No.582082

Fate/The_Ultimait_Heroes

第一回Fate人気投票で投稿した支援SSです。その時代に書かれたものであることを考慮していただけると幸いです。

2013-05-31 23:20:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7353   閲覧ユーザー数:7311

「シロウ――――貴方を、愛している」

 

 聖杯戦争が終わりセイバーはサーヴァントとしての役目を果たし、美しい朝焼けの中、

笑顔で俺の前から姿を消した。

 

「じゃあもう未練はないんだ。セイバーが、いなくなってもさ」

「―――ああ。未練なんて、きっと無い」

 

 俺はセイバーのことが好きでセイバーも俺を愛していると言ってくれた。

 それでもあの別れは二人とも納得したものなんだ。そこには未練や後悔なんてある筈が

ない。

 でも、彼女のことはきっと忘れない。忘れられる筈はない。

 だって……だってその彼女は……

 

「シロウ、すみませんがそこの醤油を取ってもらえませんか?」

 

 ……今、俺の隣りでメシを食っているんだから。

 

 

 <Fate/stay night : Saber TrueEND +α After Story>

 

 

「あ、ああ。ほらよ、セイバー」

「ありがとうございます」

 

 あの黄金の別離から早二ヶ月。

 今はいつもの夕食時。

 遠坂がいて、桜がいて、イリヤがいるいつもの夕食。

 ただいつもと違うといえば残業でまだ来ていない藤ねえの夕飯をセイバーらしき人物が

代わりに食っている、ということだけ。

 青いリボンで結った金髪、碧の瞳、クラリスちっくな服。

 その姿はどこからどう見ても我らがヒロイン・セイバーだ。まぁちがいない。

 

 カチャカチャカチャ……

 

 居間にはセイバーの食器の音だけが静寂に響いている。

 見れば遠坂、桜、イリヤの三人も食事には手をつけず、鳩が豆鉄砲をくらったような顔

で目の前のセイバーを見つめている。どうやら三人とも俺と同じような心境らしい。

 

 う~む……もう一度セイバーを見てみよう。

 

 チラリ

 

 セイバーは以前と同じようにコクコクとうなづきながらメシを食べている。

 萌え。

 

 ギロリ!

 

 と突然、魔術師(メイガス)三人娘が一斉に俺を睨みつける。

 ゔ、桜。そのライダー直伝の石化睨みは本気で怖いので止めて下さい。

 どうやら三人とも「どういうことやねん」と説明を求めているご様子。

 いやいや、そんな顔されても俺にだって事態はワカラナイ。

 慌ててプルプルと首を横に振り「そんなん知らんがな」と意思表示を返す。

 

「シロウ、お代わりをお願いします」

 

 ズズイ、とお茶碗を突きつけてくるセイバー。

 そんな傍若無人な態度に気押しされつつ、とりあえず受け取ったお茶碗にご飯をよそい

ながらも意を決して疑問をぶつけてみることにした。

 

―――みっしょんすたーと。

 

「な、なあ、お前……なんでここにいるんだ?」

 

 お茶碗を受け取りつつ「む?」と眉間にしわを寄せるセイバー。

 

「今は夕飯時でしょう?ならば食事をする為にここにいるのは当たり前ではないですか」

「……そりゃ、そうだよな」

 

―――みっしょんこんぷりーと。

 

「こんぷりーと、じゃなーーーい!!」

 

 テーブルを勢いよくひっくり返す『キレる若者達』遠坂。

 気持ちはわかるがモノローグ部分にツッコむのはどうかと。

 

「何をするのですか凛。食べ物を粗末にするなど許しがたき暴挙です」

 

 それでも自分のおかずはきっちり退避させることに成功しているセイバー。

 さすが最強のサーヴァント。一時的に敏捷値がCからA+に上がったかのような俊敏さだ。

 

「こっちが聞きたいのは、どーしてあんたがまだこの世界に現界していられるのかってこ

 とよ! 聖杯はもう無いし、士郎の魔力じゃ留めておくことなんてできない筈だし!

 現にここ二ヶ月姿が見えなかったじゃないの! そこんとこを説明しろって言ってる

 のよー!!」

「ああ、そのことですか。そうですね、確かにまずその件について説明するべきでした。

 申し訳ありません。居間に入ったとたん美味しそうな食事がありましたので、つい……」

 

 いくらなんでも「つい」でそんな大事なことを忘れないでもらいたい。

 てか二ヶ月も家を空けてた人間が何事もなかったように家に上がってメシ食うなよって

気もするが。

 

「んじゃあ、ちゃんと説明してくれるのね? セイバー」

「はい、ご説明しましょう。実はですね……」

 

 セイバーが真剣な顔で語り始める。

 それを緊張の面持ちで聞きいる俺達。

 

「……しかし、その話は長くなりそうなので食事の方を先に済ませてしまいましょう。

 ……うん、やはりシロウの作る食事は美味しい」

 と、俺達の緊張をよそにコクコク食事を再開するはらぺこセイバー。

 

「んなもん、後にせいやーっ!ゴルァァァ!!」

 

 があー! と再び暴れだす遠坂。

 どうも魔術師としてこの不条理な状況に納得できないようだ。さすが探求者たる遠坂。

つーか話の腰を折られたら誰だって怒るわな。

 

「お、落ち着いてください姉さん!」

 そんな姉を必死になだめるぷちスール桜の努力もよそにセイバーはというと――――

 

「凛、あまり怒るのはよくありません。怒ると胃を悪くします。胃が悪いとご飯が食べら

 れなくなります。ご飯が食べられなくなるとお腹が減ります。お腹が減ると怒りやすく

 なります。怒ると胃を悪くします。胃が悪いと―――(エンドレスワルツ)」

 

――――火にガソリンをぶちまける始末。

 

「ダァァァァァラッシャャァァァアアアアアアーーーーーー!!!」

 

 わーーー!燃え上がるぜ、ばーにーーんぐ!!

 通常の3倍で暴れる『赤いあくま』が今ここに、大・爆・誕!!

 

「いえ(もぐもぐ)あれはキックの反動で3倍速に見えているだけです(こくこく)

 実際のところは30%増が関の山でしょう(もぐもぐこくこく)」

 

 えぇ~い、メシを食いながら冷静に戦力解析するんじゃない、セイバー!

 ……でも萌え。

 

「ねーさーん!やめてーーー!!」

「落ち着けー!とーさかーー!!」

 

 我関せずとばかりにメシを食らい続けるセイバーは無視してとりあえず遠坂を必死にな

だめる俺と桜。

 と、そういえばさっきからイリヤが大人しいな?

 気になってイリヤの様子をうかがってみると・・・

 

「バカばっか」

 

 何故か髪をツインテールにしながら冷淡なツッコミをいれていた。

 ……いや、お前も止めれ。

 

 

  (ただいま赤いあくまが暴れております。しばらくお待ちください):

 

 

 『荒れ狂う稲光の遠坂』を静めるのに要した時間は約10分。

 決め手は桜の放った『影技』だった。

 

 影技――――それは桜が妖怪ぬらりひょんの元で11年間修行して会得した究極の暗殺

拳であり『2億4千万の悪』を拳に纏いて放つ一騎当千の禁断奥義である!!

 

 さすがの赤いあくまも究極神拳の前に敗れ去った。

 そして、沈黙した遠坂を尻目にセイバーの食事はようやく終わったのだった。

 

「ごちそうさまでした」

 

  

「で! 今度こそ説明してくれるんでしょうね!?」

 

 うおっ!?もう復活したのか遠坂!何事も無かったかのように仁王立ってやがる。

 桜が後ろで劇画チックに驚きの表情をしているが無視することにする。

 

「私がこの世界にいる理由でしたね。わかりました。お腹もいっぱいになったことですし

 ご説明しましょう」

 

 今度こそ本気らしい。

 座布団の上に姿勢正しく座したセイバーは静かに語り始めた。

 

「確かに私は聖杯戦争が終わり元の時代に戻っていきました……」

 

 そう、セイバーは元々英霊ではない。

 死ぬ直前に聖杯を求め、その代償としてサーヴァントとなり現代に召喚されていたのだ。

 戦いが終われば元の時代の死ぬ直前に戻り、再び聖杯を得るためサーヴァントとして別

の時代へと召喚される。

 聖杯を手に入れるまで繰り返されるこの運命は、先日の聖杯戦争にて自ら聖杯を破壊す

るという行為により終止符が打たれたはずだ。

 そして彼女は元の時代で安らかな眠りについたはずなのだが……?

 

「元の時代に戻った私は……」

 

 ゴクリ。

 一同固唾を飲む。

 一体彼女の身に何が起こったのか?その真実がついに明かされる!!

 

 

 

 

 

「タイムマシンに乗ってこの時代に帰ってきたのです」

 

 

「「「「「………………」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 沈黙が続く。

 

 チッチッチッチッ……

 時計の秒針音だけが居間に響きわたる。

 

 

「……たいむ、ましん?」

 

 硬直すること1分。ようやくその一言だけ口にする。

 

「はい、未来の科学者が開発した時間移動の機能を備えた乗り物です」

 

 な、なんて安着かつ唐突で突拍子もなくトンデモにブっ飛んだ話!

 時間移動といえば魔法の領域とされているはずだろ!?そんなことがありえるのか?

 しかしセイバーが嘘をつくとは思えないし、こうして目の前にセイバーがいるというこ

とが何よりの証拠だ。信じざるを得まい。

 未来の科学力とはそんな現代の魔法(きせき)にすら追いついてしまうというのか。

 

 

――――こうして、世界にまた一つ新たな魔術(トリビア)が生まれた。

 

「八分咲きです」

 

 セイバー、冷静に評価しないでくれ。そんな換金も出来ない金塊なんて貰っても嬉しく

ないぞ。まだメロンパン入れの方が使い道があるってもんだ(そうか?)

 遠坂なんてあまりのショックに硬直してピクリとも動かない始末だったり。

 

「じゃ、じゃあセイバーさんは本来、元の時代に戻って死ぬ筈だったところを、未来から

 やってきた科学者さんに助けられたってことなんですか?」

「はい、その通りです桜。

 なんでも彼は世界のあらゆる時代の英雄を集めて格闘大会を開催するのが趣味なのだそ

 うで、私を参加選手としてスカウトしに来たというわけです」

 

 タイムマシンなんて大それたものを造って何をするかと思えば、英雄を集めて格闘大会

を開くだって? なんとも技術の無駄遣いな気もするが、科学者という人種は魔術師と同

じで変わった人間が多いのだろうか。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! そんな設定って有りなの!? みんなアーサー王の伝

 説調べたり、ゲーム設定を考察したりして一生懸命セイバー帰還のSS書いてるのよ!

 なのにそんな『タイムマシンで戻ってきちゃいましたー、テヘ☆』なんて小学生でも考

 えつきそうな設定を恥ずかしげもなく採用するなんて他のSS作家に申し訳ないと思わ

 ないわけ!? 大体タイムマシンの設定使うにしたってなんで『アレ』とのクロスオー

 バーなのよ! マイナー過ぎて誰も知らないっつーの!!」

 

 放心状態からようやく復活した遠坂は何やら納得がいかないご様子で「謝れー!全国の

作家さんに謝れー!」とよくわからないことを叫びながら怒りをぶちまけている。

 誰に何の謝罪を求めているのか?

 

「凛、18禁である本作を未成年がプレイすることはできません。ですから本作のSSを

 小学生が創作することはまずありえません。

 それにこれはあくまで一個人の表現方法なのだから他者に対して非を感じる必要は全く

 ありませんし、非難されるいわれもありません。ぶっちゃけ、やったもん勝ちというこ

 とです。

  また『アレ』ですが確かにマイナーなレゲー(レトロゲーム)であることは認めます。

 しかし、かつて格ゲー全盛期には『街頭戦士』や『餓えた狼の伝説』に並ぶ『三大格闘

 ゲーム』とまで言われた名作であると聞いたこともあります。わかり易く例えるのなら、

 聖杯戦争の魔術三家におけるマキリ的ポジションといったところでしょうか。ですから

 誰も知らないということは決してないはずです」

 

 そんな遠坂の不満をこれまたよくわからない意見で論破するセイバー。微妙に屁理屈な

気もしないでもない。特に最後の「ないはず」が推測というより希望的なニュアンスで聞

こえたのは気のせいか?

 それにしてもマキリってことは既に衰退してるってことだろ?ダメじゃん。

 

 そんなどーでもいい話はレン高原の彼方にでもうっちゃっとくとして閑話休題しよう。

 

「ま、まあまあ、遠坂。色々ツッコミどころが多いのは事実だけど、セイバーが目の前に

 いるってことも事実だろ? それでいいじゃないか」

「……そりゃまぁそうだけど、なんか納得いかないのよねぇ……ブツブツ」

 

 まだ不満げな遠坂だったがここは無理にでも話題を変えて話を進めることにする。

 というかこの話題に深く関わってはいけない気がするのだ。

 

「そ、そういえばセイバー。お前、その格闘大会とやらに参加するのか?」

「はい。私とて王である前に一人の剣士。猛者がいるのなら是非とも手合わせ願いたい」

 

 なんでも伊賀忍者の頭領とか三国志にでてくる武将とかロシアの怪僧とか色んな英雄が

出場するんだトカ。中でも同じ西洋剣の使い手で同性でもあるフランスの女剣士との試合

には深く興味があるらしい。

 う~む、俺としてはセイバーが戦うことには乗り気じゃないんだが、止めても無駄なの

は聖杯戦争の経験上わかっているから仕方が無い。それに強いやつと戦いたいって気持ち

もわからなくはないしな。燃え。

 

「……そうか。セイバーがそう決めたのなら俺は止めない。頑張れよ」

「はい、それでは一緒に頑張りましょう、シロウ」

「ああ、ガンバロー……って俺も出るのかよ!?」

「もちろんです。今度の格闘大会は2対2のバトルロイヤル形式ですから。私のマスター

 はシロウ、貴方しかありえない」

 

 何やらどこかで聞いたことのある試合形式だな。しかも出場選手が英雄ばかりときたも

んだ。それって……。

 

「なにそれ!? それじゃまるで聖杯戦争じゃないの!」

 

 だよなぁ。おそらく遠坂だけでなくここにいる全ての人間がそう思ったことだろう。

 

「その通りです。実は彼に聖杯戦争のことを話しましたら、面白そうだから今度の大会は

 その形式で行おうということになったのです」

 

 なんてアバウトな科学者兼大会実行委員長。本当に娯楽で格闘大会主催してるってのが

ヒシヒシと伝わってくるな。ある意味言峰レベルで性質が悪いのかもしれぬ。

 

「待て待て、パートナーが必要なのはわかったが俺、英雄でもなんでもないパンピーだ

 ぞ? 出場権利なんてあるのかよ」

「あ、それについては無問題です。何故なら貴方は将来あのアーチャー、英霊エミヤにな

 るのですから少々フライング気味ですが資格はバッチリです!」

 

 わーー!?別ルートにて明かされる筈の衝撃的事実を親指を立てたナイスガイポーズで

あっさりバラされたーーー!!

 

「あ、やっぱりアーチャーの正体って衛宮くんだったんだ。道理で家事全般に長けてたは

 ずよねー」

 

 うう、サーヴァントになってまで遠坂にこき使われてたんだ、俺。

 ちっくしょー、俺って将来バスターのパイロットになるのかよ。「正義の味方」志望の

俺としてはジャスティスの方がよかったなー。まあ、ブリッツじゃなかっただけマシかも

しれないけどなー。あははー。あかん、ごっつ泣きそうや。

 

「ふふふ、私とシロウの石破ラブラブ天驚コンビなら優勝確実。賞金ゲッツで御馳走食べ

 放題です」

「……お前、本当はそれが目当てで帰ってきたんじゃないだろーな?」

「!! そ、そんなことは、ないですよ? そう私は、

 シロウ――――貴方を、愛している」

 

 うわー、うさんくせー。感動シーンが台無しだー。コンチクショー。

 

「ほんと、バカばっか」

 

 で、結局最後までそんなキャラかい、イリヤ。

 

 

 

<次回予告>

 

 君たちに最新情報をお教えしよう。

 衝撃のセイバー帰還イベントと共に新たなる戦いへと巻き込まれた衛宮士郎。

 聖杯ではなくタイムマシンにより現代に召喚された英雄達と聖杯戦争を生き延びた魔術

師達による戦争が、いま再び冬木の地にて勃発する!

 次回『Fate/The Ultimait Heroes』第2話。製作予定全く無し!

 次回もファイナルフュージョン未承認!

 

 これが勝利の鍵だ! → 『Fate/stay night・FAN disk』

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択