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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第六十一話 サーチャー取り付けられて喜ぶのは可笑しいと思う

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-04-07 18:23:12 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:31801   閲覧ユーザー数:28218

 聖王教会へ来日した日からそれなりに時が流れて今年のゴールデンウィークも過ぎ、今日は週末の土曜日。

 俺は学校が休みで、シュテル達は初任務のため、朝からミッドに行っている。

 正式に局員になって約一ヶ月。ようやくの初任務がやってきたのである。

 朝食を食べ、部屋の掃除をしてからリビングでのんびりしていたら突然電話が掛かってきた。

 電話の相手はノエルさんでどうやら今日はすずかを迎えに行けないとの事。

 だから俺がこうやってすずかに身の危険が迫らない様、聖祥までやってきた。

 まあ、事前にメールで送っておいたので向こうはちゃんと俺が来る事を知っている筈。

 正門付近で待っていると下校する聖祥の生徒達の姿が見える。そして何やら視線もコッチに飛んでくる。

 

 「(すずか、早く来ないかなぁ…)」

 

 視線が集まるのにはどうも慣れない。

 しかも時々、敵意っぽいのも混じってるんだよね。

 

 「ハア~…」

 

 軽く溜め息を一つ。

 ここにいたら銀髪トリオと遭遇する確率も高い訳だし、ホントにすずか早く来てくれ。

 と、切に願っていたところで

 

 「「「「「「勇紀く~ん!!(勇紀~!!)」」」」」」

 

 ようやく来てくれた。

 なのは達も一緒だ。本当に仲良いね。

 

 「えと…待たせたかな?//」

 

 「来てそんなに経ってないから大丈夫」

 

 「よかった。じゃあ、帰ろう?//」

 

 そう言って俺の腕を…

 

 ガシッ×2

 

 …掴む前にはやてとアリシアの両名によってすずかは拘束される。

 

 「何するの!はやてちゃん、アリシアちゃん!」

 

 「それはコッチの台詞だよすずか」

 

 「今、さりげなく勇紀君と腕組もうとしてたやんなぁ?」

 

 「だって、勇紀君は私を迎えに来てくれたんだよ!!」

 

 「だからってう、腕を組む理由にはならないでしょ?//」

 

 「すずかちゃん、ズルいの。最近勇紀君と距離が近くなったように感じるし…」

 

 「……………………」

 

 アリサとなのはも参戦。フェイトはそんな輪から一歩離れた所で様子を見ている。

 それからすずかはすぐに解放されたけど、皆それぞれを牽制し合う様に睨み合う。

 そんな状況が続く中…

 

 「なあ…いつまで睨み合ってるんだよ?」

 

 俺が割って入る。

 正直ここから早く離れたい。銀髪トリオとエンカウントしちゃうじゃないか。

 こんな所で出くわしたら絶対に面倒だ。

 

 ギュッ

 

 「ん?」

 

 ふと腕に抱き着かれた感じがしたので横を向くと

 

 「////////」

 

 顔を真っ赤にしたフェイトが。

 いつの間に隣に来たのやら…。

 

 「「「「「ああっ!!?」」」」」

 

 そして声を上げてこちらを見る5人。

 

 「フェイトちゃん、ズルい!!」

 

 「さっきから会話に割り込んでこないと思ったら…」

 

 「抜け駆けはお姉ちゃん、感心しないよ!!」

 

 なのは、アリサ、アリシアから抗議の声が出るがフェイトは聞く耳を持たず自分の指を俺の指と絡めるように手を繋いできた。

 

 「「「「「ここで恋人繋ぎ!!?」」」」」

 

 「ふふ…////////」

 

 この娘、何か勝ち誇った顔してるよ。

 5人は5人で憤怒の表情を浮かべ始める。

 …俺、何か巻き込まれそうな気が…。

 

 「「ゴルア!!くそモブ!!何フェイトを捕まえてんだあっ!!!!」」

 

 「さっさとフェイトを離さないと痛い目を見る事になるわよモブ」

 

 …ほら来たよ。厄介な馬鹿3人が。

 すずかを連れてさっさとこの場を離れるつもりだったのに。

 

 「こんなところまで俺のなのは達を追ってきやがって!!このストーカー野郎が!!」

 

 「なのは達だって嫌がって怒ってるじゃねえか!!」

 

 「すずかにサーチャーまで仕掛けるなんて救いようの無いストーカーねモブ」

 

 「「何いっ!!?すずかにサーチャーだとおっ!!?」」

 

 む?馬鹿2人はともかく暁はサーチャーに気付いたのか?

 それとなく隠していたつもりだったが。

 やはり西条、吉満と比べるとコイツは頭一つ抜き出てるな。

 

 「ふうん。そっちの馬鹿共(西条・吉満)は気付かなかったのに……よく見てるじゃないか暁」

 

 「そっちの豚共と一括りにしないでくれる?所詮踏み台の豚共に比べ、私はオリ主なんだから」

 

 『ふふん』と勝ち誇る暁。ホント、残念な奴じゃなければなのは達に距離を取られる事もないだろうに。

 

 「勇紀…すずかにサーチャー付けてるのって本当なの?」

 

 ギリギリギリッ

 

 「い…痛いですフェイトさん。出来れば力を緩めて貰えませんかね?」

 

 瞳から光が消えていたフェイトにお願いするが、力を緩めてくれる気配は無い。

 

 「質問の答えになってないよ。正直に答えてくれないかな?」

 

 「付けてます!サーチャー付けてます!!」

 

 これは正直に答えないと俺、大変な事になる。

 『確実にヤバい!絶対に嘘を吐くな!!』と本能が告げる。

 

 「すずかちゃんにサーチャーかぁ…。どういう事なんか聞かせてくれへんかな勇紀君?」

 

 「聞くまでもねえだろはやて!!モブはすずかの弱みを握ろうとしてるんだよ!!!」

 

 「そんな事してまですずかちゃんの事知りたいのかな?」

 

 「すずか!!俺がお前を助けてやるからな!!今からこのくそモブをボコってやるから安心して待っててくれ!!」

 

 「皆、落ち着いてよ!!勇紀君はストーカーなんかじゃないよ!!私だってサーチャーの事は知ってるし!!」

 

 唯一、理由を知っているすずか本人が擁護してくれる。

 

 「…で、何ですずかの事監視してたのよ?//」

 

 馬鹿達が来てから牽制を止めていた5人の内、アリサがフェイトと反対側の腕に自分の腕を絡めて聞いてくる。

 

 「「「「アリサちゃん(アリサ)もズルい!!」」」」

 

 「「きぃ~~さぁ~~まぁ~~~!!!!」

 

 「……モブ、もう人生に悔いは無いわね?」

 

 アリサぁ…。何か火に油を注いだ様な結果になったんですけど?

 何でこんな面倒な事になるのかねぇ?

 ダレカタスケテ………。

 

 

 

 現在、俺はすずかの家まで徒歩で向かってます。

 …護衛対象のすずかは勿論、左にフェイト、右にアリサが腕を絡めている状況で。

 その後ろをなのは、はやて、アリシアが陣取っていてすずかは俺達となのは達の間に挟まれた状態。

 銀髪トリオは片付けました。……………はやてが。

 あの後、人気の無い所で結界展開したら即ミストルティンで石化させたので、アリシアと共に転送魔法を使い、アースラの訓練室に転送しました。

 おかげで多少騒がしさが無くなった。

 

 「…皆して着いて来るのか?寄り道になるぞ?」

 

 「そうだよ。帰りが少し遅くなると家族の人達は心配しちゃうんじゃないかな?(勇紀君と二人で帰れると思ったのにな)」

 

 「わたしはさっき広域念話でザフィーラに言ったから大丈夫や」

 

 「私もリニスに念話で伝えたよ。一応フェイトの事も一緒に」

 

 「お母さんにメール送ったから問題無いの」

 

 「私も鮫島には連絡済みよ」

 

 どうやら皆、大丈夫な様で。

 しかしわざわざすずかの家にまで着いて来るなんて暇人なのかねこの娘達は?

 

 「…で、何で勇紀はすずかにサーチャー付けてるの?」

 

 「…言っていいのか?」

 

 振り返って後ろのすずかに聞いてみる。

 

 「私が説明した方がいいよね?」

 

 まあ、君自身に起きた問題だからね。

 俺が首を縦に振るとすずかは説明し始める。勿論夜の一族に関する事は省いてだが。

 

 「えっとね…。私の家の騒動に勇紀君を巻き込んだ形になっちゃって今は護衛をお願いしてるんだよ」

 

 「「「「「護衛?」」」」」

 

 「うん」

 

 「護衛って言う事はすずかは誰かに狙われてるって訳?」

 

 すずかがアリシアの言葉に頷くと皆驚き、徐々に心配そうな表情を浮かべ始める。

 

 「そういう事だ。だからサーチャーもすずかを見てるというよりはすずかの周囲に怪しい奴が近付いてないか監視するためのものだしな」

 

 俺がサーチャーの設置理由を言うと5人共『成る程』といった感じで納得してくれる。

 

 「すずか、大丈夫なの?」

 

 「うん。今の所は何の問題も起きてないし…もし起きても勇紀君が助けてくれるから////」

 

 「おう、だからすずかは安心してくれていいぞ」

 

 「えへへ…////」

 

 「「「「「(羨ましい…)」」」」」

 

 照れるすずかを見る5人。

 あれからさくらさんの連絡を待っているが未だに掛かってこない所を見ると犯人が何処の誰か絞れていないのだろう。

 ただ、すずかを襲った女の子は夜の一族ではないらしく『一族の誰かが暗殺者として雇った』とさくらさんは考えている様だ。

 俺もその意見には頷ける。

 一族の誰が依頼したのか?

 結構月村の遺産を狙っているのはいるみたいだからな。

 

 クイクイ

 

 「んあ?」

 

 考え事をしていたら服の裾を引っ張られた。

 犯人はアリサ。一体何だろうか?

 

 「何か用か?アリサ」

 

 「わ、私の事も護りなさいよ…////」

 

 「「「「「っ!!!?」」」」」

 

 「はい?」

 

 「勇紀だって私の家柄ぐらい知ってるでしょ?」

 

 「そりゃあね」

 

 バニングス家の事ぐらい海鳴在住の人なら大抵知ってるだろう。

 

 「私のパパって偉い立場にいる分、敵も多かったりするのよ。特に過激な行動に出る連中も一部いて、私も昔誘拐されそうになった事があるし」

 

 「「「「「「ええっ!!?」」」」」」

 

 俺、なのは、フェイト、はやて、アリシア、すずかはアリサのカミングアウトに驚きを隠せない。

 未遂で終わったらしいけど誘拐されかけてたなんて…。

 

 「今は私の身の周りを昔以上に固めてくれてるけど、それでも絶対に危険な目に遭わないっていう保障は無いし」

 

 「そりゃそうだな」

 

 「だから私にもサーチャーで勇紀の目に届く様にしてほしいのよ////」

 

 うーん…。

 アリサは俺にそう言うがどうしたもんかねぇ…。

 確かにアリサはなのは、フェイト、はやて、アリシアみたいに魔導師じゃないから自分の身を自分だけで守るというのは厳しいかもしれない。

 すずかは夜の一族で身体能力が高いけど、それだけだ。何か武術や護身術の類を習っている訳ではないのでアリサ同様の一般人と対して変わらない。だからノエルさん達の手が離せない時は俺が護衛役を買って出てる訳だが。

 

 「………駄目?」

 

 …普段ツンツンな奴がこのタイミングで瞳を潤ませて懇願するのは卑怯だろう。

 可愛さがパねえッスよアリサさん。

 

 「…まあサーチャー飛ばしてもいいけど見られてるからって気分を害したりしないか?」

 

 「それは問題無いって誓えるわ(直接じゃないとはいえす、好きな奴に見られて嬉しくない訳無いじゃない)////」

 

 本人がこう言うなら俺としては良いんだけどさ。

 何故か嬉しそうだねアリサの奴。

 再び正面を向いて歩き始めるが…

 

 「「「「……………………」」」」(ジーーー)

 

 真横にいるフェイト、後ろからなのは、はやて、アリシアの視線がこっちに集まってる。

 

 「…まあこんな話の流れなんだから言いたい事は分かるけど、お前等にゃ必要無いだろ?」

 

 「「「「何で!!?」」」」

 

 何でも何も…

 

 「自分の身をちゃんと守れるだろ?」

 

 足を止める事無く、やや呆れながら俺は言葉を返す。もっとも前を向いてるので横にいるフェイトはともかくなのは、はやて、アリシアは俺の表情を窺う事は出来ない。ただ、俺の背中を見るだけ。

 しかしコイツ等は自分が魔導師だって事忘れてんのか?

 

 「「「「むー…」」」」

 

 唸るな。

 

 「そもそもお前等に手を出した奴には死亡フラグしか残らんだろ」

 

 「「「「何で?」」」」

 

 コイツ等、本当に分かってないみたいだ。

 

 「なのはに手を出す=士郎さんと恭也さんを敵に回す=死亡フラグ成立

  フェイト、アリシアに手を出す=プレシアさんからの雷が落ちる=死亡フラグ成立

  はやてに手を出す=守護騎士全員を敵に回す=死亡フラグ成立」

 

 簡単に説明する。

 プレシアさんや守護騎士の面々は非殺傷に出来るけど士郎さん、恭也さんの場合は2人の手加減次第だよね。

 

 「納得出来るわね」

 

 「なのはちゃんもフェイトちゃんもはやてちゃんもアリシアちゃんも家族の人に凄く好かれてるもんね」

 

 アリサとすずかも同意してくれる。

 そう、コイツ等の家族はそれだけ娘や主の事を大切にしてるからもし、何か事件に巻き込まれでもしたら間違い無く犯人を叩き潰すだろう。

 

 「うう…家族が強いっていうのも考え物なの」

 

 そこで落ち込むのはおかしくね?なのは。

 そんな和気藹々(?)な雑談をしながらすずかの家に着く。

 

 「勇紀君。今日はありがとう。皆もまたね」

 

 「「「「「すずかちゃん(すずか)、また来週」」」」」

 

 「元気でな」

 

 門の外からすずかが無事家の中に入るのを確認し終えた俺達。

 

 「さて、俺も家に帰りたいので二人も手を離してくれると嬉しいんだけど?」

 

 「何言ってんのよ。せっかくだから私も家まで送りなさいよ//」

 

 「あ…わ、私も家まで送ってほしいかな//」

 

 未だに俺の腕を解放してくれないフェイトとアリサ。

 アリサが鮫島さん呼んで皆を車で送ってくれた方が早く帰れるだろうに当の本人はさっき連絡した際に『俺と徒歩で帰る』って言ったらしいからなぁ。てっきりすずかの家からは自分で帰るものだとばかり俺は思っていた。

 俺は早く帰って昼ご飯を食べたいんだが…。

 

 「(何か俺の意見を聞き入れてくれなさそうだなぁ…)」

 

 絡めている腕に力を込めてより密着してくる二人の態度から察する。

 そして相変わらず後ろから背中に向けて突き刺す様な視線を送ってくれるなのは、はやて、アリシア。

 

 「(援軍もいねぇ……完全に孤立状態かよ)」

 

 心の中で溜め息を一つ吐いて俺は両腕にしがみついている二人を送る事にする。

 ここからだとアリサの家の方が近いよな。

 目指すのはバニングス邸。

 踵を返し、来た道を途中まで戻る。

 

 「ね、ねえ勇紀。少し歩く速度が速過ぎるんじゃないかしら?//」

 

 「ア、アリサの言う通りだよ。少しばかり速いかな//」

 

 「そうか?特に足を速めたつもりはないけど」

 

 左右から届く声に首を傾げる。

 でも二人がそう言うなら気付かない内に歩幅を上げてたって事か?

 

 「別に歩く速さは変わってないよ?アリサちゃん、フェイトちゃん」

 

 「そやな。勇紀君は普通に歩いとるで」

 

 「むしろ速度を落とすと帰るのが遅くなって家族の人が心配するから今以上に速く歩いた方がいいと思うよ」

 

 なのは、はやて、アリシアは背後からそう告げる。

 声色に怒気を感じるなぁ…。

 

 「実際に隣で歩いてる私達が言ってんのよ!間違ってなんかないわ!!」

 

 「うん!勇紀は少し歩く速度が上がってる!間違いないよ!」

 

 「「「「「……………………」」」」」

 

 「「「「「う~~~…………」」」」」

 

 振り返って言うアリサとフェイト。そしてお互いに唸って睨み合う。

 

 「(勘弁してくれ…)」

 

 渦巻く殺気に当てられている俺は心の中で呟くのだった………。

 

 

 

 「じゃあね勇紀君」

 

 手を振ってなのはが家の中に入るのを見送ってから俺は高町家を後にする。

 結局アリサを送った後に八神家→テスタロッサ家→高町家の順番で聖祥組を送る事になってしまっていた。

 そしてなのはを送り届けた今、ようやく家に帰れる。

 お腹がもうペコペコです。

 メガーヌさんに連絡は入れておいたから余計な心配はさせてないけど遅くなったのは申し訳なく思うな。

 寄り道せずに家に帰る。

 

 「ただいま~」

 

 「おかえり~」

 

 玄関で出迎えてくれたのはルーテシア。

 帰って来た俺に抱き着いてきたので、受け止めてから頭を撫でてあげる。

 

 「おにーちゃん、おそかったね?」

 

 「友達を家まで送っていたからね」

 

 強制的に送らされた訳なんだがな。

 ルーテシアを抱き上げてそのままリビングに向かうと、部屋を掃除していたメガーヌさんの姿があった。

 

 「あら勇紀君。おかえりなさい」

 

 「ただいまです。遅くなりました」

 

 「気にしないで。それよりお昼ご飯すぐに持ってくるから」

 

 掃除を一旦中断してキッチンに昼食を取りに行ってくれるメガーヌさん。

 やっとお昼にありつける。

 ルーテシアを下ろしてソファーに座るとルーテシアはソファーによじ登って俺の膝の上に頭を置いて横になる。

 

 「えへへ~♪」

 

 「ルー、お兄ちゃん今からご飯食べるから膝枕は後にしてくれる?」

 

 「そうなの?」

 

 「うん」

 

 「じゃあ、あとでおひざかしてね?」

 

 頭をどけて俺の横に座るルーテシア。

 メガーヌさんが昼食を運んできて、俺が食べている間も律儀に待ってくれている。

 

 「モグモグ……」

 

 昼食をお腹の中にどんどん詰め込んでいく。

 聖祥組全員を送るためにかなり歩いたからな。多少の疲労も感じるから昼食を食べたら少し昼寝するか。

 

 「モグモグ……」

 

 「おいしい?」

 

 「モグモグ……」(コクコク)

 

 ルーテシアの問いに首を軽く縦に振って答える。

 

 「モグモグ…ゴクン。………ふう、ご馳走様でした」

 

 昼食を全て平らげ、食器をキッチンの流しに運んで洗う。

 

 「おにーちゃーん!まーだー?」

 

 「はいはい、今行くよー」

 

 リビングの方から聞こえてくる声に返事をして俺は食器を洗い終える。

 濡れた手をタオルで拭き、リビングのソファーに腰を下ろすと

 

 「……………………」(キラキラ)

 

 目を輝かせてこちらを見るルーテシア。

 俺は苦笑しながらルーテシアの隣に座り

 

 「どうぞ」

 

 「わーい」

 

 約束通り膝を貸す。

 頭を乗せて再び横になり、何をする訳でも無くただ満足そうな表情を浮かべている。

 

 「それで皆は無事に送り届けたの?」

 

 そんな俺達を見てニコニコしているメガーヌさんに話し掛けられる。

 

 「問題無いです。…全員にサーチャー付ける羽目になりましたけど」

 

 必死に拒否の態度を取ってはいたものの涙目上目使いで見てきたり、瞳から光を消してちょっと低めの声で会話してきたりと、もう逆らうことの出来ない状況を作ってくる訳ですよ。

 

 「全員にサーチャー……」

 

 流石のメガーヌさんも呆れ気味の表情になった。

 そもそもサーチャーは監視目的に使う魔法なのに今俺がしてるのはストーカーと比べて遜色無い気がする。本人達の同意を得ていると言ってもだ。

 皆は皆でサーチャー付けられた事に喜んでたし…。

 ………俺の方が間違ってんのか?

 どう考えても喜ぶ状況じゃないよね?

 

 「…まあ、本人達が言うんだからいいとは思うんですけどね」

 

 「…そう。でも勇紀君、覗き目的で使っちゃ駄目よ?」

 

 「使いませんから!!」

 

 そんな事を嬉々として使うのは銀髪トリオぐらいだろう。

 

 「ふあ~…」

 

 あ、腹が膨れたのと多少疲労してるせいで眠気が…。

 そのままゆっくりと目を閉じて俺は睡魔に身を委ねた………。

 

 

 

 「…ん……」

 

 俺はゆっくりと目を開け、意識を覚醒させていく。

 目が覚めた時、リビングの窓からはオレンジ色の光が差し込んできており、時計を見ると夕方というのに丁度良い時刻だった。

 

 「ふああぁぁ~…」

 

 軽く欠伸をして周りを見る。

 テーブルにはメガーヌさんの『夕食の買い物に行ってきます』という書き置きがあり、膝の上ではさっきまでの俺同様、ルーテシアがスヤスヤと静かな寝息を立てながら眠っている。

 

 「…思ったよりも寝てたんだな」

 

 1時間程度寝たら充分だったんだけど。

 

 「「「「ただいま戻りました(ただいま~)(帰ったぞ)」」」」

 

 お、シュテル達の声だ。初任務を終えて帰ってきたのか。

 間もなくリビングに来たシュテル達。どことなく疲れてる様に見える。

 

 「お疲れ。初任務はどうだった?」

 

 「「「「……………………」」」」

 

 あれ?何だか凄く不機嫌そうな表情になったんですけど?

 もしかして聞いちゃマズかった?

 

 「えーっと…言いたくない?それとも言えないのか?なら聞かないでおくけど…」

 

 「下着泥棒の逮捕だったんです」

 

 「はい?」

 

 「今日の任務の内容は下着泥棒を捕まえる事だったんです」

 

 シュテルの言葉を聞いて俺は目が点になった。

 首都防衛隊所属のシュテル達の初任務が下着ドロを捕まえる事?

 

 「首都防衛隊ってそんな任務もこなさなきゃならんのか?」

 

 俺の疑問にユーリとディアーチェが口を開く。

 

 「いえ、本来なら私達とは全く関係の無い任務だったんですけど…」

 

 「その区域を担当する陸士部隊では手に負えない相手だったのだ。何せオーバーSランクのフリー魔導師だったからな」

 

 相手が高ランクだから首都防衛隊に救援を要請し、シュテル達高ランク魔導師が駆り出されたという訳か。

 

 「特に移動系の魔法の扱いに特化していて捕まえるのが大変だったんです」

 

 「僕のスプライトフォームでも追い付けなかったからねー。亮太と椿姫が最終的に捕まえたけど」

 

 確かに光速移動が出来る亮太と好きな場所に転移出来る椿姫の腑罪証明(アリバイブロック)なら相手がどんなに速かろうと捕まえるのは容易だろう。

 

 「しかも私達が履いている下着も剥ぎ取ろうとしてきました」

 

 「…バリアジャケットの上から下着って剥ぎ取れんの?」

 

 「分かりません。試したいとは思いませんし」

 

 「目がヤバかったよね。もう僕達を見る目は完全に犯罪者のモノだったよ」

 

 そりゃ相手は犯罪者なんだからヤバい目ぐらいするだろう。

 

 「ユウキ、レヴィが言ってるのは我等に対して向ける目がかつての担任と同じ様な目だと言えば分かるか?」

 

 …つまりその犯罪者は担任(ロリコン)と同類の人間だったと。

 『ハア~』と溜め息を吐く4人。

 その犯人も犯人だ。

 俺は何度も思う。『それだけの高ランク保有してるなら犯罪などに手を染めず、管理局の人材不足解消に貢献してくれ』と。

 レヴィのスプライトフォームで追い付けないって相当なモンだぞ。

 

 「まあ、なんだ。風呂の準備してやるからとりあえず部屋で着替えてこいよ」

 

 「「「「はい(うん)(うむ)」」」」

 

 力無く返事をしてリビングを出て行く4人。

 相当疲れてるな。主に精神的に。

 俺はルーテシアを起こさない様にゆっくりとルーテシアの頭を膝の上からどけて風呂場に行き、浴槽に湯を溜め始める。

 幸いにも明日は日曜だし、もし任務等が入らないならシュテルとディアーチェには家事をさせず、4人にはのんびりと過ごして貰おう………。

 

 

 

 月曜日…。

 給食を食べ終え、俺と直博、他数名のクラスメイトは運動場にて亮太、椿姫を始めとする1組のメンバーとドッジボールに興じていた。

 

 「《一昨日は大変だったみたいだな》」

 

 迫り来るボールを避けたり、受け止めたりして念話で亮太、椿姫と会話をしている。

 

 「《シュテル達に聞いたの?》」

 

 「《ああ…相手は高ランク魔導師の下着ドロだったんだろ?》」

 

 「《そうだよ。最初は『女の敵だ』って激怒したシュテルさん達が躍起になって挑んでいったんだけどね》」

 

 「《結果として触れる事すら出来てなかったわよ。誘導弾は相殺し、砲撃魔法を放とうにも動きが速過ぎて当てるのは不可能に近かったわね》」

 

 「《で、結局はお前等2人が介入して無事に逮捕出来たのか》」

 

 「《まあ、いくら速いって言っても僕からすれば遅すぎるけどね》」

 

 「《私は設置型のバインドを保険として仕掛けてただけだし》」

 

 亮太の一撃で相手を仕留めたらしい。

 光速の蹴りの威力は凄いからなぁ。

 流石、近接戦闘最強の転生者。というか現在の管理局員全てひっくるめても近接戦で亮太に勝てる奴いないよなぁ。

 

 「《そう言えば貴方は土曜日何をしていたの?》」

 

 「《俺か?土曜はなのは達聖祥組を家まで送り届けてたぐらいかなぁ…》」

 

 「《何で聖祥に?》」

 

 「《詳しい話はすずかに聞け》」

 

 「《そう…(何があったのかは知らないけど面白いネタだといいわね♪)》」

 

 『クックック』と声を噛み殺して笑う様を見て『教えるべきじゃなかったな』と即座に後悔する俺。

 あれは絶対何かしらいらん事を考えている。

 そう確信めいているので俺は昼休みが終るまでの間、ドッジボールでターゲットを椿姫(の顔面)に絞る事にした。

 しかし当てる事は出来なかった。

 ああ…放課後は逃げよう。何かが起きる前に速攻で家に帰ろう………。

 

 

 

 放課後…。

 HRが終わるや否や教室からダッシュで抜け出したのだが……正門の前で待ち伏せされていた我が家の家族4人に捕まった。

 で、取り囲まれた。

 

 「ユウキ、椿姫から聞いたのだが土曜日はハーレムでウハウハだったらしいな」

 

 「待て待て待て!!アイツから何て聞いたのか知らんがウハウハって何だよ!?」

 

 「ほほう?しらばっくれるのか?聖祥に通ってる子鴉共と周りに見せつける様に腕を組んで歩いて帰ったとか…」

 

 「しかも送り届ける度に違う子と腕を組んで…」

 

 「フェイト達の身体の柔らかさを腕越しに堪能して…」

 

 「別れ際にき、き…キスをしたって聞きました」

 

 「捏造だ!!別に堪能なんてしてねえし、キスだってしてねえよ!!」

 

 ディアーチェ、ユーリ、レヴィ、シュテルの言葉の一部を否定する。

 

 「なら腕を組んだのは事実なんだな?」

 

 「それは事実だけど…」

 

 結局なのは達とも腕組まされたし。

 

 「組んできたのは向こうから……」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

 「ひいっ!!?」

 

 負のオーラが…負のオーラが噴き出てきたよ!!

 

 「お前という奴は…」

 

 「え!?俺が悪いの!!?」

 

 「「「「そうです!!(そうだよ!!)(そうだ!!)」」」」

 

 理不尽だ……。

 

 「ああ、それからなのは達にはサーチャーも付けたらしいですね」

 

 「「「「覗き目的で」」」」

 

 「覗きなんてしねえし!!」

 

 「「「「椿姫はそう言ってましたが?(言ってたけど?)(言ってたぞ?)」」」」

 

 アイツ絶対ブッ飛ばす!!

 それとお前等もアイツの言う事鵜呑みにし過ぎだ。

 4人の隙を見て俺は逃げ出す。後を追い掛けてくる4人。

 結局逃げても帰る家が一緒なので家で俺は正座させられ、4人から理不尽な説教を受けていた。

 後日、シュテル達にもサーチャーを取り付ける羽目になり、周囲の監視を行う対象が10人になった………。

 

 ~~おまけ~~

 

 これは土曜日のとある出来事…。

 

 

 

 ~~クロノ視点~~

 

 「ハア~…全く、勇紀やアリシアはアースラの訓練室を何だと思ってるんだ?」

 

 「まあまあクロノ君」

 

 「『まあまあ』じゃないぞエイミィ。あの二人、しょっちゅう訓練室に飛ばしてくるんだぞ」

 

 「でも普通に考えるとあの3人が何かしたからでしょ?」

 

 エイミィの言葉に否定してやりたいが彼等の普段や局内での態度を見ると全く否定出来ないな。

 

 「ていうか本当に治療しないと駄目?」

 

 エイミィがディスプレイに目を戻し僕に聞いてくる。

 ディスプレイが映している映像の先…アースラの訓練室には石化した西条、吉満、暁の姿が。

 

 「治すしかないだろ?彼等にも家族はいるし…一応管理局にとっては貴重な高ランク魔導師なんだ」

 

 「あのままにしておいた方が平和だと思うけどなぁ。あの嫌な視線を向けられずに済むし…」

 

 3人の自分を見る目を思い出したのか、ブルリと身を震わせるエイミィ。

 

 「気持ちは分かるがあの3人、一部の局員や上層部には気に入られてるんだ。治療してやらないと苦情がきて母さ…艦長に迷惑が掛かる」

 

 彼等に好意を持つ人達の精神が正気なのかどうか疑うよ。

 

 「はいはい。あの3人には勇紀君の爪の垢でも飲ませてあげたいよ」

 

 「それであの3人がまともになるなら苦労はしないな」

 

 「だねー」

 

 エイミィが連絡して少ししてから訓練室に医療班が入り、石化した3人が運び出されていく様を見ながら僕とエイミィは再び業務に戻るのだった………。

 

 

 

 ~~クロノ視点終了~~

 


 
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