No.547149

古田くんの残念すぎる青春【四之瀬編】 1.ミステイク彼女(前篇)

アッキさん

 ――――――――これは告白から始まる物語。屋上で美少女に告白される僕。けれどもその美少女が告白は間違っていた。これは古田くんの歪んで、間違った、異質な学園青春物語。
 第1回、四之瀬一二三編第1話。

2013-02-21 21:06:44 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:560   閲覧ユーザー数:560

 この物語は告白から始まる物語である。それも相手は美少女で、告白される場所が学校の屋上と言う凄い王道中の王道の物語である。

 

 

「急に呼び出してごめんね。けどどうしても伝えたくて……」

 

 

 風に吹かれる幻想的な銀色の髪。その瞳はどこか物悲しげで、その頬は夕陽で赤くなっているのではなく本当に気恥ずかしさから赤くなっているのが分かるくらい赤い。

 

 

「私の気持ちは本当なの。誰にも偽れないくらい本当の気持ちなの」

 

 

 背中からでも分かるくらいのボン、キュッ、ボンなナイスバディな美少女。クラスに1人は居ると言われるくらい、そんなレベルの美少女。

 

 

「だからもし良かったら、私と付き合ってください!」

 

 

 こっちから是非とも、と言えるくらいの美少女なのにも関わらず、相手の気持ちを優先しようとするその気持ちは誠に素晴らしいと思う。実際、僕も彼女の熱烈な思いに答えようと思っていた。自分で言うのもなんだが僕なんかはどこにでも居る普通の、ごく平均的レベルの男子高校生にも関わらず、彼女から告白してくるその姿勢に僕は素直に思う。

 

 

「―――――――――お願いします、三上(みかみ)君!」

 

 

「……」

 

 

 これさえなければ完璧な恋愛物語になっていた、そんな邂逅劇。

 ――――――――これが彼女、四之瀬一二三(よのせひふみ)と僕、“古田新(こだしん)”との初めての出会いであった。

 どうしてこんな事になったのか。それは数時間前にさかのぼる。

 

 

 僕の名前は古田新。どこにでも居る普通の男子高校生だ。僕の通う高校は県立清作高校(しりつせいさくがくえん)。『清』い魂を『作』り出すために作られた県立校である。誤解しないために言っておくが、決して市の名前が清作市(せいさくし)と言う事から付けられた訳ではないと言う事である。僕はこの高校に通う高校2年生である。高校2年生ともなると彼女の1人でも居るんですかと言われるけれどもそう言う訳ではない。僕はむしろそう言った『リア』ルが『充』実している『人』、『リア充人』をひがんで生きてきた。

 成績も普通、スポーツも平均的、容姿も人並みな僕は彼女が出来るほど恵まれた人間ではない事は重々承知していた。だから平凡な生活を送って行くんだろうなと思っていた。

 そんな僕は学校指定の黒い手提げ鞄を肩から下げて、桜が落ち切って緑色の葉を付けた並木道を歩いていた。季節は既に初夏と言われる5月。そろそろ学校に慣れ始め、この並木道を歩くのにも慣れ始めていた。僕は並木道を学校に向けて一歩一歩噛みしめながら歩いていた。

 

 

「おーい、シン!」

 

 

 後ろから馴れ馴れしく、慣れ親しんだ声が聞こえる。振り返ると自転車に乗った筋肉質な男が、自転車に乗りながらこちらへとやって来る。

 無駄一つない引き締まった身体つきと女の子にモテそうな甘い顔(マスク)。背も平均的な僕と違って180か190と非常に高身長で、爽やかな笑顔を浮かべている。

 三上上成(みかみうえなり)。僕の中学時代からの親友でクラスメイトである。イケメンで人も良く、運動神経も良い。勉強はそれなりだが、それが逆に人間味らしくてイケていると言う事らしい。彼はモテる。一時期は2週間で彼女をとっかえひっかえにしてた過去も持つほど、彼はモテているのである。僕としては彼とはあまり関わりたくはないんだけれども。

 どうしてかと言われると、彼といると変な噂をされるからだ。昔、クラスメイトの女子陣から『やっぱり新×上成だよね』いや、『上成×新だよ』と言う会話を聞いてしまったからである。

 

 

「いやー、今日も早いな」

 

 

 そう言いながら自然に横まで来ると、自転車を降りて横に並ぶ彼。こんな光景が登校期間中は毎日のように繰り返されているために、ホモだと噂されてしまうのである。全くどうしようもない。

 

 

「今日の数学の宿題、やって来た?」

 

 

「まぁ、な」

 

 

「なぁ、後で写させてくれない?」

 

 

「まぁ、良いけれども」

 

 

 と言う訳でこれが僕の日常である。僕はいつものように自転車を押す親友と一緒に学校へと向かうのであった。

 

 

 クラスに着いた僕は机に座って1時間目の数学を準備して、数学の宿題をやって来たノートを上成に渡して僕は椅子に座っていた。授業が始まる前は僕は出来るだけ体力を使いたくないので休んでいるのである。まぁ、別の理由もあると言えばあるのだけれども。そうこうしているうちにお目当ての人物がやって来た。

 

 

「おはようございますです。今日も良い天気ですねです」

 

 

 ほら、やって来た。やって来たのは、金髪のモデル級の美少女である。

 肩よりも長い髪を巻きながら頭の上でポニーテールにしていて、青い透き通るような瞳が特徴的な美少女。身長も女性にしたら十分に高く、付いて欲しい所には肉が付いて、付いて欲しくない所には無駄な筋肉は付いていない。本当に羨ましいような身体つき。

 彼女の名前はサラ・F・スタッカート。外国からの転校生である。高校1年の時にこちらに引っ越してきてこの高校に通っている。僕と上成のクラスメイトで親友である。

 

 

「今日も良い天気です。本日も頑張っていきましょうです」

 

 

 彼女の口調は少し可笑しい。常にどんな会話文でも語尾に『です』と付けたがる。どうも日本語は完璧には理解しておらず、『です』を付けなければならないと思っているのだろう。一時期はそりゃあもう酷かった物だ。何せ単語だけで会話を成り立たせようとしていたから。

 『今日、実行する、英語、宿題?』と言う何を言っているのか分からないような文だったからな。最初は。まぁ、僕や上成、その他心優しい人達によって彼女の会話スキルは上がったのである。

 習うより慣れろ。その言葉の通り、積極的に話して会話して身につけた日本語はもうパーフェクトだと言って良いだろう。正直、会話なんて通じたら正しい。

 

 

「……? シン、何かありましたかです? いつもと違って会話が少ないです」

 

 

「うん? いや、そう言う訳じゃない。ちょっと考え事をしていただけだよ。そうだな、良い日になると良いな」

 

 

 そう言った僕は彼女の話を聞きながら、机の中を探る。探ると何かの紙の感触が手に伝わる。

 

 

「……!」

 

 

「どうかしましたかです?」

 

 

「い、いや。何でもない」

 

 

 「それなら良いのですがです……」と言いながら彼女は自分の席に帰って行った。いや、違うな。別の人と話をしに行った。彼女はよくも悪くも人気者である。喋る相手も友達も普通で平凡な僕なんかとはけた違いに多いのだろうな、と思いつつ、机の中から紙を取り出す。

 それは手紙だった。そしてピンク色だった。それは所謂、ラブレター、恋文と呼ばれる物だった。手紙の裏には可愛らしいピンク色の丸文字で『四之瀬一二三より』と書かれていた。これはラブレターと思いながら、手紙を覗いてみる。手紙の一番最初にはこう書かれていて、僕は溜息を吐いていた。

 

 

『三上上成さんへ』

 

 

 と書かれていたから。


 
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