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魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-

第二十一話「おかえり、ただいま」

2013-03-08 17:22:38 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5866   閲覧ユーザー数:4085

 

 

 

 

 そして時は少し流れて12月24日になった。

 

 

「リィン、蒐集完了まであと何ページだ?」

 

「残り10ページだ」

 

 俺達は蒐集に全力を注いだ事もあって、蒐集があと少しで完了する所まで至った。

 

「だが……本当にそれで大丈夫なのだろうか?」

 

「……正直言うと分の悪い賭けだ」

 

 リィンは心配していた。本当に王騎がもたらした作戦でヴォルケンリッターとはやてが救われるのか、と。

 

「だが、それに賭けるしかない。それが唯一の方法なんだ。……安心しろ。もし失敗したら……その時は……」

 

「……はい……っ!?」

 

 俺が決意を新たにするとリィンが何かに反応したのか、顔が引き締まった。

 

「どうした?」

 

「……シャマル達と繋がらない。通信妨害が起きている」

 

 まさか!?

 

「管理局にばれたのか!?」

 

「恐らくな」

 

 クソッ、王騎は何をしている!?

 

「すぐに出るぞ! 計画は明日を予定していたが……時期を早めるか」

 

「ああ……っ! 結界が発動したか」

 

 今度は俺達の家を結界が覆った。 事態は一刻を争う……か。

 

 俺とリィンはすぐに外を出て、俺は着装した。

 

 空に舞い上がると遠目でも魔力光が見える。場所ははやての病院付近、か。

 

「リィン、行くぞ!」

 

「承知した」

 

 俺達は全速で救援に向かった。病院で戦っているということは恐らくはやてが主だとバレた可能性が高い。

 

 王騎の計画では無人世界で覚醒する予定だったがこの際仕方ない。

 

「っ! まさか……そんな!」

 

 だが、病院まであと僅かと言うところでリィンが異変を感じた。

 

「どうした?」

 

「シャマルとシグナム、ザフィーラの反応が……消えた……」

 

「なん……だと?」

 

 反応が消えた……つまり、リンカーコアを送還したのか!?

 

 バカな! 今此処で覚醒させるというのか!? そんな事をすれば万が一の時はどうなるか分からない王騎じゃ……いや、王騎ならこんなことはしない。なら、第三者……仮面の男か!?

 

「クソがっ!」

 

 俺達は病院に到達した。だが、そこには高町とフェイト、拘束されたヴィータ、それと……はやてがいた。

 

 俺はその光景に疑問を持ったが、すぐに驚愕に変わった。

 

「や、止めろ!」

 

 高町達が闇の書を使ってはやての目の前でリンカーコアを送還したのだ。俺は咄嗟の出来事に行動が出来なかった。

 

「ぐっ……あ、ああ……」

 

 そしてはやてとリィンが同時に苦しみだした。

 

「リィン!?」

 

「ぐ、ああ……ぁ……れ、煉……。主は……間もなく、覚醒……する……ぐあぁっ! 」

 

「しっかりしろ!」

 

 喋るのも辛いほど苦しいのだろう。見ているのが辛い。だが、俺にはどうすることも出来ない。

 

「た、のむ……煉。もう……手遅…れだ。だから……私を――――」

 

 だが、リィンは最後まで言い終わらずに消えた。そして、はやてが絶叫し、眩い光に包まれた。

 

「はやて!?」

 

 そして光が収まると、そこには背中に黒い羽を生やしたリィンが浮かんでいた。

 

「「「ルシフェル!(ルシフェルさん)」」」

 

 そして、俺の目の前に向こうに居るはずの高町とフェイトが現れた。もう訳が分からなかった。

 

「ルシフェルさん、あそこにいるのは偽物です!」

 

「仮面の男が変装しているんだ!」

 

 だが、彼女達の言葉で事態は把握した。そう、全ては仮面の男のせいなのだ。

 

 俺は頭に血が上った。殺す……ただそれだけぢか思い浮かばなかった。

 

「ルシフェルさん!? なにをっ……」

 

 俺は高町達の制止を振り切って全速で向かう。すでに偽物は変装を解いて離れた所に移動して見物していた。今はリィンの状態を確認するのが優先なのだろうが、今の俺にそんな事を考える余裕が無かった。

 

 出力を最大にし、全速で仮面の男に向かう。

 

「なっ!? ぐあっ!」

 

 一人が俺の接近に気づいたが、その時にはもう遅い。俺は二人組の内、片方の腹部に全力で蹴りを入れて吹き飛ばす。体に直接触れる前に何か障壁の様なものを張られたが、障壁ごと蹴りぬいた。

 

 時速1400kmの飛行した上に蹴りを食らわしたのだ。普通なら体が真っ二つに千切れ飛んでいるが、そこは魔法のおかげなのか吹き飛んだだけに済んだみたいだ。吹き飛んだ男はビルを三棟ぶち抜いていった。そしてぶち抜かれた三棟の内一棟は崩れ落ちていく。

 

「アリア!?」

 

 どうやらあの男はアリアという名前らしい。女っぽい名前だな。だが、そんなこと今はどうでもいい。

 

「このっ!」 

 

 片割れの男が格闘で挑んでくる。今までで会った中で一番良いが、所詮俺には勝てない。

 

 男の蹴りを躱して俺はカウンターを打ち込む。

 

「ぐはっ!?」

 

 カウンターといっても、吹き飛ばさないで衝撃を吸収させなかった。男の体がくの字に折れ曲がり、吐血した。

 

 今ので肋骨が数本折れ、内臓にもダメージを負ったようだ。

 

 だが、この程度では済ませない。もっと苦しめ!

 

「ぐ、がっ!?」

 

 ドゴンッ!

 

 俺は浮いた男の体を踵落としで地面に叩きつけた。男が地面にめり込んで辺りがひび割れる。そして俺はそれを確認せず、男の右足を踏み砕いた。

 

「がっ…ああああああああああ!?」

 

 だが、男が絶叫したかと思えば何故か姿が猫耳の女に変わった。恐らくこっちが本当の姿なのだろう。だが、あまりの痛みでのたうち回っている。

 

 さあもっと苦しめ! お前が女だろうが男だろうが関係無い! 苦しんで後悔して無様に死ぬがいい!

 

「待て! 彼女の身柄はこちらが預かる!」

 

 だが、俺がもう片方の足を踏み砕こうとしたらクロノ・ハラオウンが現れた。

 

 ちっ……良いところで邪魔をする。

 

【退がりなさい。彼女は私が苦しめ、殺します】

 

「だ、ダメだ! 彼女はこちらで然るべき所で然るべき処罰を与える! それに今彼女に構っている暇は無い! 一刻も早く闇の書を止めなければならない筈だ!」

 

 …………いいだろう。確かにクロノ・ハラオウンの言う通りだ。クズに構っている暇は無い。少し頭が冷えた。

 

【……いいでしょう。彼女の身柄は貴方に引き渡しましょう。私は彼女を止めます】

 

 俺はすぐにリィンの所へ向かった。

 

 リィンの前に到達すると、すぐに王騎が駆け寄ってきた。

 

「……すまない。俺がミスしたばかりに……」

 

 今現在、リィンは高町とフェイト、それとアルフ、ユーノ、神崎と交戦している。

 

【起こってしまった事を悔いても仕方ありません。今は彼女をどうにかしましょう。説得はできますか?】

 

「……無理だ。原作と違って今の彼女には何故か自我が無い。今はただ……はやてが目を覚ますのを祈るしかないんだ……」

 

 ……仕方ない。なら、それまで足止めするか。

 

【分かりました。なら彼女が起きるまで待つしかありません】

 

「おい! なんで此処に敵であるコイツがいるんだよ!」

 

 ……どうやら神崎が俺に気づいたようだ。

 

【こうなった今では敵味方は関係ありません。今すべきことは彼女を止めることです】

 

「けっ! 原因の一部がよく言うぜ!」

 

 確かに原因の一部であることには変わりないからこっちとしては何も言えないけど……。

 

「おい神崎! ルシフェルの言う通りだ! 今は言い争っている場合じゃないだろ!」

 

「そうだよ神崎君! 今はあの子を止めないと!」

 

「今は猫の手も借りたい状況さね!」

 

 一旦退いた高町達もどうやら俺達に気づいたようだ。彼女達は神崎と違って俺の事をあまり敵視していないように見えた。

 

「……ちっ! おいテメェ! もし妙な真似をしたら分かっているだろうな!」

 

 やれやれ、少し黙っていてくれないだろうか? 前に比べたら少しは強くなっているみたいだが、このメンバーの中では下だろ、こいつ。

 

【愚問です】

 

「高町、フェイト! 事情は既にルシフェルに説明してるから一緒に戦うぞ!」

 

「うん!」

「分かった!」

 

 ともあれ今は彼女を何とかするのが先だ。

 

 さて……いつになった起きるのかね……。

 

【戦闘モードへ移行】

 

「……刃以て、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー」

 

「きゃっ!?」

 

「くっ!」

 

 俺達が行動を開始しようとした矢先、リィン……いや、闇の書が深紅のナイフを放った。高町達は突然の攻撃に驚きつつも何とか回避に成功する。無論、俺もだ。

 

「見境無しかよ!」

 

「文句垂れている暇があったら少しは攻撃しろ、神崎!」

 

「うるせぇ! 俺に命令してんじゃねぇよ天城! うぉっ!?」

 

 だが、攻撃は尚も続いている。無数の深紅の刃が俺達に飛来して来る。各々はそれを回避し、防御し、時には弾く。

 

「くっ、キリが無い……!」 

 

 フェイトの方は必死に避けている。彼女の場合、防御力が極端に低い為に擦っただけでも痛手を負うらしい。

 

 俺もフィールドを張って防いではいるが、このままではエネルギーの回復量が追いつかなくなる。ならば攻勢に出るまでだ。

 

 俺は『Akatuki』を展開し、闇の書に斬り掛かる。ただ、はやてが闇の書と融合しているために、このまま斬ってしまえばはやても斬られてしまう。だが、俺は止まらない、何故なら―――

 

「……盾」

 

 防がれると分かっていたからだ。そして防いだことで闇の書の攻撃は止まる。

 

 だが、闇の書は片手で防いでいる間にもう一方の手を翳し、魔力を集中させた。それもかなり大きい魔力をだ。

 

「……闇に、染まれ」

 

 そして膨大な魔力が解き放たれ、闇の書を中心に球状へ広がっていく。

 

「広域攻撃魔法!? 皆、逃げて!」

 

 高町の一声で全員がその場を離脱した。

 

 おいおい……こっちはゼロ距離だから避けられないんだよ!

 

 そしてそのまま高町達は退避して……って、おい!? 俺を見捨てるのか!?

 

【フィールド展開】

 

「うおぉおおおお!?」

 

 だが、ルシフェルのおかげで何とか防ぐことが出来た。

 

 しかしながら今のでフィールドエネルギーが四割近く持って行かれた。……まったく、とんでもない威力だな。

 

 人間爆弾じゃあるまいし、今の魔法だけは勘弁願いたい。正直、心臓に悪い。

 

 ま、次からは同じ手を喰わないが。

 

「あ……ルシフェルさん、大丈夫!?」

 

 俺が一旦高町の所に非難すると思い出したかのように心配する高町達だった。

 

 ……なんか扱いが酷い気がする。

 

「大丈夫だろ、コイツなら。……寧ろ今ので沈めば良かったのに」

 

 よし今俺に喧嘩を売ったな、神崎。後で覚えていろよ?

 

【問題ありません。……魔力の集束を確認。皆さん、注意して下さい】

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 突然ルシフェルが言い出したことに俺を含めて嫌な汗が流れる。ギギギッという音が聞こえるような感じで全員が闇の書の方へ振り返る。

 

「……星よ集え。全てを撃ち抜く光となれ」

 

「……あれ、もしかして?」

 

「……うん」

 

「もしかしなくても」

 

「なのはのスターライトブレイカーだな……」

 

 何処かで見たような魔力の集束の仕方に全員の顔が引き攣った。

 

 しかも明らかに以前見たSLBより魔力が上なのでさらに迫力が出ている。

 

 そして僅かな沈黙の後

 

「全員、今すぐ退避しろー!!」

 

 天城の掛け声によって一目散に全員が逃げる、俺を含めて。

 

 誰があんな規格外の砲撃を好き好んで受ける奴がいるものか! いくらセラフでも一撃で沈められるのは目に見えているというものだ。

 

 だが、俺がフェイトと高町と一緒の方向に逃げていたときに問題が発生した。

 

【前方に民間人と思わしき反応が二つあります。距離300】

 

「え!?」

「どこ!?」

 

 高町のデバイスが民間人を感知したのだ。勿論、ルシフェルもレイジングハートと同時に感知した。

 

 そして見つけた。

 

【発見しました。目視で確認可能です】

 

「えっと……あ、見つけたよ!」

 

 ルシフェルが発見し、俺達は民間人の所へ向かう。このまま放っておけば危険だからだ。

 

 だが、その民間人は俺達がよく知る人物だった。

 

「あの! 危ないですからそこでジッとしていてください!」

 

「え?」

 

「今の声って……」

 

 それはすずかとアリサだった。

 

「……なのは?」

 

「……フェイトちゃん?」

 

 やれやれ、何故こうも厄介事が増えるのだろうか? ま、今はそんなことを気にしても仕様がないが……。

 

「「あ……」」

 

 どうやら高町達も民間人の正体に気づいたようで口をポカンと開けている……っておい! そんなことしている場合か!

 

【急ぎなさい】

 

「「っ!」」

 

 ルシフェルの言葉で正気に戻った高町達。そして闇の書によるSLBが放たれようとしていた。

 

 もうすずか達を避難させる時間は無い。よって此処で防御するしかない。

 

「きゃっ」

「な、なんなのアンタ!?」

 

 俺はすずかとアリサの背後に降り立ち、二人を抱き寄せてフィールドで覆った。

 

【大人しくしなさい。怪我をしますよ】

 

 さらにテスタロッサが念を入れてフィールドをさらにバリアで覆う。そして高町が俺の前に立ち、防御用の魔法を準備する。これですずか達に被害が及ぶことはないだろう。

 

 アリサとすずかは今のところ大人しくしている。飲み込みが早いというか、賢い子達だ。

 

 そして轟音と共にピンク色の光の奔流が俺達を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

「眠い……ものすごく……眠いなぁ」

 

 目の前は真っ暗な世界。何故自分が此処に居るのか、何故こんなにも眠いのかは分からない。でも、あまりの眠さにどうでもよくなりつつあった。

 

「……い」

 

 だけど、そんな時に声が聞こえた気がした。

 

「あ……、お…………い」

 

 つい最近聞いたような声が聞こえる。

 

「主、起きて下さい!」

 

 そう、私の大事で大好きな家族の声だった。

 

「ん……リィン……?」

 

「よかった……! やっと目が覚めたのですね」

 

 ウチが目を覚ましたのを確認するとリィンフォースは安堵した表情をする。でも、すぐに真剣な表情になった。

 

「さあ我が主、すぐにここから出ましょう!」

 

 出る? 一体何を言って……。

 

「出る……? ん…………っ!? そ、そうや! 皆……皆は何処に行ったんや!?」

 

 ウチの大事な家族が居ないのを思い出した。シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラが何処にも居ないのだ。

 

「落ち着いて下さい我が主。今から順を追って説明しますから」

 

 慌てふためくウチをリィンは落ち着かせて説明をしてくれた。

 

 かなり驚いたけど、でも、ヴィータ達を苦しめたなのはちゃん達が偽物ということが分かってホッとした。

 

「我が主、今のままでは管理者権限が使えません。外部からの助力が必要です」

 

 そして今はこの状況をどう脱するかが問題だった。ウチだけじゃ無理やけど、なのはちゃん達ならきっと……

 

「分かった。そんならちょっと呼びかけてみるね」

 

 そして私は今尚外で戦っているなのはちゃん達へ念じた。

 

 

 

 

【闇の書、損傷軽微。効果が薄いです】

 

「はぁはぁはぁ……くっ!」

 

「そんな……なのはのエクセリオンバスターをゼロ距離で受けて無傷で立っているなんて!?」

 

「相変わらずとんでもねぇな……」

 

「化け物め……」

 

 俺達は海鳴の海上で闇の書を相手に手こずっていた。俺以外の奴等は闇の書に大したダメージを与えることが出来ず、俺がやると威力が強すぎて殺しかねないという状況だった。

 

 既に周囲には異変が生じている。地面から溶岩が噴き出し、結界内とはいえこのまま放っておけば世界が崩壊しかねない。

 

「でも……それでも止めなきゃ!」

 

「うん」

 

 だが、そこで全員の頭に声が響いた。

 

『あ、あの! そこにいる管理局の皆さん! 私はそこに居る子の保護者、八神はやてと言います!』

 

「はやてちゃん!?」

 

 俺の家族である八神はやての声だった。まったく、ようやくお目覚めかこの寝坊助めっ!

 

『え、なのはちゃん? ホンマに?』

 

「うん、いろいろあったけど、今は闇の書さんと戦っているの。フェイトちゃんも一緒だよ」

 

『そっか。なのはちゃんとフェイトちゃん、ゴメンけどその子を止めてくれる? その子が起動しとるおかげで管理者権限にアクセス出来んのや』

 

 管理者権限……天城が言っていたはやてを助ける方法。

 

「管理者……権限?」

 

『うん。まあ、分かりやすく言うたらその子を思いっきりぶっ飛ばしてくれたら助かるんやけど……』

 

「なるほど……分かった。なのは、はやての言う通りにするよ!」

 

「う、うん。思いっきりやれば良いんだね?」

 

『うん、お願いな!』

 

 高町とフェイトは砲撃の準備をする。それを邪魔しようと海中から多数の触手が現れる。この触手、俺達が蒐集した魔法生物の物と同一だった。恐らく蒐集した生物の一部を自在に召喚し、操れるのだろう。

 

 だが、高町達の邪魔をさせる訳にはいかない。

 

【天城、あれを止めます】

 

「任せろ! おい神崎、お前も手伝え!」

 

「だから俺に指図するなって言ってんだろうが!」

 

 それでも、何だかんだ言って触手の掃討にあたる神崎。いやまあ、嫌でもやらなきゃいけない状況だからな。

 

「ユーノとアルフも頼む!」

 

「分かった!」

 

「あいよ!」

 

ユーノとアルフがチェーンバインドで触手を縛り付け、俺と天城、神崎で他の触手を斬り裂いていく。

 

「いくよ、フェイトちゃん!」

 

「うん、なのは!」

 

「「カートリッジロード」」

 

【【ロードカートリッジ】】

 

 二人がカートリッジをロードし、薬莢が排出される。

 

「いくよ、エクセリオンバスター!!」

 

「プラズマスマッシャー!!」

 

 二人の砲撃が闇の書に直撃し、光に包まれる。

 

 しばしの沈黙。全員が失敗したかと思った時、光の球体が現れ、白銀に輝く三角形の魔法陣が現れる。その魔法陣を囲むように俺の家族であるシグナム達が立っていた。

 

「我、夜天の主の下に集いし騎士」

 

「主ある限り我らの魂尽きること無し」

 

「この命ある限り、我らは御身の下にあり」

 

「我らが主、夜天の王、八神はやての名の下に」

 

 最後にヴィータが言い放ったのを切っ掛けに光の球体が砕け散る。その中からはやてが黒い衣装を纏い、杖を持って現れる。

 

「夜天の光よ、我が手に集え! 祝福の風リィンフォース、セーットアップ!」

 

 はやてが杖を天に掲げ、背中に黒い翼を生やしたバリアジャケットを纏った。そして髪の色が薄くなっている。そういう仕様なのだろうか?

 

「はやて……」

 

「主……」

 

 さて、シグナム達が気まずそうな顔をしている。それもそうだろう。主の言いつけを破って事を起こしたのだから。しかしながら、はやてはそんなシグナム達を怒るどころか優しく迎えた。おかえり、と。 

 

 その言葉にヴィータははやてに抱きついて大泣きした。少しだけホロリとなったのは内緒だ。

 

 だが、俺が少しだけ感動していると空気を読めないのか知らないが俺の前にモニターが映し出された。用件は分かっている。

 

「……ルシフェルさん」

 

【皆まで言う必要はありません。まだ終わっていないのでしょう?】

 

「はい。闇の書の対策についてはクロノに任せています。もうまもなく到着するのでクロノから話を聞いて下さい」

 

 当然、か。今は先日の件について議論している場合ではないからな。

 

「あの、水を差すようで申し訳ないんだが……」

 

 そして俺達の前にクロノが到着した。いくら空気の読めない彼と言えども申し訳なさそうにしている。感動の再会を邪魔している自覚はあるようだ。

 

 天城はそうでもないが、神崎は凄く嫌そうな顔をしている。どうやら男は全員敵らしい。……くだらん。

 

 さて、そんな事を考えている内に暴走まで残り僅か。止める手段は一つしかないらしい。アルカンシェルという武装で闇の書を破壊するそうだ。ただ、このアルカンシェルは着弾地点の半径100km前後を消滅させるほどの威力を持っているらしい。

 

 そんなモノを地球に向けてぶっ放すのはよろしくない。この場にいる全員は断固反対でクロノやリンディ提督自身も使いたくないらしい。

 

 そこで思いついたのが闇の書を宇宙空間へ転送してアルカンシェルでぶっ飛ばすという案だ。そのためには闇の書の複合四層バリアを破壊しなければならないらしい。対魔法、対物理のバリアだから生半可な魔法ではビクともしないとのことだ。しかし、それをに関しては問題ないだろう。神崎は置いておいて、高町、フェイト、はやての三人と、シグナム、ヴィータ、天城という前衛メンバーが揃っているのだ。特にはやての魔力ランクはS+らしい。

 

 高町より上か……恐ろしい。

 

「それじゃ、みんな行くよ!!」

 

「「「「「「「「うん!(おう!)(任せろ!)(了解!)」」」」」」」」」 

 

 


 
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