No.532961

帝光中学バスケ部【はじまり】

みやびさん

帝光中学時代の話です。物語は中学一年生から始まります。そのためしばらく黄瀬くんの出番はないような気がします。どうぞよろしくお願いします。

2013-01-17 19:12:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:769   閲覧ユーザー数:750

 
 

「君名前は?」

 そう言ったのは、僕たちとは違う才能があるかもしれない、と言った赤髪の人物。妙な威圧感がある。

「黒子テツヤです」

「そう、それじゃあ黒子くんは明日から僕たちと一緒に練習をしよう」

 赤髪の人物は黒子に向かってにこやかに言い放つ。

「ちょっと待てよ」

 そこで二人の会話に割って入ったのはさっきまで黒子と一緒に練習をしていた青峰だった。

「なに?なにか問題?」

「その、こいつはまだ3軍で……」

 そう、黒子は今日の2軍昇格試験に落ちたのだ。自分たちはすでに1軍に在籍しているため3軍と練習が同じという訳にはいかない。

「ああ…そういうこと。だったら僕たちが彼に合わせたら問題ないよね」

 1軍に在籍している者は“指導”という立場で2軍や3軍の練習に合流してもいいということになっている。実力アップを図るためと、合同練習を通して力を発揮する選手がいるかもしれないから。赤い髪の人物はそれを利用しようとしているようだ。

「ちょっと待つのだよ赤司、僕たちって……」

「うん?もちろんその中に緑間も入ってるよ。あと紫原もね」

 ずっと後ろで成り行きを見守っていたチームメイトである緑間が口を挟む。赤い髪の人物、赤司は本人たちの了承なく緑間ともう一人紫原もメンバーに入れていた。その中にはもちろん今まで黒子と一緒に練習していた青峰も入っている。彼はそのことに気付いているらしく嬉しそうな表情を浮かべていた。

「えー、オレも?」

 少し面倒くさそうに口を開いたのは紫原だ。

「なにか文句ある?」

「文句なんて特にないし!!」

 赤司の一言に紫原は何も言えなくなってしまう。彼だけではなく緑間も物申すことが出来なかった。まるで迫力に押されたように。

「はい、じゃあ決まり」

 にこやかな表情を浮かべながらポンっと両手を合わせる。

「あの……」

 彼らの会話に入るのを申し訳なさそうにしながら控えめに声を掛けたのは黒子だ。

「ああ、そういえば自己紹介まだだったね。僕は……」

「知ってます赤司征十郎くんですよね。あと、緑間真太郎くんと紫原敦くん」

 と黒子は自分の側に居た順に次々と名前を言う。

「驚いた、よく知ってるね」

「一年で1軍に入った有名人ですから」

 驚く赤司だったが2軍や3軍にいる者にとって、一年から1軍に入った彼らのことを知らない者はいない。それだけ有名なのだ。

「そう、有名人……うん悪い気はしないね」

 本来ならそういう言い方は好まないのだが、今日初めて会った黒子に言われると不思議と悪い気はしなかった。赤司の性格を知っている青峰は少しヒヤヒヤしながら見守っていたがどうやらその心配はなさそうだった。

「あの、ひとついいですか?」

「なんだい?」

 本人は気付いているだろうか、黒子と喋る時の赤司の表情が優しいものとなっていることに。普段の彼はそういう表情は滅多にしない。青峰や緑間や紫原に対しても。 

「練習を僕に合わすってどういう意味ですか?」

 1軍の事情について知らない黒子にとってその質問は当然のことだった。彼がバスケ部に入部して以降1軍にいる者が3軍と一緒に練習するなんてなかったから。

「僕たちと一緒に練習するのはイヤなのかな」

「そうじゃなくて……その、怒られませんか?」

「怒られる?誰に?」

 入部してすぐに1軍に入った赤司たちにとって黒子の考えは判らなかった。だから何故そういうことを言うのか理解出来ずにいる。

「監督や先輩方に……」

「あ!そうか!!うん、それは大丈夫だよ」

 ここでようやく赤司は黒子の言いたいことが判った。自分がやろうとしていることが1軍にいる者にしか知らされていないことに。

「そ、そうですか」

 大丈夫という言葉を聞いてホッと安堵する。どうして3軍と一緒に練習出来るのかは知らされなかったが今は赤司の言葉を信じることにした。 

「うん、黒子くんは優しいね」

「いえ……その、ありがとうございます」

 優しいのは自分より赤司の方だと思った。1軍にいる者達にとって3軍と練習しても得られるものはないと思っていたから。

「うん、明日からよろしくね!」

「は、はい!!」

 別れ際赤司と黒子は握手を交わした。

 

 

「……で、どういうつもりなのだよ」

 体育館をあとにした緑間はすぐさま赤司に問いただした。

「何が」

「さっきのあれは」

 赤司らしくない、と思ったからだ。

「ああ、別にどうもしないさ。ただ彼と一緒にバスケがしたいと思っただけだよ」

 緑間の問いにクスリと笑う。自分でもどうしてそう思うのか判らなかった。ただ彼の力を引き出せればいいと考えていた。赤司にとって初対面の相手に入れ込むのはかなり珍しい。

「赤ちんがそういうの珍しいし」

「そう?……まあ確かに珍しいかもな。黒子テツヤか……あれはなかなか面白い逸材かもしれないな」

 赤司はそう言うと、さっきまでいた第3体育館の方へ視線を向けて笑みを浮かべた。

 

 

 
 

 
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