No.531345

魔導師シャ・ノワール無印偏 第二十二話 プライド

ertiさん

神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。

2013-01-13 20:57:45 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2272   閲覧ユーザー数:2122

 

 

「・・・」

 

「なんだ?だんまりか?」

 

「いや、そう言われる覚悟も持っていた。仕事の失敗それに「違う違うねぇノワール」あ?」

 

徐に団長は煙草を取り出し火を付け。時間を掛けてから「フゥ」と煙を口から吐いた。

 

「別にこの仕事の成功云々はどうでもよかったのよ。俺にとっても傭兵団にとってもな。

 俺が言ってるのは、そうだねぇ・・・。坊主、お前は俺のように黒に近いが黒じゃねぇってことか」

 

「黒に近い?」

 

「ああ。お前はこっち側(闇)の人間として今まで育って来た。

 だがな、お前の本質はそっち側。つまり日向(光)の人間だってことだよ。

 いくら影を歩いて来てもそれは変わらない。そういうことでクビだ」

 

 

「意味が分からない・・・」

 

 

確かに今回の仕事では俺の個人的思考が大きく絡んで。

いつもなら冷静に処理(殺し)をしていない。

 

だが、仕事とは関係ないと団長は言っている。

 

「正直言ってな。俺はお前が嫌いだった」

 

「・・・」

 

「光も知らずにずっと暗闇で冷たく育って来たような眼をして。

 それならそれでもいい。傭兵、殺し屋、犯罪者には生きやすい目だ。

 たしかに都合のいい手駒にはなっていたさ。

 俺はお前のその目が気に入らなかった・・・。だけど、今のお前の目はいいねぇ」

 

「あ?」

 

「年相応とまでは言わないが・・・子供っぽくなったんじゃねぇの?

 クビだといっても、ちょっと前のお前なら眉を顰めたくらいで二つ返事で『はい』と答えただろうよ。

 この際だ、日向の人間として生きたらどうだ?手は打ってやる(正確には打った後だがな)」

 

「俺は....」

 

俺はどうやって今まで生きてきた?

スラムで生まれ。前世の記憶を力に子供の身で強盗をやり。

傭兵団に無理やりにだが拾われ。ずっと他人の生き血を啜って生きてきた。

誰かを殺して稼ぎを得て来た。そんな俺が今さら日の光を浴びて生きていける筈がない・・・。

 

「日の光を浴びて生きていける筈がないとか思ってるだろ。ノワール」

 

「っ!?」

 

「分かりやすい奴だよ、お前は。

 さっきオジサン言っただろ?お前はこっちの住人じゃない」

 

「だけど!俺はッ!」

 

傭兵団をクビになって俺は数を数えるのもバカになるほどの刑に処せられるだろう。

だが、もし団長の打った手で出られても。どうせ闇の住人だ・・・。

 

そうなったらどうやって生きていく?

 

「俺や他の団員なら兎も角、お前はまだ餓鬼だ。ただの小僧だ。

 子供を世話してる俺達(傭兵)が嗾け、強制し、無理やりに傭兵として

 魔導師として戦わせていただけじゃねぇのか?

 俺は・・・お前の親じゃねぇが・・・。親代わりというのも厚かましいが

 親として・・・傭兵団の団長として・・・一端の魔導師には育てたつもり・・・だ」

 

モニターに映る団長は言葉が詰まり始め。俯き、背中を向けた。

 

「団・・・長?」

 

なぜそんな事を言う・・・俺は・・・俺の意思で・・・。

 

「もういい加減・・・好きに生きたらどうだノワール。

 魔導師をやめろとは言わない。人殺しをするなとも言わない。いや、もう言える立場に俺は居ないつもりだ。

 だが、肩肘張らずにさ・・・普通に誰かと笑い、恋して・・・泣いて・・・。

 普段、血の匂いを嗅がずに。罵声や悲鳴の上がらない世界でさ・・・。

 人間らしい生き方を....俺らができない事をやって・・・くれねぇかなぁ?・・・。」

 

 

既に背中を向け。視線を向けずに横顔だけをこちらに向けている団長の顔に光る一筋の線が奔っていた

それを見た瞬間・・・俺の中で何かが切れた。

 

「今さら・・・今さら!なにを!!無理やり俺を傭兵団に入れて訓練して!!使い潰さずに!

 真っ当に生きろってか?『手は打ってやる?』

 巫山戯るなよ!こんなことなるくらいなら潰せよ!!管理局に捕まった俺を放置したらいいじゃないか!

 今まで散々戦わせて、人を殺させて来たくせに!それに俺はもう用なしだろうがよ!

 いや!違う!俺は俺の意思で人を殺めて来た!戦って来た!!なのに・・・なんで。

 なんで・・・なんで・・・あんたは・・・そんなこと言うんだよ・・・」

 

「・・・すまん」

 

「バカにすんじゃねぇよ・・・。俺にだって・・・俺にだって!

 傭兵のプライドくらいあるんだ!捨て駒になる覚悟くらい持ってる!

 あんたがいま、死ねと命じれは俺は死ぬことも厭わない!」

 

「ああ・・・知ってるさ」

 

「だったらなんで・・・なんであんたは・・・そんなこと言うんだよぉ!

 ずっと覚悟はしてたのに!この仕事だって途中からやばいって分かってた!

 だけど、俺は途中で放棄することも考えたさ!でもな・・・団長分かってたんだろ?

 俺がどんな結果になっても最後まで任務を果たそうとするって」

 

「・・・その通りだ」

 

「巫山戯るなよ・・・バカにしやがって・・・それで、こんな結末かよ!!」

 

俺は悪人には悪人のプライドを傭兵としての犯罪者としてのプライドは持っていた。

団長が言った日向の人間になれという言葉はそれら全てを踏みにじり。バカにしたことに他ならなかった。

俺の叫びは空しくアースラのブリッジに響いた。そんな時

 

《ぎゅ!》

背中から腕を回され抱きつかれた。抱きついた人は....

 

「・・・なの、は?」

 

「ノワールくん・・・辛かったんだよね?」

 

「俺は・・・」

 

涙を溜めながらこちらの目を射抜くような透き通った瞳で見つめてくる。

いつのまにかブリッジに来ていたらしい。

 

「昔からずっと辛い思いをして生きてきたんだよね。ううん、今でもきっと辛いと思う。

 でも、それはこれからも変わらないかも知れない。ずっと背負っていかないことかもしれない。

 それでもわたしは、ノワールくんに笑って欲しい。友達で居て欲しい。

 一緒に遊んでお話して一緒に笑って過ごしたい。それはずっと変わらないよ。」

 

《ギュ!》

 

「ノワール・・・」

今度は正面からフェイトに抱きつかれる。何時の間に・・・

 

「フェイト・・・」

 

「わたしはノワールと会えてよかった。いつもノワールが外に出るときにわたしが『いってらっしゃい』って言うと

 ノワールは必ず、ボソッとだけど『いってきます』って言って。ごはんもちゃんと

 わたしとアルフとノワールの三人で一緒に食べて。本当の家族みたいで。

 心の中がとっても暖かくなってそれでそれで、ね?」

 

「ああ・・・」

 

「わたしはノワールが辛いなら助けたい。守ってあげたいって思う。

 母さんは助けられなかったけど。今度こそ・・・ノワールは絶対助けたい!」

 

「俺はお前の親でも兄妹でもないぞ・・・」

 

「うん、それでもいい。ううん、むしろそうじゃないと困るのかな?」

 

「なにを言って・・・「マスター?」アリス?」

 

傍に来たアリスが徐に手を俺の頬に触れてくる。

なのはとフェイトの二人に抱きつかれている為に。振り払うこともできない。

 

「こんなになって。折角の美・・・男前が台無しです!」

 

「おいてめぇ。なにを言おうと・・・」

俺の頬と目じりを拭うようにしてからアリスの手が一瞬、離れると

その手は濡れていた。そして、同じように反対側の頬にも手で拭われていく。

 

「・・・泣いていた?」

 

「それくらい気づくようになりましょうよマスター」

 

呆れるようにアリスがそう言うと。抱きついている、なのはとフェイトごとを包むように

横からアリスまで抱きついて来た。

 

「私はマスターに幸せになってほしいです。マスターに傭兵は似合いません。」

 

「それでも俺は・・・」

 

このまま素直に受け入れる気にはなれなかった。

確かに頷けば死ぬこともなく、牢獄で一生を暗いジメッとした場所で過ごさなくてもいいのかも知れない。

だけど、それは過去の罪からの逃避だ。

 

「ま、どうせお前のことだ。そういう事は自分で決められねぇだろ?

 だったら、一つそこの穣ちゃん達とゲームでもして決めてもらったらどうだ?」

 

心の内を完全に読まれているようで、妙な方向に団長が話を進める。

 

「リンディ。一肌脱いでやってくれねぇか?」

 

「なんだかジュネルがそんなこと言うといやらしく聞えるわね。まあいいでしょう」

 

「おい!勝手に話を進めるな!」

 

「まあ、そういうなよ。お前が納得するゲームにしてやる。

 勝負内容は模擬戦で・・・いいよな?リンディ」

 

「ええ。場所はこちらで用意しますし。問題はありません」

 

「ノワールお前が勝ったら数百年でも好きなだけお前の気の済むまま幽閉でもなんでもされてろ。

 お前が負けたら・・・そうだな。たしか...高町なのはって言ったかい?」

 

「え?はっはい!」

 

団長に呼ばれて抱きついたまま慌てて俺の背中から返事するなのは。

 

「お前の家にでも厚かましくて悪いが置いてやってくれないか?

 根はすごくいい奴だし。可愛いところもある。もちろんコイツがしてきた事は人として恥ずべき行為ばかりだ。

 そんな奴でもいいなら頼めないか?容姿的にも将来、色々と有望だぞ?」

 

「は、はぁ・・・。別にノワールくんがしてきた事は仕方がないことだと思いますし。

 ちゃんと理由があってして来たことですよね?なら、わたしが何かを言う必要はないと思います。

 全部、きっとノワールくんは背負って来てる筈ですから」

 

「なるほど。話を良く理解はしているがそこのフェイトちゃんと比べるとまだまだお子様か」

 

団長の話を聞き。なのはは頭を傾げ。フェイトはというとやや不機嫌そうに目を細めて団長を睨んでいた。

かく言う俺もフェイトが不機嫌な理由も。なのはがお子様だと言われた理由も分からない。

 

 

 

 

「まあなんにしてもこれは決定事項だ。

 お前も戦士なら戦ってケリをつけろってことだ。

まさかエングレイブ傭兵団 若手ナンバーワンが逃げたりしないよな?」

 

 

 

 

団長は最後の最後で俺のプライドを逆撫でしてくる。

 

 

 

「・・・フンッ!相手が誰だろうと勝ってやるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今して思えば俺は団長の手のひらで頃がされていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして....次の日、模擬戦が始まるのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「4対1って卑怯だろ!」

 

 

 

そう、模擬戦は4対1で始められるのだった.....

 

 

 

 

 

 

 

『あとがき』

 

次回、量と質に抗う主人公にご期待ください。

 

 まあ、勝てる気がしませんが・・・。

 

※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!

 

※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。

 

※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。

 


 
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