No.533020

真・恋姫無双 ~新外史伝第90話~

とうとうこの物語も90話まで来ました。

蜀VS漢の戦いが始まりますが、口上については色々考えましたがこういう形になりました。

都合主義となっているかもしれませんが、よろしくお願いします。

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2013-01-17 21:25:23 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4758   閲覧ユーザー数:3908

両軍が澠池に出陣したが、先手を取ったのは漢であった。漢は予めこの地を決戦の地にしており、先

 

に真桜と沙和を出陣させ、陣の構築等をさせていたので、一刀たちが到着する前には山とか活用して

 

堅固な陣を造り上げていた。

 

雛里は城に籠ることも考えたが、兵を運用する際、動きが制限される恐れがあったので、敢えて城を

 

出て城郊外に陣を構えたのであった。

 

そしてこれを見た援軍に来た蓮華は、

 

「これが鳳雛の本当の実力ね…私たちで対抗できそうなのは冥琳か穏、それに亞莎、貴女くらいだ

 

わ」

 

「そ、そんな冥琳様や穏様に並べられるとは、そんな恐れ多いです…」

 

亞莎は蓮華が尊敬する二人に並べる程の能力の持ち主と言って褒められたことに恥ずかしがっていた

 

が、しかし蓮華は雛里がここまで隙の無い陣を造り上げているのを見て、侮っていた漢の評価を少し

 

変える必要があると感じていた。

 

そして両軍揃っての軍議が始まった。お互いの挨拶が終え、雛里が現状を説明した。

 

「現在、我々の軍勢は漢からは6万、呉からの援軍が1万。蜀10万に対してこちらは7万という状

 

況です」

 

雛里からの説明を聞いて、皆は顔を顰めた。いくら地の利があるとは言え、数字の上から言えば不利

 

な状況であることは間違いがないことだから。

 

「それで龐統様はどうするおつもりですか?」

 

蓮華の代わりに亞莎が質問すると

 

「敵は遠征軍、私たちは、今はこのまま動かず対峙し、呉の方にもゆっくりと休んで貰います」

 

「何!そんな悠長な事をしてどうする!呉も蜀に攻められているところ、そちらの要請で兵を出して

 

いるのだ。少々の犠牲を払ってでも決戦に挑むべきではないのか!」

 

雛里の回答に蓮華は烈火のごとく激怒した。呉が蜀に攻められ危機に瀕しているのに、何故悠長に対

 

陣などしなければならないのかと。

 

「では孫権様、そこまで言い切るのでしたら、決戦に挑む、何か良い案をお持ちでしょうか」

 

「……それは」

 

「では、そちらで何か良い策をお持ちなのですね」

 

雛里の指摘に蓮華が返答に困っていたところ、亞莎が素早く助け舟を出した。

 

雛里も流石に蓮華とここで口論する気は無かったので、亞莎の質問に対し素直に答えた。

 

「秘密保持の為、それはまだ言えませんが、ある事を待っています。それが来た時が私たちの勝負の

 

時です」

 

雛里の不完全であるが気迫に満ちた答えに、皆は何か必勝の法があるのだと悟った。

 

「敢えてその内容はお聞きしませんが、その時期を教えていただきませんか。こちらにも都合があり

 

ますので」

 

「そうですね…取り敢えずはここ一月以内くらいに来るかと」

 

「……分かった。まずは協力する、しかし一月以内に動きが無ければ我が軍は撤退を辞さないことを

 

覚悟しておいて貰おう」

 

「ありがとうございます。呉の皆さんの協力感謝しています」

 

蓮華がそう告げると雛里は素直に謝辞を述べた。

 

そしてしばらく打ち合わせをした後、蓮華たちは陣を離れた。

 

「雛里ちゃん、期限を切って大丈夫なの?」

 

桃香は雛里からある事について事前に話を聞いていたが、ただそれは何時来るのか雛里自身にも分か

 

らない事であるので、期限を切ったことについて不安になっていた。

 

しかし雛里は桃香の心配を余所に涼しい顔をしながら

 

「大丈夫です、桃香様。真桜さん、沙和さん、以前言っていた方の確保は出来ていますか」

 

「それは問題なく確保してるで」

 

「皆、給金上げると言ったら喜んで付いて来てくれたのー」

 

雛里は真桜と沙和に陣の構築と同時にある人物たちの確保を厳命していた。そして二人はその命を果

 

たしたので

 

「真桜さん、沙和さんありがとうございます。これでこの戦、勝つ可能性が増えました。では今から

 

その方たちと会わせていただきますか?」

 

雛里はそう告げると意中の人物たちと面会するために、この場を離れた。

 

打てるだけの手は全て打つ。此処まで準備万端に策を施して、もし失敗するとすれば、それは自分に

 

運がないのか若しくは自分より智謀が優れている人物がいるとしか言いようがないと雛里は自分にそ

 

う言い聞かせていた。

一方、進軍中の蜀では洛陽に進軍する上で要衝の地である澠池がすでに漢の軍勢で固められている報

 

を聞き、一刀たちは偵察隊が持ち帰った情報を分析していた。

 

「これはそう簡単に突破できそうにないな…」

 

「そうですわね…」

 

一刀と紫苑は、偵察隊が持ち帰った澠池の防御陣の略図を見て呟き、そして翠が

 

「なあ朱里、お前の知恵でどうにかならないのか?」

 

「流石にこれだけではすぐにいい案というのは思い浮かびませんね。それに軍略面では私より雛…、

 

龐統ちゃんの方が優れていますので…ただここまで来て、私も負ける気はありませんが」

 

「だが向こうは防備を固めているが、我々の疲労と兵糧の枯渇を狙っているのか、それとも城から出

 

て来ていることは決戦を望んでいるのか狙いはどちらであろうか」

 

「うーん、それは勿論私たちの疲労とか狙っているんじゃないかな?向こうの方が兵も少ないし」

 

星の意見に蒲公英は素直に思ったことを答えたが、この意見は単純であるがあながち間違いでも無か

 

ったが。

 

「それ違うと思う……多分、決戦に挑んできていると思う」

 

しかし、蒲公英の意見とは逆に決戦に挑んできていると主張したのが、普段軍議では話をしない恋で

 

あった。

 

「理由は?」

 

「……何となく」

 

恋の意見に皆は苦笑したが

 

「恋殿の野生の勘を馬鹿にするとは、どういうことですかー!」

 

「恋さんの勘は私たちにも計り知れないところがあります。ですので、恋さんの言うことには一理あ

 

るかと」

 

恋の介添えでも音々音と、今回の戦いに従軍している月がそういうと否定する材料もないので納得す

 

るしか無かった。

 

「愛紗はどう思う?」

 

一刀は桃香や雛里の事をよく知る愛紗に聞く。

 

「……桃香様は、武の心得はほとんどありませんが、ああ見えても自分だけ後方の安全なところに控

 

えようとしません。そして今回、出陣なされているということは決戦に挑みに来ていると考えた方が

 

よろしいかと思います」

 

恋の勘とは別に、桃香をよく知る愛紗の言葉を聞くと皆、納得の表情を浮かべた。そして

 

「分かった。決戦の地、澠池に向けて進軍する」

 

一刀はそう告げ、再び澠池に向け進軍を始めたのであった。

そして蜀軍は偵察隊の報告を聞いてから5日後には、漢軍が澠池の防衛線を張っている陣が見えると

 

ころまでやって来た。

 

そして一刀たちは陣を引いた後、兵を星や朱里たちに任せ、紫苑、翠、そして愛紗を引き連れ、漢の

 

陣を間近まで見に来た。そして敵に急襲されないよう紫苑の弓騎隊100騎も同行していた。

 

すると桃香も鈴々たち将や少数の兵を引き連れ、一刀たちの前に表れたが、

 

「桃香様…」

 

桃香の表情は、愛紗が今まで見た事も無いような厳しい顔であり、そして厳しい口調で一刀を問い詰

 

めた。

 

「侵略者北郷一刀、あなたは無断で国境を越えました。これは立派な侵略行為です」

 

「それは事実だから認めるよ。でも漢という国を滅ぼす為には必要な行為なんだよ」

 

「なぜ私たちを滅ぼす必要があるのですか!」

 

「答える必要が無いと言いたいところだけど…、敢えて言ったら君たちの愚行を止めに来たと言うべ

 

きかな」

 

「愚行って…それはどういう意味ですか」

 

「じゃ聞くけど、今まで君たちがやって来たことを……胸を張って立派だと言えるかい」

 

「……」

 

桃香が黙ると一刀は言葉を続け

 

「それに漢という国も400年近く続いた。ここ近年、宦官や外戚達は民を顧みず、権力や富を欲し

 

いままにしてきた。そして無実の董仲穎が謀反人として殺されようとした時に漢という国は何もしな

 

かった。そのような国に未来があると思う?そしてそんな漢という国の歴史に幕を閉じても誰が責め

 

ることができる?」

 

一刀の口調は温和だが、言っている内容が過激で桃香も唖然としていたが、しかし気を取り直し反撃

 

の気力を奮い起こした。

 

「そ…そんなの貴方の勝手な言い分です!私は貴方に理想を否定され、どうすればいいのか分からな

 

くなった。そして力を付けなければ誰にも相手されない…いいえ、誰も私を認めてくれない!でも力

 

さえあれば…皆、私を認めてくれる。そして漢を立て直すことできれば、私を否定した貴方を倒すこ

 

とだってできるの!」

 

桃香がそう叫ぶと一刀の後ろから悲しい表情をした愛紗が大声で

 

「いい加減、目を覚まして下さい、桃香様!」

 

「あ、愛紗ちゃん…」

 

「敢えて桃香様と呼ばせていただきます。桃香様、貴女はまだそのような事を考えているのです

 

か…」

 

「…貴女の悔しい気持ちはよく分かります。しかし…理想を捨てた時点で私たちは負けたのです!」

 

「…そしてそんな無理をしている貴女を見るのも辛いです。そしてこれ以上の流血は必要ありませ

 

ん。潔く降伏して下さい!」

 

「愛紗ちゃん、それはできない。ここで降伏したら今まで私たちがやって来た事は何だったの!」

 

「馬鹿愛紗ーー!これ以上お姉ちゃんを虐めるななのだ!!」

 

桃香が愛紗の降伏の説得を拒絶するとその横でそれまで黙って聞いていた鈴々は、桃香を虐めている

 

様に見える愛紗に対して怒りをぶつけるように一騎打ちを挑みに前に出てきた。

「なあ愛紗、お前の代わりに私が出ようか?」

 

「すまん、翠。ここは私に任せてくれぬか。あやつの事も何とかするのも私の役目」

 

翠は愛紗の心中を察して、鈴々の一騎打ちを代わろうとしたが、愛紗は自分の役目と言い切り、鈴々

 

の前に愛紗が立ちはだかると

 

「愛紗!鈴々と勝負するのだ!!」

 

「鈴々、この戦い、負けるわけにはいかんのだ!いざ勝負!!」

 

「愛紗、鈴々の身の丈八尺の丈八蛇矛、簡単に受け止められると思うななのだ!いっくぞぉー!!て

 

ぇぇぇぇ~~~~~いっ!!!」

 

「参る!うぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」

 

鈴々の突撃に愛紗がこれに吠えながら応え、そして二人の力と力の激突に火花が散る。

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃぁーーーーーーーっ!」

 

「はああぁぁーーっ!」

 

僅かの間何十合と刃をぶつけ合い、二人は地からでお互い捻じ伏せようとするが実力が拮抗している

 

為、簡単に決着が付かない。そしてまだ緒戦でこのような一騎打ちで鈴々を失うことは今後の戦いが

 

非常に厳しくなるので

 

「このままだとお互い決着が付かず、鈴々ちゃんが怪我をするかもしれません。それに戦いはまだ始

 

まったばかりで鈴々ちゃんのおかげで士気も上がりました。桃香様、今回はここまでとして、引き揚

 

げの合図を鳴らしても宜しいでしょうか?」 

 

「うん。雛里ちゃん引き揚げの鐘を鳴らしてくれる」

 

雛里が桃香に進言すると桃香も了解して、雛里は付き添いの兵に引き揚げの鐘を鳴らすよう指示し

 

た。

 

ジャーン! ジャーン! ジャーン!

 

引き揚げの鐘が聞こえると鈴々は不満そうな顔を隠そうともせず

 

「うー残念なのだ。でもお姉ちゃんの命令だから仕方ないのだ」

 

鈴々は最後に愛紗の態勢を崩そうと足元に丈八蛇矛を振るが、愛紗もそれを後ろに跳んで避け、距離

 

を取るとその間に

 

「愛紗――!逃げるのではないのだ!お姉ちゃんの命令で仕方なく引き揚げるのだ!!」

 

鈴々は一方的に愛紗にそう言って引き上げると、愛紗は苦笑しながら部隊に戻った。

 

「愛紗、お疲れ様」

 

一刀は無事帰って来た愛紗を労り、そしてこちらも陣に戻った。

 

そして澠池の攻防戦が、こうして幕開けしたのであった。

 


 
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