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超次元ゲイムネプテューヌ『女神と英雄のシンフォニー』チャプターⅡ第4話『強襲!黒の敵意』

月影さん

シアンの工場で出会った。荒事専門の何でも屋、バウンティーハンターのエミル=ヴァーミリオン。彼の提案でケイト達はアヴニールの仕事を受ける事となった。アヴニールの代表サンシュ、人の物造りを真っ向から否定する彼の態度にアヴニールは倒すべきだと決意を固めるネプテューヌ。しかし、その時アヴニールを倒す唯一の手段たる、総合技術博覧会の中止の報が流れたのだった

2012-11-13 21:34:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:744   閲覧ユーザー数:733

 総合技術博覧会の中止、それはアヴニールに対抗する機会が失われたのと同義でありシアンを宥めるのにかなりの時間を有した。ようやくシアンが落ち着きを取り戻した時には即に日も暮れており、エミルも自分の座ってた席に食事代を残して姿を消しており、結局、その場はなし崩しに解散となってしまった

 

 

「……シアンさんからの仕事は、どうするです? 地図だけ貰っちゃってるですけど」

 

「しばらく、そっとして置くしかないわ。そっちはほとぼりが冷めた頃に行って見るとして……それより」

 

 街の外の草原を歩くケイト達、途中、コンパが心配そうな顔で、アイエフの方を振り返り、アイエフも受け取った地図に目をやりながら答えた。と思ったら地図をしまい、不機嫌な顔になったかと思うと

 

「鍵の欠片のヒントだってまだみつかってないのに! なんで遭難者の依頼とか二つ返事で引き受けちゃうの!?」

 

 アヴニールの事はひとまず置いておく事となり、本来ならば鍵の欠片探しに精を出すところ、自分達の泊まってる宿屋の宿泊客の一人が既に何日も戻ってきてないらしく、アイエフが事情を知った時には既に捜索を引き受けた後だった

 

「世界を救う為とはいえ、目の前の人を放っては本末転倒です! お爺ちゃんが言ってました。千里の道も一歩から、ですぅ! 宿屋の人凄く心配してたです。街の外にはモンスターさんもたくさんいるですよ。急いで見つけないと、食べられちゃうかもです!」

 

「食べられたら食べられたでいいじゃない。自然の摂理よ……ったく。あんまりのんびりしてると、手引いちゃうからね!!」

 

「まーそうむくれない、むくれない。あとで雨でも買ってあげるからぁ! それよりその子って、どんな子なの? 特徴は?」

 

「水色の服を着た小さな女の子で、垂れ耳ウサギの帽子を被ってるのが一番の特徴だって言ってたです」

 

「ウサギの帽子に、水色の服、か。この先の洞窟に入っていったんだな?」

 

「ハイです。本人がそこに向かうって言ってたです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレは、モンスター……もう死んでるわ。大丈夫だから! 隠れてないで、はやくこちに来てよ」

 

 洞窟に潜ってしばらく、広く開けた場所が見えてきたので、ケイトとアイエフが先行して様子を見に行った。共に武器を構えながらその場所に入るとそこには大量のモンスターが死体となって倒れていた。その異様な光景を疑問に思いつつも、アイエフは後ろを振り返り、隠れているコンパとネプテューヌに声を掛けるも

 

「ダメダメダメ!! 今回はアイちゃんとケイトに一任するから適当な結論出して閉めちゃって! 私とコンパはここで静観してるから!!」

 

「こ、子供探しを再開したくなったら言って欲しいですぅ!!」

 

「散々倒してきたくせに……あの二人は。モンスターの死体なんて見慣れてるでしょ!?」

 

「とはいえ、この倒され方は見慣れたものではないけどな」

 

 近くに転がっていた死体の傍にしゃがみ込んで、ケイトは眉をひそめる

 

「ええ、鋭利な切り口に大口径の焼け跡。どう見ても、この大陸の武器って感じじゃない。プラネテューヌの先進兵器、ともちょっと違う」

 

 普通の剣でここまできれいな断面図が見えるほどの斬撃は出せない。もしできるとしたら、それは使い手が余程の剣豪か、もしくは切れ味が尋常じゃない剣が使われているぐらいだ。後者に関してはラスティションの技術力じゃ不可能だし、プラネテューヌではビームサーベル等の光学武器がメインとなっている。そして光学兵器ならば、断面図に焼け跡が見えてもおかしくない

 

「ぞっとしないな。こんだけの腕前を持った奴が居る。しかも、血の固まり具合からして、ここで大立ち回りが行われてそれほど時間も経って……」

 

「どうしたの?」

 

「何か……来る」

 

 ケイトがモンスターの死骸から奥の方に目を向けると、そこから彼女は現れた

 

「一般人? なにしてるの、こんなところで」

 

 黒のボディースーツに、白い背中の辺りまで伸びたロングヘアーに水色の瞳、その瞳には丸に縦棒を重ねたPCの電源ボタンに付いてるマークの様な模様が浮かんでいる。彼女の背から現れている鋭利な三対の羽。そして腰や肩辺りに非固定式で浮遊している機械の様のなパーツに、真ん中部分が空いた、白い刀身をした巨大な剣を片手で軽々と持っている。細かい部分、色合いは違うもののその雰囲気は変身後のネプテューヌと酷似していた

 

「そ、それは私のセリフよ! 貴女何者なの。何しに来たのよ、こんな何もないところで!!」

 

「街の宿屋に泊まっていた行方不明の遭難者を探しに来たのよ。それより私と同じ様に仕事を受けた子が居たはずよ? ネプテューヌって言うの。知らない?」

 

 その言葉にアイエフとケイトは黙り込む。どうやら目の前の彼女はネプテューヌを探している。しかし、プラネテューヌであったあの魔女のオバサンの件もある。ヘタに引き合わせるのが必ずしも正しい選択とはいえない。とりあえず、知らない振りをして、それとなく事情を聞いてみようと思った矢先――

 

「うわー! 何!? すごいカッコイイよ、アイちゃんの知り合い?」

 

 この謎の女性の姿に惹かれて、目を輝かせながらネプテューヌが駆け寄ってきて、それから遅れてコンパもネプテューヌの横に並んだ

 

「私のじゃなくて、ネプ子の知り合いでしょ? ……このヒト、ネプ子の名前知ってるわよ。変身ごとちょっと似てるし……どういう関係なの?」

 

「うぇえ? だってぜんぜん見覚えないよ? ごめん、どっかで会ったかな……?」

 

 ネプテューヌが一歩前に出て相手の顔をまじまじと見つめるも、やはり記憶には無く。やっぱり判らないと言う表情でアイエフの方を振り返る

 

「……そうね、下界だもの。それに部外者の前だし知らないフリをして争いは極力避ける……。“人型”のネプテューヌにしては真っ当な判断だわ。だけど……私がわざわざ顔を見せる為だけにここまでやってきたと、思う?」

 

 その時、相手の雰囲気が一変。手に持った巨大な長剣の切っ先をネプテューヌに向ける

 

「決着をつけるわ、ネプテューヌ!!」

 

 距離を詰め、その剣をネプテューヌに向かって振り下ろす。

 

「ねぷっ!?」

 

 突然の事で、一瞬だけ反応が送れ、ネプテューヌはその場から飛び退いてどうにか攻撃を避ける

 

「逃がさないっ!!」

 

 そこに更なる追撃が迫る。それを――

 

「プロセッサユニット、装着っ!!」

 

 変身時の発光。相手は思わず追撃の足を一瞬だけ止める

 

「全く……この間といい今回と言い。なんで行く先々で狙われる事になるのかしら……」

 

 プラネテューヌでは、変なオバサンに今回は自分と似た雰囲気をもつ相手に。しかも、自分を狙って襲ってくる。 げんなりした表情でため息を吐いてから改めて太刀を構える

 

「とは言え、私もそうやすやすとやられる訳にもいかないの。悪いけど、本気で行かせてもらうわ」

 

「やっとその気になったわねそれじゃあ……っ!?」

 

「俺たちを無視するなってのっ!」

 

 その時、ケイトが跳躍から落下の勢いを乗せて棒術具を振り下ろし、相手はそれを剣で受け止め、一瞬の均衡の後、ケイトを押し返す。

 

「全く、いきなり押しかけてきて、いきなり仕掛けてきて、そう言うの流行ってるのか? ここじゃ」

 

 空中で姿勢を正してそのまま着地。改めて棒術具を構える

 

「なによ、部外者は……」

 

 そこで突然相手は言葉を止め、ケイトの事を真剣な目つきで見詰めている

 

「何だよ……?」

 

「いえ、なんでも無いわ」

 

(彼が、そうなのね……)

 

 彼の親友だと言うのであれば、確かに巻き込みたくは無い。自分の事を知らない辺り、恐らくはまだそこまで深くは踏み込んでいない。だったら――

 

「悪い事は言わないわ……あなた、ネプテューヌと関わるのはやめておきなさい」

 

「なっ!?」

 

 

 相手からの発言にネプテューヌは驚愕、ケイトは表情を更に険しくする

 

「忠告してあげているのよ。ネプテューヌと深く関わりあいになるのなら、それ相応の覚悟がいるわ。生半可な覚悟で関わる様なら確実に後悔する」

 

「ふざけないでっ!! いきなり何を言い出すのよ!? 貴女なんかにそんな事言われる筋合いは無いわっ!!」

 

「そっちから押しかけてきておいて、ずいぶんといきなりな事言うな。あんた」

 

 驚愕から激昂へと感情をシフトさせたネプテューヌが言葉を荒げると、相手はそんなネプテューヌノ反応を見て苦々しい表情へと変えた

 

(マズイわね。こうして見る限り、ネプテューヌは既に意識し始めている。このままじゃ……)

 

 間違いなく、目の前の少年は自分たちに巻き込まれる。それも決して逃れられないレベルに

 

「そう、なら仕方ないわね。だったら……」

 

 相手は改めて剣を構えなおす

 

「見せてあげるわ。私たちに関わると言う事がどう言う事か……」

 

 そして、ケイトと間合いを詰め、一閃……。ケイトは棒術具で防御の姿勢を取っていたが、その目は驚愕で見開かれていた。そんなケイトを彼女は首だけを後ろに向けて一瞥

 

「……トルネード、チェイン」

 

 軽く指を鳴らした瞬間、ケイトの胸と腕が切り裂かれた……否、意図的に斬撃を浅くしたのか、切り裂かれたのは服のみで、最後に頬には薄く斬り傷が出来、血が一筋流れ落ちる

 

「言っとくけど、私の本気はこんなものじゃないわ。これ以上、関わるなら命の保障はしない」

 

 そして、武器の構えを解いたかと思うと宙に浮き、背を向ける

 

「忠告はしたわ。どうするかは後は貴方次第、賢い選択をする事を期待しているわ」

 

 そう言い残して彼女は立ち去り、ケイト達は余りの出来事に全員が言葉も無しにその場に立ち尽くしているしかなかった

 


 
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