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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第四十七話 初任務を遂行します

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-02-11 21:29:34 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:33648   閲覧ユーザー数:29633

 シュテル達の実技試験が行われた日から数日。

 結果は言うまでも無く全員合格。レヴィに関しては『筆記試験よく頑張ったな』と褒めてやった。

 そして全員の配属先だが六人共、俺と同じで地上本部所属…しかも首都防衛隊を希望したらしい。

 しかし各部隊を転々と回る事を希望した俺と違い、最初から首都防衛隊に行くとの事。

 もっともシュテル達はなのは達同様に訓練校の短期メニューを受けなければならないので即配属という訳ではないが。

 高ランク魔導師がこの短期間で一気に俺を含め、七人も加入した事によってレジアス中将は超ご機嫌。

 椿姫の奴は本人のいない所で

 

 『レ~ジア~スよ~ろこ~び、に~わか~けま~わり~…』

 

 とか日本の童謡、『雪』を替え歌で歌う始末。…上官に対して失礼な奴。

 後、シュテル達も全員俺の時みたいに地上本部のトップであるレジアス中将の所に挨拶に来ている。その時の椿姫のニコポにもレジアス中将は全く影響を受けなかった。俺や亮太の様な転生者を除くと初めての男性である。

 レジアス中将…精神力の強さ、マジパネエッス。

 それと俺達の学校には今後しばらく『家の都合で学校に来れるのが少なくなるかも』と伝えておいた。その時クラスの全男子は手と膝を床に付けorzのポーズを取っていた。女子も亮太が来れるのが少なくなると知った時点でorz状態だった。

 ちなみに亮太は両親、椿姫は保護者の叔母さんに魔法の存在を打ち明け、管理局で働く旨を伝えた所

 

 『無理しない程度に頑張れ』

 

 と、アッサリ局員になる事を認めてくれたという。

 本人達はそんな簡単に認めてくれた事に拍子抜けしたらしいがな。

 それで合格が言い渡されたのは昨日で今日からシュテル達は短期プログラムを受ける事になっている。

 だから3学期の間は学校を休む比率が俺よりも多くなる。

 俺は俺で今日は平日だが勤務初日なので配属場所の『陸士108部隊』の一室に来ている。

 

 [本日から、陸士108部隊に配属されました長谷川勇紀三等陸士です。よろしくお願いします。それと自分は今聴力が低下しており、何も聞こえない状態ですので会話の際は筆談か念話でお願いします]

 

 筆談で挨拶し、敬礼する。

 

 [ああ、俺が『陸士108部隊部隊長』のゲンヤ・ナカジマ三等陸佐だ]

 

 ゲンヤさんも俺の挨拶に対し、筆談と敬礼で返してくれる。

 この時点ではまだ部隊全てを纏める『陸士108部隊長』ではなく、部隊の一つを纏める『陸士108部隊部隊長』だ。

 この人が『陸士108部隊長』になるのは空港火災事故が起こった翌年の新暦72年からだからな。

 

 [それでお前さんに聞きたい事があるんだが…]

 

 [ええ、何を聞きたいのかは分かっています]

 

 筆談で会話しながら俺は周囲に聞き耳を立てたり、誰かに見られたりしていないかをダイダロスと共に確認する。

 

 「《ユウ君、大丈夫だよ。盗聴も監視等もされてはいないから》」

 

 「《ありがとうダイダロス。引き続き警戒しておいてくれ》」

 

 「《了解だよ》」

 

 とりあえず俺とゲンヤさん以外、周囲には誰もいない事を告げる。

 

 […アイツは元気にしてるのか?]

 

 [クイントさんは今、俺の父さんが所属している軍の部隊にゼストさんと一緒に着いて行ってますからね。自分の腕を鈍らせずに鍛えたいとの事でしたので]

 

 [はは…。アイツらしいな]

 

 ゲンヤさんは笑って答える。

 

 [ただ、電話越しに聞く限りじゃ『管理局に居た時よりも訓練が厳しいし、部隊の人達、特に隊長の人達は皆想像を超える強さを持ってるわ。ここでは私達の魔法もほとんど通じないし、ちょっぴり自信無くしそうだわ』との事らしいです]

 

 [アイツが弱音を吐くたぁ、相当なもんだな]

 

 その分次に再会した時はかなり強くなってそうだが。

 

 [ま、妻を救ってくれたオメエさんには感謝してる。ありがとうな]

 

 [いえ、俺が出会ったのは偶然でしたし]

 

 [その偶然がなけりゃアイツは死んでたんだろ?だから礼を言わせてくれ]

 

 頭を下げるゲンヤさんのお礼の言葉を俺は受け取り、俺達はお互い室内のソファに座る。

 

 [まあ、今後は俺を通じてクイントさんに連絡が取れますから何かあったら言って下さい]

 

 [そうさせて貰うわ]

 

 [あっ!それからクイントさんに『私の娘のギンガとスバルは元気にしてるか聞いておいて?』って言われたんですけど?]

 

 [ああ、アイツが死んだと聞かされた当初はもう二人共毎日泣きじゃくっていたが、今はもう収まってきたな]

 

 [何か罪悪感が沸いてきます]

 

 [しょうがねえさ。馬鹿正直に喋ったら娘達が消されるかもしれねえ状況なんだ]

 

 その命令を出そうとしてる評議会の連中はもう死んだけど、殺害犯の事考えるとまだ喋れんのだよね。万が一ってのは常に想定しておかないと。

 

 [いずれクイントさんが戻って来た時には思いきり殴られそうですね]

 

 [まあ、それぐらいは甘んじて受けるさ]

 

 そうは言うけど魔法が使えないゲンヤさんが生身の状態であの姉妹の一撃を受けて無事でいられるのだろうか?

 …無理だろうな。

 

 [無理はしないで下さいね]

 

 [???分かった]

 

 おそらく俺が言いたい事は伝わってないだろうが頷いてくれる。

 

 [それで、俺はこれからこの部隊で何をすればいいのでしょうか?]

 

 [陸士108部隊(ウチ)の業務内容は主に密輸物の捜査がメインだが地上の治安維持にも結構関わってるな]

 

 [そうですか]

 

 [とりあえず今日は俺が隊舎内を案内する。その時に部隊にいる連中と自己紹介でもして交流を深めておいてくれや。現場担当の奴は基本魔導師しかいねえから念話がありゃ筆談もせずにすむしな]

 

 [了解しました]

 

 [じゃあ行くか]

 

 俺とゲンヤさんはそのまま立ち上がり、隊舎内を案内してもらいつつ部隊の人達に自己紹介して回った。皆気さくでいい人ばかりなので特に衝突なんかする事も無くすぐに仲良くなることが出来た。

 

 

 

 俺が108部隊に配属されて一週間。学校で授業を受けている際、その一報が届いた。

 

 「《っ!!ユウ君、ナカジマ三佐から連絡が届いたよ!!事件が起きたから来てほしいって!!》」

 

 俺の住む地球は管理外世界なので基本『連絡はダイダロスへのメール送信にしてほしい』とお願いしている。

 いきなり空間にディスプレイ表示されても困るし。

 しかし授業中に連絡か。

 ふと時計を見ると後15分で午前の授業が終わり、昼休みになる。

 その折に早退させてもらうか。

 今日はシュテル達も短期メニューのため、朝から訓練校へ通っている。そのためクラスのテンションは低めである。

 

 「《ダイダロス。授業が終わるまであと15分ある。それまで待てるかナカジマ三佐に連絡してくれないか?》」

 

 「《分かったよ》」

 

 すぐさま、メールでゲンヤさんに連絡を取ってくれる。

 2~3分後、再びメールが届いた様だ。

 

 「《…大丈夫みたい。状況は膠着していて今の所動く気配は無いって。でも出来れば急いで来てほしいらしいよ》」

 

 なら授業が終わるのを待ってそれから直接現場へ転移するか。

 

 「《ダイダロス。現場への座標を聞いておいてくれ。直接転移する》」

 

 いちいちアースラに寄ってからでは時間のロスが大きい。直接転移してミッドに入国できる許可は既にレジアス中将から貰っているので特に問題になる事も無い。

 それから午前の授業が終わり、昼休みには早退した。

 ……今日の給食はハヤシライスだったのに。

 仕方ないのでとっとと任務を終わらせて昼食を摂ろうと思い、俺は学校を後にした………。

 

 

 

 転移魔法で現場へと到着した俺はすぐに現場を指揮しているゲンヤさんを探す。

 目的の人物はすぐに見つかった。向こうもコチラに気付いてくれた様だ。

 

 [ナカジマ三佐!!現状の説明をお願いします!!]

 

 [ああ!現在俺達の前にあるデパートにテロリストが立て籠もってな。客を人質にとって管理局への交渉をしている所だ]

 

 目の前にいる局員の人達はデパートの周囲を囲っている。

 

 [交渉?向こうの要求は何と?]

 

 [逃走用のヘリと以前、逮捕された連中の仲間の釈放を求めている。要求が呑まれない場合は人質を皆殺しにするとご丁寧に言ってきやがってな]

 

 [人質になっているのは何人ぐらいなんでしょうか?]

 

 [子供が五人、大人が五人の計十人だ。他にいた大勢の客は全てデパートから逃げ出せた…というより逃がされた様だがな]

 

 多すぎる人質は返って足手纏いになるという事か。

 

 [とはいえ、連中は返答が無いまま1時間経つ毎に人質を一人ずつ殺すと脅してきやがってな]

 

 『もう立て籠もり始めて20分経つ』と言われた。

 つまり後40分返答が無いままだと最初の犠牲者が出る事になる。

 ちなみに交渉先は地上本部ではなく本局。逮捕されたテロリスト仲間は本局の魔導師によって逮捕されたらしい。そして本局からの返答は今の所無い。

 

 [テロリストの人数は把握しているのでしょうか?]

 

 [最低でも二~三十人はいると思われる]

 

 「《ダイダロス。デパート内の生命反応はどれぐらいある?》」

 

 「《ちょっと待ってね。…………全部で四十七人分の反応があるよ》」

 

 人質の人数分を差し引くと三十七人か。

 

 [それとテロリストは全員質量兵器を所有してると思われる]

 

 質量兵器……魔力に頼らない殺傷能力のある武器。

 

 [成る程。魔導師の局員がデパートに突入しない理由の一つは質量兵器があるからなんですね?]

 

 [理由の一つ…他に理由があると言う事も分かるのか?]

 

 俺は頷く。

 

 [ええ。現状から推測するに強行突入して人質を全員無事に救い出せるかどうか分からないのが理由の一つ」

 

 ゲンヤさんは黙って俺の推論を聞く。

 

 [二つ目は今言った質量兵器を持っている事。これはシールド系の防御魔法が使えれば大抵は大丈夫ですが…]

 

 一息置いて

 

 [三つ目の理由としてデパート内では魔法が使えない(・・・・・・・)。それ故に質量兵器から『人質や自分の身を守れる保証が無い』という事ですよね?]

 

 [ほう…。どうして魔法が使えないと思うんだ?]

 

 俺はデパートの方を見上げながら答える。

 

 [デパートから魔力を遮断するフィールド魔法の力を感じます。これは…AMF(アンチマギリンクフィールド)ですよね?おそらくテロリスト達が、管理局員達に対応するため、AMFを発生させる装置でも持ち込んだのだと考えます。魔法が使えないなら攻撃も防御も出来ず、魔力に頼らず敵を攻撃できる質量兵器を持っている方が圧倒的に有利ですから]

 

 「(コイツ、現場に到着し俺から聞いた僅かな情報と自分で状況を把握しただけでここまでの推論を立てたというのか!?)」

 

 俺が改めてデパートから視線をゲンヤさんの方に戻すと、何か驚いた表情を浮かべているゲンヤさん。

 

 […で、現状は手を出す事が出来ず、こうやって上との交渉結果を待っている間は、にらめっこする事しか出来ないんだと俺は思う訳ですが…]

 

 [お前さんの言う通りだ。現場対応の魔導師局員は動けねえんだよ。AMFのせいでな]

 

 表情を戻したゲンヤさん。こうしている間にも時間は刻一刻と迫る。

 

 [この一件、とりあえず俺に任せて貰えますか?]

 

 [何?]

 

 ゲンヤさんは眉を顰める。

 

 [俺ならばAMFの発生装置をどうにか出来ますから、この膠着状況を打破できます]

 

 [何か策があるのか?]

 

 [俺一人が忍び込んでAMF発生装置を停止又は破壊します。そうすれば他の局員の人達もデパート内で魔法が使える様になりますから。その後俺が召喚魔法で待機している部隊の人達をデパート内に呼び、そのまま人質の救出とテロリスト達の逮捕に向かいます]

 

 [おいおいお前一人でか!?いくら何でも危険過ぎるだろう!]

 

 [ですがこのままここで無駄に時間を過ごしてても仕方ないです!このままだと本局が返答を出さないまま人質を殺される可能性が高いですから!それに俺には隠密に特化したレアスキルがありますから侵入に関しては大丈夫です!]

 

 ぶっちゃけAMFが発生していても俺には攻撃用のレアスキル天火布武(テンマオウ)がある。後、唯我独尊(オンリーワンフラワー)ならばAMFですら無効化出来るからな。

 俺は必死にこの現場を指揮しているゲンヤさんに頼む。

 

 […本当に出来るんだな?]

 

 俺は無言で力強く首を縦に振る。

 

 […分かった。お前さんに任せる。…無茶はすんなよ?]

 

 [了解!]

 

 ゲンヤさんに敬礼で答え、バリアジャケットを身に纏ってから

 

 「(拒絶観測(キャットボックス))」

 

 俺はすぐさま自分の存在を消す。

 あ、ゲンヤさんの表情が再び驚愕のモノに変わった。

 

 「(それじゃあ、初任務といきますか)」

 

 俺はそのまま飛び立ち、唯一AMFの届いていない屋上に降り立ってからデパート内に侵入した………。

 

 

 

 デパート内は昼にも関わらず静まり返っている。

 …テロリストに占拠されてるから当たり前なんだけどね。

 俺は屋上から一階下りた8階のフロアマップを眺めている。

 階段やエスカレーター、エレベーター等の位置を把握しておく。

 それとこのフロアにテロリストはいない様だ。まあいるとしたら人質のいるフロアとAMF発生装置を置いているフロアの2ヵ所にいるのが妥当なところか。

 というかヘリを要請したという事は屋上から逃げると簡単に推察出来る。なら屋上にも人員割いて守らせておけばいいのに。…無駄に戦闘を行わず侵入できたからこっちとしてはラッキーなんだけどさ。

 そう思いながら拒絶観測(キャットボックス)を維持した状態で階段を下りて行く。

 

 「《ダイダロス。人質のいる場所とAMF発生装置のある場所って分かるか?》」

 

 「《さっき外から生命反応を探知した時には4階と6階に反応が集まってたよ。特に6階に生命反応が多かったかな》」

 

 なら屋上に近い6階に人質が、4階にAMF発生装置があると見て間違い無いか。

 当初の予定はAMF発生装置を抑えた後に召喚魔法で呼び寄せた局員達と合流、人質の救出とテロリスト達の逮捕を行う手筈だったのだが、この配置なら先に人質の救出を行い、唯我独尊(オンリーワンフラワー)を使いながら転移魔法で人質を安全に外へ転移させた後でその階のテロリストを鎮圧…続いてAMF発生装置を抑えに行った方がいいか。この場合俺一人で実行する事になるが正直自信はある。

 それにAMF発生装置と質量兵器を用意してたという事はテロリストの中に魔導師はいないと考えていいだろう。もしいるとしたら質量兵器は保険としてもAMFはむしろ邪魔になるからな。

 

 「《まずは6階の制圧…っと》」

 

 ゲンヤさんが言うには子供も人質になっているらしいからな。出来るだけ早く助けてあげなくちゃ。

 

 そのまま階段を下り、また一つ下の七階に来たがやはりテロリストの影も形も見当たらない。

 テロリストって言っても連中、素人もいいところだろ?

 普通、各フロアに二~三人は見張りやらなんやらを配置しとくべきだ。正直、拒絶観測(キャットボックス)を使わずともここまで侵入出来たぞ。

 こうも簡単に敵を目的地に近付けさせる時点でどうかと思う。

 そのまま下のフロアに下りた所でやっとテロリストの連中を視界に入れる事が出来た。このフロアに居るテロリストの人数は二十人。残りはAMF発生装置の守りについているみたいだ。

 拒絶観測(キャットボックス)で姿を消したまま、出来るだけ足音を出さずに下りてきたので誰も気付きはしない。

 俺はデパートに侵入して5分も経たない間に目的地に辿り着いてしまった。

 人質は揃ってフロアの中央に集められていた。

 人質になっている人達を見る。

 大人五人と子供三人は完全に怯えている様子。

 残り二人の子供だが、一人はキッとした目でテロリストを睨んでいる。しかし他の人質と違い、腕からは血が流れ、殴られた跡も見える。この強気な目がテロリストの気に障ったのか、それともテロリストに立ち向かおうとしてこの怪我を負ったのかは分からないがテロリストに負わされた怪我だという事だけは、はっきりと分かる。

 そしてもう一人はそんな子供を心配そうにしている。ちなみに人質になっているのは大人、子供共に女性である。

 少女相手に手を上げた事が俺は許せなくなる。少女の人質達は見た所俺とほぼ同い年か少し年上、又は年下といったところだ。というか皆どっかで見た容姿だな?

 …まあいいか。そんな事はひとまず置いといて、俺は人質を見張っているテロリストの目の前で拒絶観測(キャットボックス)を解き

 

 「なあっ!?」

 

 驚いた様子のテロリストの鳩尾に一撃を叩きこんで吹き飛ばす。吹き飛ばされたテロリストはそのまま自分の直線上に立っていたもう一人のテロリストにぶつかり、二人揃って目を回し、意識を手放した。

 突然姿を現し、二人のテロリストを倒した俺を見て

 

 「「「何モンだテメエはっ!!?」」」

 

 何やら叫んでいる様子のテロリスト達。まあ大抵こういう場合は『何者だ!?』とか言ってるんだろうな。

 何か初めてすずかと会った時と状況が似てるなあ。

 とりあえず名乗っとくか?間違ってたら恥ずかしいけど。

 

 「時空管理局地上本部『陸士108部隊』所属の長谷川勇紀三等陸士だ。全員無駄な抵抗は止めて速やかに降伏しろ」

 

 「「「管理局だとおっ!!?」」」

 

 ジャキキッ

 

 すぐさま質量兵器…銃を構え、俺の方に銃口を向けるテロリスト達。

 俺は唯我独尊(オンリーワンフラワー)を展開し、人質になっている人達共々イージスで包み込む。

 

 「「「死ねえっ!!!」」」

 

 ガガガガガガガッ

 

 こちらに向かって四方八方から銃弾が迫る。しかし俺のイージスによって阻まれ、一発として俺や人質に届く事無く銃弾を撃ち終えたテロリスト達。

 

 「ば、馬鹿な!?このデパートには俺達が仕掛けたAMF発生装置があるんだぞ!!何でテメエは魔法が使えるんだ!?」

 

 何か言ってるみたいだけどその表情から窺うに大体予想は着く。

 やっぱ驚きますよねー。魔導師対策に用いたAMFが意味を成していないんだから。

 

 [皆さん大丈夫ですか?]

 

 スケッチブックに文字を書いて見せる。

 人質になっていた人達は困惑した表情を浮かべながらも頷く。

 

 [それは良かった。それと…]

 

 怪我をしている少女の側により治療魔法を唱える。

 腕の怪我も殴られた跡もみるみる内に消えていき、僅か十数秒で傷を完治させた。

 

 [これで大丈夫だから]

 

 『他に怪我をしている人は?』と聞いたが皆首を横に振る。なら次はこの人達をゲンヤさん達が待機しているデパートの外へ転移させないと。

 俺はスケッチブックの用紙を1枚切り取って文字を書き、折り畳んで一人の大人に渡す。

 

 [これから貴方達を外に転移させますから、もし外に出たらこのメッセージを現場指揮をとっているナカジマ三佐という方に渡して頂けますか?]

 

 スケッチブックに書いた文字を見せ、頷いてくれたのを確認すると俺はそのまま転移魔法陣を展開し、人質になっていた人達を外に逃がした。

 …よし。これで後ろを気にせず戦える。

 ちなみにこの一連の行動の間、テロリストは必死に銃弾を補充して攻撃してきたが結局イージスを破る事は出来ず、俺がテロリスト達に視線を向けると予備の弾も尽きたため銃を投げ捨て、ナイフを手に持ったところだった。

 

 「…投降の意思が無いと判断。申し訳無いがこれより貴方方を武力行使にて鎮圧する」

 

 腰を深く落とし構える。

 

 「「「やれるもんならやってみやがれえええ!!!!」」」

 

 イージスを解き、一斉に襲い掛かってくるテロリスト達に俺は真正面から突っ込んでいった………。

 

 

 

 ~~ゲンヤ視点~~

 

 新人の長谷川陸士が一人で突入してそろそろ10分が経とうとしていた。

 

 「(やっぱ一人で行かせたのは間違ってたんじゃねえのか?)」

 

 俺はさっきから心の中でそう自問自答ばかりしていた。

 長谷川陸士に関する情報はあらかた把握していた。

 AAAランク相当の魔導師で複数のレアスキル保持者。

 本局が破格の待遇を用意までして欲しがった存在。

 そうまで言われてる長谷川陸士だが、実際にその目で本人の実力を見た事は無いため、どうしても不安が頭をよぎる。

 アイツは俺の妻クイントを救ってくれた恩人だ。歳もギンガやスバルとそれ程離れてはいねえし、出来れば危険な事はしてほしくない。

 

 「(どうする?部隊を応援に向かわせるか?だがAMFが発生してる現状で突入してもろくに力を発揮出来ないだろうし…)」

 

 俺が長谷川陸士を助けるために待機している部隊を動かすかどうか迷っていると

 

 パアアアアアッ

 

 突然魔法陣が浮かび上がる。

 思わずデバイスを構え、臨戦態勢になる部隊の隊員達だが魔法陣から出てきたのは大人の女性が五人と少女が五人。

 その者達はキョロキョロと辺りを見渡し何やら安堵した表情を浮かべている。

 それから、

 

 「あ、あの…ナカジマ三佐という方はいらっしゃいますか?」

 

 一人の女性が俺の名を呼ぶ。

 

 「自分がこの部隊の指揮を任されているゲンヤ・ナカジマですが?」

 

 「こ…これを。先程、私達を助けてくれた局員の方から貴方に渡してくれと…」

 

 女性が差し出してきたのは折り畳まれた用紙。

 俺はその用紙を開き、中を確認する。そこには…

 

 『このままテロリストを鎮圧します。AMFが解けた時点ですぐに部隊を突入させて下さい。その頃には全て終わっていますから』

 

 という一文だけだった。

 アイツ本気か!?当初考案した作戦と内容が変わってるじゃねえか!中にいるテロリストを一人で相手するなんざ、かなり厳しいぞ!

 AMFが解けた時点で終わっているという事は魔法を使わずにテロリストを鎮圧するって事だ。

 いくら何でも無謀だろ!?

 ますます俺に焦りが生まれる。

 

 「ナカジマ三佐。どうかしましたか?」

 

 隊員の一人、ワッキー一等陸士が俺の様子を見て声を掛けてくる。

 

 「…ワッキー一等陸士、部隊はいつでも動かせるか?」

 

 「え?はい、それは勿論…」

 

 「すまねえが今すぐ部隊を突入させようと思う」

 

 「ほ、本気ですか!?デパートにはAMFが…」

 

 ワッキー一等陸士が言葉を言い終える前に例のメッセージが書かれた手紙を見せる。

 長谷川三等陸士がデパートに侵入した後すぐに今回の作戦内容は隊員達に伝えてある。

 だから手紙に書かれている意味を把握した様子のワッキー一等陸士からも表情が曇り始める。

 

 「悪いがこのまま見捨てられねえんだわ」

 

 「…確かに。彼とは自己紹介の折に少し会話しましたが好感の持てる少年でした」

 

 ワッキー一等陸士の言葉に同意する様に頷く。

 

 「じゃあ今すぐ部隊w「ナカジマ三佐!!」…何だ?」

 

 俺が指示を出そうとした瞬間、別の隊員が俺を呼ぶ。

 

 「デパート内から感知されていたAMFの反応が今し方無くなりました。長谷川三等陸士がやってくれたものかと…」

 

 その報告を聞いて俺とワッキー一等陸士は顔を見合わせた。

 まさか!?本当に一人でテロリストを鎮圧しやがったのか!!?

 

 「後は長谷川三等陸士が召喚魔法で我々を呼べば作戦通りに「その必要は無え」…は?と言いますと?」

 

 俺は報告に来てくれた隊員にも例の手紙を見せる。

 

 「っ!?まさか!?長谷川三等陸士は一人で!?」

 

 「多分な」

 

 一応罠の可能性も考えられるが、そもそも立て籠もりを選択したテロリストが局員を中に呼び寄せるとは考えられねえ。

 とすれば長谷川三等陸士がAMF発生装置を停止させたか破壊したか…。いずれにせよこの手紙に書かれている通りテロリスト達を一人残らず倒したという事になる。

 

 「このまま正面から突入。テロリスト達は即逮捕だ。急げ」

 

 「「はっ!」」

 

 ワッキー一等陸士と一人の隊員は俺に敬礼した後、他の隊員達と共にデパート内に入って行く。

 それからしばらくして隊員達と逮捕されたテロリスト達…そして一人で侵入していた長谷川三等陸士が正面玄関から姿を見せた。

 …とりあえず少し説教だな………。

 

 

 

 ~~ゲンヤ視点終了~~

 

 あれからテロリスト達を一人残らず倒し、AMF発生装置を停止させた事で駆け付けてきた局員の人達。

 全員を拘束魔法で縛り、そのまま連行させる。で、俺はというと…

 

 「ったく!!無茶すんなって言っただろうが!人に心配掛けさせやがって!!お前さんは自分の実力に自信があったんだろうけど心配するこっちの身にもなれ!!」

 

 絶賛説教を受けております。

 一発頭に拳骨をもらい、頭がヒリヒリして痛いです。

 ちなみにゲンヤさんの言葉は隣にいる隊員の人が一字一句違わずに通訳してくれています。

 この説教は10分程続き…

 

 「…まあ、お前のおかげで死傷者を出す事無く事件を解決出来たのも確かだ。それに関しては礼を言っておくぜ」

 

 最後に『ありがとよ』と言って説教から解放された。

 確かに無茶過ぎたかな。あらかじめ自分の実力を見せておいたり、レアスキルの効果なんかはキチンと説明しておくべきだった。反省反省。

 とにかくテロリストは連行され、俺は『一人で働いたから先に隊舎に戻って休んでも良い』との事らしい。このままここに居ても仕方ないので隊舎に撤収する準備をしよう。

 そんな時に…

 

 「《ユウ君。人質になった子達がこっち来るよ》」

 

 「《ん?》」

 

 ダイダロスに言われたので辺りを見渡すと確かにさっき人質になっていた五人の少女がこっちに向かって来た。

 

 「「「「「あ、あの…」」」」」

 

 何やら声を掛けてくれる。

 

 「「「「「助けてくれて…ありがとうございました」」」」」

 

 それで頭を下げてくる。

 ひょっとしてお礼でも言ってくれてるのかな?

 

 [ゴメンね。今はちょっとした事情があって耳が聞こえないんだ。出来れば筆談でいいかな?]

 

 スケッチブックの文字を見せた後でスケッチブックとマジックを手渡す。

 五人は驚いた表情を浮かべた後、頷いてくれた。で、その一人が筆談で文字を書いてくれる。

 

 [今回は助けていただき、ありがとうございました]

 

 [気にしないでいいよ。こっちは自分のやるべき事をやっただけだから]

 

 スケッチブックに文字を書き、改めて頭を下げる少女に俺は苦笑して答える。

 

 [それとそっちの君は大丈夫?一応治療はしたけど念のため病院で診てもらってね]

 

 俺は人質になっていた際、怪我をしていた子の方を向いて会話する。

 さっきまで怪我をしていた子はスケッチブックを受け取り

 

 [はい、ありがとうございました]

 

 頭を下げてお礼を言ってくれる。

 

 [それとあの凶悪犯達なんですけど貴方一人で倒したんですよね?凄いです]

 

 [こんな俺でも管理局員だからね。それなりに自分を鍛えているんだよ]

 

 [でもホント凄いですよ。管理局の人達は誰も助けに来れないような状況だってあの人達が言ってたから正直もう殺されるんじゃないかと思うと怖くて…]

 

 今度はまた別の子がスケッチブックを受け取り文字を書いて見せてくれる。

 

 [ゴメンね。もっと早く駆け付けてたら君達みたいな可愛い子に怖い思いさせなかったんだけど…]

 

 「「「「「か、可愛くなんてないですよ////」」」」」

 

 文字を書かずに何か言ったみたいだけど何だろう?顔も若干赤いみたいだし。

 

 「《ユウ君、あっさりとそんな事女の子に言っちゃ…じゃなかった。書いちゃ駄目だよ》」

 

 「《???何で?》」

 

 「《…ううん、何でも無いよ》(シュテルちゃん達、この事知ったら怒るだろうなあ)」

 

 ダイダロスは何が言いたいんだ?正直に答えていけない事でもないと思うんだけど…。

 

 「《長谷川三等陸士》」

 

 念話で呼ばれたので振り向くとそこにはワッキー一等陸士がいた。

 この人、フルネームだと『ワッキー・ヤーク』って言うらしいんだよね。

 …何て言うか…その…少し名前が不憫に思うんだよね。

 

 「《???どうした長谷川三等陸士?》」

 

 「《いえ、何でも。それより何でしょうか?》」

 

 「《ああ、彼女達をそろそろ連れて行きたいんだが良いか?人質当時の状況とかについて少し事情聴取しておきたいんだよ》」

 

 ああ、そういう事か。なら長々と引き留めてはいけないな。

 

 [えっと…これから君達に少し聞きたい事があるってこの局員さんが言ってるから申し訳無いけどもう少しだけ時間を貰えるかな?]

 

 そう聞くと五人共頷いてくれる。

 

 [じゃあ、俺はこれで]

 

 [あっ、待って下さい。お名前を教えて貰っていいですか?]

 

 人質を助けに行った際、一応名乗ったつもりだったけどあの時はテロリストに対してだったし、この子達は聞く余裕も無かったんだな。

 

 [時空管理局地上本部陸士108部隊所属の長谷川勇紀三等陸士です](ニコッ)

 

 「「「「「////////」」」」」

 

 あれ?皆どうしたよ?長かったかな?名前だけ言えば良かったか?

 

 「《ハア~…》(もうこの子達、完全に堕ちちゃったよね。ユウ君、椿姫ちゃんの事言えないよ。ユウ君も絶対ニコポ持ちだよ)」

 

 ダイダロス。デバイスなのに何で溜め息吐いてんの?

 俺が五人の女の子達を見ながらそう思っていると五人共『ハッ』とする。

 

 […もう、いいかな?]

 

 [あ、ありがとうございました長谷川さん。私はカリム・グラシアと申します]

 

 [私はシャッハ・ヌエラです]

 

 [シャリオ・フィニーノです。皆には『シャーリー』の愛称で呼ばれています]

 

 [アルト・クラエッタです]

 

 [ルキノ・リリエです]

 

 五人がそれぞれの名前を教えてくれる。

 ふむふむ。カリム、シャッハ、シャーリー、アルト、ルキノね。

 

 ん?

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 んんんんんんんんんんんんんんんっっっっっ!!!!?

 

 [あの…どうかしましたか?]

 

 [あっ、ううん。何でも無いよ]

 

 …通りで最初見た時にどっかで見た事あると思ったよ。

 バリバリのSts原作登場キャラじゃん!!

 皆子供だから気付かんかったけど確かに原作時の面影が有りまくりだわ。

 

 「《…もういいか?長谷川三等陸士》」

 

 「《す、すみませんワッキー一等陸士》」

 

 ペコリと頭を下げて謝る。

 

 [あの…また会えますか?]

 

 そんな事を書いてカリムが見せて来る。他の四人も同じ事を俺に聞きたそうな表情だ。

 

 […そうだね。また会えるといいね。次はこんな事件の中でなく普通に会えることを期待しておくよ](ニコッ)

 

 「「「「「は、はい!!必ずまた会いましょう////////」」」」」

 

 「《…なかなかやるねお前》」

 

 「《???何がですか?》」

 

 「《いんや、何でも》(コイツ、女の気持ちに鈍いタイプだな)」

 

 五人は顔を赤くしてるしワッキー一等陸士は何か呆れてるし、ちょっとしたカオスな感じがする。

 俺は首を傾げながら将来また会うであろう五人と別れ、隊舎に戻る。

 俺の管理局員としての事件デビューはこうして幕を閉じた………。

 

 ~~あとがき~~

 

 初対面であるにも関わらず僅かな時間でハーレム要因を無自覚に増やす……。

 五人同時攻略もお手の物……。これが勇紀クオリティーなんです(笑)

 てか自分で書いてて何ですが勇紀のフラグ建築能力マジパねえ。

 Fate/Zeroのランサーがもつ黒子の魅了能力を遥かに凌駕してますね。

 


 
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