No.550867

真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第五節:雛里のご主人様への不満

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-03-03 16:06:42 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6254   閲覧ユーザー数:4662

まえがき コメントありがとうございます。はてさて、竜の牙を手に入れついでに勾玉も貰った一刀と御一行。視線を背中に感じながらも建業に戻る一刀の運命やいかに。それではごゆっくりしていってください。

 

 

こんばんは。北郷一刀です。今は建業へ戻っている最中です。一刻も早く到着するために夜道を歩いてます。本日二度目、雛里をおんぶ中。俺の背中ですやすやと大人しく眠っていますね。まぁ、この時間ならいつもは寝ているはずだから仕方ない。

 

「一刀さん、お父さんみたい。」

「俺は父親って柄じゃないよ。」

「いや、一刀さんなら良いお父さんになれるよ!」

「その根拠は?」

「もし一刀さんが私のお父さんなら嬉しいだろうなって思うもん。」

 

そう言われると素直に嬉しい。父親か。父さんはどんな気持ちで俺を育ててくれたんだろうな・・・。俺が爺ちゃんの試練を受けるって言った時の父さんの表情は覚えている。心底心配されたんだろうな。『向こう』に戻ったらちゃんと言おう。たくさんのありがとうを。

 

「ありがとうな、美々。けど、美々みたいな娘を持ったら毎日が心配の連続だろうな。」

「どういう意味で?」

「お転婆娘。けど、親からすれば世話を焼く方が良いのかも。わんぱくに育った結果、こんなに可愛く育ったのならな。」

 

俺が美々の頭をぽんぽんと撫でる。俺の目線と同じ位置に頭のてっぺんがあるからとても撫でやすい。

 

「も、もう!一刀さんはおだてるのが上手なんだから~。何も出ないよ//?」

「? 思ったことを正直に言っただけだよ。」

「///」

「一刀、そのあたりにしてやれ。美々の顔が真っ赤になっているぞ。」

 

華蛇の言葉にとりあえず手を離す俺。

 

「一刀、女性にそういうことを言う時は相手を選べとは言わないが見境なく言っていては後々後悔するぞ?」

「見境なく言ってるつもりはないんだけどな・・・。俺、思ったことはすぐに言葉にするようにしてるから。」

「・・・。そうだったな。お前はそういう奴だったな。」

「う、うん。」

「・・・はぁ。これは桃香たちも大変だ。」

「ダーリンよ、そのようなことは劉備たちも承知の上じゃ。というか、これは血筋の問題。どうこう出来る代物でもないしの。ご主人様の祖父、父も似たようなものじゃったからな。」

「私の暴走癖が母様に似たのと同じようなものね。」

「私はお前ほど見境を無くすほどは暴れていない。」

「・・・。」

「・・・。」

 

呉勢の皆が一斉に水蓮をジト目で見た。口には出さないまでも、『どの口が言っているのやら・・・』と共通認識だったのは間違いない。

 

「ま、まぁほら、子は親に似るって言うし、雪蓮も水蓮に似たってことで一件落着!」

「母様似たかぁ。うーん、思い当たる節はいくつかあるけど・・・。」

「私はほとんど変わらないと思うよ?小さい頃の雪蓮様を知らないからそこらへんはあんまり分からないけど。」

「今とあまり変わらなかったわ。雪蓮様はいつも冥琳を連れ回して森に行ったり市に遊びに出たり。」

「冥琳はあまり体が丈夫ではないから無理をさせないようにと言っても聞く耳を持たなかったからな。雪蓮は。」

「いいじゃない。私と同年代って言えば冥琳くらいしかいなかったんだから。母様に愛璃、鸞、祭、美紅はいつも仕事仕事で遊んでもらえるような状況じゃなかったし。」

「美紅が仕事していた記憶は数える程しかなかったがな。」

「美紅は戦となれば仕事してくれるんだけど・・・。」

「いつも弓の手入れだったり馬の世話をするだけで後は部屋でゴロゴロするか市をフラフラ歩いてるだけですから。」

 

・・・なんか恋みたいだな。本人に言っても「?」と首を傾げられるだけなのは分かってるから特に言うつもりもないんだけどね。実際にその本人は隣で我関せずを貫いてるし。

 

「一刀たちの方はどんな子がいるの?結構人数も増えたでしょ?」

「卑弥呼さんもいるから毎日が飽きないでしょ。」

 

 

「ほう、美々は分かっておるの。」

「いやー、なかなかいる顔じゃないからさ。ちょっと新鮮な気がして。」

「どんどん儂の麗しい顔を見て良いぞ。」

 

この顔がうじゃうじゃいたら怖いって・・・。

 

「っと、話が逸れたね。うちの子と言えば、俺と相をしている劉備。武官に関羽、張飛、趙雲、張遼、典韋、馬鉄、公孫賛。それと恋かな。文官に諸葛亮、雛里、徐庶、賈駆、陳宮。主な補佐に韓飛と華佗かな。後は侍女みたいな待遇で董卓がいるよ。あとは・・・漢女が卑弥呼と貂蝉。」

「董卓は曹操軍に押し切られ敗戦したんじゃなかったの?」

「董卓軍ごとうちで働いてもらうことにしたんだ。連合の時に俺たちが共闘したからさ、俺たちが助けに行って早いうちに平原に引き抜いちゃった。」

「それで恋も一刀たちと一緒にいるのね。」

「(こくっ)月・・・董卓が行くって言ったから。それで、ご主人様が、恋のご主人様になった。」

「飛将軍に神速の張遼ですか。・・・公孫賛はなぜあなた方と共に?」

「公孫賛は袁紹に敗れてうちに負傷してやって来たんだ。戻る場所もないからってことでうちで働いてもらうことになった。公孫賛は劉備と私塾の頃からの仲らしいからね。」

「ふむ、一刀さんたちの将は劉備と一刀さんの仁徳により集まってくるのですね。」

 

仁徳か。その言葉は俺より桃香にこそ相応しいかな。あの包容力は意識して出来るようなものじゃない。

 

「まぁ、俺と桃香・・・劉備の場合、皆のことを家臣っていう前に仲間って意識が強いからね。そういうところが大きいのかも。だからいつも命令じゃなくてお願いって形になってるし、断るときはきっぱり断っていい。直したほうがいい事はすぐに言ってもらえるからね。俺からしてみれば上下関係ってあって無いように思うよ。」

「そういうのってこの乱戦には珍しいわよね。うちは孫呉復興を掲げてやってきたから王族が中心とした政治。曹操とこはあの子が覇王を名乗り絶対的な力、知、第六感を活かした政治。」

「ご主人様や桃香は民と同じ視線から物を見ておるからな。民と直に話し、自分の目で市を見て国の情勢を確認しておれば自然と民からの信頼を得られる。実に理に叶っとると儂は思うぞ。」

「自分の目で市を見て、民と話すか。私と似てるわね。」

「雪蓮様の場合、お酒を買いに行くのがほとんどだと思いますが。」

「ぶー、それじゃあ私がただの酒好きみたいに思われるじゃない。」

「違うのか?」

「違わないわ♪」

「・・・はぁ。」

 

水蓮が溜息を吐いた。美々は隣であははと腹を抱えて笑っている。鸞と愛璃はその光景を眺めながら微笑んでいる。うん、雪蓮たちも王族とは言ってもうちと同じように仲間を大切にしているのが見て取れる。こういう家臣の形もあっていいと俺は思う。

 

「まぁまぁ、雪蓮様のお酒好きは水蓮様に似たんだから親子ってことで一件落着~♪」

「なんか無理やり話を終わらせてないか?数分前も同じようなやりとりを見た気がするんだけど・・・。」

「気のせいです♪」

「頃合を見て終わらせないと長引いて面倒なので。」

「・・・。」

 

鸞がぶっちゃけた・・・。雪蓮よ、家臣にこんな思われ方でいいのか?

 

「ご主人様、お腹空いた。」

「さっき休憩して食べたよね!?」

「足りない・・・。(きゅぅ)」

 

可愛いお腹の音が聞こえた。しかし、恋の腹を満たすにはちょっとやそっとの

量じゃ足りないからな。

 

「建業に着くまで我慢してくれ。そしたら俺が何か作るから。」

「・・・我慢。」

「うん、良い子だ。」

 

俺は恋の頭を撫でて落ち着かせる。それから談笑を続けながら建業への道のりを進んでいった。ちなみに、雛里はこのやりとり中もすやすやと眠っていたそうな。

 

・・・

 

 

建業にたどり着いたのは夜が明け、市にぽつぽつと人が出てきたくらいの時間だった。道中で雛里も起きたため今は歩いてもらっている。俺の背中から降りるときにどこか躊躇っていたのは何故だろうか。それはおいといて、俺たちは急いで周瑜さんのいるであろう救護室に向かった。

 

「冥琳、戻ったわ!」

「あぁ、おかえり。」

 

周瑜さんはベッドに腰掛けていた。その姿はどこか儚げで・・・綺麗だった。

 

「冥琳、聞いて!あのね、あのね!!」

「分かったから。聞いてやるから落ち着け。」

「う、うん。」

 

なんだか子をあやす母親のような、妹を落ち着かせる姉のような感じがする。俺が周瑜さんの立場で、雪蓮側が鞘香だったからな。雪蓮から俺たちが遭遇してきた出来事を周瑜さんに全て伝えられた。黄竜のこと。戦わずに終わったこと。牙と勾玉を手に入れたこと。そして、俺がキスされたことまで・・・。最後のはいらないよ!

 

「そうか、皆・・・特に北郷には苦労を掛けたな。ありがとう。」

「どういたしまして。まぁ、苦労したのは移動くらいでしたからそれほど体力は使った気がしませんね。」

「そうですね。竜が出てきた時も私たちは見ているだけで主に一刀さんが働いてくれましたから。」

「拍子抜けよね~。」

「そう言うな。無事に牙を手に入れ、こうして冥琳の前に持ち帰ることができたのだから。贅沢を言うものではないわ。」

「そうだね~。けど、美々はちょっとだけ戦いたかったよ~。」

「俺で良ければ模擬戦、付き合うよ?」

「・・・ホント?」

「うん。俺も最近は模擬戦してなかったからね。どうかな、俺じゃ力不足なら恋が・・・。」

「いやいや、是非お願い!というか、絶対だからね!」

「分かった。とりあえず、明後日まではこっちにいる予定だから明日でいいかな?」

「うん♪」

「とりあえず、俺はこの牙を粉末状にしてくるから少し待っていてくれ。あとは少量の水を準備しておいて欲しい。水で飲み干す形となるからな。」

「水は私が持ってきます。」

「頼む。」

 

鸞と華佗は救護室を後にした。これでやっと周瑜さんの病気が治るのか。鈴様々だな。

 

『礼には及ばぬぞ。』

「・・・。」

 

あれ?何か聞こえたような・・・。き、気のせいだよな。

 

『気のせいではないからな。』

「・・・え?」

 

もしかして、どこからか話しかけてきてる?

 

『正確には一刀が身に付けている我が勾玉から。』

「な、なんでもありなんだな。これなら呼ばなくても大丈夫なような・・・。」

『直接顔を見たいではないか。私が暇になったらちょこっと顔を出すかもしれん。』

「わ、分かった。」

『うむ♪』

 

竜がちょこっと顔を出して俺を見てくるのか・・・。シュールだ。その時俺はどう対応すればいいんだ?

 

「一刀、どうかしたか?」

「・・・いや、なんでもない。」

「おかしな奴だ。」

 

こんなこと誰かに説明しても信じてもらえるとは思えないし・・・。けど、これでおかしな奴呼ばわりされるのもどうかと思う。そんなことを悶々と考えているうちに二人が戻ってきたようだ。

 

 

「待たせてすまない。とりあえず、俺が良いと思う量だけ粉末にしてきた。残りの欠片は残っているが、とっとくか?」

 

俺に牙の欠片を差し出してきた。うーん、これをいらないって言ったら鈴に怒られるだろうな。

 

『怒りはしないが拗ねる。』

「・・・そうだな、貰っておくよ。」

『そうか。』

 

華佗から欠片を受けると、とりあえず制服の内ポケットにしまった。

 

「はい、冥琳さん。水です。」

「ありがとう。」

「そしてこれが牙を粉末にしたものだ。これを飲めば病魔も消えるだろう。即効性はあるはずだ。一刀のように竜の体液をそのまま体内に摂取出来れば万事解決なのだが・・・。」

「・・・そんなに強力なものなのか?」

「牙とは比べ物にならないほど強力だ。竜の体液が摂取者の血清と結合されるため全身に抗体が出来る。そのため一刀は一生俺の世話になることはない。病気だけでなく毒も無効化される。自然回復力も数百倍に跳ね上がるからな。」

「俺、もとから自然回復は早かったんだけど・・・。」

「怪我しない。以上。」

「・・・どんどん人間離れしていく。」

「戦場では絶対に対峙したくないですね。」

「うちの武官として働くなら是非とも欲しい逸材だな。」

 

・・・褒めるのか貶すのかどっちかにしてくれ。

 

「と、とにかく!周瑜さんに早く薬を飲んでもらわないと!」

『そのように照れ隠しをせんでも・・・。』

 

・・・心の中を勝手に読まれるのもどうかと思うんだが、気にしたら負けなのか?

 

「そうだな。華佗、渡してくれ。」

「あぁ。」

 

周瑜さんはひと思いに飲み干した。

 

「ど、どう?何か変わった?」

「これは・・・想像以上だ。体が軽い。ここ数年感じてこなかった感触だ。」

「どうやら成功のようだな。」

「皆、本当にありがとう。」

「お礼は華佗と一刀に言ってちょうだい。二人がいなかったら私たちだけじゃどうもできなかったんだから・・・。」

「そうでもないさ。私は孫呉の皆がいたからこそ病気にも負けずに頑張ってこれたのだ。特に、雪蓮。お前は私がいないと心配だからな。」

「冥琳はこういう時にもお節介なんだから。」

 

そう言い合いながらも二人は笑っていた。これが断金之契を交わした結果なのかな。固い絆が二人を結んでいる。二人を分かつのは死のみか。

 

「冥琳さん、治ってよかった~。」

「冥琳がいないとツッコミがいないもの。私だけじゃ水蓮様や雪蓮様を止められないからね。」

「愛璃もどちらかというと突っ込む方じゃない。」

「とりあえず冥琳。治ってよかったな。仕事は明日からで大丈夫か?」

「大丈夫です。正直に言うと今日からでも大丈夫ですが。」

「そこは念のためだ。今日はゆっくり休め。では私は仕事が残っているのでな。先に政務に戻らせてもらう。一刀たちはゆっくりしていてくれ。」

「うん。ありがたくゆっくりさせてもらうよ。」

 

水蓮は救護室を後にした。その姿は憑きものが取れたような晴れやかな表情だった。

 

「私も兵の鍛錬に行かないと。じゃあね~。」

「私も戻らせてもらいます。今日は警邏に行かねばなりませんので。」

「鸞、俺も市に行くから一緒していいか?」

「大丈夫ですよ。」

「ダーリンが行くなら儂も行こう。呂布も行くか?」

「(こくっ)ご飯。」

 

そういえばご飯食べさせるって言ったな。

 

 

「じゃあ俺も市に行こうかな。恋のご飯にも付き合わないといけないから。雛里も行く?」

「はい。」

「では私も一刀さんたちについて行こうかしら。では雪蓮様、冥琳をよろしくお願いしますね。」

「はーい♪」

 

俺たちは救護室を後にして市へと向かった。

 

「皆に気を遣わせてしまったか。」

「まだ病み上がりなのだからそんなこと考えなくていいのに~。」

「私はお前と違って繊細に生きているからな。気を遣われることには敏感なのだ。」

「ぶー、それじゃあ私が鈍感みたいじゃない!」

「実際にそうなのだから仕方ないだろう?」

「うっ。」

「・・・くすっ。」

「・・・あはは。冥琳は病み上がりでも冥琳ね。」

「お互い様だ。」

 

あー、この空気。懐かしい。私も雪蓮も気を遣うことなく自然に話せている。・・・改めて思えば雪蓮に一番心配を掛けていたのかもな。

 

「改めて北郷たちに礼をしたいんだ。時間を取れるようにしてくれないか?」

「そうね。私もお礼を言いたいし、うちの子達も紹介したいから・・・そうだ!宴を開こう。」

「お前の魂胆は見え見えだが、それが手っ取り早いだろうな。今日はそれでいこう。」

「やった♪じゃあ穏たちにこの事を伝えてくるわ!」

「あぁ、行ってこい。」

「行ってきます!」

 

雪蓮も救護室を後にした。

 

「ふぅ・・・。」

 

一人になってようやく静かになった。まぁ、騒がしいのが嫌いというわけではないが。それにしても、本当に体が軽い。ほとんど諦めていただけにこれは夢ではないかと思ってしまう。・・・いや、これでは建業まで駆けつけてくれた北郷たちに失礼か。

 

「・・・。本当に、夢ではないのだな。」

 

とりあえず、宴の際にでも礼のついでに色々と話してみよう。それまでは久しぶりに庭でも散歩しよう。

 

・・・

 

市を回る俺、それを隣でとことこ歩く雛里、点心を頬張る恋、俺の背後をぴったりつけて来る卑弥呼、そして何故か俺の腕に腕を絡めてくる愛璃。なんかカオスだ。

 

「な、なぁ愛璃。何で腕を絡めてくるんだ?」

「迷惑?」

「いや、迷惑じゃないけど・・・隣から視線が。」

 

俺をジト目で見てくる雛里。

 

「ご主人様の節操無し。」

 

うっ!雛里のぼそっと呟いた一言が俺の心に刺さった。まさか節操無しなんて言われるとは・・・。というか、これは俺のせいじゃないよね。

 

「それなら雛里も一刀さんにくっつけばいいわ。こんな風にね。」

 

愛璃がより一層腕を絡めてくる。腕に胸が当たってるんだが・・・。男としては嬉しい半面表情に出てしまいそうで怖い。

 

「・・・分かりました。」

 

ちょっとむっとしながらも俺に腕を絡めて・・・。

 

「(ぷるぷる)」

 

 

絡めようとしたが身長の問題で腕に絡めると背伸びをしてしまうので体が震えていた。

 

「そんなに無理をしないでいいから。ほら。」

 

俺は雛里の手を握った。こうすれば雛里が背伸びしないで済むしね。

 

「あわわ・・・。私の背がもう少しあれば・・・。」

「雛里は今のままでもいいからね。」

「あ、ありがとうございましゅ//。」

 

雛里が顔が林檎みたいに赤くなってる。手を握ったのが恥ずかしいのかな?

 

「ふふっ、雛里は可愛いわね。」

「うちの自慢の軍師ですから。」

「あわわ//。」

「ご主人様はモテモテじゃな。儂も混ざりたい・・・。」

 

止めてくれ。想像しただけで恐ろしい。俺たちは談笑しながら市を散策したのだった。

 

「ご主人様、杏仁豆腐食べたい。」

 

・・・

 

その夜、雪蓮から冥琳の完治祝いと、俺たちと建業の人達の交流会を兼ねて宴を開くことを伝えられた。今は謁見の間でその宴が催されていた。皆それぞれにバラけて談笑している。ふむ、俺はどこに落ち着こうか。そんなことを考えていると雪蓮が周瑜さんと共にこちらに近寄ってきた。

 

「一刀~、楽しんでる~?」

「どこかに落ち着こうか考えてたんだ。」

「そう?まぁ、せっかくの宴なんだから楽しんでいってね。」

「勿論。」

「とにかく、冥琳から話があるみたいだから私は向こうに行ってるわね。」

「気を遣わせてすまないな。」

「気にしないで♪」

 

雪蓮は手をヒラヒラとさせて水蓮のところへ行ってしまった。

 

「まぁ、話というのは大したものではない。今日の礼を言おうと思ってな。雪蓮のお守りをしてくれたこと、私の薬を取ってきてくれたこと。どちらも私の個人的なものだが、こうして礼を言わないと私がすっきりしないのでな。本当に、感謝する。」

「いえ、前にも言いましたが困ったときはお互い様ですから。気にしないでください。」

「分かってはいたが謙虚なやつだ。まぁ、嫌いではないが。話は飛ぶが私の真名、北郷に預けようと思う。命の恩人だからな。そのくらいはさせてくれてもいいだろう?」

「そこは俺より華佗にしてもらった方がいいと思いますよ。治療法を見つけたのは華佗ですから。」

「だが出会えたのも手に入れたのも北郷だろう。お前がいなければ私はこうして宴にも参加してはいなかった。・・・いや、既に息を引き取っていたかもしれん。」

「そんな寂しいこと言わないでください。俺も寂しくなります。」

「そうか。これはすまない。礼はおいておくにしても、私個人として北郷を気に入っているのだ。これでも足りないか?」

「いえ、そういうことでしたら謹んでお受けします。」

「ありがとう。我が姓は周、名は瑜、字は公瑾。真名は冥琳。北郷、これからよろしく頼む。」

「俺のことは一刀と呼んでください。字や真名は持ち合わせていませんので。」

「分かった、一刀。」

「こちらもよろしくお願いします、冥琳。」

 

それからも他の将と自己紹介、兼真名の交換もし終え宴はお開きとなった。穏が酔っ払って亞莎を襲撃していたのは忘れよう。ついでに、恋は特に明命と仲良くなっていた。俺の推測から動物好き(主に猫)と動物の波長があったのだと考えた。雛里は麗香と話していた。鳳統と張昭、名軍師の二人の会話といえば凄く聞こえるがそうでもなく他愛ない会話をしていたようなので仲良くなったんだろう。あの引っ込み思案な雛里が・・・ちょっとウルっときてしまったよ。卑弥呼は華佗を連れ、祭や雪蓮、水蓮と共に思い出話を肴に酒を楽しんでいた。華佗が潰されたのは語るに至らずといったところか。

 

・・・

 

 

宴もお開きとなり、俺は雛里とともに冥琳の部屋にお泊りとなった。恋は明命、華佗と卑弥呼は他の仕事があるらしく先に建業を出て行くこととなった。平原に戻るのはあちらの仕事が片付いてからと言っていたので俺たちが戻ってもまだ帰ってきていないかもしれない。

 

「俺は椅子を使わせてくれれば座ったままでも寝れるから雛里は冥琳の寝台にお世話になりな。冥琳、それでいいか?」

「勿論。雛里ほどなら窮屈になることもないだろう。だが、一刀は大丈夫か?椅子で寝たら腰や首を痛めるぞ。」

「実は椅子で寝るのに慣れてるんです。だから心配ありません。」

 

向こうにいた頃のテストへの追い込みには苦労したよ。たまに寝落ちして椅子で寝たなんてこともあったけど。・・・たまにだったかな?

 

「ということで、一晩雛里を頼みますね。」

「あぁ。」

「それではおやすみなさい。」

「おやすみ。」

「おやすみなさい、ご主人様。」

 

そう言うやいなやご主人様は寝息を立てて寝てしまいました。相変わらずご主人様の寝付きは良いのですね。

 

「もう寝てしまったか。」

「ご主人様は五台山の下山から今まで一睡もされていませんでしたので。それと、いつも寝付きは良い方なんです。」

「そうか・・・。雛里は、良い主人を持ったな。」

「はい。自慢のご主人様です。女の人がすぐに寄ってくるのは困りものですが。」

「あれは一刀の人柄から来るものだ。仕方のないと割り切ったほうが早い。まぁ、雛里からしたら私も寄ってきた女の一人なのだろうがな。ははっ。」

「う~、笑い事じゃありません~。冥琳さんはご主人様のこと、どう思っていますか?」

「良い男と思うぞ。心技体、全て揃っていると言っても過言ではない男だ。もし、呉に一刀が来ていれば良い仲間になれただろうと思ったほどに。」

「桃香様、敵は多いようです・・・。」

「なんだ、ヤキモチか?」

「そうかもしれません・・・。」

 

ご主人様のことを冥琳さんと話しながら私も眠りにつきました。私の大好きご主人様を思い浮かべながら・・・。

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。今回は雛里というより冥琳がメインだったかなと今更感じています。まぁ、話的には呉、前編といったところでしょうか。ここでオリキャラについて説明しておきます。張昭子布。真名は麗香。前回も出てきた呉の軍師ですね。史実では孫策、孫権に仕えていますがうちでは孫堅も生きていますので一番の上司は水蓮ということになります。灰色の長髪に黒い瞳。眼鏡はかけておりませんw次回は他の呉武将にもスポットを当てますのでお楽しみに。それでは次回、vs3339 でお会いしましょう。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
27
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択