No.508449

真・恋姫†夢想@リリカルなのは とある家族の出会い物語 美咲編

狭乃 狼さん

自己満乙な家族物語、今度は美咲でございます。

恋姫世界とも繋がっては居ますが、ほぼ9割がたはなのはのキャラメインのお話です。

それでよければ読んでやってくださいまし。

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2012-11-15 12:46:15 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:3542   閲覧ユーザー数:3114

 とある家族の物語 美咲編~祝福の風から~

 

 

 次元世界における新暦、65年12月。

 

 「全力全開!スターライトー……!」

 「雷光一閃!プラズマザンバー……!」

 「……ごめんな……おやすみな……響け終焉の笛!ラグナロク!」

 

 『……ブレイカーーーーーーーーーっ!』

 

 三つ超弩級集束魔法が、その巨大な物体へと一気に叩きつけられる。その凄まじい魔力の奔流に、それをすぐ傍で見ていた俺は、改めて思い知らされる。

 

 「……こいつらやっぱり、とんでもないな……」

 

 まあ今更って感じのしないわけでもないが、ともかく、その収束魔法を放った三人の少女の並々ならぬ全力の魔力をぶつけられたソレは、見事にばらばらとなり、その巨体を形成していた、膨大な魔力を含有したコアを露出。

 

 「長距離転送!」

 「目標軌道上!」

  

 『転っ送ーっ!』

 

 はるか上空、衛星軌道上に待機するかの船の正面へと、一気に長距離の転送が行われ、そしてほんの少しの後、ソレは一瞬の瞬きとともに、この世界から消滅した。

 

 それから少し後。

 

 『Ready to set』

 『Stand by』

 「ああ……短い間だったが、お前たちにも世話になった……」

 『Don't worry』

 『Take a good journey』

 「ああ……」

 

 それは、儀式。ベルカ式と呼ばれる三角形の魔方陣の上に立つ、その銀色の髪の女性、その彼女を、永久の旅へと送るための、葬送の儀式。静かに、そして厳かな空気の漂う中、儀式はゆっくりと進められていく。

 その時。

 

 「リィンフォースっ!」

 「っ!」

 「はやてちゃん?!」

 「はやてっ」

 「動くなっ!……動かないでくれ、儀式が、止まる」

    

 降りしきる雪の中、車椅子に乗った少女が、その女性の下へと必死に駆け寄っていく。そして地面の小さな突起、それにつまずき車椅子ごと倒れたその少女の下に、女性は静かに歩み寄り、泣きじゃくる彼女へとそっと手を添え、微笑みながら、訥々と想いの内を語っていく。

 

 「いいのですよ、主はやて。……私はもう、この世で一番、幸福な魔道書ですから」 

 「リィンフォース……っ」

 「主はやて、ひとつお願いが。……私は消えて、小さく無力な欠片へと変わります。ですが私の名はその欠片にではなく、貴女がいずれ手にするであろう新たな魔道の器に贈ってあげてください」

 

 少女、はやてとの最後の会話を終えた女性、リィンフォースが再び魔道陣の中央へと戻る。

 

 「主はやて……守護騎士たち……そして、小さな勇者たちよ……ありがとう……そして……さようなら……」

 

 かつて、闇の書と呼ばれた夜天の書の管制人格、祝福の風、リィンフォースは、そうして、永い永い旅の時を、静かに終えた。最後の主、八神はやての下に、己が最後の欠片を残して……。

 

 

 

 そしてこの時。

 リィンフォースの遺した小さな欠片を、剣十字の形のペンダントをそっと抱きしめるはやてを、その肩に手を置いてやさしく慰めながら、俺はひそかに、とある手段を講じていた。

 

 (……ちょっとばかし心苦しいけど、これだけは、避けて通れないイベントだからな……Ⅱが生まれないと、この先の歴史その物が狂っちまうし……)

 

 それにいつの日か、本当にいつになるかは分からないけど、これではやてたちと彼女を、再会させてやれる可能性が出来たし、な。

 

 (……その時が来たら、今日のこの日のこの事、みんなに平謝りしないと、な)

 

 

 

 ――――――――――――――――――そして。

 

 

 

 「……あれからもう、こっちで二年、か」

 

 外史宇宙の狭間、そのとある地点に浮かぶ一つの空間内。ユグドラシル、と、そう命名した俺の管理者としての観測空間。そこの最奥、空間のほぼ中心に創った特殊空間に、今、俺は肉体の衣を脱ぎ捨て、精神だけの存在となって漂っている。

 周囲にあるのは一面の闇。いや、正確には闇ではない。俺がただそう認識しているだけで、実質、そこに広がるモノを表現するならば、こう、言うべきだろう。

 

 “混沌”

 

 すべてのモノは混沌より生まれ、そして母なる混沌に還る。そんな俺の持論を基に、ユグドラシルの中心コアとして創生したのが、この原初の海にして混沌たゆたう所。

 

 『ヘルヘイム』

 

 北欧神話において、死者の国と表現されるその世界。その名をここに着けたのは、単にイメージ優先なだけの理由だが、ある種、言いえて妙な所になっているから不思議なものである。

 

 「……肉の器持つ生者はけして入れず、その器を脱いで始めて入るのが可能になるあたり、死者の国と言えなくも無いしな。……っと、モノローグの補填はともかくとして、と」

 

 このヘルヘイムには、ある一つの特別な役割の場所としての、その存在理由がある。それは、先ほども言ったように、ある種、ヘルヘイムの名にぴったりな役割だろう。

 

 『魂の集積所』

    

 あらゆる外史において、不遇な最期を迎えた魂が、俺との“契約”を交わすことを条件に、この混沌の海で眠る。それが、ヘルヘイムの役割の持つ一つ。そしてもう一つ、それに絡んだ別の役割。

 

 『魂魄の人工精製』

 

 ここにいる魂たちは、それぞれの理由の違いこそあるものの、そのほとんどが、魂となったその時点で、己が人格を失ってしまっている。無念さや悲しみなど、そう言った負の思念が極限まで達し、それがゆえに、生前の人格そのすべてを、“自ら”捨て去ってしまっているのだ。

 彼ら彼女らは、この混沌の海に入り込んだ時点で、すべてが一つに融け合っている。そして俺はその中から、一つの新しい魂を、まだ人格すらも存在しない、無垢で真っ白な魂へと人工的に錬成し、そして、その後専用ラボにある『人工子宮(クライン・イデオム)』の中でさらに洗練し、後、『ゆりかご』にて再び、新たな魂魄に人格を形成させていく。

 そうした過程を経て、俺の守護戦女神たちを、娘たちを誕生させていくわけだ。そして今、その中から新たな存在が生まれようとしている。五番目の人工魂魄、No.(クインク)となる、新しい存在が。

 

 「……よし。魂魄の形成成功、と。……あとは“本人”の望みどおり、人工子宮の中で“もう一人”の方と混ざらせて、ゆりかごで新しい人格を育てていくだけ、と。……身体の方ももうじき完成するし、さて、後はお披露目を何時にするか、ね」

 

 喜んでくれるといいなあ、みんな。“向こう”の時間で言えば、18年振りぐらいになるか?闇の書事件が終わってから。彼女、びっくりするだろうなあ。はは、今からその時の反応が楽しみだな。

 

 

 

 けど。

 

 ここで一つ、思わぬ事態が起きた。

 

 俺が、彼女と会わせようと思っていたうちの一人が、不慮の事故というか事件によって、魂そのものが消滅するという、そんな事件がおこったのだ。

 

 この時、彼女はすでに人格形成も完了し、新しい肉体に受肉して、ヴァルキュリアーズのNo.Ⅴとしての活動をすでに始めていた。後はもう、何時、例の一家と“再会”させてやるか、そのタイミングを見計らうだけだったのに、正直、彼女のことを言い出しにくくなってしまった。

 実際、その事件の起きたとき、彼女と元主だったその人物が、このユグドラシル内の居住空間である館、ヴァルハラの中にある作業用ラボで鉢合わせることになった時も、本人の希望もあって、彼女のことを話すには至らなかった。   

 それから少しして、先の魂を失ったその人物は、俺の娘、ヴァルキュリアーズのNo.(トレース)、蒔として新たな生を送ることになった。多少、その魂の構成には差異こそあれど、蒔がその人物、かつて夜天の書と呼ばれる魔道書の守護騎士、ヴォルケンリッターの一人であったシグナムと、ほぼ同一人物と言って差し支えの無い存在である、その事に違いは無い。何しろ、その魂の七割はシグナムそのものであるのだから、元シグナムの身体と蒔の魂の相性は言うまでも無く最高だった。

 唯一の懸念だったのは、器であるシグナムの身体の方に、かつて古代ベルカの融合騎として独立していたユニゾンデバイス『アギト』も、シグナムの身体に融合したまま何故か解除する事ができず、今では完全に、一つの新しい生命として、その身体に融け合っていることだった。

 けど、それも杞憂に終った。拒否反応が起きるどころか、蒔の髪の毛が、シグナムだった頃と違って完全な真紅になるほど、シグナムとアギトの身体は完全な融合を果たしており、蒔の魂もすんなりと受け入れたようだった。

 

 話を元に戻すが。

 

 その事件以来、蒔と、そして、かつてのシグナムの家族であるヴォルケンリッター、そして、その主である夜天の王、八神はやてとの関係は今の所とても良好だ。だがそれゆえに、俺は、No.Ⅴを彼女ら八神家の面々に会わせていいものかどうか悩んでいる。

 ヴァルキュリアーズのNo.Ⅴ、『美咲・ヒルドル・風羽』。

 彼女を八神家と会わせる事で、彼女らがシグナムたちのことを思い出し、悲嘆にくれてしまいやしないか、と。

 そして、俺がそんな事を悩んでいるとき、その事件は起きた。

 

 

 「え?私たちが……そっちの世界に?」

 「ああ、ちょっと一緒に来て手伝ってほしいんだ」

 

 ヴァルハラのリビングにて、円形状の大きなソファに腰掛けるのは、俺と八神家の面々の計五人。うちの連中は現在、席をというか、ユグドラシルそのものに居ない。恋姫外史のとある世界に、彼女らだけ先行して行ってもらっているからだ。

 

 「おい。手伝うこと自体はかまわねーけどよ、あたしらそっちの世界になんか行けんのか?」

 「そうよね。狼さんがはやてちゃんと結婚した後、管理者云々のことを知ってからは、このユグドラシルにはちょくちょく遊びには来てましたけど」

 「流石に完全に他の世界に渡ったことはない。我らがあの世界に行って大丈夫なのか?」

 

 上から順に、ヴォルケンリッターのそれぞれ、ヴィータ、シャマル、ザフィーラが、俺にそう問いかけてくる。まあ不安は分からんでもない。外史宇宙の狭間に浮かぶ、それぞれの管理者専用の観測空間までなら、さしたる問題もなく、どんな外史の住人だろうと渡っては来れるし、招くことが可能だ。

 しかし、完全に外史と外史の境界を越えさせるとなると、少々面倒な手続きが必要になってくる。とはいえ、それも相当前から準備さえしておけば、それほど問題になる事でもない。ただ今回のように、急な申請となると色々面倒なことになるのだが、そこはもう、後できっちり、書類の山脈と格闘すればいいだけのことだ。

 

 「それについては、お前さんたちは特に何も心配はいらんよ。あっちの世界に渡るための許可も、少々強引だったが取ってきたし、魔法もいつも通り使えるしな。……けどまあ、実際に向こうで人間相手に斬った張ったは起きないだろうがな……何しろ、そうなる相手がほとんど、居なくなっちまってるから、な」

 「どういうことなのですか?」

 「……シグナムとアギトの件は覚えてるな」

 『ッ!』

 

 空気が一瞬にして氷付いた。その俺の一言で、それまでまだどこか達観していたような雰囲気だったみんなが、あからさまに緊張の色をその顔に浮かべ、体をこわばらせる。

 

 「……あの時の犯人をな、俺も独自に追って居たんだ。みんなの世界はもちろん、恋姫世界のみならず、ありとあらゆる外史を精査して、な」

 「……どういうこと?まさか……」

 「……そのまさかだ、はやて。あの時、シグナムとアギトを殺した奴は、広域指定されたテロリスト集団の正体は……俺と同じ、管理者、だ」

 『!!』 

 

 

 シグナムたちの一件の後、何時も通り外史の観測を行っていた俺は、ある時奇妙なことに気がついた。外史の中には、さまざまな理由から消滅する、そういった外史もいくつかあるものだが、その中のいくつかの外史が、不可解な消滅の仕方をしていた。

 そう。『その外史の住人すべての“魂”が消滅』するという、本来ありえない手段で持って、だ。

 

 「外史ってのはだ、たとえ消滅することを余儀なくされた世界であっても、それは一つの物語が終焉を迎えた、ただそれだけの事であることがほとんどだ。そしてそこに居た住人たちは、記憶のすべてを一度洗い流され、次の新しい外史に生まれて、そこでまた生を繰り返すようになってる。だから」

 「……魂そのものが消えてなくなる、なんてことは決してない……か」

 「ああ。……その事に気がついた俺は、その外史の消えた順に、一つ一つ、何かしらの痕跡が無いか丹念に調べた。そして見つけたのさ。……外史の管理者だけが持つ、独特の波長をした“力”の痕跡を、な」

 「そしてそれを調べた結果」

 「ああ、連中が特定できた。……管理者の中には、肯定派と否定派と中庸派、その三派が居るってのが広義になってるが、実はもう一つ、その三派のどれにも属さない連中が居る。それが、“外法派”と呼ばれる連中だ」

 「外法派……」

 

 管理者になった者の内、それがどんな外史だろうと許容し、行き着く先を見届け、その外史の存続を強く願う、そう言った連中が、主に肯定派と呼ばれる。ちなみに、俺がここに当たるな。

 そして、あくまで正史にこだわり、そこから少しでも逸脱した外史を認めず、強制的な修復をしようとする強硬派の連中を、主に否定派と呼ぶ。左慈や于吉がこれにあたる。

 その他に、許容もするし否定もする。けど、完全に不干渉を貫き、それが存続しようが消滅しようが、ただ見てるだけという連中が居て、これを中庸派とよぶ。いわゆるROM専の連中がこれになるか。

 以上三者あると、一般には言われる俺たち管理者の派閥だが、実は、この三者がときに、派閥を超えてその手を結び、いつか撲滅したいと思っている連中が居る。それが、俗に外法派と呼ばれる連中だ。

 

 「外法派の連中は、とにかくすべての外史そのものを、認めない。誹謗中傷、実力行使、何でもござれで、個人の好き嫌いの枠を越えて、時にはリアルでも違法とされる手段をもって、すべての外史を消し去ろうと活動している。そこに理由は無い。叩いて叩いて叩きまくって、外史の創造される、されていくのを邪魔し、そうしていずれは完全に消し去ってしまうんだ」

 「……なんだよそれ。つまりなにか?そいつら外法派とかいう連中は、世界をなんとも思ってねーって事かよ?!そこに住んでるあたしらも?!」

 「……端的に言えば、そう言うこったな」

 

 だからこそ、どんなロストロギアを使ってるのかは知らんが、安易に、魂そのものの消滅、なんて手段を用いれるんだろう。

 

 「……ともかく、だ。その連中の一グループである連中が特に今目をつけているのが、『恋姫†無双』の世界と『リリカルなのは』の世界だ。そして連中は今、とある恋姫外史の一つで活動してる真っ最中だと判明したんで、今、雲や輝里たち(ヴァルキュアリーズ)が、その世界で連中を誘き出している」

 「なら早いとこ行こうぜ!シグナムとアギトの仇討ち、あたしらがやらなきゃ誰がやるってんだ!」

 「ヴィータちゃんの言うとおりです」 

 「主はやて」

 「ああ、分かっとるよ、ザフィーラ。狼くん、私らはいつでも行けるで。リィンもええな?」

 「はいですっ!」

 「分かった。それと、向こうに行く前に、全員バリアジャケットを展開しておいてくれ。すぐ、戦闘に入る可能性が高い」

 

 はやてたち全員の了解を得、俺たちはそれからすぐ、そのテロリストどものいる外史へ渡った。全員バリアジャケットを展開し、デバイスを持つ者はそれも始めから用意。今回は俺も、最初っから本気モード、つまり、牙の融合した俺本来の姿、龍玉世界の超サ○ヤ人3態の主人公と酷似したあの姿、だ。 

 

 

 

 そして奴らは居た。

 

 「あの連中が?」

 「そうだ。管理者の中でも、あまりに過激で行き過ぎた原理主義者の集まった、完全な犯罪者集団に今は成り下がった連中である外法派の、その使いっ走りども。現地で実際に行動をする役目を担ってる尖兵組の一つ。『U・S』……正しくは、『Utter(アター)society(ソサエティ)』、『完全なる社会』、だとよ」

 「完全なる社会……ふざけてやがる……っ!」

 

 管理者の儀礼服というか、正装といっていい道士服。それは連中もデザインは一緒だ。ただ、その色だけは、他の三派のように白ではなく、闇より深い黒一色になっているそれを着た集団と対峙する俺たち。

 華雄としての本来の姿に、管理者になった時のお祝いにと俺が送ったバリアジャケットと、デバイス化した彼女愛用の金剛爆斧を身に着ける雲を筆頭に、ヴァルキュリアーズとしての戦装束、『メギンギョルズ』をそれぞれに纏った娘たちが、同じくバリアジャケット姿のはやてたちとともに、俺の横にずらりと並ぶ。

 

 「雲。連中が使ってるロストロギアの正体、掴めたか?」

 「ああ。名もそのものずばり、『ソウル・バニッシャー』。あらゆる生命体の魂をその根幹から消滅させてしまう、ベルカ古王朝よりさらに過去に造られたやつだそうだ。貂蝉と卑弥呼のやつが、管理局の無限書庫でスクライアと共に一ヶ月かかってつきとめてくれた」

 「ユーノ君には感謝やね。あの二人と一緒に一ヶ月……私やったら絶対無理や」

 「まあ確かに、あんな形で中身は本気で乙女だから、ユーノも色々難儀したかもだが、後でなのはといい雰囲気になれるよう、しっかりセッティングしといてやるから、それで報酬ってことに」

 「……それだとまた、フェイトの奴と揉めそうだけどな」

 「それはユーノの奴の個人的な責任だ。なのはが好きなくせにフェイトにもその気のあるような態度をとってきたあいつが悪い」

 

 ユーノ×なのは×フェイト。

 これが俺の担当外史での三人の関係です。もちろんけっして公式ではありませんw

 

 「まあそれについてはこの際関係ないから置いといて。ソウル・バニッシャー、か。……輝里、この世界のみんなは?」

 「……魏・呉・蜀・そしてその他の勢力、すべてにおいて……」

 「みんな、やられた、か……」

 

 ……そうなると、時を置かず、この外史は消滅の憂き目を逃れられない、か。『本外史』ではない『枝外史』とはいえ、さすがに胸糞が悪くなってくる……っ!

 

 「……じゃあいいな、みんな。これからあの馬鹿どもを駆逐する。奴らの持ってるロストロギアのことは気にしなくていい。……今から使えなくしておく」

 「使えなくしておくって……どうやって?」

 「この日のための新発明、今日やっと完成したんで持ってきたのさ。指定した空間内において、こちらの指定通りの効果を、無条件の絶対効果として対象に強制発動する、俺様特製結界……その名も」

 『その名も?』

 

 

 

 「特殊結界装置一式、“ご都合主義万歳”発動!……あ、ぽちっとな」

 

 

 

 ご都合主義万歳。

 もう皆さんにはよくご存知になっていただけているであろうこの装置。一定空間内における事象、そのすべてにおいて、こっちの都合どおりな効果を強制的に付与する、この俺の一大発明だ。といっても、この時のはあくまで試作型に過ぎないんで、効果の付与対象は一つだけに限定されてしまうけど、それでも、連中の持ってるロストロギア、ソウル・バニッシャーとやらを封印するには十分。

 後は直接、みんなでO☆SHI☆O☆KIをかますだけ。というわけで。

  

 「よっしゃいくぞアイゼン!ギガントシュラークッ!!」

 「走れ鋼のくびき!でいりゃああああっ!」

 「クラールヴィント、皆を守ってっ!」

 「よっしゃ、私らもいくで!リィン、ユニゾンや!」

 「はいです!」

 「……来よ白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ!フレース・ヴェルグ!」

 

 はやてたちヴォルケン組が空から次々と技を放ち、外法派の連中の使っている傀儡達をそれはもう見るも無残に粉砕していく。そして俺たち地上組は、その空から降り注ぐ魔力の雨の中を縫い、地上を縦横無尽に駆け回って、こちらもまた盛大に暴れまわっている。

 

 「我が金剛爆斧、生まれ変わって得た雷神の力、たっぷりと味わうがいい!いけえっ!雷撃爆衝、トールハンマーっ!!」

 「グラムっ!カートリッジロードっ!舞えよ氷結!ドラウプニールっ!!」

 「行くでティルビング!疾れよ烈風!フレーヴァングっ!!」

 「真紅の騎士、蒔ゲイルス・ケルグが魂、炎の魔剣レーヴァテインの地獄の炎、しっかり味わうがいい!猛れ炎熱!炎龍……一閃っ!」

 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!潰れろ潰れろ潰れろ潰れろ潰れろッ!グゥアオオオオオオオオンンンンンンッ!!」

 

 とまあ、おれもちょと暴走気味に、みんなと一緒になってクグツどもを吹き飛ばしつつ、それらを操る術者、すなわち外法派の尖兵であるその連中を探す。しかし。

 

 「……クソッ!連中、どこに居やがるッ!?」

 「狼くん!こっちからも、どこにもそれっぽいの見当たらへんよ!?」

 「ちっ。ご都合主義の効果、ロストロギア封じにしか使えてないからな……連中の術までは封じれていないから、隠形法でも使ってどっかに隠れてやがるのか……?!」

       

 空か見ているはやてたちにも、連中の姿はどこにも見えず。シャマルの広域探査にも、今のところ引っかかってこない。もしかして、もうとっくに逃げちまったか?

 

 「っ!とうさまっ!膨大な魔力反応を検知っ!」

 「美咲?」 

 「これは……はやて嬢たちの……すぐ、そば?!」

 「なにっ?!」

 

 ヴァルキュリアーズのNo(クインク)、美咲のその言葉に、俺はその視線を上空のはやてたちへと慌てて向ける。そこに見えたのは、はやてたちの背後、空にはしる一筋の亀裂、だった。

 

 「まさか、次元の向こう側に身を……っ!まずい、はやて!ヴィータ!シャマル!ザフィーラ!皆そこからすぐに離脱を……っ!」

 『え?』

 

 

 

 亀裂がさらに大きくなり、ガラスの砕け散るような音を立て、そこに、巨大な虚無の裂け目が姿を現す。そしてそこに生まれたのは、いつかのあの日、はやてたちと共に消し去った、あの、闇の具現。

 

 「闇の書の闇……その、暴走体……何故、何故あれが……“私”の、過去の“罪”……」

 「美咲!あれはお前じゃない!あんなものは、あそこのアレは連中が造った、唯の道具だ!」

 「とう、さま……」

 

 次元の裂け目から現れたそれは、女性のフォルムをした頭部を持つ、いくつもの生物の特徴を備えた巨躯のキメラ。かつて、闇の書の闇と呼ばれた暴走プログラムが、その魔力で実体化した異形。それは今、まさにはやてたちを喰らわんと、彼女らへとその巨大な顎を開いて迫っていく。

 

 「クソッ!空の飛べない俺じゃ間に合わん……ッ!美咲ッ!“封印”解除を許可する!」

 「え?!」

 「早く行けッ!はやてたちを、お前のもう一つの家族を守れ!そのために、お前は現在を選択したんだろうがッ!」

 「は、はいッ!……“リンカーコア”、封印開放……!“スレイプニール”……羽ばたいて!」

 

 そして、彼女は“飛翔()んだ” 。

 

 「う……そ……」

 「そんな……」

 「ほんと、かよ……」

 「これは……」

 

 異形とはやてたちの間、そこに、突然割って入ったのは、一つの影。銀色の髪。細くスレンダーな体躯。背に漆黒の四枚羽を広げたソレは、ベルカ式の三角形魔方陣をその手に展開し、異形の巨大な顎を押しとどめた。

 

 「……間に合って、良かった」 

 「美咲……ちゃん?え?いやせやけど、その……姿、は」

 「……ッ……遠き地にて、闇に沈め……『デアボリック・エミッション』……ッ!」

 

 美咲のその詠唱により、彼女のもう片方の手に展開された魔方陣から、巨大な闇の玉が発生。美咲はそれを異形へと躊躇なく放ち、かの者をはるか地面へと叩きつけた。

 

 「まさか……今のって……」

 「……詳しいお話は、後で。……まずは地上に居るとうさまたちと協力し、あの異形を潰しましょう……“主はやて”」

 「ッ……!分かった。後でちゃんと、話してもらうで?それじゃみんな、やるで!」

 『応ッ!』

 「美咲ちゃんは私に合わせて!“ラグナロク”、撃てるな?」

 「はいっ……!」

 「ほな行くで!……『響け、終焉の笛!』」

 

 『ラグナロクッ!!』

 

 はやてと美咲。二人が同時に放ったその魔法、ラグナロクが、異形の巨躯に直撃。それに合わせ、ヴィータたちヴォルケンリッターと、地上の俺たちも一気に全力攻撃を叩き込む。

 

 戦いは、そうして終わった。

 

 

 結局、例の外法派の連中には逃げられてしまった。唯一つだけうれしい誤算だったのは、そのとき倒した闇の書の闇を模した異形、そのコアになっていたのが、件のロストロギア、ソウルバニッシャーだったことで、俺たちはそれを確保。しっかり封印することができたことだ。

 何で連中がこれをコアに使ったのか、それもすぐ判明した。ソウルバニッシャーは、魂を消滅させるロストロギアでは正確にはなかった。対象の魂、それを消滅させるのではなく、その内に取り込んでいたのだ。正直、よくまああれほどの量の魂を、百数十にも上る世界の人間の魂を収納出来ていたと思うが、なんにせよ、取り込まれていた魂は全て解放し、肉体のまだある者は元へ、そうでない者は次の転生へと無事送ることが出来た。

 シグナムとアギトに関しては、一時、俺が預かることにした。二人の本来の身体はすでに蒔の身体として混ざり合ってしまっているため、そこに戻すなんてことはさすがに無理があるんで、二人にはいずれ、別の身体を用意する予定だ。 

 はやての夜天の書に新しいプログラムを造り、そこに、シグナムのデータを移植することで、彼女の方はおそらく新しい身体をそれで構築できるはず……だ。アギトには、ホムンクルス技術で造った身体を用意する気で居る。寸分違わぬ身体は十分産み出せるだけの経験と実績はあるからな。一級錬金学士の肩書きは伊達じゃあないのさ。

 さて、後は残る最後の問題。

 

 「……リィンフォース……なんか?」

 「……はい、主はやて……そして騎士たち……」

 「リィンフォース……リィンフォース……っ!!」

 「ぐしっ……おい狼?ほんとに、ほんとにこいつ、あのリィンフォースなのか?そっくりさんとかそういうんじゃなく?!」

 「……半分だけ、な」

 「半分?それってどういうことですか?」

 「……はやてたちの世界で言うところの、十八年前。あの闇の書事件が終わった後、彼女が、リィンフォースが消滅の道を選び、なのはとフェイトの儀式で天に帰った時、な。……実はな、その、怒らないで聞いてくれな?……リィンフォースの魂を、俺、ヘルヘイムに連れ帰っていたんだ」

 「え?」

 

 ヘルヘイムは魂の集積所。俺と直接契約を交わした、無念の残る魂たちの眠るところ。そこに、俺は天に昇ろうとしていくリィンフォースの魂と交渉し、何時になるかは分からないが、もう一度はやてたちと会えるようにするという条件で、彼女をあっちに連れて行った。

 で、ヘルヘイムの中で眠る他の魂の中から、彼女と相性の良さそうな魂を選定して、リィンフォースと、そしてそのもう一つの魂とも十分に話し合った末に、二人を一つの新しい魂魄に再精製した。それが、今の美咲の魂というわけだ。

 

 「だから、今の美咲は、リィンフォースであってリィンフォースでなく、けれどリィンフォース自身でもあり、もう一人の方、恋姫世界では劉琦っていう名前だった少女でもあるし、そうでもない。けど、美咲という真名を持つその少女でもある。で、彼女のために創った今の身体だが、何の因果かリンカーコアが生まれてな。普段は封印してあるが、俺の許可があれば何時でも解除して魔法を使えるようになる」

 「……封印してる理由は?」

 「……昔のはやてとほぼ同じだ。稼動してるとな、リンカーコアが、こいつの身体を蝕むんだよ。魔力の過剰摂取症らしい。だから普段は封印して、その病状を抑えてる。ユミルの聖水で少しづつ治療して行ってるが、担当医の美紗の奴から見ても、まだまだ時間がかかるらしい」

 

 まあそれもあって、彼女には長らくユグドラシルの中で、あんまり外には出ない生活をしてもらっていたわけだが。美咲の管理担当区域であるヴァナヘイムは、豊饒の大地の名の示すとおり、療養にはぴったりな環境が整っているんで。

 

 「……以上が、美咲、リィンフォースに関する俺の話の全てだ。……今まで隠してて悪かった。すまんっ!この通りだ!」

 

 

 「……なんも謝らんでもええよ」

 「……はやて?」

 「確かに、十年以上も隠し事されていたんは、ちょお、腹立たんでもないけど、全部、わたしらやリィンフォースのため、やったんやろ?なら、それでええよ」

 「はやて……」

 「まあそれでも、どうしても狼くんが謝りたいっちゅうんなら、そやね……翠屋貸切での食べ放題飲み放題パーティでもしてもらおかな?」

 「え」

 「そりゃいいな。シグナムとアギトが復活したら、リィンフォースのお帰りパーティも兼ねて、『みんなで』揃ってよ」

 「あの、みんな、っていうと……?」

 「もちろん、ここに居る全員と、あと、六課の全員、それから」

 「ドクターたちも呼んでもいいかもですね。最近はすっかり更正して、まじめにお仕事に励んでいるみたいですし」

 「ありさやすずか達ももちろん呼ばんとな。あは、なんや同窓会みたいになりそうやね」

 「……そ、そうですね……」

 

 あ。俺、破産けてーい。

 

 「……けど。まずはその前に、この場でしておかなあかんことをせな、な」

 「?」

 「……お帰り、リィンフォース……」

 「……はい、主はやて……」

 

 ぎゅっと。十数年ぶりに再会し、そして抱きしめあう、はやてとリィンフォース。他の皆は、その姿を見て涙ぐんでいる。……ま、いいもの見れたし、ちょっと(?)の出費ぐらい、甲斐性見せるのが男の務めかね。

 

 ちなみに。

 

 後日、見事復活したシグナムとアギトを交えての、翠屋における原作キャラ(なのは組プラス恋姫組)ほぼ全員集合の大パーティは、店の材料のみならず、周辺の商店街、その全ての食料品店が軒並み品切れを起こすほどに盛り上がったことだけ、伝えておこう。

 

 ……はあ……通帳が寒い……な……とほほ。

 

 えんど

  

 

 捏造設定全開ですいませんwww

 

 そして、恋姫の本編ssが全然書けなくてごめんなさい。

 

 ちまちまと一応、仲も北も書いてはいるんで、11月中にはなんとか、どっちかは公開できると思ってます。

 

 さて、うちの家族物語、次の予定は本編にチラッと名前だけ出てきた、美紗の予定。

 

 相方の誰かさんも出すかどうか、どうしようかな?w

 

 では今回はこの辺にて。

 

 再見~w

 


 
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