No.514330

リリカルなのは×デビルサバイバー As編

bladeさん

Last Day Epilogue

2012-12-02 15:28:14 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1384   閲覧ユーザー数:1344

 

 戦いは終わった。

 各自、色々と思うことはあるのだろうけど……それでも一つの戦いが終局を迎えたのは事実だ。それは喜ばしいことなのだろう。

 

「…………」

 

 結局この戦いで一番得をしたのは、八神はやてという少女だ。

 仮面の男が残した一枚のディスクを見ながら、カイトはそう思った。

 

『そこに、管制人格を延命させる方法を残した。共に生きたいのなら、やってみるといい』

 

 そう仮面の男は言い残し消えた。文字通りそのままの意味で。

 

「(結局、あの男は何をしたかったのか)」

 

 何からなにまでわからないことだらけ。それが今回の戦いで得た、最も大きな成果だった。

 

「カイトくん」

 

 なのはとフェイトがカイトの近くに来ていた。

 二人の格好は、何時もの学生服や私服などではなくて、まるでパーティに出ている女の子が着るドレスのようだった。

 いや、実際に今やっているものはパーティなのだけど。

 ちなみにはやてたちはここには居ない。リインフォースに対する処置を行うため、彼女の傍に皆ついていることにしたそうだ。

 

「……楽しまなくて良いのか?」

「それは私たちの台詞だよ? ご飯も食べずに、こんな端の方に居るなんて」

「気分じゃない」

 

 なのはの誘いをばっさりと切り捨てた。

 それに対してフェイトはムッとした表情を浮かべた。

 

「誘ってくれてるんだよ? なのにその言い方はないんじゃないかな?」

「悪いとは思う。でも、いまはそんな気分じゃないし、考え事もある。だから悪いけど……」

 

 あの防衛システムとの戦いから次の日、それが今日だ。

 いまだ戦いの余韻が残っているのか、所謂戦闘状態から、日常状態への切替が、カイトはできていなかった。

 

「っ! 行こう、なのは」

 

 フェイトは一人、パーティ会場へと……もっと言うのであれば、バニングス邸へと一人戻っていく。

 その様子を見て、少し慌てた様子を見せたものの、すぐに落ち着きを取り戻し、なのは一言だけこう言った。

 

「カイトくん」

「ん?」

「なんで――フェイトちゃんを助けてくれなかったの?」

 

 そう言ってから、なのははフェイトのあとを追いかけて走っていった。

 

「なんで助けてくれなかったの? か。そんなの決まってる」

 

 一人の、悲劇の女性をカイトは思い浮かべた。フェイトの金髪とは逆の、暗い、黒い髪を持った。影を持つ女性。

 

 けれどそれを、口にだすことはなかった。

 

「なーにやってんよの、そんな暗い顔して」

 

 次にやってきたのは、アリサとすずかだった。

 二人共料理が乗った皿を持っていたが、すずかだけは二皿持っている。

 

「結構食べるのな、月村さん」

「ふぇっ!? ち、ちがいますよっ。これは天音くんの分です!」

 

 そう言って、カイトに皿とフォークを手渡した。

 

「お、おう。ありがとう」

 

 お皿に乗ったステーキを一切口に入れる。

 

「お、うまい……」

「あったりまえよ! バニングス家御用達のシェフ作だしね」

「あ、アハハ……シェフ。シェフっすか」

 

 世界観がまるで違う発言を聞いて、カイトは弱々しい笑みを浮かべている。

 

「それじゃ隣失礼するわよ」

「失礼しますね」

 

 カイトの右にアリサ、左にすずかが座る。

 それからしばらく会話があるわけでもなく、ゆったりとしたときが流れていく。

 

「聞いたわよ? あんたとなのはたちのこと」

「そっか」

「何か言うことはある?」

「いや、特には」

 

 どこか、追求するようなそんな形でアリサは言う。

 その様子を、すずかは横でじっと見ている。

 

「そう、でもあたしはあるわ」

「……?」

 

 数度胸に手を当て、深呼吸をしたあと、アリサは口を開いた。

 

「あたしは……あんたが羨ましい。なのはと一緒の世界を共有できるあんたが」

 

 ――あぁ、そういうことか。と、カイトは納得していた。

 

「ま、ただの愚痴だからさ軽く流しても良いわよ」

「そうさせてもらう」

「それじゃ話を戻すわ。……もっと言えばあれね、フェイトとはやても羨ましいわ」

「なのはと世界を共有できるから?」

「そう、隣に居れるから」

「そっか」

 

 それからまた、沈黙が続く。けれど、それは重苦しく感じるようなものではなくて、むしろ真逆。その理由は、この三人が友達だから。だろうか?

 

「ま、こんなところね。一応言っておこう思って。男の子なんだから、女の子の愚痴ぐらい受け止めてくれるでしょ?」

「……承知しました。お嬢様、って?」

「似合ってないわよ?」

「わかってる」

 

 そう、このぐらいの軽口が叩けるぐらいは友達だった。

 

「あ、この曲って……」

 

 落ち着いた洋楽から、J-POPに曲が変わる。そして、その曲は……。

 

「はい。頼んで流してもらったんです」

「そっか。うん、やっぱりいいなぁ」

 

 目を瞑り、その曲に、調べに耳を傾ける。

 さすがに激しい曲は避けたのか、曲が変わっても落ち着いたそんな曲が流れる。

 いつもは声を明るい――ときには五月蝿いとも言える、アリサもその調べに耳を傾けていた。

 そんな落ち着いた雰囲気だったからだろうか。さきほどのなのはの言葉の影響もあったのかもしれない、どちらが本当なのか、カイトにも判別は着かなかった。

 

「愚痴を聞いた礼ってわけじゃないけどさ。頼みがある」

「なによ?」

「なんですか?」

 

 一呼吸置く。

 

「もし俺が居なくて、フェイトが一人でも大丈夫だ。そう思えたなら、フェイトに伝えておいてほしい」

 

「――――――――ってさ」

 

 

 

* * *

 

 

 

 アリサ達が歩いていくのを見ながら、一人呟く。

 

「早まったかな……?いや、でもあいつらなら信用できる」

 

 これで一つの懸念事項は消えた。まだまだ問題は山積みだけど、少しは肩の荷も降りたかなと思う。

 でも俺が抱えた問題は一つも解決していない。それどころか荷物はどんどん増えるばかりだ。

 

 とくに……時空管理局の勧誘、あれが厄介だ。

 今まではクロノとリンディだけだった勧誘が、エイミィ、なのは、その他大勢の管理局員にまで幅広く行われている。

 頼りにしてくれているのは、少しうれしく感じるものの、同時に鬱陶しく感じる。

 闇の書の件で力は貸さない。そう決めたはずだった。でも事情が変わって結局力を貸してしまった。勧誘が増えた原因でもあるんだろう。

 

「……頃合いかもな。もう――」

 

 その考えが勘違いであることを、伝える時が、きっと近づいている、そう感じた。

 

以上最終話でした。

あとは無印編でもあった、キャラ紹介をやってから次の話しへと移るって感じです。


 
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