No.531565

真・恋姫†無双RELOAD  プロローグ

karuraさん

天竺を目指し旅をする玄奘三蔵はある日、不思議な鏡の力によって異世界へと飛ばされる。

TINAMI初投稿です、よろしくお願いします。

2013-01-14 08:48:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1766   閲覧ユーザー数:1692

 

 

 

 天地入り混じる、混沌の時代。

 人と妖怪が共存をする地、桃源郷があった。

 しかしある時から、妖怪たちは正気を失い人々を襲うようになった。

 異変の元凶である牛魔王の蘇生実験を阻止するため、三蔵一行はは西、天竺へと向かっていた。

 

「三蔵三蔵三蔵~~~、腹減ったよおおおおおおお」

「うるせぇ、腹減ったんなら寝てろ」

「うぅうう~~八戒ぃ~、次の町にはまだ着かねぇのかああ~~」

「後数日と言ったところでしょうか……もう少し我慢して下さい」

「あ~あ~、うるせぇクソ猿だな全く」

 

 白龍のジープにもたれかかり、四人は荒野を走っていた。

 三蔵は紫煙を燻らせながらなにもない遠方を睨む。

 

 いったいどれだけ進んだのだろうか。

 長安を出発してよりもう1年にもなる。

 各地で妖怪を退治して回っているが、一向に天竺へと着かない。

 距離があるのは分かっていた、予定の範囲内ではあった、だが―――

 

「バーカバーカ、エロガッパー」

「んだとテメー! ぶっ殺すぞ」

「はいはい、喧嘩はよしましょうね―」

 

「~~~~っ、静かにしろや! 遠足じゃねえんだぞ!」

 

「「はいっ!」」

 

(……一体いつまでコイツらといなきゃいけねぇんだよ……全く)

 

 変わり映えのしない毎日。

 ゾロゾロと湧いてくるイカレた妖怪。

 毎度毎度同じやり取りをする仲間達。

 

 1年もたてば流石に嫌気がしてきた。

 終わりの見えない旅に苛立ちを感じながら、それをごまかすように煙草を吸う。

 三蔵は風が煙を攫ってゆくのを呆と眺めていると……山上に人影が映った。

 小さく舌打ちを打つ。

 

(……またか)

 

 悪の波動によって正気を失った妖怪たち……ではない。

 

「ヒャッハー、見つけたぜ三蔵一行!」

「お尋ねものの三蔵一行だあああああ、牛魔王様の手土産にしてやるぜえええええ」

「ぶっ殺せーー!! 奴らはたった四人だーーー!!」

 

 牛魔王の蘇生実験を成功させるため、牛魔王の側の妖怪たちにより三蔵は賞金首となっていた。

 殺した者には報償があるとあって、大陸中の妖怪たちが一挙して襲いかかってくる。

 

「オラオラオラーー死ねやーーーー」

「たっく、やかましい」

 

 懐から拳銃を取り出す、幼少期よりすっかり手に馴染んだそれで照準を合わせ……引き金を引く。

 

 ―――ガウン

 

 派手な音と共に鉛玉が吐き出され、寸分たがわず妖怪の額に命中する。

 撃たれた妖怪はひざから崩れ落ちるようにして倒れる。

 何度も見た光景であり何度もやった行為であった。

 僧ではあるが仏道に帰依する気は無い。

 自分の身を守るためであれば、仏でさえも殺すのが玄奘三蔵という人物であった。

 

 ワラワラと湧いてくる妖怪を迎え撃つため、車を止め悟空達は車から飛び出した。

 

「よっしゃーーやってやるぜえええええ!!」

「相変わらず悟空は元気いいですねぇ、私も頑張りますか」

「ガキだからなー、元気だけが取り柄なんだろ」

 

 三人は一目散に妖怪へと向かっていき、武器を振るう。

 

「おりゃおりゃおりゃあああああああ」

 

 悟空は如意棒を振り回し、飛びかかってくる妖怪たちを吹き飛ばす。

 自身より身体の大きい輩も苦にしてはいない。

 その力はまさに剛力。

 並みの妖怪たちとは格が違った。

 

「それじゃあ私も……ハァッ!」

「あーらよっと」

 

 八戒は気功術を操り妖怪たちを薙ぎ倒し、沙悟浄は鎖鎌を使って首を狩る。

 血潮が宙を舞い、首が地に落ちる。

 襲いかかってくる輩に容赦はしない、それが三蔵一行のルールであった。

 

 ジープの中で一人、三蔵は三人の様子を眺め見る。

 手伝う気はこれぽっちも湧いてこなかった。

 

(今回の敵はそんないねぇな……だる)

 

 弾丸の節約である。

 いつもいつも撃っていれば弾の代金も馬鹿にならない。

 有象無象に金を払ってやる気はサラサラ無かった。

 

「あー! 三蔵、サボってるー!」

「なーにー!? あんの生臭坊主、雑用ばっか俺らにやらせやがって」

 

 悟空と悟浄が大声で三蔵を非難する。

 八戒は苦笑いを浮かべながら敵を倒してゆく。

 

「やかましい奴隷ども! キリキリ働け!」

 

「奴隷ってなんだー! 奴隷ってー!」

「ぶっ殺す! アイツこの後ぜってーぶっ殺す!」

「アハハー、むしろ今から反転して三蔵を襲いに行きませんか? 私たちもともと妖怪さんサイドですし」

 

 軽口を叩きながらも三人は敵を掃討していった。

 後に残ったのは死体だけ。

 数十人は居た妖怪たちは全て骸へと変わってしまった。

 

 三蔵は終わったのを確認して三人の元へ近づいて、

 

「おう、お疲れ」

 

 と労った。

 

「三蔵ふざけんなよ! 死ね! いっぺん死ね!」

「そうだそうだ! 一人だけ楽しやがってー!」

 

 ギャーギャーと煩い二人を無視して妖怪の死体を見る。

 ……一つだけ、動く影があった。

 

「ぐ、……ぐぐっ。ハンパじゃねーな、三蔵一行。どうやら俺達じゃ勝てね―ようだ……」

「ほう、わかってるじゃねぇか。挑む前に気付くべきだったなクソ妖怪」

 

 生き残りを殺すためにソイツの元まで一人で歩いてゆく。

 

「三蔵―、そいつの始末はお前に任せた―。最後くらい働け―」

「そうだそうだー!」

「チッ、言われなくてもぶっ殺す」

 

 近くまで歩くと先ほどしまい込んだ小銃を再び取り出し、妖怪の眉間へと狙いを定める。

 

「なにか言い残したことはあるか?」

 

 なんのことはない、ただの暇つぶし。

 たまに行う三蔵の趣味の様なものであった。

 最後の遺言くらいは聞いてやろうという、三蔵なりの優しさ?である。

 

 瀕死の重傷を負ったのか、妖怪は出血した脇腹を押えている。

 苦痛に顔を歪めながら、妖怪は笑いだした。

 

「くっ……くくくくく」

「……? なにがおかしい」

 

 三蔵は問い返す。

 この状況で、この男に何が出来るとも思えない。

 どのような攻撃でもすぐさま対処できる自信がある、それだけの力は持っていた。

 

「いやぁ、……っこのまま死ぬ訳にはいかねぇなぁと思ってな」

「……残念な知らせだがお前は死ぬ。俺に脳みそを吹っ飛ばされておしまいだ」

「けけけ、そうだなぁ、俺は死ぬ。でも、―――テメェも道連れだあ!」

 

 妖怪の男は決死の力を振り絞り、己の懐から一枚の鏡を取り出し三蔵の方へと投げ出した。

 

 ―――ッ!?

 

 三蔵は瞬時に判断する。

 何の変哲もない鏡。

 これは自身を殺めるものではない、―――つまりは、

 

(これはブラフ。―――囮だ)

 

 三蔵は飛んでくる鏡を何も握っていない左手で払い、拳銃を持った右手で引き金を引いた。

 

 ―――ガウン

 

 妖怪の胸に吸いこまれてゆく銃弾。

 確実に命を奪う、心臓部分を貫いた。

 

(これで終わりか……ッな、なんだ!?)

 

 自分の周りに突如不自然な風が渦巻く。

 白い光を放つ風が辺りを白く染め上げ、視界を奪っていった。

 

「てめぇ、なにしやがった!?」

 

 事切れる寸前の妖怪に語りかける。

 妖怪は楽しそうに嗤う。

 ヒューヒューと息を吐きながら妖怪は両手を広げた。

 

「へ……へへへ。それはなぁ、俺が昔手に入れた銅鏡で、それを割った者はこの世界より追放されるっていう……魔法の鏡だ!

 玄奘三蔵! お前の命、俺が頂いたァ!」

 

 そこまで言うと完全に命を失ったのか、前のめりに崩れ落ちた。

 三蔵は風から逃れようと必死にもがくが、蠢く風から逃れられない。

 

「三蔵ーーーーー!!」

 

 遠くで悟空が叫ぶ声が聞こえる。

 しかしその姿すら真っ白で既になにも見えない。

 

 このままでは駄目だ。

 三蔵は光に囲まれながら、大きく三人に呼びかける。

 

「悟空! 八戒! 悟浄! 俺は必ず戻ってくる! だから構わず西へ行ってろ! 必ず追いつく!」

「いやだあああああああああああ、三蔵ーーーーーーーーー!!」

 

 身体が質量を持った何かに包まれる。

 ふわりと身体が宙に浮いた。

 

(チッ、……こんなところで………)

 

 この瞬間、三蔵はこの大地から姿を消した。

 

 悟空は三蔵の居た場所へと駆け足で到着すると辺りを見渡す。

 音もなく、最初からなにもいなかったかのように、大地にはなんの痕跡も見当たらなかった。

 やり場のない怒りを胸に秘め、空を仰ぐ。

 

「三蔵ーーーーーーーーーー!!!」

 

 悟空は一人、空へと吠えた。

 三蔵はどうなってしまったのか……それはまた、別のお話である。

 

 

 

 真・恋姫無双 ~RELOAD~

 

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