No.550428

真・恋姫†無双~絆創公~ 小劇場其ノ三

一刀の為に、思い悩む凪は可愛いです。

2013-03-02 16:00:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1369   閲覧ユーザー数:1168

小劇場其ノ三

 

 俺の爺ちゃんのこの世界での仕事。それは兵士の訓練や指導だ。

 実家の鹿児島で道場を経営していて、剣術師範の爺ちゃんにピッタリの役目だと思う。

 事の始まりは、初日に焔耶や春蘭と撃ち合っているのを目撃した兵士で、それに感動した彼が“老師と呼ばせて下さい!!”と爺ちゃんに叫んだのがきっかけだ。

 爺ちゃんの実力は兵士の間に知れ渡り、教えを請う為に次々と“是非とも私を弟子にして頂けませんか!?”と、爺ちゃんの所に集まってきた。

 爺ちゃんもそれに対して無碍にせず、彼らの申し出を快く受け入れた。

 だけど、この世界の鍛錬と爺ちゃんの、と言うより日本の剣道とでは色々と相違がある。何よりも武士道と称されるように、精神面での違いが。

 それでも構わないかと爺ちゃんが確認すると、“構いません!!”という言葉が一斉に返ってきた。そうして、“老師・北郷耕作”が誕生した訳だ。

 爺ちゃんの訓練はかなりの好評で、華琳や秋蘭曰く、“訓練された兵士の動きを見るだけで、精神が研ぎ澄まされてきているのが判る”らしい。当然、俺はピンと来なかったけど。

 でも、兵士に教えている爺ちゃんはどこか嬉しそうだし、色々とプラスになるのなら良しとしよう。

 

 俺の母さんがその爺ちゃんの娘だからか、二人の趣味や嗜好は少し似ている。

 爺ちゃんは緑茶好きで母さんも緑茶や紅茶好き、爺ちゃんは漢詩を吟じるのが趣味で母さんは日本の俳句や短歌、文化に詳しい。対応の違いはあるが、二人とも子供に好かれやすいとか。

 

 そんな二人は、たまに行動も似てしまう事がある。

 俺が知らない所でこんな事があったそうだ。

 母さんと爺ちゃんが二人して、東屋でお茶を飲んでくつろいでいる所に、いつもの真面目な顔を一層真面目にした凪が現れた。

「失礼致します……」

「おや、これは楽文謙殿。如何なされました?」

「あら、こんにちは。凪ちゃんもお茶飲んでいく?」

「イエ……その……お二人に、伺いたい事がありまして……」

「何ですかな?」

「…………あの」

「……何?」

「……その……天の国では、傷だらけの女というのは……見苦しいものなんでしょうか?」

「え……?」

「自分は……女性として、失格なのでしょうか……?」

「…………少し、失礼します」

「耕作様、どちらに……?」

「一刀を痛めつけてきます」

「……エエッ!?」

「少々懲らしめてやらんと……」

「お、お待ち下さいっ!! まだ話は……」

「いいえ、待ちません!」

「い、泉美様! 耕作様をお止めくだ……」

「お手伝いします、お父さん」

「エエエエッ!?」

「凪ちゃんを泣かせるなんて……」

「お、お待ち下さい、お二人とも!! 私は泣いておりませんし、隊長は何もしていません!」

「む? そうですか?」

「でも、今の話し方だとカズ君の事と関係あるみたいだったけど?」

「イエ、あの……関係ないけど、関係あるといいますか…………///////」

「……どういう事ですかな?」 

「その……隊長の妻となるには、やはり……美しくなければ、駄目かと……でも、自分は……こんな醜い身体で……ですから、お二人に……御意見をと…………」

「…………凪ちゃん」

「…………ハイ?」

「カズ君は……そんな凪ちゃんが、嫌だって言ったの?」

「まさか……!! 隊長はそんな事は……!!」

「言ってないんでしょ?」

「ハイ…………」

「だったら、私たちは何も問題ないわよ。ねえ、お父さん?」

「うむ…………」

「……どうして」

「……え?」

「どうして、皆様はそんなにお優しいのですか……?」

「皆様、と言いますと……もしや……?」

「……恥ずかしながら、燎一様と佳乃様にも同じ問いを……」

「二人の答えは、どうでしたかな?」

「私を……認めて下さると……」

「ならば…………」

「何故……そうまでして……」

「申し上げます、楽文謙殿……」

「ハイ……」

「確かに、我々は一刀の家族であります。しかし、我々に認めて貰うことを優先してしまっては、一刀に対して失礼ですぞ?」

「それは……」

「自分で言うのも何ですが、ワシは何分堅い考えでしてな、最初は皆様を品定めする立場をとっておりました……」

「え……?」

「しかし、それは皆様に対して大変失礼だと気付いたのです。皆様は同じ様に一刀を大切に想っている。その想いに優劣を付けるなどできませんし、付けたところで、劣っていると言われた方が、そう簡単に想いを断ち切れるハズがありませんからな」

「耕作様……」

「ですから、一刀の伴侶の件に関しては、我々はあまり口出ししないよう心掛けたのです。少々臭い言葉ではありますが、愛があればどんな困難も乗り越えられるハズですからな。のう、泉美?」

「ええ。むしろここまでカズ君を想ってくれているなんて、母親としては凄く嬉しいですもの。凪ちゃんなら、きっと良い奥さんになってくれると思うわ」

「そ、そんな……お、奥さんなんて///////」

「さあ、もう気になさらずに。貴女は貴女の想いを貫いて下さい。それが貴女の為、一刀の為になるのですから」

「ハイッ! ありがとうございます!!」

 

 そうして、凪は二人に元気よく、深々と頭を下げて去っていった。その後ろ姿を、爺ちゃんと母さんは優しく見つめていた。

 こんな事があったと母さんに聞かされた。“凪ちゃんを大切にしてあげなさいね?”との言葉に、勿論だと答えた。

 ちなみに、母さんが俺を懲らしめる方法は、お互い正座で向かい合い、二時間弱の説教をする事だ。小さい頃に悪戯をしたら、爺ちゃんの痛めつけと母さんの説教のダブルパンチを良く喰らったものだ。

 しかし、凪の皆への質問を皮切りに、他の皆が次々と俺の家族に色々質問するようになった。

 その結果、妙な事態が発生したのだけど、その前に、まだ妹の佳乃の事について話していなかったから、次回はその話をしよう。

 

 

 おまけ

 

「老師! 話は聞きました!」

「楽進将軍が泣かされたと聞いて!」

「北郷様を懲らしめると聞いて!」

「我々も助太刀します!!」

 

「…………一刀は本当に、慕われているんだろうか?」

 

 

 

 

 

-続く-


 
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