めてるんじゃないわ。一刀の魅力に触れ、自然と集まってくるのよ。あなたにも身に覚えがあるんじゃない?」

「・・・そう言えばそうじゃな。一刀がおいや美桜と同じく覇王となるか、はたまた皇帝となるか。見ものじゃな。」

「えぇ、本当に。」

 

 それから二人はどちらからともなく寄り添い合い、闇夜に浮かぶ満月を眺めていた。愛する孫の未来に思いを馳せながら。

 

・・・

 

その夜、場所は変わり建業。謁見の間にて、定例会として間諜から報告のあった事柄について冥琳が淡々と述べていく。

 

「次に成都からの報告ですが、何やら変わった者たちが一刀の客として成都を訪れているそうです。」

「変わった客?」

「はい。占い師管轤、それと・・・?これは報告に必要なのか?一刀の祖父と祖母とのことです。」

「一刀さんより強いというお爺さまとおばあ様ですね。」

「うむ。しかし、これだけの報告なら・・・!?なるほど。これは十分に報告の価値がある。」

「何かあったの?」

「成都に向けて五胡兵、三十万の大軍が進軍したらしいのですが・・・。」

「ですが?」

「一般兵を用いずに六人の将によって、二刻の間に三十万の兵を殲滅したとのことです。」

「なっ・・・」

 

これには呉の将たちも驚きを隠せなかった。それもそうだろう。三十万の敵兵に対してわずか六人での出撃。しかも二刻の間に全てを殲滅など人間業ではないからだ。

 

「何よそれ!ありえないわ!同等数の兵を動かしたのならまだともかく、たったの六人でなんて・・・。」

「あの天の御使いは何を使ったというの?」

「一刀自身・・・いえ、蜀将は一人として動いていないとのことです。一刀の祖父母、貂蝉に卑弥呼とかいう化物。それと、つい最近蜀陣営に加わった者二名とのこと。」

「・・・なるほど。あの時、異様なほどの寒気を感じたのはその者たちが五胡兵と対峙していた頃のことかもな。」

「母様?」

 

 神妙な面持ちをしていた水蓮が、ぼそっと呟いた。

 

「今日の昼間だったか。私が自室で職務に勤しんでいた時だ。今日は少し空気が違うなと感じたその瞬間、何とも形容し難い寒気を感じたのだ。空気自身が強い殺気を持っているような、背筋が凍るほどのな。殺すだけでは足らぬ、完膚無きまでに、塵一つ残してはいかんと言うような・・・身の毛がよだつとはこの事かと実感させられたわ。汗が全身から吹き出し、手足が震えた。恐怖に怯えたことなど一度も無かったこの私が、だ。」

「・・・。」

 

 この母様の汗りよう・・・、初めて見たわ。

 

「おそらく、この情報には魏にも間諜により通達が行っているでしょう。」

「だろうな・・・。明日の早朝から蜀、魏への対策会議を行う。冥琳、穏、愛璃、策を練っておけ。」

「御意。」

 

・・・

 

 場所は変わり陳留。桂花は蜀に出していた間諜からの報告を大急ぎで華琳に伝えるため、華琳の部屋へ向かった。

 

「はぁ、はぁ・・・か、華琳様!夜分にすみません!」

「騒々しいわね。それで、どうしたの?」

「蜀に放っていた間諜の報告なのですが、五胡の三十万の軍がわずか二刻の間に落とされました!」

「な、なんですって!?・・・将を全員叩き起して謁見の間に集めなさい!」

「は、はい!」

 

 

 

いきなりとんでもないものが飛び込んできたわね・・・。とりあえず、詳しく聞きましょう。私は謁見の間に向かった。

 

「いきなりなんなのだ、もうすぐ眠るところだったのだぞ・・・。」

「うるさい!緊急事態なんだから黙って歩きなさい!!」

「ぐぅ・・・。」

「寝るな!」

「おぉ。」

 

 緊急事態だというのに緊張感がないわね。

 

「夜分遅くに悪いわね。皆の耳にも入れておかないといけないと思ったから。」

「華琳様がそう言うには相当の要件なのでしょう。」

「えぇ。蜀陣営によって五胡の三十万の兵がわずか二刻の間に落とされたそうよ。」

「華琳様、流石にそれは無理がありますって~。そんなものが出来るのは妖の類だけでしょう?」

「・・・春蘭、私がこんな冗談を言うと思うのかしら?」

「うっ・・・。」

「阿呆の春蘭は置いておいて桂花、詳細を教えて頂戴。」

「御意。本日の昼間、六人の将が兵を用いずに戦場に赴き、二刻の間に三十万の五胡兵を殲滅し成都に戻ってきたとのことです。」

「蜀の将にそんなずば抜けた者はいたかしら?」

「何でも御使いの祖父母と管轤が来ていたようで、その三名に貂蝉と卑弥呼という化物二名と新参で祝融という者。その六名で殲滅させたとのことです。」

「あのキモイ化物かいな・・・。」

「あいつらとは二度と戦いたくないの~・・・。」

「・・・私の中であの二名は人間として見ていない。」

「っちゅうことは、他の四人もあいつらと同等ってことやな・・・。憂鬱になるわぁ。」

「とにかく、ここで動かねば機を逃すわ。稟、風、桂花、明日の早朝にまた軍議を開くから策を練っておきなさい。」

「御意。」

 

 さて、これからどうしようかしら?これはただでは済みそうにないわね。

 

・・・

 

「んっ、んっーーー・・・んん。」

 

もう朝ですかー。昨日は一薔薇ちゃんと一緒に一刀さんの帰りを待ってたんですよね~。あの時は確かぁ・・・。

 

~~回想~~

 

「一刀、遅いわね・・・。」

「薔薇ちゃん、何かそわそわしてるね~。どうかしたの~?」

「あいつがいないと落ち着かないのよ・・・。」

「へぇ~。けど、ちょっと分かるなぁ。」

「へっ、姉様?」

「一刀さんと一緒にいると、こう・・・胸の中が温かくなって、ぽわぽわ~ってなるの。」

 

もしかして、姉様も一刀のこと・・・。

 

「薔薇ちゃんは、何で一刀さんに真名を許そうと思ったの?」

「私の場合、たまたま一刀に着替えを見られて女ってことがバレて・・・勢いもあるかもしれないけど、この人になら真名を許してもいいかなって思ったんです。この戦乱の世、話してみて直感的に気を許せると感じた一刀ならいいかなって。月が真名を許しているの点からも信頼出来る人物かなと。」

「そっか~。私も、一刀さんに真名を預けよ~♪」

「ね、姉様?そんな簡単に・・・」

「簡単じゃないよ~。まだ出会ってからそんなに時間は経ってないけど、十分に一刀さんの優しさを知ったからね~。薔薇ちゃんや月ちゃんが真名を許すのも分かるな~って。ねぇ、薔薇ちゃんも一刀さんのこと、好き?」

「えぇ、少なからず好意を持っています。・・・ん?薔薇ちゃん『も』?」

「私も一刀さんのこと好きだよ~♪男性であんなに優しい人っていないもん♪」

「・・・」

 

我が姉ながら本当に思慮しているのか悩むところね・・・。まぁ、気持ちは分からくはないけどね。

 

 

「早く一刀さん戻ってこないかな~♪」

「姉様、そんなにワクワクすることですか?」

「うん♪」

 

 姉様まで一刀の虜に・・・あ、あれ?ということは私も一刀は既に虜になってるってこと?・・・いつの間にこんなにも私の中で一刀の存在が大きくなったのかしら?

 

「ただいま~。」

 

丁度よく一刀が戻ってきたわ。噂をすれば影というやつね。

 

「一刀さん、お話があるのですが良いですか?」

「良いですよ。何です?」

「私の真名をいただいてもらえないでしょうか~?」

「・・・薔薇、説明をお願いしても良い?」

「無理。」

「劉弁様、理由をお聞きしてもいいですか?」

「最近、一刀さんのことを思うと胸がぽわぽわ~ってなるんですよ~。一刀さんは優しいですし、是非真名で呼んでもらえたらと嬉しいなぁと思ったんです。・・・駄目ですか?」

「いや、駄目ということはないのですが・・・俺は許せる真名を持ち合わせていませんよ?」

「一刀さんは一刀さんと呼びますので無問題です~♪」

「いいのかなぁ・・・。」

「別に構わないのではないかしら?姉様がこう言っているのだし、その方が喜ぶわ。」

「そうだな。難しく考えるのは止めよう。劉弁様、この北郷一刀、謹んでお受けします。」

「はい♪私の真名、百合(ゆり)を一刀さんにお預けします。改めて、よろしくお願いしますね、一刀さん♪」

「はい。こちらこそよろしくお願いしますね、百合様。」

「それと、敬語は使わなくて良いですよ~。様もいらないですね。」

「いえ、ですが・・・」

「薔薇ちゃんは良くて、私は駄目なんですか?」

「うっ・・・そんな捨てられた子犬のような目をされても・・・」

「諦めなさい、姉様は一度言いだしたら止まらないの。」

「分かりました。分かったよ。百合、これからもよろしくね。」

「・・・っ!はい♪」

 

~~回想終了~~

 

「そうでした、一刀さんに真名を預けたのでしたね。ふふっ、一刀さんも薔薇ちゃんもまだ夢の中のようです。」

「劉弁はいつも早起きなのだな。」

「あ、鈴さん。おはようございます。」

「おはよう。」

 

 鈴さんがひょこっと出てきました。いつも思うのですが、綺麗な人ですね~。

 

「鈴さんは眠ったりしないのですか?」

「私も休息はとるぞ。しかし、人間の数十倍の体力があるゆえ基本は眠らずとも活動は出来る。」

「ほえ~、便利ですね~。」

「少しばかり市を散策しようと思うのだが、共にどうだ?」

「面白そうですね~。しかし、今は二人の寝顔を見ておきたいのでまた誘ってください。」

「うむ。了解した。では行ってくる。」

「いってらっしゃ~い♪」

 

 鈴さんは行ってしまいました。私はもう少しだけ・・・

 

「ん、んん~~~。」

 

 あら、一刀さんが起きてしまいました。もう少しだけ寝顔を見ていたかったのですが、しょうがないですね。

 

「一刀さん、おはようございます。」

「んん~~~?百合?」

「はい、そうですよ。」

「ふああああぁぁぁ・・・。ん・・・ふはぁ。百合、おはよ。」

「一刀さんの寝顔、可愛かったですよ~♪」

「そ、そういうのは本人には言わないで欲しいかな。女の子ならともかく、男の俺が言われるとどうも複雑な気持ちになるから・・・。」

 

 

「そうなんですか~。」

「そうなんだよ。」

「ですが、薔薇ちゃんの寝顔は可愛いですよね~。」

「ですがと繋がってないように気がするけど・・・確かに可愛い。起きるまで眺めとこっか。」

「はい♪」

 

 それから薔薇の寝顔を眺めること十数分後・・・

 

「ん、んんんーーー・・・」

「あっ、起きましたよ。」

「んっ、ん?・・・二人とも、なんで私をそんな愛玩動物みたいな目で見てるのよ?」

「寝顔が可愛かったから♪」

「寝顔が可愛かったんだよ~♪」

「あ、あんたたちねぇ・・・はぁ。とりあえず、おはよ。」

「おはよう。二人とも、朝ごはん食べに行くから支度してね。」

「はい♪私もうお腹ペコペコですよ~。」

「私も。」

「俺は部屋の外で待ってるから。」

「分かったわ。」

 

・・・

 

俺たちは朝食を食べるために庭へと向かった。・・・あれ?なんか懐かしい献立が並んでる。白いご飯に味噌汁。それにだし巻きの卵焼き。

 

「一刀、調理場ちょっと借りたわよ~。」

「それは別に気にしてないけど、料理なら俺がしたのに。」

「滞在期限が今日までだからね、たまにはお袋の味でも思い出しなさいな。」

 

爺ちゃんは椅子に座ってのんびりしている。家にいるときは新聞を読んでたけど、ここにはないからなぁ。

 

「ご主人様のおばあ様、料理がお上手なんですね。」

「月、おはよ。」

「おはようございます。今日は私がお料理しようと思ったのですが、先に美桜さんがお料理されていたので。」

「そうなんだ、何か悪いね。」

「いえ、私も美桜さんのお料理しているところを見ながら勉強させていただいたので。」

「董卓ちゃんも凄いじゃない。私が料理で使った調味料まで味見で当てちゃうんだから。」

「味付けがご主人様のものにとても近かったので、ご主人様とお料理をしている時に使っている調味料を覚えちゃいました。」

「なるほどね。月ちゃんは良いお嫁さんになるわよ~。」

「へぅ//」

「あぁ、可愛い~~♪思わずぎゅーってしたくなっちゃうわ♪」

「わぷっ。」

「婆ちゃん、もうぎゅーってしちゃってるよ。」

「(一刀の有無を言わせぬ行動は美桜さんからの遺伝なのかしら?)」

「・・・この婆ちゃんの行動に凄く身に覚えがあるぞ。」

 

婆ちゃんに抱きしめられた時は毎度のごとく窒息しかけてた気が・・・。

 

「婆ちゃん、そのくらいにしときなよ。月が窒息したら大変だから。」

「相手が一刀じゃないんだし、優しくしてるから大丈夫よ。」

「・・・俺の時はどうしてるのさ?」

「思いっきり♪」

「そりゃ俺が窒息しかけるわけだ。その度に三途の川を渡りそうになるから恐ろしいよ。」

 

・・・

 

それから婆ちゃんの手料理に皆で舌鼓を打った。うん、久しぶりに食べたけどやっぱり美味しかった。素朴な料理だけに奥深さを感じられる、そんな味付け。

 

「では美桜、良い頃合じゃ。そろそろ戻るかの。」

「そうね。」

 

爺ちゃんと婆ちゃんが立ち上がった。

 

「もう戻るんだ。夜までいても良いのに。」

 

 

 これからしばらく会えないと思うと少し寂しく感じられる。今の俺の本音だ。

 

「なぁに、これが今生の別れと言うではないのじゃ。」

「それとも何~、もしかして寂しいの?」

「そ、そんなこと無いけどさ・・・」

「あんたにはこんなにもたくさんの仲間がいるじゃない。あんたはやるべき事を全部やりきってから、あっちに戻ってこれそうなら戻ってきなさい。この子達と一緒にね。」

「う、うん。」

「では一刀、皆、達者でな。」

「一刀のこと、よろしくお願いね。管轤、頼む。」

「了解です。お二人共、お元気で。」

「美桜ちゃん、かげっち、またねん。」

「ご主人様のことは儂らに任せておけい。」

「美桜様、影刀様・・・この祝融、絶対にかずくんの力になってみせます。」

「えぇ、よろしくね。」

 

 二人はそう言うと、眩い閃光と共に現代へと戻っていった。

 残された俺たちは二人の姿が消えた後も、しばらく空を見上げていた。その時の空は憎たらしいほどの青空で、少し寂しい気持ちも空へと消えていった。

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。覇王の帰還、動く三国はいかがだったでしょうか。管轤の参入によりチート軍団に磨きがかかってしまいました。・・・パワーインフレに要注意。さて、劉弁様の真名、百合についてですが、元は白百合。真っ白な心のまま純粋無垢な子でいてほしいという思いからこの真名に決めました。まぁ、劉協が薔薇なら劉弁は百合だろ。という謎思考が働いてしまったせいでもありますが・・・。それでは次回 第七節:一時の休息、開戦の兆し でお会いしましょう。次回もお楽しみに!

 


 
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