No.53401

一刀の帰還 ~絆は離れ得ぬ縁(えにし)に変わる~

Zero Pさん

二作目です!
魏ED後のIfストーリーです!
え?んな何度もでたネタはお呼びでない?そんな事は知らん!!
書きたいから書くんじゃあ!!
あ、ちなみにオリキャラで管輅ちゃんを出しております~

2009-01-21 20:55:57 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:23647   閲覧ユーザー数:15967

私は街の中を一人歩いていた。

春蘭と秋蘭に強制的に一日休暇を貰ったのだ。

だが、足取りは重い。楽しい筈が無い。

一人で歩いたって楽しくもなんとも無い。

ふと私は隣に、消えた彼の姿を見た。

彼はとても優しく微笑んでいた―――。

 

 

 

 

 

真・恋姫†無双 魏外史伝 ~絆は、離れ得ぬ縁(えにし)に変わる~

 

 

 

 

 

一刀が消えてから、もう三年も経っていた。

この三年は、とても平和で穏やかな時間だったが、其処には、何かが足りなかった。

胸にポッカリと穴が開いた様な感覚。

どうしようもない、孤独感。言い表せない、虚無感。

それが今も私を苦しめていた。

 

「ふぅ…」

 

そこまでを考え、私は思考を一時停止する。

 

「所詮、私も女なのね…」

 

未練がましい自分を嘲笑う。

一刀が居なくなってからの私は酷く情緒不安定だった。

お陰で部下には散々迷惑をかけてしまった。

 

「でも、あれは向こうが悪いのよ…」

 

最近の事である。

三国が合同で酒宴を開いていた時の事だった。

一刀の事を忘れる為、酒を浴びる様に飲んでいた。

それを観ていた雪蓮は、未だ踏ん切りをつけられない私に一言こう言った。

 

『いい加減、未練がましいわ』と。

 

その言葉を聞いた私は激昂し、雪蓮の頬を思い切り叩いていた。

その後の事は酔っていて、良く覚えていない。聞いた話では、その後大喧嘩になったらしい。

部下達が止めるまで、ひたすら罵り合いながら凄惨な叩き合いをしていたらしいのだ。

次の日、体中が痛かったので、多分そうなのだろう。

只、あの時の雪蓮の言葉は今でも頭の中を反復する。でも…

 

「簡単に割り切れる程…私、強くないのよ…」

 

大切なものを失う悲しみを、乗り越える強さを私は持ってはいなかった。

一刀、逢いたいよ…。

 

「ふふっ…泣き言まで出てきちゃった…。私も、もう終わりかしら…」

 

ふと、目頭が熱くなるのを感じた。

流石に、こんな往来の前でみっともない。

私は恥を晒す前に目を擦ろうとしたその時だった。

 

「涙を拭う必要はないぞ」

 

と、路地から声が聞こえた。気になった私は、路地へと足を進めた。

私は路地に入り、人の声がする方に向かった。奥に誰かいるようだった。

 

「貴女…誰?」

 

薄暗い路地には、風呂敷を広げ水晶を睨んでいる、小さな少女が鎮座していた。

 

「ふぉっふぉっふぉっ、ワシの名は管輅じゃ」

 

小さな少女は管輅と言うらしい。って…え?管輅?

 

「管輅って…まさか貴女、占い師の…?」

 

「そうじゃ、その管輅じゃ。ま、巷じゃインチキ占い師と揶揄されているがのぉ」

 

「…それで?貴女は私が誰か、知ってて呼びかけたの?」

 

「うむ。御主、曹操じゃろ?」

 

恐れもなく私の名を口にする辺り、きっと本物なのだと私は思った。

 

「ええ。で、さっき涙を拭う必要は無いと言ったが、それはどうして?」

 

「御主とて解っていると思うが?…簡単じゃ、悲しいのを何故我慢する?」

 

「私は王だから…」

 

私はそう言いながらも、どもってしまう。これは所詮強がりにしか過ぎない。

 

「王とて人。涙を流す事は当然じゃ」

 

「みっともないじゃない…」

 

それが本音だった。悲しいからといって泣くのは子供のすることだと、私は思っている。

だが、目の前の占い師は違う方向から、私を攻撃してきた。

 

「ふむ。では感動したりした時の涙は恥か?」

 

「それは…」

 

そんな事は無いと思うけど…。やっぱり泣くのは子供だと思うから…。

 

「感情を面にする事は恥ではない。押し止めて潰れて、自棄になる方がよっぽど惨めじゃぞ?」

 

年下の人間に此処まで言い包められた私は、段々と苛立ってきていた。

 

「…何も知らない癖に」

 

「うむ。御主の事情など知らん」

 

「知った様な事、言わないでよ!!」

 

私はついに癇癪を起こしていた。だが、管輅は臆する事無く、むしろ笑顔で拍手をしていた。

 

「良いぞ、その調子じゃ」

 

「ッ!!」

 

相手の調子に乗せられた事に気付き、赤面した私は俯く。すると、また唐突な質問が来た。

 

「…御主は他者を殺める時、何を思う?」

 

「え…?」

 

「怒りか?憎しみか?それとも歪んだ愛情か?」

 

この占い師の言いたい事が解らず、苛立たしげに返した。

 

「…それが何だというの!!一々勿体つけないで!!」

 

「これら全てを感情と言う」

 

「…!!」

 

私はハッとした。ようやく理解できた。管輅は続ける。

 

「御主は感情に任せるのはみっともないと言った。が、御主は人を殺す時、何も考えぬのか?何も思わぬのか?さっきワシにみせた、御主のアレは何だ?あれは無意識のモノか?」

 

「………」

 

私は何も言えなくなってしまった。すると管輅は首をふるふると横に振った。

 

「そんな筈は無い。どんな人間とて、感情は在る。少なくともさっきの御主は苛立ちや腹立たしいと言う感情があった筈じゃ」

 

「………」

 

「つまりじゃ、王だからと言う理由で、感情を封殺する理由にはならん。成立せんだろが。それこそ子供じみた言い訳じゃ」

 

「…なら、どうするのよ。大声で泣けって言うの?」

 

言われるだけ言われた私は拗ねる様に尋ねた、だが返ってきた答えは、

 

「それは御主の自由じゃ、ワシは知らん」

 

言うだけ言っておいて、それは無いだろうと思ったが、正直これ以上ボロを出したくない。

私はこの場を引き上げる事にした。なるべく平静を装いつつ…ね。

 

「言いたい事はそれだけ?ならもう私は行くわ」

 

すると管輅は思い出したように、

 

「おっと、ちょいと待てぃ。一つ重要なことを言い忘れていたわい」

 

「…何?」

 

私は振り返らずに答える。管輅は気にする事も無く始めた。

 

「『終端に導かれ運命の彼方に消えし、彼の者。満月の夜に、再びこの地に降り立つであろう。』」

 

「え…そ、それって…!?」

 

私は驚いて振り返った。管輅は気にせず続ける。

 

「『祈りを捧げよ。さすれば彼の者、導きの光と共に降臨するであろう。』」

 

「一刀の事を言っているの…?」

 

おそるおそる訊ねてみた。するとフッと笑った管輅は、

 

「さぁな?ワシはその様な奴は知らぬ。だが、敢えて助言をするならば、別れた場所にて祈りを捧げる事じゃ。そうすれば上手く行くかもしれんの」

 

「それは確かなの…?」

 

私は縋るような気持ちで訊ねた。すると今度はキリッとした顔の管輅が、

 

「占術とは、当たるも八卦、当たらぬも八卦じゃ。その時にならんと分からん」

 

「そう…」

 

当たり前だ。所詮は占い。管輅の占いは間違いなく当たるとの評判だ。だが、それに縋ろうなんて、

私も甘いものね…。だが管輅は、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

 

「だが、運命の賽は投げられた。心がけ次第では未来など簡単に変わる」

 

「分かったわ。礼を言う、褒美を取らせよう。何を所望する?」

 

とりあえず御礼はしなくちゃね。最近ホント情緒不安定だったから、見えるものも見えなかったし、

目を覚まさせてくれたって意味で。それを聞いた管輅は一瞬逡巡したものの、こう答えた。

 

「では、甘味処の善哉を一杯所望しよう」

 

「お安い御用だけれど…そんな程度で良いの?」

 

遠慮しているのだろうか?私が質問すると、

 

「構わぬ、代金は元々要らぬのだ。久々にあの店の善哉が食ってみたくなったのじゃ」

 

と、笑顔で言った。基本的に無欲なのだろうか。

 

「分かったわ。では直ぐに手配させるわ」

 

「うむ。…って、ぬぉ!?この気配は!!」

 

突然、周囲の様子を気にし始める管輅。すると何とも間延びした声が聞こえてきた。

 

「あー♪管輅様発見ー♪」

 

「あの子は…?」

 

「また御主かっ!!くっ!!ワシの追っかけじゃ!!一緒に寝て下さいなどと言うのじゃ!!」

 

ワタワタとしている管輅に非常に嗜虐心がそそられた。私は舌なめずりしながら、管輅を見た。

 

「へぇ~…」

 

「な、なんじゃ…その目は…」

 

後ずさりする管輅、ますます可愛い…!!

 

「良く観れば、中々可愛いわね…」

 

顎に手をそっと触れてみたら、飛び跳ね脱兎の如く逃げ出した。

 

「ひぃ~!!此処にも居ったかぁ!!」

 

「あ、ちょっと!!褒美の件は、どうするの!?」

 

「要らん要らん!!ワシは耽るぞ!!さらばじゃ!!」

 

常人では考えられない速さで、荷物を纏め上げる管輅。

 

「あ~ん♪待って~♪管輅さまぁ~♪」

 

「ひー!!」

 

追っかけの女の子に追われ、涙目になりながら逃走した管輅。

しばらくしたら、背中が見えなくなった。

 

「な、何だったのかしら…」

 

あまりの展開に呆然としながらも、気を取り直した私は、

 

「今日はちょうど満月。騙されたと思って、行ってみようかしら」

 

あの場所に行く事を決心した。

此処は一刀と分かれたあの場所。

そこには私しか居なかった。

此処に来ると、独り言が漏れる。

 

「ふぅ…此処に来るのは久しぶりね…」

 

三回は覚えている。一年ごとに此処に訪れていたから。三回とも隠れて泣いた。

 

「私、やっぱり貴方が居ないと駄目みたい。貴方の言う通りよ、淋しがりなのよ…」

 

最後の一刀の台詞。分かっているなら何で、私を一人にしたのか。胸が締め付けられた。

 

「それなのに一人にして…勝手に消えて…」

 

穏やかな顔で消えていった。悲しみが溢れそうになった。

 

「恨んでやるって言ったのに…消えちゃって…」

 

済まなさそうな顔をしていた。運命の残酷さを呪った。

 

「何で笑顔で消えるのよ!!ばかぁ…!!ばかっ、ばかっ、ばかぁ!!」

 

涙が溢れた。止まらなかった。止められなかった。

 

「何とか言いなさいよ…!!一刀ぉ…!!」

 

天に向かって私は叫ぶ。おそらく今の私の顔は相当酷いだろう。

 

「私も皆も、アンタの事を待ってるのよ!?」

 

不条理を涙で訴えるこの姿。まさしく子供。でも、今くらいは良いと思った。

 

「女の子を泣かせるのは最低なんでしょう!?だったら…!!」

 

「お願いよっ…!!帰って来てよっ…!!一刀ぉ!!!!」

 

私は喉の奥に鉄の味を感じた。叫びすぎて出血したのだろうか。その時だった。

 

「っ…!?こ、この光は…一体!?」

 

一瞬、目の前が光に包まれた。目がようやく慣れてきた時、其処に誰か居るのが見えた。

 

「…?誰っ!?」

 

問いかけると、信じられない声が聞こえてきた。

 

「…い、いててて」

 

「ッ!!」

 

私は走り出した。

 

「…ん?か、華琳…?華琳なのか…?」

 

「馬鹿ッ!!」

 

振り向いて驚いた顔に、思い切り張り手をかましてあげた。

見事なきりもみ回転をしながら倒れた一刀。

 

「痛ってぇ!?い、いきなり何を…って華琳…?」

 

「ひっく…!!ひっく…!!ば、馬鹿ぁ…!!」

 

私は一刀に抱きついて、泣きじゃくっていた。

 

「華琳…」

 

そんな私をあやす様に、一刀が頭を撫でてくれた。

 

「一刀の馬鹿ぁ…!!」

 

「ゴメンな、華琳…」

 

申し訳無さそうに頭を撫でてくれる一刀に私は尋ねる。

 

「っ…ホントに…ぐすっ…一刀なのよね…?」

 

「ああ!」

 

笑顔で答える一刀。

 

「ホントにホント…?」

 

「ああ。俺は、魏軍北郷隊隊長、北郷一刀だ!」

 

「………何で戻ってこれたの…?」

 

本物だと確信した次は疑問を投げかけた。すると、

 

「分からない…でも、華琳と俺の絆が再び巡り合せてくれたんじゃないかな?」

 

なんてクサイ事を言ってくれた。

 

「それなら、もっと早く戻ってきなさいよ…!!」

 

私は拗ねながらそう言った。

 

「ゴメンな」

 

「…今度消えたら許さないから。絶対に許さないんだから…!!」

 

「ああ、約束する。絶対に消えたりはしない」

 

でも、言葉だけでは信用できない。

 

「此処で誓いなさい。私に」

 

すこし顔を上げてみた。すると一刀が意地悪な笑みを浮かべながら、

 

「どうやって?」

 

と言った。私は恥ずかしくなって、顔が真っ赤になった。

 

「そ、そんな事は自分で考えなさいっ!!」

 

「え~?俺分かんないな~♪」

 

「馬鹿っ…知らないっ」

 

意地悪く顔を覗き込んでくる一刀にフイとそっぽを向く。すると一刀は照れながら、

 

「ははっ…嘘だよ。え~…ゴホン…北郷一刀は曹孟徳に、生涯添い遂げる事、永遠の愛を此処に誓います」

 

「んっ…。私も誓うわ…。貴方は私のモノよ…。はむっ…」

 

ちょんと、軽い口付けの次は少し深めに舌を入れた。が、そこで止めた。

 

「んっ…、か、華琳…」

 

不満が残っているようだが、勿論私だってこのまま終らせるつもりは無い。

 

「ふふっ…、続きは城に帰ってからよ…。暫くは皆に寝かせてもらえないわね」

 

「ま、マジかよ…」

 

「三年も放っておいた天罰よ、覚悟しておきなさい♪」

 

「そっか…腹括るか…」

 

呆然としながらも、決意を固める一刀。

でも、本当に死ぬかも知れないわね…。適度には休ませてあげましょ。

 

「貴方は私だけのモノよ、分かってるわね?」

 

「ああ、分かっているよ…。華琳」

 

「何?」

 

一刀に呼びかけられ振り向く私。

 

「ただいま華琳…!」

 

帰還の証の口付けを貰った。お返しに、

 

「んっ…、んふっ…お帰りなさい一刀!!」

 

帰還を認める口付けを贈った。お帰り…一刀。もう、二度と離さないんだからね!!

 

 

此処に二人の絆は縁へと変わり強く深く結ばれた。

愛が運命を打ち破る。そんなこの物語は後世まで伝えられる事になった。

ちなみに、妻の曹操を含め、魏の武将全員を孕ませた彼は、別の意味で英雄となった。

 

 

一方その頃―――。

 

二人の追いかけっこはまだ続いていた。

 

「ひぃ~!!助けてくれ~!!」

 

「待って~♪管輅様~♪今日こそ、一緒にチョメチョメしましょ~♪」

 

「そんな趣味はないと言っておろうが~!!」

 

彼女たちの愛の逃避行(?)は、まだ続きそうです。

 

~完~


 
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