No.517221

IS x アギト 目覚める魂 03:入学前

i-pod男さん

一夏の鍛錬パートです。そして今回はS.A.U.Lが・・・・!!

2012-12-10 22:37:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3221   閲覧ユーザー数:3096

あれから何日かに渡って一夏は千冬に何があったか聞かれたが、適当に誤摩化し通した。辛かったが、本当の事を言ってしまえば何が起こるか分からない。世界でたった一人しかいない姉に拒絶される・・・・そんな恐ろしい考えを必死で追い出そうと、自分の『能力』、及びアンノウンの事については堅く口を閉ざした。

 

「しかし・・・・ISを起動出来る様になったとはな。」

 

「俺・・・・荷物纏めて来る。」

 

静かにそう言うと、のろのろと二階に上がった。変える間もずっと考えて導き出した答えを伝える為に。

 

『決めたんだな?』

 

「・・・・はい・・・・俺、戦います。俺みたいな人は、俺だけで十分です。それに、今となっちゃ俺一人でどうにか出来ると思う程つけあがるつもりも無い。だから、教えて下さい。戦い方を!」

 

『入学式で会おう。』

 

それっきりで電話は切れ、一夏は新たな決意を胸にスーツケースを引っ張り出して必要な物を詰め込み始めた。入学式まではまだ時間がある。その間に、やれる事はやっておかなければならない。大掛かりな肉体改造、精神改造、そして何よりも(色々と)理解する必要がある。戸棚の奥にしまっていた黒檀の木刀を引っ張り出した。昔は姉が使っていたのだが、持ち主の手によって譲渡された物である。柄に織斑の姓が彫られており、使い込み具合も一目瞭然だ。それを竹刀袋に突っ込むと、動き易いトレーニングウェアに着替え、外出した。歩いて十分弱の所に空き地がある。元々は公園だったらしく、鉄棒等もまだ残っていた。そこで木刀を構え、素振りを始めた。暫くやっていなかった為勘が鈍っているのが分かる。昔はある幼馴染みと同門だった為毎日の様に励んでいたが、彼女が引っ越してからはやる事が無くなってしまった。だが、今となってはやらざるを得ない。流石にIS操縦者相手にギルスになる事は出来ない。射撃の特訓は銃器の規制が厳しい日本では猟銃の所有免許でも持っていない限り不可能だ。残るは、剣道やその他の武道しか無い。

 

「ふっ、 ふっ、 ふっ、 ふっ、 ふっ・・・・・」

 

浅い呼吸を繰り返してそれを保ちながら次に移る。鉄棒は腐食が進んでいる様に見えて使い物になりそうに無い。手近な木の上に登り、枝を握り締め、懸垂を始めた。だが、やはり鈍っている為大して出来ない。

 

「よう、やってるな。まだ数日しか経ってないのに猛特訓を始めるとは、感心、感心。」

 

ジャージの上下を来た秋斗が別の木の上でその様子を見物していた。

 

「門牙さん・・・」

 

「お前、剣道やってるのか?」

 

「昔の事です。強くなるんなら出来る事からと思って・・・・」

 

「成程。なら、一つ提案がある。」

 

秋斗は何故か変身し、右腰のスイッチを押す。すると、オルタリングが光り、胴体と右肩が赤色に染まったフレイムフォームに変わる。中央に手をかざすと、バックル部分から剣が現れ、それが二つに増えた。その一つを地面に突き刺し、変身を解除する。

 

「えっと・・・・?」

 

「どうせやるなら、本物の方が良いだろう?実感が湧く。」

 

一夏は恐る恐る触れ忌むセイバーを地面から引き抜いた。いや、引き抜こうとしたが、やはり簡単には引き抜けない。

 

「重っ・・・!?」

 

「それ一応十五キロ近くはあるからな。お前にはまだ少し重いかもしれないが、その内馴れる。それで素振りをやって見ろ。お前はサイコキネシスが使えるなら、それで体をある程度まで強化出来る。」

 

「どうやって・・・・?」

 

「俺はお前の持つ能力を持っていないからそれは分からない。お前が地道に掴んで行くしか無いな。要はイメージだ、イメージ。ただし、やり過ぎない様にな。パワーが低下すれば、変身出来ても負担が大きくて」

 

「はあ・・・・イメージ、ねえ・・・・(無難にゲームのアレとかか?)」

 

しばらくすると、ある程度感じが掴めて来たのか、フレイムセイバーを軽々と振り回せる様になる。おふざけで腐った柱を横薙ぎに切り払ってみると、すっぱりと滑らかな斬り口を残して真っ二つになった。

 

「おいおい、あんまりソレで遊ぶなよ?俺もどれだけ物が斬れるか試したが、そいつは余裕で走って来るトラックを両断出来る。傷一つ付かずにな。ISも同じだ。」

 

「でも、ISって只のスポーツじゃ・・・・?」

 

「おいおい、どの世界にスポーツで本物の武器を使う奴がいるんだ?それに、兵器転用するなと言う条約があっても、それは所詮形骸化している詭弁、建前に過ぎない。それに、皆が皆素直に従う筈が無いだろうが?ISとは、人を殺せる兵器だ。生みの親の真意はどうあれ、それは変わらない。だから、軽い気持ちで挑むな。女尊男卑がデフォルトととなっている昨今、当然俺達を潰しに来る奴らは数多い。死ぬ気で挑め、ただし死ぬな。」

 

「はい。」

 

「さてと、後は組手だな。」

 

「組手?」

 

「ああ。武術は全て型がある。だが、いつでもどこでも型の通りに攻防は出来ない。だから、もっと柔軟に対応出来る様に、思い通りに動いた方が良い。特に、ギルスは実質素手で戦っている。お前にとっては重要なファクターだ。剣での戦いも大事だが、古来より人間は、生まれながらに兵器を持っている。体全体だ。キック、パンチは勿論、頭突き、タックル、噛み付き、何でもある。武道とは所詮決められた動きをするだけの真似事だ。ベースにする事は悪く無いが、我流で全てを磨け。言っておくが、俺は手加減はしない。気を抜けば、打ち身では済まないぞ。」

 

いきなり接近し、腕を振り、ラリアットを腹に叩き込んだ。

 

「ぐあっ・・・!?」

 

肺から酸素が押し出されるが、その腕を掴んで顔面に向かって拳を突き出す。だが、まるでそれを予測していたかの様にその拳に対抗して頭突きを繰り出し、拳と衝突させる。

 

「っつ?!(攻撃が読まれた?!・・・・予知能力!)」

 

「アギトの力を使わないと言った覚えはねえぞ。」

 

一夏の腕を潜り抜け、背中に肘を叩き付ける。更に飛び上がって追い打ちにキックを喰らわせた。前のめりに倒れたが、受け身を取って立ち上がり、地を蹴って再び秋斗に飛びかかる。だが、予知能力を有する秋斗にとって何ら障害は無い。攻撃は全て『見えて』いるのだから。掠りもしない。

 

「ほらほら、どうした?」

 

余裕の笑みを浮かべて入るが、秋斗は内心驚いていた。時間が経つにつれ、一夏の動きが良くなって来ているのだ。更に速く、力強く・・・・・野性的に。ギルスの様に。拳だった手も指を僅かに曲げた掌底の様になっており、蹴りはスピードだけながら自分よりも上かもしれない。避ける度に受ける風圧がその威力を物語っている。まともに喰らえば只では済まないだろう。

 

「はっはあ!良いぞ、良いぞ・・・・!!それだ。それで良い!自分が『コレだ!』と感じる、お前自身の攻撃に、全てを乗せろ!」

 

二人は自然に笑い始めていた。楽しい。その一言に尽きる。一旦距離を取った二人は泥だらけになっている。

 

「やっと笑ったな。」

 

「え?」

 

「お前、初めて会った時から思ってたんだが、笑うどころか笑顔すら見た事ねえからな。そう言う顔も出来るって分かったから、安心したぜ。その調子で続けて行けば良いさ。お前は、筋が良い。戦い方も初代(・・)そっくりだ。じゃあな。学園で会おう。(フレイムセイバー)はやるよ。俺は一本あれば十分だし。」

 

フレイムセイバーを消し、地面に刺さったもう一本のフレイムセイバーを残した。くるりと背を向け、秋斗はどこかへ姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

あるトラックのコンテナの中で、眼鏡をかけた二十代後半の一人の男が分解した銃を磨いて手入れをしていた。彼の名は、一条誠。警視庁のアンノウン対策班通称『S.A.U.L』でG3MILDを使う隊員を時折扱いており、パワードスーツ、『G3システム』の装着員にして教官だ。

 

「あ、一条教官。お疲れ様です。」

 

「おう、氷川。お疲れ。」

 

もう一人入って来たのは、制服姿の若い男だった。彼の名は氷川次朗。同じくS.A.U.L所属で、G3の第二世代とも言える『G3-X』の装着員である。経験、年齢、実力その他を比べれば間違い無く誠が選ばれただろうが、敢えて彼は後輩である薫を選んだ。

 

「逃げられちゃいました、すいません。」

 

「ま、お前はまだ若いんだ、気にする事は無い。」

 

「それより、本気なんですか?アレを彼に渡すなんて。確かにISが世界進出したとは言え、あの呪われたシステムをベースに改造した物を、門牙君が使わせて欲しいだなんて・・・・・」

 

「小沢さんが直々に頼まれたんだ。幾ら同じG3ユニットのメンバーとは言え、俺達が口を出す様な事じゃない。それに、昔あんな事があったんだから、作った本人なりのけじめだろう。自分が作った呪われたシステムの呪いを解く為に。」

 

「呪い?何があったんですか?G4システムに。曰く付きの物とは聞いてますけど。」

 

「昔軍人にデータを盗まれてな、ソイツをぶっ倒す羽目になったんだと。G4は装着者をパーツとして初めて完成する。」

 

「・・・・装着者が、パーツ・・・・?」

 

次朗は首を傾げる。

 

「人が機械を操るのではなく、機械が人を操るんだ。AIは常に最善の行動を促す。」

 

「でも、それなら」

 

「装着員の安全を考慮せずに、だ。それ故装着員は、一度でもそれを使えば重体に陥り、最悪の場合、死ぬ。実際G4を装着した人間が一人死んだ。だが、あれはもう生まれ変わった。もう人を殺す呪いの木偶人形とは違う。人を守る楯となる、『G4-X ZERO』としてな。」

 

「何の話をしてるの、一条君?」

 

背が少し低めの女性がコーヒーマグ片手に入って来た。

 

「あ、小沢さん、お疲れっす。」

 

「お疲れさま。『アレ』、もう出来上がったから、彼に渡しておいてよ?」

 

彼女こそがS.A.U.L G3ユニットの班長、紅一点にしてGシリーズのパワードスーツを開発した天才、小沢澄子管理官である。ちなみに焼き肉大好きの酒豪と言う意外な一面を持つ。

 

「分かりました。」

 

差し出された小さなトランクには、指全体を覆う鎖でつながった二つの赤いアーマーリング、側面にスロットが付いた豪奢なベルトバックル型の何かと、何故かハーモニカが入っていた。

 

「これが・・・?」

 

「ええ。これが、G4-X ZEROと、秋斗君専用のIS、『ネロ』よ。」

 


 
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