No.521537

ソードアート・オンライン ロスト・オブ・ライトニング 第十九話 終局の宴

やぎすけさん

この話でロスト・オブ・ライトニングは終了です。

2012-12-22 18:26:56 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2662   閲覧ユーザー数:2566

大地視点

授業の終わりを告げる鐘が鳴る。

SAO第一層の始まりの街の鐘の音に似たこの音は、誰が設定したのか知らないが、分かっててやっているのなら中々のセンスを持った人物だろう。

 

教師「はい、この問題はテストに出すからね。ちゃんとやっときなさいよ!」

 

担当教師の言葉に続いて、号令が掛かる。

授業が終わると、俺はリュックサックに荷物を放り込んで背中に背負う。

すると、後ろから声を掛けられた。

 

男子生徒「大地、食堂行くなら席とっておいてくれ。」

 

大地「悪いけど、今日は先約があるんで無理だ。」

 

俺がそう答えると、そいつはニヤリと笑って返して来る。

 

男子生徒「なんだ、今日は彼女とか?」

 

大地「そんなところだ。」

 

男子生徒「ちくしょう、いいなあ。俺も早く彼女欲しい!」

 

大地「俺に言うな。じゃあ待たせるといけないから、俺行くな。」

 

俺はそう言って教室から出ると、カフェテリアへと向かった。

カフェテリアの西側の窓際、南から2つ目の席に彼女は座っていた。

彼女は俺に気づくと、ニッコリとしてからこちらに手を振ってくる。

 

大地〈相変わらず子供っぽいな。〉

 

俺は芝居じみた動作で肩を竦めると、手を振っている少女、綾野珪子(シリカ)のもとへ向かった。

 

大地「お待たせ。」

 

珪子「いえ、あたしも今来たところです。」

 

大地「そうか。それならよかった。」

 

その後、俺たちは話しながら昼食を楽しんだ。

昼食を終え、食後にココアを飲んでいると隣から雑音が聞こえてきた。

見ると、隣のテーブルで篠崎里香(リズベット)が窓の外に視線を注ぎながらイチゴヨーグルトドリンクのパックを握りつぶしていた。

その様子を見て俺はニヤリとすると、ポケットから10円玉を取り出して指で弾く。

放たれたコインは見事に里香の額に直撃した。

 

里香「イタッ!!」

 

里香が声を上げて額を押さえているうちに、俺はぶつかった反動で戻ってきたコインをポケットに戻した。

 

里香「何すんのよ!!」

 

大地「何のことでしょうか~」

 

わざとらしくとぼけてやると、顔を真っ赤にした里香がこちらに近づいてきた。

 

大地「痛い目見る前に逃げよう。」

 

俺はココアを飲み干すと、立ち上がった。

 

大地「じゃあなシリカ。オフ会で。」

 

俺は珪子に別れを告げると、追ってくる里香から逃げた。

東京都御徒町。

エギルの店であるダイシー・カフェの扉には、【本日貸切】と無愛想な文字で書かれた木札が掛かっていた。

 

和人「スグは、エギルにリアルで会うのは始めてだっけ?」

 

直葉「うん。あっちじゃ何度かパーティ組んだけど、おっきな人だよねぇ・・・」

 

和人「言っとくけど、本物あのマンマだからな。心の準備しとけよ。」

 

眼を丸くする和人の妹(直葉)の隣で明日奈がくすくすと笑う。

 

明日奈「私も、初めてここに来たときびっくりしたよ~」

 

和人「正直、俺もびびった。」

 

和人はノブに手を掛けて回し、扉を開けた。

カラン、と響くベルの音に重なって店の中から待ち構えたように歓声と拍手、指笛か響いてきた。

店内には既にギッシリと人が詰まっており、BGMには驚いた事にアインクラッド第50層、アルゲードのNPC楽団の演奏が流れている。

 

和人「おいおい、俺たち遅刻はしてないぞ。」

キリトが驚いていて言うと、制服姿のリズが前に出てきて言った。

 

里香「主役は遅れて登場するもんだからね。あんた達には少し遅れた時間を伝えといたのよん。さ、入った入った!」

 

リズは笑みを浮かべて俺たちを店に引っ張りこみ、俺とキリトをステージの上に押し上げた。

扉が閉まり、直後BGMが途切れると同時に照明が絞られる。

次いでスポットライトが俺とキリトに落ちる。

俺は苦笑しながら突っ立っていると、リズの声が響いた。

 

里香「え~、それでは皆さん、ご唱和下さい!せ~のぉ!」

 

一同(和人&大地以外)『キリト、デュオ、SAOクリアおめでと~!!』

 

皆が叫ぶと同時に、拍手やクラッカーが、狭い店内に響き渡る。

ポカンと口を開けていたキリトは、意識を取り戻すとこちらに視線を向けてきた。

祝福からようやく開放されたキリトは力尽きるように席に着く。

 

大地「お疲れ。」

 

疲れ切った様子のキリトに笑いながら声を掛ける。

俺の横には、クラインと軍の元リーダーであるシンカー、それにバスターズのマイティー、バイカ、ゲイルがいる。

ちなみにシンカーは先日、副官だったユリエールと入籍したそうだ。

クラインは酒を飲んでいる。

 

大地「良いのか?この後会社戻るんだろ?」

 

遼太郎「残業なんて、飲まずにやってられっかぁ。にしても・・・いいねぇ・・・」

 

俊夫「まったくだぜ・・・」

 

みっともなく鼻の下を伸ばすクラインに、同じく鼻の下を伸ばしたバイカが同意する。

和人も呆れ気味ながら否定はしない。

何故なら視線の先にあるのは既にカオスと化している宴の光景である。

そこには、アスナを始め、シリカ、リズ、サチ、エルフィー、サーシャにユリエールと女性プレイヤー陣が勢揃いしている。

 

大地「やれやれ・・・」

 

このバカ2人は放っておいて、俺はエギルに訊く。

 

大地「所でエギル、例の“種”はどうだ?」

 

アンドリュー「あぁ、すげえもんさ。」

 

“種”と言うのは、茅場が和人に預けた“世界の種”と呼ばれたプログラムの事だ。

【ザ・シード】と名付けられたこのプログラムの中身は、簡単に言うと、【カーディナル・システム】を少しコンパクトにしたものと、ゲーム制作用補助プログラムの複合プログラムだった。

これを、エギルを通じてネットで無料ダウンロード出来るようにした結果、いくつかの簡単な条件さえ満たせば世界中の企業から個人までが誰でも容易く仮想世界を作れるようになったのだ。

結果は、今のエギルの報告の通りである。

これをきっかけに、ALO事件によって衰退しかけていたVRゲームも完全に息を吹き返し、今ではザ・シード系統のゲームを相互接続するシステムが開発され始めていたり、VRワールドの現実置換面積が日本の面積を越えようとしているらしい。

ちなみにALOは、俺がレクトからほとんど無料で買い取って再構築した。

その際に、SAOに存在していたソードスキルの導入や任意でのプレイヤーデータの引継ぎ等、いくつかの改良と“鋼鉄の城の復活”を行った。

 

里香「お~いキリト、デュオ、こっちこ~い!」

 

突然聞こえてきた喚き声に反応して振り向くと、リズがガッシュを締めながらこちらに手をぶんぶん振っていた。

首が絞まっているガッシュは顔を青くしている。

 

大地「じゃあ行くか。長い夜になりそうだなキリト。」

 

和人「そうだな。」

 

俺たちは苦笑すると、手を振っているリズたちのもとへと向かった。

 


 
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