No.538856

幻想郷帰宅日記 第十一章

wasarattelさん

第11章目でございます

遂に地上へと脱出を果たした光助少年ですが、彼に待ち受けていたのは・・・・なんと突然の死でした!
一体どうなってしまうのか!?

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2013-02-02 00:11:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:472   閲覧ユーザー数:471

第十一章「驚愕!突然の死!」

 

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・・・・・・ビュォァアアアアアアアア!!!(風の音)

 

光助「・・・・ぇぁあああああああ!!」

 

ゴァアアアアア!!!(風の音)

 

空「大丈夫ぅ?」

 

ブワァアアアアアアアアア!!!(風の音)

 

光助「は、はぃいいい!」

 

空さんの体にしがみ付きながら必死に答える。

辺りの風の影響で聞こえるのかは不明だが。

 

俺は今、地霊殿の地下と地上を繋ぐとてつもなく長い間欠泉を通っている。

地底から抜け出せる唯一の道を心優しい妖怪達に案内して貰ってここまで来たはいいものの・・・

 

ビュゴワァアアアアアアア!!!(更に強い風の音)

光助「ギャァアアアアアアア!(狂気」

 

"こんな"スピードで通り抜けるとは正直思っていなかった・・・・

てっきりもっとゆっくりか、それよりもう少し速い程度かと考えていたのだが、意外とアカン。

もうこれは80キロ辺りは出ているだろうスピードだ。

しかも俺は・・・生身。

 

光助「し、正直っ、しぃっ、しいいいぃ死ぬぅううう!」

 

・・・・しかし、これ程のスピードで飛び続けているというのに一向に上に見える出口穴が近付かない。

俺の予測していたスピードで飛んでいては間に合わないのだろうか。

ならば頷ける・・・・というか仕方が無い。

 

すぐ傍を駆け抜ける黄色く光る岩肌を見ながら考えていると、前抱っこ体勢の俺に空さんが叫んだ。

 

空「お・・・・そろそろ出口だよ!!」

光助「は!りょ、了解ぃぃぃぃ!」

 

ようやく出口に近付いたのか。

衝撃に備え、空さんの体に顔をうずめる。

俺よりも体の小さな女の子に顔をうずめるというのも中々どうして小恥かしいのであるが、この非常時であるからして仕方がないのだ。

そんな事を言うと、今まで妖怪といえども女の子に頼りっぱなしではあったのだが・・・・。

やれやれ。

 

ギュむッ

 

空「ぇあぅん」

光助「へ?・・・・あ!」

 

衝撃に備えてその以外に華奢な空さんの肢体を抱き締め、傍から変な声が聞こえて顔を上げた瞬間・・・・

眼前に広がる絶景。

 

 

光助「そ、外だぁああああああああ!!」

 

 

幻想郷の到着と共に見た景色より壮大な大自然が目の前に広がっていたのだ。

 

新鮮に見える青空・・・

それもそうか・・・あのほぼ暗闇の地底で行動していれば当然と言えば当然か。

何はともあれ、どうやら無事に間欠泉を抜けた様で・・・

 

 

・・・・あれ?

突如として体を襲う奇妙な浮遊感。

それに伴う変な汗と嫌な予感。

 

光助「あ、あの、ちょっと・・・・・・・空さん!」

頬を落下途中の小さな風に叩かれながら叫ぶ。

 

光助「・・・へっ?」

身体の軽さに気付いた時には空さんが体を離した後であった。

 

どうやらあの脱出の衝撃で空さんと体が離れてしまったのだ。

この大空の上で飛行能力が無いのは俺だけ・・・・・つまりは後は"下に堕ちるだけ"しか選択肢は無い。

 

光助「ちょ、ちょっとすいません!!・・・・空、さん・・・・・!?」

唯一の頼りである空さんに叫び掛ける。

 

が・・・

 

 

 

空「あれ、何してたんだっけ?」

 

 

 

忘れてるぅう!

首を傾げて笑うその烏少女につい一瞬声が出なくなる。

嘘だッ!今さっきまで自分が抱えていた人間(この私)を忘れてしまったというのかッ!!

忘れるの早ッ!

流石、鳥類の特徴(カラス)を良く捉えた妖怪だと言えるだろう。

大昔に教育テレビで観た『モズのはやにえ』を頭の片隅に再生してしまう。

モズは捕らえた獲物を気の枝に刺して取っておこうとするのだが、つい忘れてしまうというあれだ。

・・・・ってそんな場合じゃねぇや!

 

光助「空さん!空さん!!」

親鳥を呼ぶ雛鳥が如く必死に数センチ先の空さんへと助けを求める。

しかし当人(当鳥)はというと・・・

 

 

空「まぁいっかぁ~・・・さとり様~」

 

 

まぁいっかッッ!?

遠くに見えるはパタパタと間欠泉に帰っていく黒い羽。

先程はとても暖かく、そして今とても非情であるその背中が遠く見え・・・

 

光助「あぁああ!ちょ、まっ・・・・・・・!!」

俺を確実な死へと誘う。

 

 

 

光助「うっそやぁああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごしゃっ

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む・・・

 

なんだここは・・・

 

とても暖かくて、どこか寂しい感覚だ・・・

 

 

 

不思議な感覚と共に俺は目を覚ました。

体を起こして辺りを見渡すと、懐かしい森林と岩肌が見え隠れする場所に居た。

 

・・なんだ、地上に着いたのか?

 

どうやら見た所、地底から無事に地上に戻れたらしい。

先程は酷い目に遭ってしまったが・・・・・・・・・

 

・・・あれ、何で俺は助かったんだ?

確か空さんに体を離されてしまって真下に落ちた筈であるのに、ピンピンしている。

おかしいとは思ったが・・・でもまぁ状況が状況なので結果オーライと言った所だろう。

 

ふと思い出すと、あの空さんってすぐ忘れてしまう所が本当に鳥の妖怪なんだなとしみじみ思う。

でも、実際に鳥の噂通りに『すぐ忘れる』なんて初めて見た・・・。

・・・・・・ま、こうして地上に着けたのだから素直に感謝しておこう。

そして何処へ行ったのか・・・既に帰ったのか・・・

 

そんな事を考えながら、とりあえず周囲をもう一度見渡す。

 

見た感じは今まで幻想郷に来てから通った事の無い、開けた場所である。

広い敷地にはサッカー場の芝生の様に短い草が生え揃っており、所々に低くて大きな岩が点在する。

まるで近所の自然公園といった感じだ。

 

 

さて・・・・これからどうしよう。

最初に幻想郷に来た状態と同じ、一人ぼっちになってしまった。

 

今までの行動目的を反復すると『里に行って指定日時の5日間まで匿ってもらう』というもの。

しかし、アクシデントで来たとはいえ地底の地獄街道で意外にも暖かく迎えて貰ってしまった。

このまま待つのもいいかとは思ったが、地下に居たら紫さんが見つけにくいだろうかと思ったのだ。

・・・それに、あの妖怪達の中で過ごすのも少し精神的に参ってしまいそうだからというのもある。

これでいいんだ、とは思いながらも少し寂しくなってしまった。

 

 

 

・・・ヒュルルルル・・・・

 

 

 

うん?

 

突然、何処かから何かの落下音が聞こえてきた。

 

ふと上を見ると、晴れた青空に点が一つ見える。

それは徐々に大きくなっていき、地上に落ちてくる様に見える。

まだ落ちてくる"それ"程警戒しようという気持ちは持たず、ただそこで黙って見ていた。

が・・・

 

 

その小さな点が『人型』で、しかも物凄い速度で"こちら"に真っ直ぐ向かって落ちてくるのを確認した時・・・・

 

 

光助『あ・・・やべぇええええ!!』

しきりに腰を上げて背後にダッシュしようと試みるが・・・遅かった。

 

ヒュルルルル・・・・・ドム!!

光助『オウフッ!』

 

その人型の物体はこちらの振り向きざまの背中辺りに真っ直ぐドスン!と堕ちてきたのだ。

堪らず奇声を上げて頭から倒れる。

 

・・・あんなスピードで落ちて来てこの程度の衝撃で済むとは・・・。

キスメのドリフアタックのお陰で鍛えられたせいかな?

なんて思いながらつっ伏体制で黙り込んだ。

すると・・・

 

 

?「目標捕獲ってね」

光助『・・・・・・・へぁい?』

 

 

突如として上から聞こえてきた声に反応して頭を捻りながら上げる。

そこには俺の背中に腰掛けた少女が居た。

勿論ファーストコンタクトを試みる。

 

光助『・・・あなた、誰です?』

小町「あぁ、ちょいと急で悪かったね・・・あたいの名は小町、小野塚 小町さ」

こっちも仕事だからね、と付け加えて頭を軽くかいた。

 

小野塚 小町。

このキャラクターも初めて見る。

見た感じ、昔にTVで観た少林寺的な映画の師範用道着みたいな青と白の着物を纏っている少女である。

髪は燃える様に赤く、両サイドをツインテールにしていた。

名乗ってくれるのは有り難いのだが、なんとも急な挨拶である。

 

・・・しかし、その背中に背負った巨大な"鎌"を見た瞬間、嫌な予感が走る・・・

 

光助『もしかして・・・死神?』

小町「あ?ああ、分かる?そう、死神さんさ」

 

どうやら彼女は何処ぞでもよく見掛ける"鎌"を持った"死神"のようだ。

 

この幻想郷にはお化けも妖怪も存在しても一向に不思議ではない・・・

しかし、ここ数日で見てきた妖怪にはここまで露骨に死の匂いを発散させる様な妖怪は居なかった気がする。

・・・人食いとか吸血鬼とかも居た気がするが・・・

 

光助『・・・・・・それで、死神さんが俺に何かご用でしょうか?』

小町「あーその件なんだけど、こっちの仕事が立て込んでるってのに急に依頼が入ってね・・・」

ついさっきだったかな?と付け加える。

 

・・・・この間、俺は小町さんなる死神と話しながらずっと考えていた。

何故、"今の"俺の目の前に"死神"が現れたのか・・・

この妙に体の軽い"感覚"とさっきからずっと違和感がある自分の発するこの"声"も・・・

もしや・・・

 

 

小町「その顔、分かってんじゃないか・・・・そう、あんたは死んだんだよ」

 

 

・・・・・・へ?

 

な、何を言っているんだか。

だって俺はここに居るじゃないか。

ほら、体も触れるし。

 

こんな事を自分に一生懸命言い聞かせるが、心の中では確かに"おかしい"と感じていた。

それを裏付けるが如く、小町さんがとある方向を指して言った。

 

小町「だってあれ、あんたの体じゃない?」

光助『へ?』

 

小町さんがひらひらと指す方向を見ると・・・

 

 

 

そこにはうつ伏せで転がる学生服を着た少年がが転がっていた。

 

 

 

えっ・・・まさかアレが俺なのか・・・・?

恐る恐る近付いて触ってみようとするものの・・・

触ろうとした手がスーッ、と透けていってしまう。

 

光助『・・・!?』

 

何度手をかざして振ってみてもその体には何の影響も与えられない。

おかしいおかしいおかしい・・・

 

まさか本当に・・・

そう狂気的な心情に陥った心を何とか回復させ、小町さんに向き直る。

 

 

光助『・・・・・死んでますね』

小町「そうさ」

 

やはり・・・あの高さから落ちたというのに助かる筈無いんだ。

空さんから離れてそのまま真っ逆さまに落ちて・・・首からいったんだろうか。

でも見た所外傷は無いから、ショック死でもしたんだろう・・・

 

いきなりの事態に叫ぶ事もせず、ただ呆然としていた。

まさか死んでしまうとは・・・・

 

小町「まぁショックさねぇ」

がくりと項垂れる俺を見ていた小町さんが人事の様に呟き、横の岩にすとんと座った。

俺はこれからどうすれば・・・・

 

 

 

 

 

燐「あー、どっかに良い死体が転がってないかねぇ・・・」

 

 

 

 

 

そんな燃え尽きたボクサーの様な心情を胸に愕然としていると、

てくてくと台車の様な荷台の様なものをガラガラと引っ張って歩く人影が見える。

あの緑色の服、赤髪のおさげ、猫耳・・・間違いない。

 

地霊殿の時に俺の背中にファイヤーボール(マンマミーヤァ)を投げつけて来た猫妖怪のお燐さんじゃないか。

 

・・・これはチャンスか!?ワンチャン!?ワンチャンあるで!?

既に死んでいる身ではあるが、何となくお燐さんなら何か打開する(つまり死を)方法を知っているのではないかと踏んだ。

もう魂的な俺は外に出てしまっているが、『魂』を『体』戻す事は出来るんじゃないか・・・・!?

・・・・確証は皆無だが、今は人を(いや妖怪を)選んでいる場合ではない。

駄目元で叫ぶ。

 

おぉい!こっちですよ!!

 

 

・・・・・・あれ?

 

妙な感覚に気付いた。

いくら大きな声を出そうと口を開けて叫んでも何も聴こえない。。

そう、声が出ないのだ。

 

小町「仕事の都合上"ああいうの"に関わっちゃ面倒だから声は出ない様にしたよ」

 

何ですって!?

もしかしたら振り向いてくれるかもしれないという小さな希望を持ち、体を精一杯動かしながらアピールをする。

が、お燐さんはというと・・・・

 

 

お燐「あ、これさっきの人間・・・・やっぱ死んだか」

やっぱって何!?

 

 

お燐「まぁあんな死相してて助かる訳ないわな・・・・あそこまで妖怪を味方に付けてるとは驚いたけどねぇ」

死相!?

 

 

そう呟くと荷台をカシャンと置き、俺の体をよっこらせと引き摺ると荷台に乗せた。

まさか・・・・俺の遺体を火葬だか何だかしてしまうんじゃ?!

いや、彼女は火を操る感じの妖怪だったから有り得ない事は無い。

そんな俺をよそに、俺の物言わぬ死体を嬉々とした表情で荷台に乗せて運び去ってしまったのだ。

 

 

お燐「まぁ予想通りの収穫だわ」

 

 

待ってぇえええ!マイバァアアディィイイ!!

声無き叫びを漏らしながら天に万歳する俺をやれやれと言わんばかりの表情で観ていた小町さん。

 

光助『・・・・・・ハッ、声が戻った!おーいい!』

いつの間にか元に戻っていた声を張り上げて、お燐さんに呼び掛けるも・・・・

最早、間欠泉付近で見失ってしまっていた。

 

光助『うぅ・・・・ち、ちくしょう・・・』

小町「あの猫も居なくなったし、声は戻しといたよ」

光助『・・・・何故っ!!』

小町「さっきも言った様に関わると面倒くさいんだよね、仕事も間延びするし」

光助『自分の体ぐらい助けたっていいでしょう!?』

小町「え?いいじゃないか、大体あの後なんてカラスに食われるか、腐って通行人の邪魔になるくらいなんだし」

光助『お、鬼っ!』

小町「ハハハ残念、あたいは死神さ」

 

やり取りにケタケタと笑う小町さんを半無きで恨めしそうに見上げる。

・・・なんてこった!

心で小さく悪態をつき、青空を見上げる。

 

小町「・・・・ほいじゃま、ぼちぼち行こうかね」

さて、と膝をぽんと叩いて小町さんなる死神が立ち上がった。

 

光助『え・・・ど、何処へ!?』

小町「無論"あっち側"」

 

あっち側というのは多分・・・・・あの世の事だろうか?

死んだのだからそいう事なのだろうが・・・。

 

いや!しかし納得はいかない!

ここで納得してはいけない気がする!!

 

小町「仕事だっていってるだろ?早くしなよ・・・」

光助『で、でも俺!この世界の人間じゃないんですけど!?』

小町「あぁそういうの関係無いから」

 

サラッと切られてしまう。

唯一の「僕はここの人間じゃないからノーカン」という必殺言い訳は見事に砕かれた。

 

 

小町「ほら、何時までもグダッとしてないで・・・・しゃんとする!」

ガッ!

光助『ぅぶぇっ!?』

 

急に小町さんが俺の首の後ろ辺りを掴んで引き始めた。

幽霊だから綿菓子の様に軽くなったのだろうか、俺の体は小町さんに片腕一本で引き摺られていく。

その先は、地上から離れた空の上へ上へと。

 

光助『ちょ、ちょっとまってぇええええええ~・・・・』

効果音ならきっとズルズル、と小町さんなる死神に引きずられて弱々しく叫んだ。

 

 

なんと俺は、帰宅前に幻想郷で死んでしまったのだ。

 

 

 

 

 

-おお光助よ、死んでしまうとはなさけない・・・・・続く?-

 


 
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