No.530155

IS−インフィニット・ストラトス−黒獅子と駆ける者−

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!


2013-01-10 17:08:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:940   閲覧ユーザー数:917

 

 

 

episode101 楯無の過去

 

 

 

楯無はゆっくりと語り出した。

 

 

「まだ私は楯無と言う名を受け継いでない時だった。一応言って置くけど、本名は明かせないわ」

 

「・・・・」

 

「その時から私は才があった。周りから私を慕う人は多かった。もちろんその陰に軽蔑する者だっていた」

 

(良しとしない者はいる。当然だな)

 

「そんな私の事を誰よりも理解してくれた人が居た。彼の名前は『神埼早瀬』・・・私の幼馴染なの」

 

(名前まで似ているな。それに加えて容姿も似ていると、何となく姿を重ねるのも無理も無いか)

 

「彼はこんな私でも友達として思ってくれた」

 

「・・・・」

 

「ISの登場によって女尊男卑の世の中になってからは学校内でも女子生徒が偉そうな事を言い出したわ。それによる問題もしばしあったわね」

 

(変わらんな。今も昔も)

 

「もちろん彼も例外じゃなかった。だから私は彼を守った。周囲の女子からね」

 

「・・・・」

 

 

 

 

「でも、あの日が・・・運命が狂った日になった」

 

「・・・・」

 

 

「私が楯無の名を襲名して、代表候補生になってからよくISの研究所に出入りするようになった」

 

「・・・・」

 

「早瀬の両親が私の出入りするISの技術者もあってね、よく研究所で会ったわ」

 

「そうですか」

 

「私のISが完成して、テストしている時だった」

 

すると少し楯無のオーラが変わる。

 

「突然研究所が襲撃されたの」

 

「・・・・」

 

「襲撃者は開発途中だった試作ISを強奪して、データを奪取した。それに加えて研究員を殺害した」

 

「・・・・」

 

「私も応戦はしたわ。でもまだISの操縦者になったばかりの私じゃどうしようも出来なかった」

 

(そういう時もあったんだ)

 

 

「ISが行動不能になって動きを止められた時に、建物の天井が落ちてきたの」

 

「ISの絶対防御で何とか助かったのですか?」

 

「えぇ。でもさすがに全部は相殺しきれなかったわ。腕に怪我を負ったわ」

 

「・・・・」

 

「瓦礫の隙間から、外の景色が見えた・・・その時に早瀬とあの男がいたの」

 

「・・・・」

 

「その直後に、彼はあの男に・・・撃たれた」

 

「・・・・」

 

「あの男はすぐに他のメンバーと一緒に研究所を逃亡した」

 

「・・・・」

 

「私は頭の中が真っ白になった。無我夢中で瓦礫を押し退けてISを解除して彼に駆け寄った」

 

本当なら思い出したくないのに、楯無はいつもの口調で何とか話す。

 

「でも彼は急所を撃たれていた。もう助からないって・・・」

 

すると言葉が途切れる。

 

 

「で、でも、私はそれでも助けたいと思った。でも、彼はその現実をすぐに受け入れた」

 

話したくも無いのに、何とか語る楯無の姿が痛々しかった。

 

「私は否定した。彼はそれでも『もういいんだ』って」

 

(まるでこうなる事が分かっていたって言う口調だな)

 

「最後に一言遺して、彼は息を引き取った」

 

「・・・・」

 

「目の前のことが信じられなかった。受け入れたくなかった。ただ、それだけだった」

 

「・・・・」

 

 

 

「でも、その後のことが信じられなかった」

 

「・・・・」

 

「あの事件は研究所でISの暴走による事故だって片付けられた」

 

「・・・・」

 

「私は断固として反対した。認めるわけにはいかなかった」

 

「・・・・」

 

「でも私の証言は一切受け入れなかった。なぜ事故としてすべてを片付けられるのか、全く分からなかった」

 

「・・・・」

 

「私は諦めなかった。情報部員を使って情報を掻き集めた」

 

「それで、ドクターアルベルトの名が挙がったと」

 

「えぇ。彼による仕業であるのが分かったけど、その事実を上は聞き入れなかった」

 

「証拠不十分・・・と言うことですか」

 

「そうなるわ。だから私はその上も怪しいと思って調査を開始した」

 

「・・・・」

 

「でもある人から止められた。『これ以上深追いすると消される』ってね」

 

(つまり上の連中がドクターアルベルトと何らかの関係を持っている。真相を知られて失脚しない為なら容赦無く消す・・・。どの世界でも政治家って言うのは腐っている連中ばかりだ)

 

「真相が明く事が無いまま、今に至る」

 

「・・・・」

 

「私はせめて彼の無念だけでも晴らしたい。だからあの男を追いかけて、この手で葬ってやりたい。例え自分の手が汚れてもね」

 

 

 

「・・・その人はそんな事を望んでいるのですか。楯無さんが復讐鬼になることを」

 

「もちろんそうは思わないでしょうね。これはただの私の自己満足でしかない。仇を討つと言う名のね」

 

「なら、なぜそうまでして」

 

「そうでもしないと、私の気持ちは収まらない」

 

「・・・・」

 

「彼を殺したように私だったあの男を!」

 

 

 

「楯無さん」

 

「・・・ごめんなさい。熱くなってしまって・・・」

 

楯無は頭を冷やした。

 

「まぁ、分からんでも無いですね」

 

「・・・・」

 

「俺だって両親を亡国機業の誰かにやられた。復讐だって一度は考えた」

 

「・・・・」

 

「でも、復讐をしたところで、何を得ますか?」

 

「それは・・・」

 

「何も無い。何も得ません。失った物は帰ってくるわけでもありません」

 

「・・・・」

 

「憎しみは新たに復讐者を生み、その復讐者は憎しみを晴らす。そして新たに憎しみを生み出す。その連鎖です」

 

「・・・それは」

 

「あなたはその男を殺しても、何も報われない。ただ人殺しと言う汚名を被るだけ」

 

「・・・・」

 

「そういうものですよ。人の憎しみと言うのは」

 

「人の憎しみ・・・」

 

「だから、人は簡単に壊れる事が出来る。違いますか?」

 

「・・・そうね」

 

 

 

「その男を殺さずに、罪を償わせる。それが早瀬さんのためになるでしょう」

 

「罪を償わせる、か」

 

「まぁ、俺の私見ですけどね。殺人と言う汚名を被るか、捕まえて罪を償わせるか。それを決めるのは楯無さんですよ。俺が関与することでもないので」

 

「・・・そう、ね。考えておくわ」

 

「では、俺はこれで」

 

と、隼人はその場を後にしようとした。

 

 

 

 

 

 

 

「一つだけいいかしら」

 

と、楯無が呼び止める。

 

 

「なんでしょうか?」

 

「・・・隼人君」

 

「・・・・」

 

「あなたは・・・簪ちゃんの事をどう思っているの?」

 

「簪を・・・ですか?」

 

「え、えぇ」

 

楯無は歯切れ悪く答える。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

「大切に思っていますよ。誰よりも・・・ずっと」

 

「・・・そう」

 

「・・・・」

 

「なら、一つだけ言って置くわ」

 

「・・・・」

 

「生徒会長としてじゃなくて、私個人としての命令よ」

 

「・・・・」

 

 

 

「必ず・・・簪を守るのよ」

 

「楯無さん・・・」

 

「絶対よ。例え命を賭けることになっても」

 

「・・・分かりました。肝に銘じておきましょう」

 

「・・・・」

 

そうして隼人は墓を立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

(そこまで・・・大切に思っているんだ)

 

楯無は隼人が去ってから内心で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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