第百三十七技 一方、その頃
キリトSide
俺は迷宮の奥から安全エリアへと戻ってきた。そこにはハジメとカノンさんが居た。
「出口、見つかったか?」
「……いや、無かった」
「こっちもよ。キリト君の方は?」
「いえ、こちらもです…」
なぜ俺達が出口を探しているのかというと、
ここら一帯は『結晶無効化空間』になっているようで≪転移結晶≫での脱出が行えなかったからだ。
そのうえ、昨日からずっと出口を探しているものの、一向に見当たらない。
「ハクヤは、まだか…」
俺とハジメとカノンさんに加えてハクヤも共にいるのだが、どうやら探索からまだ戻っていないようだ。
そこにハクヤが戻ってきた。
「ふぅ~、収穫は無しだ…」
「そうか……」
このエリアに来て既に丸一日が経過している。
迷宮内なのでメッセージを送る事ができないのが悔やまれる。
『生命の碑』で俺達の生存を知る事ができるのが、少しの幸いといえるだろう。
「とりあえず食事にしましょ。
動物型の堕天使モンスターからお肉がドロップしてあるし、少しの調味料なら残ってるわ」
そう言ってカノンさんはアイテムストレージから小鍋と小型のガスコンロを取り出し、調理を始めた。
ほんの二、三分程で完成したスープを俺達は食べていく。
そもそも、何故俺達がこんな脱出不能の状態に陥っているのかというと、簡単にいえば罠に掛かったのだ。
問題なのはそれの発動条件だ。
確かな証拠はないのだが俺はその条件がモンスターの一定数以上の討伐ではないかと推測した。
自慢などのつもりはないが、俺は罠に関する察知能力は高いほうだと自負している。
偶に感じ取る嫌な予感や不安感のことだ。だが今回はそれを感じ取る事は無かった。
しかし俺達がモンスターの群れと戦っている時、何体かの敵を倒し終わったが、
もう一体を倒した瞬間に俺達は強制的に転移させられてしまったのだ。
その結果がこの脱出不可能状態ということだ。まったく、ホントに厄介なことになった。
「少し休憩したら今度は四人で行動しよう。バラバラになりすぎるのも、あまりよくはないからな」
「「「ああ」」
「ええ」
俺の言葉にハクヤ、ハジメ、カノンさんは頷いた。俺達は食事をすすめて休憩をとることにした。
三十分後、探索を始めた俺達。探索を続けていて思ったのは…。
「この迷宮、かなり妙だな…」
「確かに、いくらなんでも
「……むしろ広い、というよりかは…」
「同じところに戻されている、わね」
俺の言うとハクヤもハジメも疑問に思ったようで、カノンさんの言葉に俺達は頷いた。
昨日から一日かけて探索を続けたというのにマッピングの成果もほとんどない。
「RPGで定番の決められた順番通りに進め、だな」
「モンスターと戦いながら、MAPをみて進むということか」
「地道な作業ね…」
「……だが、今はそれしかない」
俺の案にハクヤが言葉にし、カノンさんの呟きにはハジメが応えた。
間違った道を進めば、最初の位置に戻される。
つまり、正解を出すまでとにかく進むしかないというわけだ。
「とにかくやるぞ」
「「「了解」」」
俺達は『迷いの
迷宮の探索から十時間後。
俺達は肉体的かつ精神的にもボロボロになりながらも、一つの巨大な扉の前に辿り着いた。
「ボス部屋、だと…」
「エクストラモンスターの部屋ではないわよね?」
「間違いなく、ボス部屋ですよ…」
「……通常の迷宮と、こちら側の二つの扉があるのかもしれない」
俺、カノンさん、ハクヤ、ハジメと言葉にしていく。それを考えると、
「この先のボスを倒せば……元の迷宮に合流できる。そのうえで、76層の攻略が成功する…」
単純な答えだ。
だがそれはユニークスキルを持つ俺達とはいえ、たった四人でボスと戦わねばならないということだ。
既に時間は夜、今日の戦闘は不可能だ。
「今日はここで休もう。体を休めて出来る限り万全の状態で挑んだ方がいい。
残りの回復アイテムも限られているからな。幸いここはモンスターもポップしないし」
俺達は壁に背中を預けてからそのまま眠りについた。明日はボス攻略戦だ。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
はい、キリト達が居なくなった理由は条件付き強制転移の罠が原因でした。
しかも結晶無効化空間ですからね。
次回は一度アスナとリズの視点になります。
それでは・・・。
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第百三十七話ですよ。
消息不明になったキリト達の様子です。
どうぞ・・・。