No.538953

SAO~黒戦After story~ EPFinal=0 囚われの英雄

本郷 刃さん

Afterシリーズ最終話、EPFinal=0です・・・これは始まりでもあるので0なのです。
ついにキリトさんが登場します。
稀に見るキリトさんの真っ黒ぶりをお楽しみください・・・(ニヤリ)

では、どうぞ・・・。

2013-02-02 10:26:20 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:19957   閲覧ユーザー数:18910

 

 

 

EPFinal=0 囚われの英雄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

俺は意識を覚醒させ、目を開き、周囲の状況を確認した。そこは巨大な鳥籠の中だった。

石畳のようなベッド、テーブルに椅子がある。

近くには扉があり、すぐ側には暗証キーの入力装置のようなものもある。

その先には巨大な樹木があり、ここは枝の先にあるみたいだな。

まぁ、立たされながら体を鎖で雁字搦めにされて吊るされているのが不便なくらいか…。

とりあえず、右手と左手を振ってウインドウを出現させようとするが、開かない。

しかし周囲の様子を見るに現実世界ではないのは確かだ、ならばここが……。

 

「『アルヴヘイム・オンライン』か…」

 

茅場と作業中にみかけたゲームの名前を思い浮かべる。

すると気配を感じ取り、扉の先を見やった。

誰かが歩いてくる、金髪に緑や白の衣装を身に纏い、その背には翅がある。

 

「おや、お目覚めのようだね。茅場晶彦を打ち倒し、SAOをクリアした英雄・キリト君……いや、桐ヶ谷和人君?」

 

扉を開けて、その男は喋りながら鳥籠に入り込んできた。

 

「……俺の名前を知っているということは、警察機構やSAOの対策チームかなにかの人間だろうが、前者は違うな…。

 なら後者の、研究者というところか?」

 

「へぇ~、見事なまでの洞察力だね…」

 

男は感嘆の声を漏らした、それにしてもコイツの顔……歪んでいやがる。

面には出していないが、その心の内はよく分かる…。

 

「ここが『アルヴヘイム・オンライン』の中だと言うのなら、アンタは差し詰め妖精の王、オベイロンってところか?」

 

「その通りだよ。僕がこのALOの主、GMにして神、オベイロンだ」

 

神、ねぇ……本当に歪んでいやがるな…。

 

「俺の名前だけ知っておいて、自分の名前を教えないのは礼儀に欠けるんじゃないのか?」

 

「それもそうだね…。ゲームの中だけど、特別に教えてあげよう…僕の名は須郷、『須郷 伸之』だ。

 『レクト』に勤めているよ」

 

『レクト』、総合電子機器メーカーのあのレクトか…。

そこでオベイロン…いや、須郷は仮初の笑顔を浮かべていたが、それを歪な笑みへと変え、宣言した。

 

「システムコマンド。ペイン・アブソーバー、レベル8に変更」

 

言い終えると、俺に近づき拳を握って、

 

―――バキッ!

 

「がっ!?」

 

俺を殴りつけた。こんな表情をする奴だ、攻撃を加えるとは思っていたが痛みがある。

 

「どうだい? 久しぶりの痛覚は?」

 

歪んだ笑みを浮かべながら問いかけてきた須郷。それに対し俺は…、

 

「く、くく…」

 

「? おい、なにを…」

 

「くくくっ、あっははははは!」

 

「な、なんだ!? なにがおかしい!?」

 

俺は笑い声を上げた。須郷はその様子をみて狼狽している。

 

「そうか、痛覚か、面白い…。

 SAOでは不快感だけで痛みを感じたことが無かったから、戦いにおいても完全には満足出来なかった…。

 ゲームの中でも痛みを与えるとは……面白いな…」

 

「っ、笑っていられるのも今の内だ! システムコマンド! オブジェクトID『エクスキャリバー』をジェネレート!」

 

俺の言葉に引き攣りながらも、須郷は再び宣言した。

そこに金色に輝く刀身を持つロングソードが出現し、須郷はそれを手に取った。そして、

 

―――ズブッ!

 

俺の体に突き刺した。勿論痛みはあるが、どうやらペイン・アブソーバーのレベル8とは10分の2程度の痛みらしいな。

この程度の痛み、修行での痛みに比べれば大したものじゃない。

 

「その程度か?」

 

「くそっ!」

 

須郷は次々を様々な剣を召喚し、俺の体に突き刺していく。

さすがの俺も久しぶりの痛みによって、嫌な汗が滲む。

須郷も落ち着いたのか、椅子に座ると溜め息を吐いた。

 

「まったく、こちらは予想外だったよ…。まさかキミがここに来ることになるとはね。

 まぁ、キミだったのが幸いしたよ…これが誰とも知れない奴だったならともかく、

 SAOをクリアした英雄・キリト、茅場先輩を倒したキミを僕が屈服させれば、

 僕が茅場先輩を超えたということになる!」

 

そう叫ぶ須郷。茅場のことを先輩と呼ぶ辺り、何かの先輩後輩という関係だったのだろう。

だが茅場という天才の壁にぶつかり、歪んだわけか…。

 

「それに、キミを屈服させれば…明日奈君も僕に靡かざるを得なくなるさ…」

 

「っ!?……明日、奈…だと? どういうことだ…」

 

奴の口から明日奈という名前を聞き、俺は身の内に沸き起こる黒い念を押し留めながら、出来るだけ冷静に問うた。

 

「僕は明日奈君の婚約者なんだよ…キミと共にいた、あのアスナ君のね…」

 

「っ、き、さまぁ!」

 

このクズが、明日奈の婚約者だと?

ふざけるなと言いたいところだがこれで合点がいった。

何故明日奈が囚われの対象になったのか、

何故俺を含む300人もの人間を捕らえたのか…前者は彼女を言いなりに為せるため、

後者は研究の材料にする為だ!

 

「明日奈君は目覚めたが…なぁに、キミのことを話せば、言いなりになってくれるだろう」

 

「明日奈が……目覚めた…?」

 

「先程、病院から連絡があってね。彼女が落ち着いたら、

 僕が会いに「くは、くはは……あははははは!!!」な、なんだ!? 今度はなんだ!?」

 

奴から明日奈が目覚めたことを聞き、俺は自分と茅場の策が成ったことを確信し、笑い声を高らかに上げた。

須郷は再び狼狽えている。

 

「俺がここに来たのは当然だ、なんせ俺自身が彼女と俺の意識プログラムをすり替えたんだからな」

 

「そう、か…おまえが!」

 

須郷は椅子から立ち上がると憤怒の形相で俺に刺さる剣を抜き取り、俺の体を刻み始めた。

俺は茅場のことは伏せ置いた、このことは言わない方が良いからな…。

それにしてもいつまで斬り続けるのか…。気が済んだのか、5分程で斬るのをやめた須郷。

そのあと、なにか連絡が入ったのか奴は扉を開けると外へと出ていった。

 

「さて明日奈は大丈夫だといいけど……明日奈を頼む、みんな…」

 

俺はリアルへと帰還したであろう明日奈と仲間達へ、想いを馳せた。

 

 

 

2週間程が経過した。あれからも須郷に殴られ、武器で刻まれ、悪態を吐かれなどしたが、大したものじゃない。

まぁ、ペイン・アブソーバーのレベルを6にされたくらいである。

取り敢えず、最初で刺激を与えすぎたのであまり刺激しないようにする為に、痛みに苦しむ芝居を打った。

それで奴は満足するようで、俺は内心ほくそ笑む。

そういえば2、3日程前の奴はかなり苛立っていたっけ。

なんでも明日奈の両親に、彼女との結婚の話しを延期させられたらしい。ざまぁないな(笑)

 

 

 

さらに3週間、つまりSAOクリアから1ヶ月と1週間が経過した。

まぁその間も殴られ刻まれなどしたが、相も変わらずに芝居を打った。

そんな折りだった、今日も須郷からの暴行を耐え抜き、一息吐いたその時だった。

 

「まったく、いつまでこんなところに居ないといけないんだよ…」

 

『ふむ、ならばもう少し待ってくれたまえ。もう少しでGM権限くらいなら動かせるようになると思う…」

 

「早くしてくれよ…。奴の目的を暴かないことには何も……………ん?」

 

『どうかしたのかね?』

 

俺は一体誰と会話をしているのだろうと思い、声の聞こえた石畳のベッドに目を向けるとそこには……、

 

「……どうやってここに来たんだ? ていうか、どうしてここにいるんだ、茅場…」

 

なんと、茅場晶彦がベッドに座っていた。

コイツあれだろ? なんか自分の脳を焼き切ったとか言ってなかったか?

いや、ここにいるということは成功したのだろうか…。

 

『キミの考えている通りだよ、キリト君。

 上手く成功したようでね、意識の残照やエコーというが、実質私自身に変わりはないよ』

 

俺の表情を見て察したのだろう、そう言い放った。

 

「まぁ、上手くいったようでなによりだよ。

 それでGM権限を動かせるようになるっていうことは、お前カーディナルにも見つからないのか?」

 

『その通りだ。既に私はカーディナルによる消去から完全に免れている。

 GM権限さえ手に入れば、いつでも脱出可能で反撃できるが…』

 

なんか物騒なこと言ってるぞコイツ…。ふむ、まぁ、だが、しかし……うん…。

 

「動くのはまだ後だ…。あいつの目的を掴んで、全てを白日の下に曝け出し、今までの痛みを全て返して、

 社会的にも抹殺し、二度と俺や明日奈の前に現れなくしないと気が済まない…」

 

『………キミは悪役の方が向いていると言われるんじゃないのかい?』

 

「……良く言われる…」

 

自分でも特に明日奈への情が異常なまでに高いことは理解している。

お生憎と、俺は善も悪も掲げていないんでね…。

 

「それに俺は明日奈や仲間がここに来ると予想している…。須郷が明日奈に接触しているそうだからな」

 

『なるほど、十分にありえるね…。ならばその時に?』

 

「ああ…。権限を利用して、最大限のサポートをする」

 

俺の言葉に茅場は頷き、俺は言い放った。

 

 

 

さらに2週間後、SAOクリアから1ヶ月と3週間が経過した日。

相変わらずの暴行を受けたあと、それらの行いを行使できるようになったGM権限で写真のデータに収め、

俺と茅場は互いにほくそ笑んだ。

そして、茅場からある情報が齎された。

 

『キリト君、なにやら面白いプレイヤー達がいるようだ』

 

茅場は宙吊りにされている俺にある写真データを見せた。

そこに写っているのは、俺だった。

なんでもこのゲームの5人のプレイヤーが、肩車をして多段ロケット方式に各自を飛ばし、

俺の姿の撮影に成功したらしい。

幸いにも茅場の姿は捉えられていない。

 

『この写真が現在ネットに流出し始めているようだ…。

 これが元SAOのプレイヤーやキミの仲間の誰かが目を付ければ……分かるね?』

 

「(ニヤリ)ああ……反撃の時だ…」

 

見てろよ、偽りの王様…。反撃の狼煙を上げてやるよ…。

 

 

 

そして1週間後、SAOクリアから2ヶ月が経過して、彼女は……この世界にやってきた。

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

キリトさんが黒い、真っ黒以上に漆黒以上に闇黒レベルで!

 

そして本作では茅場の覚醒が非常に早いです、僅か1ヶ月と1週間ですからね。

 

これは捕まったのがキリトであることと、最後の対話の時に手を打っておいたということでご理解ください。

 

あとはこの段階で分かった方もいると思いますが、ルナリオの武器と容姿はそういうことですよ。

 

それと最初からこういう流れにするつもりだったから後悔も反省もない、文句も受け付けない!

 

あとキリトの容姿ですが、SAOから目覚めた直後の髪の長い和人をイメージしてください。

 

それでは『黒戦After』シリーズを読んでくださり、ありがとうございました!

 

明日は投稿せずに、明後日から続編の『ALO~閃光の妖精姫~』を投稿いたします。

 

ではまた続編で・・・。

 

最後に下種郷に一言・・・無理ゲー頑張れwww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
25
6

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択