No.575065

現象起こしの転生者 第六十二話

notrinkさん

神様と転生した主人公が
めだかで原作に入るお話

※注意※
めだかボックスの二次創作です

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2013-05-11 01:08:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1632   閲覧ユーザー数:1591

第六十二話『当事者、片や知らずして』

 

 

箱庭学園の体育館。いや、正確には、創が作り、零が調整した、

特殊加工された箱庭学園の体育館っぽい空間だ。

広い部屋の角にはそこそこの大きさのテントが張られ、

入口付近にレジャーグッズ……ではなく、

システムキッチンやテレビ、本棚と言ったへんてこなものが置いてある。

安心院なじみと人吉善吉は約二億年、一日約三千年をここで訓練している。

 

「ほらほら善吉くん、また僕の勝ちだよ」

 

「だあああああああ、強い! 強すぎる!!」

 

善吉はジャージ姿でセンターサークルで大の字にねっ転がった。

ちょうど先ほど安心院に負けたところだ。

 

「スキル無しで僕が納得できるぐらいには、

全技術を習得して欲しいんだよ。そうじゃないと『革命』もかわいそうだろう?」

 

安心院が空中で漂いながら善吉を見下ろす。

 

「それに、そのスキルはこれからの敵に叶う可能性がある、

五つぐらいの手の一つなんだ、しっかりやってくれよ?」

 

「しっかりやってますよ、毎日、気が触れかけるくらいには」

 

そう言って善吉は大きくため息をつく。

毎日の訓練三昧だが、体調管理や食事までバッチリ、

安心院は善吉を最大限にサポートし、強化している。

 

「それで、これでも足りないとか言わないですよね」

 

「ああ、言わないよ、予定より早いくらいだ。

努力家な善吉くんのお陰で二億と言わず一億八千年くらいにしておこうか」

 

「二千年の違いが小さく思える……」

 

善吉は苦笑いすると起き上がり、

盛大に腹を鳴らしながらテントの方に戻った。

腹が減っては戦は出来ぬ、同じく、腹が減っては訓練も出来ないのだ。

 

「今日の間食はー」

 

善吉がテーブルを覗く。顔が一瞬で青ざめた。

テーブルの上の料理はどう見ても虫の揚げ物にしか見えないのだ。

 

「また、虫ですか」

 

善吉が安心院に引きつった顔顔を向ける。

 

「うん、そうだよ。

二億年訓練するんだから世界順の料理じゃ足りないと思ってね、

約二億年前にわざわざ土地に行って撮ってきた食材で作ったんだ。

虫料理というのも意外と刺激的だろう?」

 

「刺激的すぎて何かがこみ上げそうですけどね」

 

「大丈夫、ビニール袋は用意してるよ」

 

「吐く前提ですか」

 

「そんなことはない、完食してくれると信じてるよ」

 

善吉は諦めたように席に座る。

フォークには触らず、安心院の方を向くと、口を開いた。

 

「なぁ安心院さん、この後の強化はどんなことをするんだ?

そうだねぇ、とりあえず僕のスキルは全般的に知ってもらう。

あと戦闘技術も知ってもらう。敵についても知ってもらう。

最後は……これは第三強化だけど、能力無効化を、論外の二人に二重でつけてもらう」

 

「それは……どういう意味があるんだ?」

 

「善吉くん、君が相手するのは二人だよ、

一人は獅子目言彦、もう一人は、おそらく神様」

 

善吉がそれを聞いて善吉が固まる。

あっけなかったとはいえ、簡単な戦いだったとはいえ、

相手が油断していたとはいえ、

あの論外に後遺症を取り付けた存在と戦えと言われたのだ。

 

「おいおい待ってくれよ、あいつは零が封印つけて帰したんじゃ…」

 

「ちゃんとフラグも立ててたけどね」

 

「……」

 

口をふさいだ善吉の頭を安心院は撫でた。

 

「大丈夫、別にタイマンじゃない、

優先して戦うのは零くんだ、安心院さんがいうんだ、安心してくれ」

 

「勝てるんですか」

 

善吉が安心院の目を真っ直ぐに見る。

 

「ああ、勝てるさ」

 

彼女はそう帰した。本当は確信がないけれど。

いざとなったらの最終手段も神姫が用意してるから、と。

 

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「珍しいな」

 

『何が』

 

創と零が言葉をかわす。

箱庭学園の上空1000メートルにて、

嫁をおいて、珍しく二人だけで昼飯を食べていた。

 

「お前が飯行こうなんて」

 

『いいじゃないか、偶には』

 

零は気まぐれだよと付け足す。

 

「それに、いいのか?」

 

「何が」

 

「体は本調子じゃないんだろう?」

 

「おう、だけどジッとしてるのは嫌なんでな」

 

そう言って零は車椅子から立ち上がる。

車椅子はそのまま能力か何かによって消える。

零は創の方に向き、笑顔で言った。

 

「久々に相手してくれないか?」

 

「いいのか?」

 

そう聞いた創に、零が手のひらを向ける。

 

「『流星の尾』!」

 

「おおお!?」

 

急に放たれた技を、創は瞬間移動で零の背後に移動し、避ける。

零は顔を向けると、今度は背中から技を放つ。

創は距離をとって移動し、苦笑する。

 

「マジですか……」

 

「マジだよ、手加減しないでね☆」

 

「言われなくとも!」

 

こうして、久々のマジバトルが始まった。

先に仕掛けたのは創、零の頭上に移動すると、技を発動させる。

 

「『雲龍の総会(ドラゴンズファミリー)』!」

 

雲で出来た龍が零を囲む。

気体であるはずの龍たちがそのまま零を縛ると、

ひときわ大きな龍が出現し、零をそのまま飲み込んだ。

 

『いいね!』

 

龍の中から声がすると、その腹が光り、何もなかったかのように消滅する。

消滅した龍牙ヲタ部分に立つ零が笑う。

彼の両手には、光の正体であろう、雷が発生していた。

 

『『自己発電(ボルトハウス)』』

 

零は右手を創に向ける、すると、

雷は意思でもあるかのように創を直撃した。

 

「ぐおっ!」

 

『『気体の新星(ニューエアーズ)』』

 

零は電撃を消した左手を頭上に上げる。

何が起こっているのかは目視できない、それでも、

原子の世界ではちゃんと変化が起きていた。

雲は水、電撃で電気分解し、その気体を球体状にしただけ。

 

『燃えやがれ!』

 

「お前がな!」

 

気体の球を振りかぶった零に、向けて、創が指を鳴らす。

それと同時に零の持った球体の中で火花が起こった。

 

『ありゃ?』

 

水素は爆発する気体だ、酸素と混ぜられ、しかも圧縮された水素。

圧縮するほど爆発した時の威力は高い。じゃあ今回はどうなるか。

普通に大爆発する。例の手を中心に空気を震わす轟音が響く。

創は爆発本体を圧縮し、零へのダメージを増やそうとする。

まぁ頭では意味が無いとわかっている。そして、それは正解だった。

爆発による水蒸気、それが湯気へと変わって空に上る。

零は無傷で、ついでににやけた顔でそこに立っていた。

 

「ま、これくらいで傷つくお前なら安心院さんに勝てないよな」

 

『当たり前だ、時を止めて、空間を斬って、存在に入り込んで、

そこから二十次元を一周する攻撃位はしてもらわないと』

 

「やっぱなー」

 

とても軽い言葉で話す二人。

時を止めて、空間を斬って、存在に入り込んで、そこから二十次元を一周する攻撃、

そんなものを常識だよとでも言うようなセリフで吐かれても理解できない。

二人は論外なのだから仕方ないかもしれない。

 

「じゃあ、それくらいのにする」

 

『来いよ』

 

創と零が睨み合う。

実はもう攻撃が始まっていた。

では、零たちの世界で見るとどうなるか、

 

『ぶち抜いたらぁ!』

 

「やってみやがれシスコン!」

 

お互いの創りだす武器が意味が無いのはわかっている。

何故なら、相手も同じ物を作れるのだから。

じゃあ何で戦うか、それは簡単だ。

作り出せないもの、自分の体で戦うしかない。

時を止めて、空間を歪めて、相手の存在にまで入り込ませて、

ついでに二十次元くらいを吹き飛ばす威力で、二人は殴り合いをしていた。

 

『お前もシスコンだろうが!』

 

「お前よりマシだね!」

 

『姉とは!?』

 

「結婚したい!」

 

『同類じゃねーかよ!』

 

「同類じゃない!」

 

お互いのセリフごとに相手に拳を繰り出す。

戦闘前の少しシリアスだったかもしれない雰囲気はどこえやら、

創の一言によって自分たちの性癖の罵り合いなり、

最終的には、嫁のいいところの言い合いになった。

 

『姫ちゃんの髪なんかシルクよりさらさらなんだよ!』

 

「だからどうした! ねーちゃんの髪なんか、水より軽いんだぞ!」

 

両者の嫁、どちらとも自慢の髪らしい。

 

『それがなんだ! 姫ちゃんのおっぱいなんか、

ちっちゃくて、ふわふわで、ぷにぷになんだぞ!

直に触ったことないけど!』

 

「はん! ねーちゃんのなんて

ムチムチの、ムニムニの、フヨンフヨンなんだぞ!

直接もんだことないけど!」

 

触ったことがないから半分予測だろう。

 

『姫ちゃんのおしりは、ちっちゃくて、まあるくて、

つるつるしてて、とっても愛らしいんだぞ! 数回しか見てないけど!』

 

「なにおう!? ねーちゃんのなんて、ほわっとしてて、

引き締まってて、もみごたえありそうな安産型だぞ! 数回しか見てないけど!」

 

数回は見ているらしい。

そんなこんなで嫁の主張を続け、

最後の一言。

 

「『俺の嫁が最高なんだよ!』」

 

仲睦まじい夫婦は誰だってそう主張しそうなものである。

結果は相打ち、しかし、いつもと違うことがひとつあった。

 

『……ふむ、都合が悪い』

 

「何が?」

 

『この後遺症、能力を過剰に使うと進行するらしいな、

耳が極端に遠くなった』

 

「!」

 

零は苦笑した。

そして、善吉を強化して正解だったと思った。

神姫を守れる人では多い方がいい、どうあがいても、

狙われている神姫抜きでは、戦力として出られるのは最大で四人。

作戦はワンチャンス、奥の手なんて用意されていない。

 

『面倒だね』

 

「ああ、めんどうだな」

 

零少し長い前髪が、彼の顔に影を作る。

創はそれを目を細めて見つめた。

 


 
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