第1魔 早朝の鍛練
直葉Side
「ふっ、ふっ、ふっ………」
あたしは霜の降りる庭先で竹刀を振っている。
白の道着と黒袴に身を包み、日課である素振りを続ける。
去年、剣道の大会で全国上位の成績を収めたことで、春からは県内有力の高校へと入学が決まっている。
あたしを含む中学の三年生組は自由登校になっているので、平日の今日でもゆっくりと出来る……とはいうけど、
日課の素振りをサボろうとは思わない。
だって、彼が来るから…。
「ふっ、ふっ……よし、終わり」
決めておいた回数の素振りを終えると、縁側に置いておいた水入りのペットボトルを取って、中身を飲み干す。
それで一息を吐いていると…、
「スグ、おはようっす」
「ぁ、刻君。おはよう」
彼、月乃刻君がやってきた。彼は紺の道着と黒袴に身を包み、竹刀袋を肩から下げている。
「今日もよろしくお願いします」
「よろしくっす」
短めだけど挨拶を交わすと、あたしと刻君は自宅の道場へと向かった。
我が桐ヶ谷家にある小さな道場に着くと、あたしと刻君は防具を身に着けて向かい合っている。
彼の防具は
実は彼に頼まれて、毎朝早朝に打ち合っているのだ。
刻君はあたしが全国レベルの腕であることを見込んで、自分の体を鍛え直すつもりらしく、
リハビリが完全に終わった後から模擬試合を始めた。
最初は体を動かし始めたばかりの人に負けることはないだろうと思っていたけど……甘かった…。
「それじゃあ、どこからでも掛かって来るっすよ」
「うん!」
あたし達は竹刀を構える。刻君の様子を窺うけど、まったく隙が見えない。
ジリジリと間合いを詰めながら様子を探るけど、本当に隙がない。ならここは攻める!
「はっ!」
気合いの声を発してから彼に打ち掛かった。
面や胴、籠手を狙いながら振りおろしや突きを行うけれど、まったく当たらない。
得意技の小手面を放っても、それすらも躱される。
いつものように本気を出して打ち掛かり、鍔迫り合いになりながら鍛えた足腰の圧力で果敢として攻めるけど、
それもいなされた…そして、
「っ、めぇん!」
刻君から返しの面を受け、負けました。
「はぁ~……刻君強すぎるよぉ…」
「スグだって強いじゃないっすか」
「でも、一度も勝ったことないし…」
刻君は強いと言ってくれたけれど、あたしは一度も彼に勝てていない。
そう、彼との打ち合いを始めてから一度も、だ。
1回目の時は全国に成績を残したことに慢心し、加えて動けるようになったばかりで、
全盛期でもない彼ならば勝てると高を括ったのが間違いだった。
結果は惨敗……その時に思ったのは、彼は確かに体を動かせず筋肉や力は衰えたのかもしれない。
だけど、あのSAOという世界の中で実戦を潜り抜けた猛者なのだ。
技術や反応速度は上がっていてもおかしくはない。
それに『
高々、中学生の中での全国上位程度では相手にならなかったというわけである。
そしてもう1つ思ったのは、あれ以来試合を重ねる毎に彼はどんどん強く…ううん、
力を取り戻しているのに気が付いた。
段々と彼の力が強くなったり、動きが速くなってきているのを見たからである。本当に凄いなぁ…。
「スグ?」
「え? あ、なに?」
「いや、ボーッとしてたみたいっすから。
早くシャワーでも浴びた方が良いっすよ、汗をかいてるから風邪引いちゃうかもしれないし」
「うん、そうするね」
あたしは刻君に家の中に上がってもらってから、着替えを持って浴室の扉に手を掛けた…っと、その前に…。
「ねぇ、刻君?」
「ん、なにっすか?」
「一緒に入る?」
「ぶっ!? な、なにを言ってるんすか//////!? 早く入ってくるっす///!」
「は~い♪」
あたしは浴室に入って鍵を掛け、そして……、
「……はぁ~、冗談でも良いから入るって言ってくれてもいいのに…///」
そんなことを考えていた。
直葉Side Out
刻Side
「はぁ~~~……///」
今のはやばかったっす、まさかあんなことを言うとは…。
予め出されて置いたお茶を飲んで取り敢えず落ち着く。
スグがあそこまで言うようになるとは正直思っていなかったから、余計に驚いたっす。
「心臓に悪いっすよ…///」
1人悶々としながらもその考えを振り払う。
今日、父さんは仕事で母さんは友達と買い物に行くとのことで、
既に自宅には自分だけだったからスグに朝食に誘われている。
なので、こうして桐ヶ谷家に上がらせてもらっている訳なんす。と、そこで…。
「ふぅ、すっきりした…。刻君、ご飯作るからちょっと待っててね」
お風呂上りのスグが戻って来た。動きやすそうな私服を着ており、キッチンへと立った。
これ、なんてゲームっすか? そんな風に考えてしまいながらも、スグは手際よく料理を作っている。
そして出来上がった料理を受け取り、二人で朝食を取る。
食事を終えて休憩を取ることにしたっす。
「そういえば、今日はALOどうするっすか?」
「そうだね~…。2週間掛かってようやく1周出来たから、
今日はスイルベーン辺りに戻ろうかなって思ってるの。
そしたら次は…」
「央都アルン、っすね?」
「うん」
ボクとスグはレネゲイドになった後、アルヴヘイムの中を駆け巡った。
あのシルフ領でボクの装備を整え、中立域を通り抜けていった。
スグは友達に止められたりしたらしいっすけど、領主さんに「帰ってきて構わない」と言われたらしく、喜んでいた。
そしてつい先日、サラマンダー領付近の中立地帯を越えて、ようやくシルフ領付近に戻ってきたというわけっす。
「ならスイルベーンに一番近い村を目指すってことで」
「決定だね」
ボクとスグは少しの間雑談をし、そのあとボクは自宅へと帰宅したっす。
自宅へと帰り着いたボクは、部屋に戻ると早速ナーヴギアを装着した……そして、
「リンク、スタート!」
ALOへとダイブしたっす。
刻Side Out
To be continued……
後書きです。
はい、今回は刻と直葉の視点でしたね。
次回は明日奈の視点となっていますが、本作ではちょくちょく視点が変わります。
主に明日奈、次に刻と直葉、最後に和人の視点という感じです。
それでは・・・。
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第1魔です。
今回は直葉と刻の視点になります、アニメでの和人と直葉の早朝シーンですね。
どうぞ・・・。