No.567079

真・恋姫†無双 ~孫呉千年の大計~ 第1章 SSー呉の三羽烏編

雪月さん

常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております

続きを表示

2013-04-17 19:27:37 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6446   閲覧ユーザー数:5110

第1章SS 呉の三羽烏編 『 三本の矢 』

 

 

 

 

太陽が真上に差し掛かった頃を見計らったように構えを解く一刀

 

「そろそろ時間だろうし 今日はここまでにしようか!」

と3人への稽古を終了する刻を告げる

 

普段だと一刀の声が広い調練場の隅々まで届く事はマレなのであるが

この日の午前中は、隊長達3人だけの調練予定となっており、他の隊員達は午後からの調練となっていた為

違い静まり返った調練場に、それぞれが撃ち合う気合の篭った剣撃と矢音、喊声が響き渡っていた

 

「はぁ・・・はぁ・・・ありがとうございました 隊長」

「ふぅ~ ふぅ~ お疲れ様でした 一刀しゃま~」

「ハァ ハァ・・・・・・・ぐっ・・・今日も・・・おつでした 隊長」

珊瑚・瑠璃・子虎の三名のそれぞれの挨拶が終ると

一刀は軽く微笑みを浮かべながら、三人の頭を軽く撫で撫でして調練の疲れを労い去っていった

 

一刀と別れた三人は、その場にへたり込みそうになった身体に鞭を入れてランを厩舎に預け

なんとか通い慣れた食事処へ到着するや・・・いつもの畳敷き個室部屋へ通された後は、もう動けなくなっていた

 

下着が見えている事などお構いなしで、百年の恋すら一瞬で冷めてしまいそうな・・・

世の男性方にはお見せ出来ないような姿で寝転がっており

3人のというより・・・三匹のあざらし・・・トドと表現すべき怠惰な姿で転がっていた

 

そんな人様に見せられないような、あられもない姿で転がっていながら、口の方は未だ達者なようで・・・

 

「子虎 へぼい」

「うっさいって~の! 瑠璃! そもそも何度も攻撃機会があったのに、お前が邪魔したから攻撃できなかったんじゃないか!」

「一刀しゃまを止めるのが仕事・・・邪魔って何? 一度くびり殺されたい?」

 

「瑠璃! 子虎! 喧嘩しないの!」

この通りの有様で、反省会というより罵りあいの様相を呈してきていた

 

「偉そうに! 珊瑚だってなんだよ! 少しは隊長の動きを止めてみせろよ!

 ランに乗ってるんだから、一刀様の速度に1番近いの珊瑚だろうに!」

「そうそう 手抜き」

 

「うぐっ・・・ そう言われると面目もないんだけど・・・」

事態を収拾すべく仲裁に入った筈なのに・・・いつの間にか2人の怒りの矛先が珊瑚へと向いていて

つい2人に謝ってしまっていることに、多少の理不尽さを感じずにはいられない珊瑚であった

 

調練時の作戦としては、素早いラン(銀狼)に乗った珊瑚と瑠璃が一刀を押さえている間に

子虎が死角からの弓で攻撃し一刀を初撃破する予定であったのだが

三人の連携が全く噛み合わず、お互いの足を引っ張り合い、今日の調練も散々に一刀に打ち負かされてしまったという訳なのである

 

子虎が攻撃出来なかったネタ晴らしをするならば

一刀が笑顔を浮かべ余裕の表情を演出しながら、常に自身への斜線上に珊瑚か瑠璃かを入れていたからに他ならない

珊瑚や瑠璃は動きを抑える事に必死で気付かなかったのであろうが・・・

司令塔の役目も担っているのだしランに乗っている分、珊瑚が気付くべき事柄なのであろうが・・・

 

まだまだ未熟な三人、手心を加えるならば素材型、発展途上というべき処なのであろう

 

小言をグチグチ並び立てていた子虎であったが

黙り込んで思案している珊瑚の顔が余りにも真剣だった為、堪りかねてつい声をかけてしまう

 

「どうかした? 珊瑚」

「いやね ちょっと頭の片隅にあった言葉がすっと浮かんできてさ・・・

 我々が調練場で隊長に任命されたあの時に”三矢の教え”・・・を我らに説いてくださった事をさ」

 

「ああ~そうだったね

 たしか・・・”1本の矢では簡単に折れるが、3本纏めると容易に折ることは出来ない”という

 3人共々結束することの尊さを説いた逸話だったっけ?

 ボク達と隊長ってそんな歳変わらないはずなのに・・・ 不思議な人だよな まるで父さんのようで・・・

 そんな訳あるはずないんだけどさ・・・」

 

「うん・・・ それ なんとなくわかる・・・」

 

子虎は畳に寝転がった姿でうなじ後ろで両腕を組み、食堂の天井を見上げながら呟き

その言葉に瑠璃も同意を示し、三人が出会いし時に教わりし事を回想していた

 

 

 

 

「俺のことは、噂などで知ってる事と思う 改めて紹介すると『姓』を北郷、『名』を一刀という 

 字はないんで、呼び方は皆の好きに呼んでくれていい 今後君達の隊長となる よろしく頼むよ

 この度、君達が隊を移籍した経緯は、前隊長である皆様方からお聞きしている事と思う

 これから孫呉はどんどん成長していく それに従ってこの軍も大きくなっていくこととなるだろう」

 

「この部隊の性格は、本隊と連動または独立して動く機動部隊の性格を有している為、味方と言えども情報の漏洩は厳禁である

 最初の頃は俺からの指令より、今まで諸君らがお世話になられたであろう隊長達からの指揮、指令の方が多くなるだろう

 皆の評価に関しては、これから分ける隊・組単位で行う 個人でも評価しない訳でもないが・・・

 これは個人の勝手・都合により、隊や組が壊滅の憂き目に曝されるという事の無いようにする配慮である」

 

「ここに集ってもらっている皆には、最低でもこの部隊の支隊長になってもらうつもりでいるが

 ダメと感じたならば、他の隊へ戻ったり移籍してもらっても構わない ダメな奴をずっと置いておくつもりもない

 それを留意して訓練に励んでもらいたい 以上だ」

 

「ここまでで何か質問とかある者は?」

 

「・・・ないようなので話を続けるが、 全ては皆騎兵にての戦闘運用が前提となっている

 南船北馬との言葉にもあるように、この中には騎乗の得意でない者が大半であろう

 不安になっている者もいることであろうが、それに関しては”ある物”を補助使用して騎乗してもらうこととなる

 ”ある物”に関しては俺が口で言うより、実際に見て手にして使ってもらった方が判りやすいだろうから説明は省くとして・・・」

 

「まず諸君らが選択し属してもらう部隊に関しては三つだ 

 

 ひとつ、槍での突撃を主体とした近距離部隊

 ふたつ、槍・弩弓を使用し遠近両用の攻撃を行う中距離支援部隊

 みっつ、最後に弓を専用に特化した遠距離部隊

 

 以上の三つだ 自身の得意分野と相談して部隊に所属して欲しい」

 

「適正等は訓練時に見て回るつもりだが、皆にも希望があるだろう

 とりあえず簡単にでいいので、右に槍・中央に弩弓・左に弓と別れてみてくれ」

 

「若干弩弓が少ないか・・・ まぁそこは後で調整するかな

 それじゃ次に三つの部隊の隊長を決めさせてもらう この部隊がどれだけ大きくなっても俺の直属の部下となり部隊を率いてもらう

 俺が不在の場合の代理隊長という性格もある」

 

 「本来なら自薦・他薦問わない処なのだが・・・とりあえず前隊長さん達全員からの推薦ももらっているので

  俺が今から呼んだ隊長さん候補は、部隊の最前列より前に出てきてね~

  朱桓・凌統・徐盛の三名、前に出て来てくれる?」

 

 「さて、俺が選んだ隊長さん達に異議もあろう

  異議のある者は今から個人戦、仲間との同数戦でもいいので、とことんやりあってもらいたい」

 

 「おい! いきなりあの二人かよ・・・無理に決まってるじゃないか・・・」

 あの二人とは朱桓と徐盛の二人を指している 

 朱桓は楓の部隊、徐盛は祭の部隊所属で、所属当時の二人は、部隊の副将の補佐役に甘んじていた存在であった

 このまま二人を腐らせてしまうよりも・・・と二人から隊長への推薦も兼ねて栄転という形で放出したのであった

 

 「となると・・・凌統って?・・・」

 「あぁ なんでも元呉軍親衛隊副長だった凌操さんって人の娘さんらしい 

  実力は甘将軍につっかかった時に見たけど、負けたけれど結構強かったぜ・・・」

 「何処かで聞いた名と思ったわ そうなると勝てそうなの・・・いないんじゃないか・・・」

 

 と外野がザワザワとあれやこれやと騒いでいる間にも、その中から計24名が名乗りをあげ熱戦を繰り広げたのである

 その戦いの詳細はこの際省くが、”くじ引き”で各々の対戦相手が決まり

 推薦された朱桓・凌統・徐盛の三人+朱然・丁奉・歩シツの6名が最後まで残ったのである

 その中には、孫呉で一度は名を聞いたこともあるであろう面々が名を連ねていたのである

 

 「ん~ この6人で決定でいいかな ここからは後腐れのないよう総当り戦へと移行して

  上位3名を隊長とし下位3名を副隊長として任命します

  副隊長に任命された下位3名さんは、4位から順に隊長の指名権を差し上げますので

  手を抜くと後で誰々さんの方が隊長の方が良かった! なぁんて痛い目みるかもって事で皆さん手を抜く事無くがんばってくださいね」

とノリ良く進行する一刀であった

 

 結局、朱桓>凌統>徐盛の三人の強さは実力伯仲、4位以下にしても朱然>丁奉>歩シツの順に収まったが

 こちらも最後まで残っただけあり、ちょっとした差で決まっていたのだった

 

 槍騎馬    ー 朱  桓 ー 歩シツ(残り・・・ここしかなかった(泣))

 騎馬弩弓   ー 凌  統 ー 朱然(自由にやらせてもらえそうなので)

 騎馬弓    ー 徐  盛 ー 丁奉(動物苦手なので・・・事実上一択・・・)

 

 ※太史慈加入後の編成

 

 槍騎馬    ー 朱  桓 ー 歩シツ(変化なしですが・・・何か?)

 騎馬弩弓   ー 徐  盛 ー 朱然(うげっ 子虎様お得意の丸投げがきそうでヤバすぎる・・・ 瑠璃様かむばーっく!)

 騎馬弓    ー 太史慈 ー 丁奉(ホッ やっと丸投げから開放された・・・)

 

各隊の組み合わせの最終結果はこうなった ※()内は副長が抱いた各隊長へのコメントも合わせて掲載しておく

 

「各部隊の隊長・副隊長が決まった事だし、皆、顔名前をしっかり把握しておくように

 最後に部隊を指揮する俺の実力を皆も知りたいだろうから・・・俺と隊長三人で摸擬戦対戦してみようか

 隊長達も自身より弱い隊長の命令に従ったり尊敬なんてし難いだろう?

 得物は各自好きなのでいいよ? 先程と替えても良し そのままでも良し

 

 瑠璃、俺と顔見知りではあるけれど、手加減は無用だから思いっきり来なさい 判ったね?」

 

 「はい・・・そのつもりです」

 

 「うん いい返事だ 準備が出来たらいつでもいいよ?」

 

 「「「オオォォォォぉーーーーーーー」」」

 

 「最後にキタコレ あの雪蓮様達ですら一太刀も当てれないと噂の一刀様の実力を間近でみれるのか 楽しみだぜ」

 「ああ 今からゾクゾクするぜ」

 

皆が固唾を呑んで見守る中、静かに4人の闘志が鬩ぎ合い

歩シツの気合の篭った戦いの合図により戦いの始まりを告げたのだが・・・

 

3人が一刀へそれぞれ一撃を加えようと迫った途端

甲高い剣撃音が三回鳴り響くと同時に、朱桓、凌統、徐盛の遥か後方へ三人の武器が次々に上空から降って来たのである

観戦していた者達は、武器の降って来た行方と対峙していた4人を、静かに交互に視線を移しながらも

口を開くには重苦しい静寂が辺りを包み込んでいた

正しく電光石火、瞬きするほんの一瞬で勝負を決し、皆の度肝を抜いた一刀であった 

 

「何が起こったんだ!?」

「信じられねぇ」

「何をしたのか全然見えなかった・・・」

 

これらの周囲の呟きは珊瑚・瑠璃・子虎の思考の代弁でもあった

こんな負け方などした覚えは、過去に遡ってもそうそう無かった三人であった

前所属部隊でも副長補佐であった事からも判るとおり、武芸に秀でないとそこまで到底上り詰める事など不可能である

 

先程までの自分達は少しも油断はしていなかったと断言できる

むしろ雪蓮様や祭様が負けたのは油断したせい その化けの皮を剥がしてやると意気込んで一撃を叩き付けたほどであった

しかし結果は・・・見ての通り惨敗であった

 

こんな高みが・・・ 高き壁が世の中に存在していたのか・・・

 

恐れる者は少なく、高み付近にいる又は近づいていたと錯覚していた

その様はまるで釈迦の掌のひらの上で踊らされる孫悟空を連想させるが如く・・・さぞ滑稽に写っていたことだろう

 

自身がそれまで抱いていた価値観を根底から引っくり返され、木っ端微塵に砕け散るのを感じた珊瑚・瑠璃・子虎の三人であった

 

「それじゃ 撤収用意完了後 今日は解散 お疲れ様でした」

「「お疲れ様でしたーーーー」」

 

未だに呆然と立ち尽くしていた三人の頭を撫でながら語ってくれたこと

 

「俺が育った処の話でな 

 1本の矢では簡単に折れる でも、3本纏めると容易に折ることは出来ないという逸話が残っている

 今のお前達3人が結束しようとも、まだまだ一本の矢くらいであろうが・・・

 慢心せず努力し成長したお前達3人が結束すれば・・・逸話のような必ずや丈夫で折れない()となろう

 

 ※箆 矢を構成してる棒の部分をさす語 

 

 期待しているよ 朱桓・凌統・徐盛」

と惚れ惚れするような満面の笑みを浮かべ、三人を諭し去っていく隊長の後姿が

刻が流れ薄れゆく3人の心の奥底で、今も深くしっかりと力強く息衝いていたのだ

 

                             ・

                             ・

                             ・

 

「ボク達 あの頃と全然変わってないね・・・」

「・・・」

「子虎・・・ さすがに全然変わってないことはない・・・と思いたい・・・けれどね アハハ」

深刻になっている二人の雰囲気を少し和らげる効果があらわれますようにと、無理やり乾いた笑いを漏らす珊瑚

 

「・・・ボクの不甲斐なさを棚上げにして、さっきは少し言いすぎた ごめん二人とも」

「お互いさま・・・」

珊瑚の心を汲み取ったのか二人は素直に自身の誤りを口にした

それは自尊心の強い今までの彼女達には、到底考えられない心境の変化であった

 

「黙って不満を溜め込むより随分マシではあるけど、これからも気になった点はお互い指摘し合おうよ」

と今度は淀みの無い笑顔を二人へ向け鼓舞する珊瑚

 

「そうだね さすがは我らが主将 珊瑚!」

「うん うん」

と今までの重苦しい雰囲気が何処かへ飛んでいったが如き、華が咲き誇ったかのような美しく晴やかな笑顔を3人は浮かべていた

 

「コラ! 二人とも茶化さないの!  ほんとにもう! 調子いいんだから・・・」

と自身も認める二人に褒められ、嬉しそうに照れる辺り・・・満更でもない珊瑚であった

 

「今からでも遅くない 作戦を組みなおし隊長に再挑戦しよう!」

「「おー」」

珊瑚の提案に素直に応じ、作戦を練る瑠璃と子虎の二人であった

 

 

 

 

午後は参謀室で仕事をしていると聞いていた珊瑚・瑠璃・子虎の三人は

緊張した面持ちで参謀室の扉を”ノック”し、失礼しますと一声かけて入室する三人

 

「おー 珍しいこともあるものだな 参謀室を良く敬遠し近寄らない三人組が何用だ?」

珊瑚の背に必死で隠れつつ、催促している瑠璃と子虎の様子に溜息をつきつつも、ジッと見守る参謀室の主こと冥琳

 

「ウグッ・・・エ~ 周瑜大都督様!本日ハ オ日柄モヨク・・・ 

 隊長・・・イエ、北郷様ハ コチラニ イラッシャイマス デショウカ?」

 

蛇に睨まれた蛙という表現がこれほど適切である状態にお目にかかれようとは・・・

珊瑚のあまりの緊張に口調も身体もガチゴチで、発した言葉すら緊張が端々から滲み出ているようであった

 

「何をそんなに緊張しているのだ? 何か良からぬ事でもしたのか?

 そうでないならそんなに畏まらなくてよい それに私が大都督だって?

 フフ・・・そんな大層な役職に就いた憶えはないが・・・ この際だ 目を瞑るとしよう

 お前達の質問に対しての答えだが、北郷だったら今は休憩中だ 食堂でお茶でも飲んで休憩しているだろうよ」

 

「アッ アリガトウ ゴザイマス 周瑜大都督様! ソレデハ コレニテ シツレイシマス オジャマシマシタ!」

と三人は急いで深々と礼を終え、素早く扉を閉めて急ぎ走り去っていったようだ

 

「フッ 北郷に関っている者達を観察するのは実に面白い・・・ 風変わりで可笑しな奴らだ」

 

一刀がその場に居合わせたなら、そういう底意地が悪い処が彼女達の緊張を誘っているんだろう?と

苦笑を交えつつ、冥琳へツッコミを入れていたことだろう

 

参謀室より逃げるように走り去った三人は、食堂で一人ゆったりと休憩をとっていた一刀を見つけ、一目散に近づいていく

 

「よう! どうした? お前達も休憩か?」

と気付いた一刀は、何時も通り気軽に3人へ声をかけたものの、すぐに三人が纏う雰囲気が普段と違う事に気付いた

 

「隊長 すこし調練のお時間をいただけませんでしょうか?」

「・・・お願いです」

「お願いします 隊長!」

 

3人を見つめる眼差しは優しく、普段とは違った殊勝な態度から何かを悟った一刀であった

「ふむ いいよ あまり時間は割けないけれど その様子だと何か掴めたのかな?

 午前の調練のようなら即終了だからね? 先に行って準備を整えておいてくれるかい?」

 

「「「はい!」」」

 

と騒ぎながら準備へと奔っていく三人の背を優しく見守る一刀であった

 

                                ・

                                ・

                                ・

 

準備を終えた三人は円陣を組み・・・

 

「瑠璃! 子虎! 二人のこと信じてるから・・・

 今度こそ! 私達が成長した姿を隊長へお見せしよう!」

 

「うん!」

「オーーーーーーー!」

気合が乗った三人 ちょうどそこへ一刀がやってくる

 

「時間もあまりないんで早速やろうか!」

 

「「「はい! 隊長 よろしくお願いします」」」

と挨拶を終えると、それぞれ構えを取る4人

 

一刀の来い!の一言を切っ掛けに全力で向かっていく珊瑚・瑠璃・子虎の三人

 

子虎の弓に警戒する一刀は常に自身への斜線上に珊瑚か瑠璃を入れて戦っていた

戦いは午前中の再現フィルムを見ているかのような展開であったが

詳細に憶えているものがいたなら、きっと”違和感”を抱いたことであろう

そんな者など一刀一人しかいないのであるが・・・一刀の”勘”がしきりに頭の中でアラートを流していた

 

”違和感”には脳内から指摘されなくてもすでに気付いていた

午前中より自身の逃げる余裕スペースが二割程度減じられていたからだ

 

しかし、この時の一刀には”違和感”の正体が”二つ”あったことに気付いていなかったのであった

 

瑠璃が一刀に離されないように午前中使用していた”三節棍”ではなく”小刀”を振るい、小回り良く賢明に食いつく

一刀が範囲外へと逃げれないように、ランが左右へステップをし珊瑚が槍を突き入れ、一刀の逃げ場を一つ一つ潰し押さえ込みにかかる

 

午前中の調練でも、ここまでは粗があったが出来ていたと言える 

全ては斜線上にいる瑠璃か珊瑚をどう外して一刀に一撃を叩き込めるのか 

それにかかっていたが・・・

 

一刀の背後にいた珊瑚の手がサッと上げられ、それをみた二人は作戦の実行に移す

一刀は背後にいた珊瑚が指示を出していた事に気付かず

まだ瑠璃が斜線上にいるのにも関らず、子虎が矢を鋭く一刀へ放ったものと思い込んだ

 

斜線上の瑠璃は気付いた様子もなく一刀を懸命に抑えにかかっていて

これでは瑠璃に当たってしまう 矢を防がないと準備態勢に入っていた事が、後に幸いしたと言える

 

そう二つめの”違和感”の正体とはーーー

午前中にはまるで感じること等皆無であったお互いの”信頼感”と言う名の楔が、今まさに一刀に牙を向いた瞬間であった

 

矢の軌道を”みていた”一刀は、瑠璃に向かってくる矢の軌道を変えようと態勢を整えた瞬間に

まるで矢が見えていたかのように・・・瑠璃の首が左右にブレ、矢が瑠璃の頭をすり抜けて

一刀へ向かってきたのを緊急に軌道修正し弾いたのだった

 

子虎が放った瞬間の矢の軌跡を見て”準備”していなければ、きっとこの一矢は一刀を捉えていたに違いなかった

上記で少し説明したように、正面の抑え役の瑠璃の身体が小さく子虎の放った瞬間を目撃できたことが一刀に幸いした格好である

 

珊瑚ならランとどこまで押さえられるのか、子虎ならこのタイミングでここへ撃つ 瑠璃なら避けてくれるだろう

と信じ預けた”信頼”に他ならなかった

 

午前までは、お互いの攻撃が重なり、ちぐはぐで単調な攻撃であったというのに・・・ほんの少しの間に・・・

3人の心境を変える出来事とは一体!?  3人の将来が楽しみになり、胸の高鳴りを隠し切れなかった一刀であった

 

 

「あ~ うまくいったと思ったのに!」

「・・・惜しい」

「くそっ! これでもダメか!」

珊瑚・瑠璃・子虎の三人は酷く悔しそうである それをフォローするかのように一刀は三人へ心中を吐露する

 

「いや 弾けたのはたまたまだよ 子虎の撃った矢に瑠璃が”気付いていない”と思っていてね

 俺が子虎の矢に気付かず、瑠璃の背に完全に隠してやられていたなら、きっと成功していたと思うよ

 今日の感じと連携を忘れずに、日々精進すること! いいね?」

 

「「「はい!」」」

初の繋がった連携に気を良くしたのか、はたまた一刀を追い詰め褒められた事に感動したのか

いつもは見られないような素直な笑顔で元気な声の返事が返ってきた

 

一刀の心には涼やかな風が流れ、自身の成長の喜びより、彼女らの成長した姿を目の当たりに出来た事の方が数段上であった

しかし、そんな一刀の感動を迅速にぶち壊す言葉が、眼前に発現していたのだった

 

「隊長~♪ ご褒美に一芳亭のシュウマイ食べた~い 奢って~」

と滅多にそんな姿をみせない珊瑚が、一刀の腕を前後に引っ張り催促をする それを見た後の二人が

「いいね♪ 珊瑚 その提案!」

「じゅる・・・」

「ガゥ!」

 

・・・オイオイ ラン マデ 食ベル気満々ナノカヨ!と思考した一刀であったが、たまには・・・いいかと妥協することにした

 

「おいおい! まぁ 今日くらいしょうがないか 

 おれは仕事が残ってるから一緒には行けないが・・・これで・・・っておい子虎!」

 

妥協し財布を取り出したのが運の尽き・・・

 

「まいどあり~♪ んじゃ今日は隊長のおごりだから存分に堪能するとしよぉ~!」

「「隊長! ゴチになります!」」

「ガゥゥゥゥゥーーーー!」

 

「シクシク・・・ 調練場の後片付けだけはちゃんとしとけよ?」

 

「「「は~い」」」

「ガゥ!ーーーーーーーーーーー」

 

こういう時の返事だけはいいんだから トホホ・・・ラン(狼)ってシュウマイ食うノカヨ!

モウ 何デモアリナ世界ダナ~ 無慈悲キターーーーーッテ感ジ? ・・・アア・・・今月ノ極貧生活コンニチハ・・・ウェルカム!

今月分のお給金まるまる入った財布を、子虎に掠め取られちまったし・・・どうしよう今月の俺! 大ぴ~んち

 

でもまぁ 今日の処は多めにみるとしよう・・・ 懐がえらく寒いことになってるけど・・・ 

 

まだまだ前途多難ではあるが、将来性の片鱗を存分に見せてもらったことだしな

と溜息と共に苦笑いを浮かべつつ、三人を見送り仕事へと戻る一刀 

 

後日、一刀が危惧したとおり、財布の中身はすっからかんの状態で戻ってきましたとさ・・・

お前らドンだけ食ったンダヨ・・・とがっくり肩を落とす一刀さんでした

 

 

 

 

■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

  春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

  『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた

  優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

  容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である

  祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

   呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

  容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである

  髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが

  その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである

  服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

  普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

  発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

  このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

  ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

  容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている

  背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

  容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである

  眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から

  姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

  緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

  祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

  部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

  真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

 

  容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている

  均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである

 

 ○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ) 

 

  荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

  知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

  以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま

  呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている

 

  容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

 (背丈は朱里や雛里と同じくらい) 真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

  ○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)

 

  『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

  槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

  容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ  

  胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている  

 

  ○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)

 

  弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが、一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で

  徐々に頭角を現し、後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

  容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである 

  二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える 

 

  ○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)

 

  朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

  その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

 

  天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為、未熟であった一刀の補佐に転属させられる 

  初期には転属させられた事に不満であったが

  一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に(わだかま)りも消え、一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

  後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している

 

  容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである

  服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・

  と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)  

 

  ○太史慈 子義 真名を桜

 

  能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者  桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し

  騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)

  本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という

  両者の良い処をとった万能型である

 

  武器:弓 不惜身命

  特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く

  隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった

   

  容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子

  眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める

  一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

【あとがき】

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます

 

この度の第1章SS(ショートストーリー) 呉の三羽烏編 『 三本の矢 』をお送りいたしました

皆様いかがでございましたでしょうか?

 

三本の矢のエピソードは今更雪月が語るまでもない有名なエピソードであり、

回想という形で珊瑚・瑠璃・子虎の出会いを描いてみました

 

魏の三羽烏のように近くの村での幼馴染設定ではなく、あくまでも呉の三羽烏でも取り上げました通り

”三人の絆”が主なテーマだったりします

 

魏の三羽烏同様、色々な出来事に巻き込まれ又、巻き起こしていくことでしょう

今後もそれを楽しみに読みすすめて戴けますと嬉しく存じます

 

先週予定をカキコ致しました通り

24日(水)にはお気に入り登録会員限定作品を公開する予定でおりますのでどうぞお楽しみに

ちょっとネタ晴らしをいたしますと”呉”に関係ありませ~~~ん

ネタ晴らしになってないって? 調子コキました すみませんです ハイ<(_ _)>

 

第二章への突入は・・・すこし間を戴きまして、ゴールデンウィーク明けとなります5月8日(水)を予定しております

 

お気に入り登録をされていらっしゃらない皆様には、暫くの間お待たせしてしまうこととなります

本当に申し訳なく思っております どうぞお許しを<(_ _)>

 

それでは皆様次回更新まで(*´∇`)ノシ マタネ~♪


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
21
5

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択