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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第六十八話 縁日だョ!『くぎみー』集合

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-05-01 14:53:43 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:28125   閲覧ユーザー数:24890

 「ねえ勇紀、アンタ明日と明後日の予定って何かある?」

 

 「明日と明後日?」

 

 「そうよ。管理局の仕事とか入ってる?」

 

 「うーん…」

 

 夏休み中盤に差し掛かる今日この頃。

 アリサに言われて予定があったかどうかを思い出す。

 ……今の所、何処かへ行く予定なんてのは無いし、自然保護隊の方も凶悪な密猟者は俺の転属初日以降は出ていない。

 余程の事が無い限りは呼び出される事も無いし…。

 つまり…

 

 「大丈夫だな。緊急の呼び出しが来ない限りは明日も明後日も空いてる」

 

 「そ、そう…」

 

 安心した様にホッと一息吐くアリサ。

 

 「なら明日と明後日なんだけど…私の別荘に来ない?//」

 

 「別荘って…去年皆でお邪魔した所か?」

 

 「ええ、そうよ」

 

 「他のメンバーは?」

 

 「いないわ」

 

 「は?」

 

 「なのは達もシュテル達も管理局の仕事で来れないらしいし、すずかも忍さん達と一緒に綺堂さんていう人の所に行くらしいから私とアンタの共通の知り合いは誰も来ないわよ」

 

 シュテル達の事は知っていた。今日から首都防衛隊のメンバーで隊の強化訓練をするとの事で朝から1週間程、ミッドに入り浸りだ。おそらく亮太と椿姫も。

 ルーテシアもさざなみ寮に泊まりに行くと言ってたし。

 しかしなのは達も管理局の仕事ですずかもさくらさんの所に行く事は知らなかったな。

 

 「何ていうか…ここまで誰も揃わない状況っていうのも珍しいもんだ」

 

 「全くね…それでどう?このままだとヒマでヒマで仕方ないのよ」

 

 「お前、夏休みの宿題は?」

 

 「とっくに終わってるわ」

 

 俺同様、自由を満喫出来るって事か。

 

 「けど2人だけっていうのもどうなんだ?退屈しないか?」

 

 「別に…むしろこれってチャンスだし…//」(ボソッ)

 

 「はい?」

 

 「何でも無いわ!で、行くの!?行くわよね!!?行くっていいなさい!!」

 

 最後命令になってんじゃねえか。

 

 「…まあいいけどさ」

 

 「ホント!?言っとくけどもうキャンセルは不可能だからね!!」

 

 「はいはい」

 

 やや強引に決められた様な気がしないでもないが。

 

 「じゃあ、明日の朝勇紀の家まで迎えに行くから!!時間は午前8時。ちゃんと起きてなさいよ!!」

 

 「分かった」

 

 とりあえず帰ってメガーヌさんに言いますか………。

 

 

 

 次の日…。

 時間通りに家の前に迎えに来た車に乗り込み、目的地まで何事も無く進んでいる。

 …本当に何事も無く。

 ……アリサ、少しは喋ってくれんかね?

 対面の座席に座るアリサは俺から喋ると軽く答えてはくれるものの、それ以降の会話が続かない。

 普段から率先して皆を纏める様なお前は何処行った?

 

 「アリサ…」

 

 「な、なな、何よ!?//」

 

 「いや、お前らしくないから体調でも悪いのか流石に心配になってな…」

 

 「だ、大丈夫よ!!この私が体調不良なんて有り得ないわ!!私は『バニングス』なのよ!!」

 

 『バニングス』は関係ねえよ…。

 

 「ならもう少し、喋らないか?」

 

 なのはじゃないけど少しは会話しないとヒマで仕方ないんだよ。

 …宝物庫にある漫画でも取り出して読むか。

 えー、漫画漫画…っと。

 宝物庫から漫画を取り出し読み始めようとしたら目の前のアリサに漫画を取り上げられた。

 

 「…何するんだ?」

 

 「アンタ…私を無視して漫画読むなんていい度胸してんじゃない」

 

 ジト目で見られながら告げるアリサを見て言い返す。

 

 「でも、さっきから全然会話続かんし、アリサの方からは話題振ってこないし」

 

 「ふ…振る様な話題が無いから仕方ないじゃない//」

 

 プイッと顔を背けて言うアリサ。

 

 「うーん…なら他に何話せと?」

 

 管理局の仕事の内容なんて言っても面白いとは思えないし。

 

 「な・ん・で・も・!!良いから話しなさい!!」

 

 凄い剣幕で迫って来るので俺は目的地の別荘に着くまでの間、必死に話のネタを探しながら車の中でアリサと2人過ごすのだった………。

 

 

 

 1年ぶりにやってきましたバニングス家所有の別荘に。

 

 「はー…やっぱり大きいな」

 

 去年も誰かが言ってた感想を俺は口にする。

 

 「何言ってんの?去年も来たんだからどんな別荘かなんて知ってるでしょ?」

 

 「まあな」

 

 改装も何もしていないなら何処に何の部屋があるかはちゃんと覚えている。

 

 「そういや鮫島さんは?」

 

 「明日の昼前には迎えに来るわよ」

 

 「他に使用人の人は?」

 

 「いる訳無いでしょ」

 

 やっぱりか。

 目の前の別荘からは一切人気を感じないからもしやと思ったら…。

 

 「じゃあ昼ご飯はどうするんだ?」

 

 「心配いらないわ。これ…」

 

 アリサがバッグの中から出したのは二つのバスケット。

 

 「家で作って貰った弁当よ。夕食や明日の朝食の分は食べに行くか買い出しに行かないといけないけれど…」

 

 「鮫島さんや使用人の人に残っていて貰った方が良かったんじゃないのか?」

 

 いくら何でも子供だけだぞ?

 去年はシグナムさん達守護騎士の面々が保護者の代わりになってくれてた様なもんだったけど。

 

 「…何よ。私と勇紀の2人だけじゃ不満でもあるの?」

 

 「不満っつーか、大人がいないと不審者に襲われたりしないか心配だぞ?」

 

 「アンタだったらそこいらの大人なんかよりも充分強いじゃない。それに何かあってもアンタが何とかしてくれるでしょ?」

 

 「まあ、不審者ぐらいからならちゃんと守ってやるけど…」

 

 「なら良いじゃない(ふ、ふふ…守ってくれる。勇紀が私の事守ってくれる)//」

 

 …良いのかなぁ?

 俺は首を傾げて疑問に思うが

 

 「そんな事よりも早く中に入って昼ご飯食べましょ(つ、ついでに腕を…)////」

 

 隣に来たアリサが腕を絡めながら言ってくる。

 

 「…そうだな。お腹もそこそこ空いてるし」

 

 今日は日差しが少し強いから、このまま立ってると熱中症になりかねん。

 まずは別荘に入って身体を冷やそう。

 俺とアリサは別荘の入り口前まで行き、アリサが別荘の鍵を使って扉の施錠を外してくれる。

 別荘の中は綺麗な状態で保たれているなぁ。

 

 「ここ、誰が管理してるんだ?」

 

 「うちの使用人が定期的に清掃しに来てるのよ。誰が来るかはローテーションで決めてるらしいわよ」

 

 「そうなんだ」

 

 わざわざ海鳴からここまで…か。

 車で来てるのか電車で来てるのかは知らないけどご苦労様です。

 

 「ほら、食堂に行くわよ」

 

 「はいはい」

 

 アリサに引っ張られるように歩く。

 食堂に着いた俺達は適当な席に座り(アリサは俺の隣に)、バスケットの中に入っていた弁当を食べる。

 

 「…で、これからどうするんだ?」

 

 一旦食事の手を止めて今後の予定をアリサに尋ねる。

 

 「昼からは海で泳ぐ予定だけど?」

 

 「それだけ?」

 

 「まあ夜になったら少し離れた場所にある神社で縁日をやってるみたいだし」

 

 「へえ…」

 

 それは少し興味あるから行ってみたいかも。

 去年来た時は今年より早かったせいかこっちで縁日はやっていなかったからな。

 

 「当然だけど縁日には行くんだからね」

 

 「賛成だ」

 

 せっかくそんな行事があるなら参加して楽しまないと。

 

 「それより早く食べなさいよね」

 

 「お前もな」

 

 二人して食事を再開し、弁当の中身を平らげていく。

 昼食後は荷物を部屋に運んで海で遊ぶ事になった………。

 

 

 

 一足先に浜辺でアリサを待っている俺。

 このまま突っ立っていてもアレなんで、先に海に入っていようか考えていた矢先に

 

 「ま、待たせたわね////」

 

 後ろからアリサの声が聞こえてきた。

 振り返った先には当然水着姿のアリサが腰に手を当て、仁王立ちのポーズで立っていた。

 

 「別にそこまでは待ってないぞ。でも先に海に入ろうとは思ってたけどな」

 

 「むっ!自分だけ先に海に入ろうだなんて良い度胸じゃない」

 

 「仕方ないだろ。海が目の前にあるんだから」

 

 俺は『海と山、どっちが好き?』と聞かれた場合、間違い無く『海』と答える。

 泳ぐのも釣りをするのも好きだからな。

 

 「…まあ、いいわ。我慢して入らなかったみたいだし今回は許してあげるわ」

 

 「そりゃどうも。ああ、後アリサよ…」

 

 「何よ?」

 

 「その水着、似合ってるぞ」

 

 「っ!!ふ、ふん!当然じゃない!!似合わない水着なんて着ないわよ!!(ほ、褒められた…『似合ってる』って言われた…)////」

 

 むぅ…褒めたつもりが怒鳴られた。

 

 「それよりさっさと泳ぐわよ!!」

 

 「おう。準備は万端だ」

 

 浮き輪やゴムボートも既に膨らませ、スイカ割りするためのスイカや木の棒も砂浜の上に置いてある。

 けど最初は何も持たずに泳ごう。プカプカと浮かんでのんびりするのはその後だ。

 しっかりと準備運動をして身体をほぐし

 

 「ほら、いつまで準備運動してんのよ」

 

 アリサに手を引かれ海に入る。

 念入りに準備運動していないと足が攣ったりして大変なんだぞアリサ。

 そんな事お構いなしに元気良く泳いでいるアリサを見て

 

 「(ま、本人は楽しそうだしグチグチ言う必要も無いか)」

 

 俺もアリサを追い掛ける様に泳ぎ始めるのだった………。

 

 

 

 しばらく泳いで海を堪能した後、ゴムボートを浮かべ、その上にアリサが、俺は浮き輪を使って波に身を任せ、揺られている。

 

 「はー…」

 

 「随分気持ち良さそうね?」

 

 「この揺れ心地が何とも…」

 

 顔を上に向け、目を閉じたままの状態の俺はアリサの問いに答える。

 

 「そう…でも少しは周りを気にした方が良いんじゃないの?」

 

 「周り?」

 

 アリサに指摘され、目を開けて周りを見渡す。

 

 「……おお」

 

 いつの間にか沖の方まで流されていた。

 

 「『おお』じゃないと思うんだけど?」

 

 「確かに…。でもアリサは気付かなかったのか?」

 

 「うっ…わ、悪い!?私も気を抜いてのんびりしてたから気付かなかったのよ!!(アンタの気持ち良さそうな顔に見惚れてたなんて言える訳無いじゃない)////」

 

 そんな顔を赤くして怒鳴らなくても…。

 

 「まあ、大丈夫だって。なんならもう戻るか?」

 

 普通に浮遊魔法でゴムボートを浮かせ、俺自身は飛行魔法で飛べばいいだけだし。

 

 「…そうね。一旦浜辺に戻りましょう」

 

 「了解」

 

 早速魔法を使って浜辺まで戻る。

 宝物庫からシートを出して砂浜の上に敷き、日差し避けにパラソルを設置する。

 

 「…その能力(チカラ)、便利よねー」

 

 「収納出来る量に限界も無いからな。入れたい放題だ」

 

 「他には何が入ってるの?」

 

 「非常食や衣類、他にも日常品等々幅広く揃えてるぞ」

 

 「…勇紀、将来私の荷物係として働くつもりない?給料は弾むわよ」

 

 「俺…一応管理局の局員としてもう働いてるんだけど?」

 

 しかも荷物係って…。

 

 「普通そこは『執事として雇う』とか『料理人として雇う』っていう感じじゃないのか?」

 

 「し、執事!!?」

 

 そこまで驚く程の事か?

 

 「ゆ、勇紀が私の執事…(勇紀の執事服姿……悪くない!悪くないわ!!)////」

 

 「まあ管理局を辞める事になったら雇って貰うのもいいかもな」

 

 「辞めなさい!!今すぐ辞めて執事に転職しなさい!!(私だけのために働いてくれる勇紀!!良いに決まってるじゃない!!)////」

 

 「いやいやいや!!まだ現役で働けますから!!」

 

 俺の肩を揺さぶり、少し興奮気味になっているアリサを宥める。

 

 「何よ!?何が不満なの!?給料なら言い値で支払うわよ!!」

 

 「ちょっと落ち着こうか!?」

 

 ますます興奮するアリサを説得する。

 目が段々と据わってきて迫力もありちょっと怖い。

 

 「良いじゃない!!アンタは家事が得意で護衛もこなせるんだから私にとっては最高の人材なのよ!!」

 

 「ひいいいぃぃぃぃっっっっ!!!?」

 

 結局俺はアリサが落ち着くまで延々と勧誘され続けていたのだった………。

 

 

 

 ムスーッ。

 

 「なあ…いい加減機嫌直してほしいんだけど?」

 

 「別に機嫌悪くなんてないわよ」

 

 頬を膨らましてムスッとしてる今の状態で言われても説得力無いッスよ。

 

 「第一、俺以上に仕事をこなせる執事さんなんて世の中いくらでもいるぞ?」

 

 「けどアンタみたいに護衛も出来る人なんてそうそう見付からないじゃない」

 

 「いや、執事にそこまで求めんでも…。ボディガードと執事を別々に雇えばいいだけでは…」

 

 「人件費が無駄にかかるじゃない」

 

 金持ちなのに気にする事か?

 いや、コストダウンとか経費節約の意味合いを考えると当然なのか。

 

 「それに…アンタが執事ならずっと一緒にいられるじゃない…////」(ボソボソ)

 

 「え?何か言ったか?」

 

 「何でも無い!!それより別荘帰って少し休むわよ!!近くのファミレスで夕食食べたらお祭りに行くんだから!!」

 

 「ら、ラジャー…」

 

 シートから立ち上がり、乱暴な足取りで前を歩き始めるアリサ。

 シートとパラソルを片付けて、その後ろ姿を俺は追い掛け始める。

 アリサは俺の方を振り向かずに自室まで戻り、俺は軽く溜め息を吐いてから部屋に戻って室内のシャワーを浴びる。

 海水を洗い落としてからシャツと半ズボン姿になってベッドに腰掛け、財布の中身を確認する。

 

 「お金に関しては大丈夫だな。キャッシュカードは落としたら大変だから宝物庫に…と」

 

 財布の中身を数枚のお札と小銭だけにして、カードの類は全て宝物庫に収納した。

 後持っていくのは携帯とダイダロスぐらいでいいだろう。

 縁日に向かう準備が出来てからは部屋でゆったりと過ごし空が完全にオレンジ色に染まった頃に…。

 

 コンコン

 

 「勇紀?準備出来た?」

 

 部屋の外からノック音とアリサの声が聞こえてきた。

 声色から察するにもう怒ってはいない様だが。

 

 「いつでも出れるぞ」

 

 「そう…じゃあ少し早いけど夕食食べに行きましょ」

 

 「ん」

 

 短く返事をして扉を開ける。

 その先に立っていたアリサは浴衣を着ていた。

 

 「あれ?浴衣用意してたのか?」

 

 「ま、まあね。今回は縁日があるって分かってたし…//」

 

 そうだった。昼食摂ってる時に『縁日がある』って言ってたなアリサの奴。

 

 「帯は……作り帯なんだな」

 

 「ええ。私まだ上手く帯を結べないのよ」

 

 「そうか。けど本当に結んでる様に見えるな」

 

 「そう見えなきゃ作り帯の意味無いでしょ?」

 

 「確かに」

 

 「それよりこの浴衣…へ、変じゃないかしら?////」

 

 「へ?全然そんな事無いぞ。むしろ似合ってる」

 

 水着を見た時と同じ言葉を口にする。

 

 「そ、そう?なら良いわ(よ…良かった)////」

 

 照れてる様子のアリサ。

 うーん…やっぱツンデレさんのこういった表情は滅多に見れないから新鮮だね。

 

 「こ、こんな所でいつまで喋ってても仕方ないわ。早く行きましょ////」

 

 「そうだな。行くか」

 

 俺とアリサは別荘の玄関のカギを閉め、戸締まりを確認してから縁日が行われているという神社に向かって歩き始めた………。

 

 

 

 縁日が行われている神社では結構な人が来ており、それなりに盛り上がってるみたいだ。

 俺達は二人離れ離れにならない様にしっかりと手を繋いで歩いていた。

 けど……

 

 「ちょっとキンジ!!早く行くわよ!!」

 

 「待てよアリア!!レキがまだ射的やってるんだから!!レキも早くしてくれ!」

 

 「私は一発の銃弾、銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない。ただ、目的に向かって飛ぶだけ」

 

 射的の屋台で武偵らしき人物達がいたり…

 

 「京太郎!!あそこのタコスを全部買い取ってくるじぇ。だから金貸してほしいじょ」

 

 「アホか!!んな金無いわ!!」

 

 「京ちゃん、もう少し声抑えて!!皆見てるよ?」

 

 「優希も馬鹿な事言わないで下さい」

 

 清澄高校の麻雀部らしき人達がいたり…

 

 「ほらお姫様ー!あっちにヨーヨー釣りがあるよー!」

 

 「こ、こら!手を引っ張るなアスハ!!ナオヤ!!アスハを止めてくれー!」

 

 「明日葉ー!そんなに急がなくても屋台は逃げないから!!」

 

 ユグヴァルランド王国の姫君と塔原親子がいたり…

 

 「早く来い悠二!!」

 

 「坂井君!あっちでりんご飴が売ってますよ!!行きましょう!!」

 

 「ちょ!シャナ!?吉田さん!?裂ける!裂けるから手を離して!!」

 

 御崎市にいる筈の炎髪灼眼、零時迷子、二人の知り合いの一般人がいたりで。

 何て言うかもう…

 

 「……ここは『くぎみー』を呼び寄せる何かがあるのか?」

 

 祭りに来ている人達を見て思わず言葉にする。

 

 「勇紀、何言ってるの?『くぎみー』って何よ?」

 

 「…いや、気にしないでくれ」

 

 「???」

 

 首を傾げるアリサ。

 ここは『『リリカルなのは』の世界か?』と疑問に思い始めた。

 『原作に似て非なる世界』とは言ってもここまで他作品キャラがいる光景を見てしまうと…

 ていうか『イ・ウー』とか『紅世の徒』なんかがこの世界に存在しているんじゃないだろうな?

 …存在してそうで怖い。

 

 「…考えても仕方ないか。とにかく突っ立っててもアレだから俺達も行こう」

 

 「そうね……あら?」

 

 「どうした?」

 

 アリサが何かを見付けたみたいだけど…

 

 「ちょっと知り合いがいるのよ。挨拶してくるわ」

 

 そう言って俺の手を離して歩き出す。

 アリサが向かう先には知り合いらしき子がいるんだけど…

 

 「(マジか…)」

 

 俺はその子を見てそう思った。

 金髪ツインテールでツリ目をしてる視線の先の子って…

 

 「ナギ!やっぱりナギじゃない!」

 

 「ん?…おお、アリサか?」

 

 はい。どっからどう見ても三千院家のお嬢様でした。しかもSPらしき皆さんにそれとなく護衛されてるし。

 もうここ『くぎみー』集まり過ぎ…。

 

 「久しぶりね。最後に会ったのって何時だったかしら?」

 

 「そうだな…去年、海外で年を越して帰ってきた時にお前と会ったのが最後だったな」

 

 「伊澄や咲夜は元気にしてる?」

 

 …何か盛り上がってるなあ。

 …うーん。ここになのはやはやて、もしくはシュテルやディアーチェがいたら面白かったかも。

 共通する中の人がいるからな。塔原の娘と清澄高校の嶺上使い、それに今チラッと聞こえた『咲夜』なる人物とかね。

 

 「お嬢様ー!」

 

 そんな中、談笑中の二人に近付く一人の男性。

 

 「ハヤテか!!例の物は買えたのか?//」

 

 「はい。こちらがご所望だった綿飴です!!」

 

 「す、すまないな。手間をかけさせて//」

 

 「いえ、僕はお嬢様の執事ですから」(ニコッ)

 

 「////////」

 

 借金執事が主に綿飴を手渡す。主の方は顔真っ赤だな。

 

 「(ナギってこの執事の事好きみたいね。けど当の本人はナギの気持ちに気付いて無いみたいだし…。勇紀と同類なのかしら?)」

 

 「と、ところでアリサは一人か?//」

 

 「そんな訳無いでしょ。連れがいるわよ」

 

 アリサがコッチを向いたので自然と他の2人も釣られる様にコチラを向き、3人の視線が集まる。

 

 「彼が私の連れね。一応、私の護衛も兼ねてくれてるのよ。勇紀、アンタもコッチ来なさいよ」

 

 呼ばれたので素直にアリサの側へ。そしてお互いに自己紹介を済ませる。

 

 「アリサ、私の目が可笑しくないなら私達と同年代ぐらいの子にしか見えないんだが?」

 

 「言いたい事は分かるけど、実際勇紀は強いわよナギ。私が保障するもの」

 

 自分の腕を絡めて俺の事を紹介してくれるアリサ。

 

 「そうなのか?(アリサ、異性と当たり前の様に腕を絡められるなんて…羨ましい)」(チラッ)

 

 「???お嬢様?僕の顔に何かついてますか?」

 

 「な、何でも無い//」(プイッ)

 

 あー…ナギは自分の気持ちに気付いてもらってないのか。

 

 「それよりも何処かに移動するぞ!いつまでもこんな所にいても仕方ないからな!」

 

 「あっ、はい」

 

 「勇紀、私達も行きましょう」

 

 「そうだな。じゃあ俺達も失礼します」

 

 ナギとハヤテに頭を軽く下げて俺達は別れる。

 で、また歩き始めて少し経った頃に

 

 「誰かー!ソイツを捕まえてー。ひったくりよー!!」

 

 「オラッ!!どけどけ!!!」

 

 女性らしい声が上がると同時に男が人混みの中を強引に突っ走ってくる。

 どうやらスリの類の様だ。

 男は向こうからコッチの方へ近付いてくる。

 せっかくの楽しい縁日なのにスリを行うなんてとんでもない奴だ。

 俺は男がすぐ側まできた瞬間右足をスッと出し、男を引っ掛けた。

 

 ガツッ!

 

 「なあっ!!?」

 

 そのまま俺の足に引っ掛かり転倒するひったくり犯。

 その勢いでひったくった物であろう被害者の財布を手から放してしまう。

 すかさず、その財布を拾い上げる。

 

 「ぐっ…このガキ!!」

 

 男は凄い形相で睨みつけてくる。

 このままブン殴って意識を落としてから警察にでも引き渡そう。

 立ち上がって俺の方に向かってくるひったくり犯。

 俺も構え、迎撃しようとしていた矢先に1人の人影が俺とひったくり犯の間に割って入り

 

 「なんだこのアマあああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

 叫びながら向かってくる男のパンチをかがんで躱し、

 

 「はあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

 

 そのまま男の手を取って背負い投げた。

 

 「ぐああっ!!」

 

 受け身も取れないまま、背中から地面に落ちる。

 それから仰向けにさせた後、腕を捻り上げ男を押さえて無力化する。

 しばらくその状態が維持され、地元の警察が来るまでその体勢は続いていた。

 やがて警察に身柄を引き渡し手錠をはめられて連行されるのを見送った後、

 

 「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおっっっっっっっ!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 俺達の周囲の人達が、一斉に歓声を上げだす。

 

 「すげーぞ姉ちゃん!!あんな大男を投げ飛ばすなんて!!」

 

 「そんな細い体のどこからそんな力が出るんだ!!?」

 

 「坊主も足を引っ掛けてよくあの男を止めたなぁ」

 

 周りはお祭りの様に騒ぎ出す(実際祭りやってるんだけどね)。

 そこでさっき一本背負いを決めた人を見る訳だが

 

 「(ま た 『く ぎ み ー』 か!!)」

 

 そう思った俺は悪くない!!

 今日はアレか!?『くぎみー』のバーゲンセールだとでもいうのか!?

 

 「妙子!大丈夫だった!?」

 

 「雪乃さま、あたしは大丈夫です」

 

 「そう…」

 

 「全く、いきなりタエが走ってひったくり犯を追い掛けるもんだからあたし達まで走る羽目になっちゃうし」

 

 「そうだそうだー、鞠奈は体力そんなに無いのにー」

 

 「も、申し訳ありません…」

 

 シュンとして身を縮こませるくぎみーボイスさん。

 しかしすぐに立ち直り、俺の方を見て

 

 「君、大丈夫だった?」

 

 俺の身を心配してくれる。

 

 「別に怪我とかはしてませんから」

 

 「そう…でも無茶しちゃだめよ。もし相手が刃物なんか持ってたら危ないんだから」

 

 刃物あっても余裕だったんですけどね。

 

 「あはは…そうですね。助けてくれてありがとうございました……お兄さん(・・・・)」(ボソッ)

 

 「っ!!?」

 

 最後の一言だけ本人にしか聞こえない様な小声で言ったが、一瞬とはいえ見事に動揺したな。

 目の前の人は腰元まで伸びている赤い髪に華奢な身体つき。

 白い肌にやや高い声色。

 普通なら誰が見たって目の前の人が女性だと思うだろう。

 しかし原作知識を持っている俺だからこそ分かるのだよ。この人が女性ではなく女装した男(・・・・・)だと。

 

 「えっと…今何て言ったのかな?」

 

 おずおずと聞き返してくる。

 

 「お兄さ…むぐーっ!!?」

 

 もう一度言おうとしたら口元を手で押さえられ、そのまま脇に抱えられて俺は拉致される。

 その突然の出来事をアリサと女装してるお兄さんの連れの方々はただ呆然として見ていた………。

 

 

 

 少し参道から外れた木々の中、俺と女装したお兄さんは会話を交わしていた。

 

 「何で分かったの?あたしが男だって」

 

 「結構情報通なもので…」

 

 「納得出来る理由じゃないんだけど?」

 

 「でも事実ですから」

 

 だって『原作知識です』なんて言えないじゃん。

 相手はコチラの目を見て真偽を問い質す様に見つめる。

 俺も目を逸らさずに視線を受け止め見返す。

 ほんの僅かな時間、その様な状態が続いた後…

 

 「…嘘じゃないみたいね」

 

 向こうが納得してくれた。

 

 「それで?知ってるのはあたしが女装してるって事だけ?」

 

 「一応、貴方が警備会社『アイギス』所属のエージェントである事と貴方の本名ぐらいですかね?」

 

 「本名まで……。タダの情報通でそこまで調べられるだなんて君、本当に子供?」

 

 二度目の人生を謳歌してる子供です。

 俺はニヤリと不敵に笑って返す。

 

 「…まあいいわ。少なくとも君は刺客の類じゃないみたいだし」

 

 「そうですね。貴女が護衛してる対象とは無関係ですので警戒はしていただかなくて結構です」

 

 「…もういいわ。こっちの情報筒抜けみたいだから(『アイギス』の情報管理って杜撰なのかしら?)」

 

 あ、言い過ぎたかな?

 ガックリと肩を落とす姿を見ると少し悪い事した気分になった。

 

 「そう言えばお兄さん、今は偽名使ってるんですよね?偽名での名前は何て言うんですか?あ、俺は長谷川勇紀です」

 

 俺は知ってるんだが敢えて聞いておく。

 『うっかり人前で本名や『お兄さん』と言ってしまわない様に』とそれらしい理由をつけて。

 

 「ああ、まだ名乗って無かったわね。本名は『如月修史』で今の名前は『山田妙子』。セント・テレジア学院に潜入しながら対象を護衛している『アイギス』のエージェント、コールサインは『シールド9(ナイン)』よ。よろしくね、長谷川勇紀君」

 

 これが俺と『恋する乙女と守護の楯』原作主人公の『山田妙子』こと『如月修史』との初邂逅だった。

 てか今ぐらい男口調に戻ってもいいだろうに………。

 

 

 

 で、改めてアリサ達がいる場所まで戻ってくると…

 

 「アンタ達、桃まんの良さが分かるなんて見所あるじゃない」

 

 「そういうアリアちゃんだってタコスに対しての理解の良さは目を見張るものがあるじぇ」

 

 「ま、まあ私にとってはメロンパンが一番だけどね」

 

 「飲み物ならエフィのミルクが一番だな」

 

 「ナギは結構好き嫌い多いわよね?」

 

 「い、いいではないかアリサ。人それぞれだ」

 

 ………何だこの混沌(カオス)は。

 さっき見掛けた『くぎみー』キャラが大集合してるじゃないか。しかも仲良くなってるし。

 その側には皆の連れらしい人物が雑談してるし。

 俺とタエさん(親しみを込めてこう呼ぶ事にした。ちなみに男の時は『シュウさん』と呼ぶ予定)が帰ってきた事にも気付かない。

 …声、掛けた方がいいのかな?

 

 「それで……あら勇紀?もう話は終わったの?」

 

 お、アリサが気付いてくれた。

 

 「一応は。それでそっちは俺がいない間にやけに友達が増えてないか?」

 

 「ええ、向こうから順番に『神埼・H・アリア』さん、『片岡優希』さん、『平井ゆかり』さんで愛称が『シャナ』さん、『アスタロッテ・ユグヴァール』で愛称が『ロッテ』よ。ナギはさっき自己紹介したから知ってるでしょ?」

 

 ナギどころか全員知ってるよ。

 

 「何か妙に気が合ってね。ナギともまた会ったし気が付いたら仲良くなってたのよ」

 

 「そうですか…」

 

 中の人が同一人物だとやはり親近感が沸いたりするんだろうか?

 アリサは再び、雑談に戻り俺はその同行者の皆さんとの会話に加わる。

 唯一タエさんだけがくぎみーボイスでありながらも俺達同行者組の方にいる。

 しばらくは『くぎみー組』と『同行者組』に別れて楽しく雑談していたが段々夜が遅くなっていくので

 

 「もうこんな時間だじぇ」

 

 「流石にこれ以上遅くなるのはいけないわね」

 

 「なら解散か?」

 

 「そうね。名残惜しいけど」

 

 「じゃあせっかくだし携帯の番号とアドレスの交換しないか?」

 

 「賛成。何故かここにいるメンバーとは末永い付き合いになりそうな気がする」

 

 上から順に優希、アリア、アスタロッテ、アリサ、ナギ、シャナが口を開く。

 俺達同行者組も気が合ったので番号とアドレスを交換し、それぞれの『くぎみーキャラ』に着いて行く形で別れる事となった。

 今日一日で電話帳に『遠山キンジ』『綾崎ハヤテ』『須賀京太郎』『塔原直哉』『坂井悠二』それに『如月修史』と一気に男の知り合いが増えた。

 

 神社の入り口に向かっている途中、アリサが足を止めるので俺も一緒になって立ち止まる。

 

 「アクセサリー?」

 

 アリサの視線の先にある屋台には無数の装飾品が置かれており、どれも手作りっぽい。

 

 「ちょっと見ていくか?」

 

 「良いの?」

 

 「俺は構わないぞ」

 

 「じゃ、じゃあ見ていきましょう」

 

 俺達は屋台の方に近付く。

 

 「いらっしゃい。可愛いお客さん達だね。何か欲しいのかい?」

 

 屋台のおっちゃんが声を掛けてくる。

 

 「買うかはまだ決めてないですけど見てもいいですか?」

 

 「おう!気に入ったものがあったら買ってくれるとおっちゃんは嬉しいがな」

 

 俺とアリサは少しの間色々な装飾品を眺めているがアリサはある一点の装飾品の前で視線を止めている。

 

 「…それ、欲しいのか?」

 

 「べ、別に…//」

 

 アリサが見ているのは指輪だった。

 凝った造りでも何でもないただの指輪。

 材質は金や銀といった貴金属じゃないみたいだし。

 本人は否定して顔を背けたけど結構興味がありそうで視線をチラチラと指輪に向けている。

 

 「あの、これって…」

 

 「ん?その指輪かい?チタンの廃材で造った物だ。買うなら1000円丁度だよ」

 

 チタン…希少金属か。けど廃材の再利用品ならそれ程の価値は無い様なものか。

 ……1000円なら余裕で支払えるし…

 

 「じゃあそれ貰えます?」

 

 「隣の彼女にプレゼントかい?」

 

 「かっ!かか、彼女!!?////」

 

 突然素っ頓狂な声を上げるアリサ。

 

 「彼女じゃないですよ。友達です」

 

 「むーーー………」

 

 今度はジト目。

 

 「…何ですかアリサさん?」

 

 「何でも無いわよ!(少しは勇紀だって慌てふためいてくれたっていいのに)」

 

 不機嫌そうです、隣のツンデレさんは。

 

 「そうかい。可愛らしい子なのに勿体無いねぇ……毎度あり」

 

 買った指輪をアリサにそのまま渡す。

 

 「え?」

 

 「今日、別荘に誘ってくれたお礼だ。受け取ってくれ」

 

 「えええ!!?わ、私に!!?////」

 

 「いや、この場で渡す相手なんてお前しかいないだろうが」

 

 「い、いいい良いの!!?指輪よコレ!!ホントに良いの!!?////」

 

 「???指輪じゃ嫌だったか?なら…」

 

 「いい!!コレで良いわ!!////」

 

 「そ、そうか…」

 

 やたら興奮したアリサに若干たじろぐ。

 当の本人は早速指輪を指に嵌めるが

 

 「……大きい」

 

 指のサイズに全然合わず、簡単に指から外れるのだった。

 その現実に落ち込むアリサ。

 

 「あー…指のサイズ考えてなかったな。おっちゃん、この子に合うサイズは無いのかな?」

 

 「残念だがサイズ毎に作ってる訳じゃねえからな」

 

 やっぱりか。

 どうしようかねぇ。

 そう考えつつも他のアクセサリーや装飾品を見ていると目に留まったのは細長い黄緑色のリボン。

 

 「…そのリボンも貰えます?」

 

 「コレかい?コレなら100円だよ」

 

 「はい」

 

 100円を渡し、リボンも一本買う。

 

 「アリサ、とりあえず帰ろうか」

 

 「………そうね」

 

 完全に意気消沈したアリサの手を引いてその場を離れる。

 縁日から別荘まで海岸沿いに歩いて帰る。

 空は満天の星空で波の音が耳に入る。

 

 「何つーか、そんなにショックだった?」

 

 「少しはね…ハア~…(せっかく勇紀が指輪買ってくれたのに)」

 

 肩を落とし、元気の無いアリサ。

 

 「うーん。じゃアリサ、指輪ちょっと貸して」

 

 「…どうするの?」

 

 「すぐに分かるって」

 

 俺が促すとアリサは立ち止まってさっき買った指輪を一旦返してくれる。

 ここで指輪とは別に買ったあのリボンを取り出し指輪にリボンを通す。

 で、正面からアリサの肩越しに手を回し後ろ首の所でリボンの先端同士を結んでやるとあら不思議。

 

 「…という事でこうすれば身に付けられるだろ?」

 

 「これって…」

 

 「指輪の本来の用途とは違うけど、リボン使ってチョーカー代わりにすれば一応装飾品として使える訳だし」

 

 「リボン買ったのってこのために?」

 

 「まあな。指輪が嵌められるぐらいに成長したらリボンはリボンとして使えばいいだろうし」

 

 「……………………」

 

 「今はそれで我慢しとけ。な?」

 

 「……………………////」(コクッ)

 

 静かに頷く様子を見て俺も微笑む。

 

 「じゃあ帰るか」

 

 再び歩き出そうとする俺をアリサは呼び止める。

 

 「ゆ、勇紀…////」

 

 「何だ?」

 

 振り返った途端アリサの両手に俺は頬を抑えられ

 

 「ん……////////」

 

 「んんっ!?」

 

 アリサの唇を俺の唇に重ねられていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 「んん…ちゅっ……////////」

 

 「んっ…ふぅ……////」

 

 アリサの柔らかい唇が押し付けられて10数秒…

 

 「…ぷはっ……////////」

 

 唇を離し、真っ赤になったアリサの顔が目に映る。

 

 「あ、あああアリサさん!!?////」

 

 「こ、これ…指輪のお礼だから////////」

 

 「いや!アレは俺が別荘に誘ってくれたお礼として買ったんだから別に…////」

 

 「い、いいのよ!!私が『お礼しなきゃ!!』と思って勝手にした事なんだから!////////」

 

 そ、そのお礼がきき、キスって…。

 

 「は、早く帰りましょ!!夜更かしは身体に悪いわ!!////」

 

 「お、おう…////」

 

 それからはお互い無言で別荘に戻り、それぞれ自室で一夜を明かすのだった………。

 

 

 

 ~~アリサ視点~~

 

 「うふ、うふふふふふ…////」

 

 私は自分の笑い声を押し殺す事が出来ず、顔もニヤけたままだというのが鏡をみないでも理解出来る。

 元々なのは達やシュテル達の予定を予め聞いておいて、誰もがいない間に勇紀と2人で別荘に遊びに来る計画を立てた。

 不可能とは思いつつ、けどあわよくば勇紀とこ、ここ、恋人同士になれる事を願いながら。

 結果として恋人同士になる事は出来なかったけど…

 

 「(ゆ、指輪をプレゼントしてくれたし…き、キスもしたし…)////」

 

 指輪をプレゼントしてくれた時は我を忘れて舞い上がったけど指のサイズが合わなくて失意のどん底に落ちた様な気分だった。

 けど勇紀が別に買っていたリボンのおかげでチョーカーとして身に付けることは出来るし、勇紀が言った様に成長したら指輪を嵌める事が出来る筈。

 

 「(そ、その時は左手の薬指に嵌めるべきよね)////」

 

 勇紀にとっては指輪はあくまで普通のプレゼントなんだろうけど。

 

 「(けどこれでディアーチェに後れをとったどころか一気に追い抜いた気がするわ)////」

 

 元々ディアーチェに先手を取られた事で私は気が気じゃなかったけどこれで心に余裕が出来た。

 

 「(後はもうアプローチあるのみよね)////」

 

 なのは達やシュテル達には悪いけど私はこのまま独走させてもらうわ。

 私はチョーカーになっている指輪を握りしめ、今日の出来事を振り返りながらゆっくりと眠りについた………。

 

 

 

 ~~アリサ視点終了~~

 

 ~~あとがき~~

 

 三千院ナギに関してはまだ遺産の相続権を失ったりしてません。時系列的に言えば『ハヤテを執事として迎えてから最初の夏を迎えた』っていう事で設定してます。

 


 
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