No.526295

fortissimo//Zwei Anleihen in Niflheimr 6話~降り立つ嵐~

saitou2021さん

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。大分最後の更新から間が空いてしまいした、申し訳ありません……。では、久々のニブルヘイム、お楽しみください!そう言えばfortissimoの最新作、発表されましたね!

2013-01-01 18:45:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:793   閲覧ユーザー数:790

 

「お兄ちゃんっ!!」

 

私は半ば激突するようにお兄ちゃんの扉を開け放つ。今日はお兄ちゃんと海でデート。

そう考えただけで胸が踊りだす。水着は昨年の奴だけどなんとか着る事が出来た。

せっかくの海でのデートなのに着れなかったら意味ないもんね。

 

「お兄ちゃ~~~ん!!」

 

私は喜びを全身で表わすように身体を大きく広げて、お兄ちゃんの布団へとダイブする。

ドズン、という大きな音がした。

 

「つォっ……!?」

 

「起きて~~~~!!お兄ちゃんっ!!」

 

ユサユサユサユサユサユサユサユサユサユサユサ

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああらららぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃ~~~~~ん!!」

 

「ちょ、逢菜、をまっ、をままままままままままままままま」

 

「お兄ちゃん、おはよう!」

 

「……」

 

「……?お兄ちゃん?おーい?」

 

…………。

 

「返事がない。ただのしかばn……」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!」

 

「ふわぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!?」

 

お兄ちゃん が 襲いかかってきた!!

 

「最愛の兄を殺す気か貴様ァっ!!故意だろう!!絶対そうだろう!!

てめぇも同じ目に合わせてだぁらっしゃぁぁぁーーーーーー!!」

 

「いぃぃぃやあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!」

 

 

……

………

 

 

 

 

 

「あぁ、朝から疲れた……」

 

「サーセン」

 

「反省してないだろお前!!?」

 

だって起きなかったお兄ちゃんが悪いんだもん……。心の中でそうぼやきながら

お兄ちゃんと海を目指す。陽射しがチリチリと肌を焼く。

絶好の海日和と言わんばかりの快晴だ。

 

「……まぁいいや。海着いたらたっぷり仕返ししてやるからな……」

 

「きゃー、セクハラされるー」

 

「ハッ、その程度で済めばいいがな」

 

な……!?まさかお兄ちゃん……!海でそんな……でも……。

 

「お、お兄ちゃんがいいって言うなら……私はいつでも……

えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ……」

 

「…………」

 

……あれ。なんかお兄ちゃんが可哀そうな人を見るような目で私を見てる。

その瞳って普通、実の妹に飛ばすものなのかな。

とにかくこの空気は色々まずいと思い、私は話題の方向転換を試みることにした。

 

「お兄ちゃん!海行ったらまず何する?」

 

「んー?……まぁまずは着替えだわな。それから……泳いで……?」

 

お兄ちゃんは思案するように瞳を宙に彷徨わせる。ビーチバレーを2人でやるってのも

きついよね……。あとは……砂遊び……?

 

「まぁそれは向こうに着いてから考えようぜ。今日は時間もたっぷりあるんだし」

 

「……うん、そうだね」

 

精一杯の笑顔をお兄ちゃんに振りまく。

願わくば……今日という一日が素敵な『思い出』になりますように。

 

 

 

……

………

 

 

「ここが、月読島―――」

 

平和な島に降り立ったのは天使かはたまた堕天使か。

船から降りる、明らかに異質な空気を纏った男女7人組み。

その中の唯一の女、ミア・スチュワートが物珍しい物を見つけてはしゃぐ子供の

ように腕をいっぱいに広げてくるくると躍っている。その姿にほかの乗客員も

目を奪われている。それをまずいと思ったのか、リアムはたしなめるように

ミアに「あまりはしゃぐなよ」と言い放つ。

するとミアはリアムの方を振り返り、ぷくっと頬を膨らませながら不満を洩らした。

 

「別にいいじゃない、ちょっとくらい。でも……こんな素敵な所だとは思わなかったわ……」

 

「まぁ、確かに居心地は良さそうだな。なぁ、クリス?」

 

「……」

 

クリスと呼ばれた男は、エヴァンに同意することなく沈黙を守り続けるのみ。

エヴァンは「相変わらずだな」と言った風に苦笑しながら首を横に振る。

その瞬間―――

 

「……愉しめそうだ」

 

「……ほぉ」

 

エヴァンは心底驚いた、とばかりに声を上げる。あのクリスが『愉しめそうだ』とは―――

これは期待できるかもしれない、とエヴァンは誰にも気づかれないように妖しくほくそ笑む。

 

「俺はホテルにチェックインしてくるから、各々適当にぶらついてろ。

ただし、目立った行動は控えろよ。……特に、ミアとオーウェン」

 

「え~、リアムのケチ」

 

「チッ」

 

ミアはわざとらしく頬を膨らませ、オーウェンは不快そうに舌打ちを飛ばす。

リアムはそれを気にかけた様子もなく他の6人に背を向け、その場から静かに

去って行った。

 

「…………」

 

「んで、どうするよ?」

 

「ハッ。知れたこと。適当にぶらついて適当に喧嘩ふっかけてぶっ殺す」

 

「もう~、物騒ねぇ。もっと観光を楽しむとか……ないの?」

 

「カッ、馬鹿か。せっかくこんな所まで出向いてやったんだ。んな女々しいこと

やってられっかよ」

 

「……承知してると思うが、一般人には手を出すなよ」

 

「あーあーわーってるっつの。んじゃまぁ俺は行くからよぉ。

てめぇらは観光なりなんなり楽しんでな」

 

オーウェンはルークに対する『不快』という感情と、これからの展開に対する『愉しみ』

という感情をグチャグチャにかき混ぜながらその場を後にする。

そして残ったのは4人の男と1人の女。オーウェンの姿が無くなったと同時に

クリストファーも4人に背を向ける。

 

「あなたは何をするか決めたの?」

 

「別にどうもしない。ただぶらつくだけだ」

 

「え~何それつまんな~い」

 

クリストファーは無愛想にそう呟くと、今度こそ4人に背を向け、去って行ってしまった。

 

「んじゃまぁ、俺はナンパにでも行くか。ジャーック!お前もどうよ」

 

「えっ、ぼ、僕ですか!?」

 

この超人達の中で唯一良識そうな少年が上ずった声でエヴァンに応える。

一応彼もマホウツカイではあるが、如何せんそうは見えない。性格も他の6人と

うってかわって消極的で頼りなさそう気な雰囲気を醸し出している。

 

「そうそう、お前顔はいいし、絶対女ウケいいじゃん?行こうぜー?」

 

「い、いえ、僕は……。ミ、ミア、助けてよ」

 

ジャックは非常に頼りない、蚊の鳴くような声でミアに助けを求める。

「それでも男か」と言いたげなミアの視線がジャックを刺すが、本人は気付いていないのか、

ミアに助けを求め続けている。ミアは「しょうがない」とばかりに溜め息を吐き、

エヴァンからジャックを強引に引き剥がす。

 

「おい、ミア、何すんだよ?」

 

「ジャックはこれから私とデートするからだーめ。エヴァンにはあーげない」

 

「ちぇー。はいはいわかりましたよ。邪魔者は退散しますよっと」

 

エヴァンは鬱陶しい物でも掃うかのようなジェスチャーをしながら、

商店街方面へと姿を消していった。

 

「さーてと……。あとはルークだけね。あなたは何をするの?」

 

「さて……どうしたもんかな。これと言ってやりたいこともない。クリスと同じで

その辺をぶらつくだけだろう」

 

「何よ~……。皆つまらないわねぇ。良かったらルークも私達のデート、参加する?

ルークなら絡みやすいし、別にいいよ?」

 

「気持ちだけ貰っておこう。2人のデートに水を差すほど、俺も野暮ではないからな」

 

そう言うと、くるっと華麗にミア達に背を向け、ルークも皆と同じようにこの場を

後にした。

 

「はぁ……。結局私たち2人だけかぁ……」

 

「ね、ねぇミア。本当にこれからデートするの?」

 

「当たり前じゃない。さ、行くわよジャック!」

 

「わぁっ!ミ、ミア……!ちょ、まっ……!」

 

 

 

 
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