No.507259

真・恋姫†無双 倭√ 第五倭

旅立ちの前日

2012-11-12 01:40:47 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:2910   閲覧ユーザー数:2264

第五倭 別れ

 

黄巾の本隊が壊滅した、という情報はすぐさま大陸中に知れ渡った

 

相変わらず地方で小規模な黄巾の残党が暴れているらしいが

 

それも次第に鎮静化してくのであろうと言う事

 

劉備は平原の相に、曹操は西園八校尉の一人に任命されたらしい

 

それに孫策達の名前もちらほらと聞こえる様になって来た

 

で、どうして俺がそんな事を知っているかと言うと、

 

「で、皆注文は?」

 

お決まりになったこの台詞

 

「いつもの頼むわ~」

 

「私もいつものだ」

 

「わ、私は倭風ご飯で」

 

「ボクは海鮮炒飯」

 

「恋は……いつもの」

 

「ネネもいつもの!」

 

それぞれの注文を伝票に書く

 

「っと了解、それじゃあ少し待っててくれ」

 

厨房へ向かう

 

頭に布を巻き、髪の毛が入らないようにする

 

包丁は……研いである

 

材料も……OKだ

 

火の準備も出来てるし、ご飯も炊いてある

 

頭の中で調理手順を確認し、いかに効率的に作るか考える

 

「よし、じゃあ一丁やるか」

 

 

黄巾との一戦を終えた夜

 

雪蓮は兵達を労うために宴を開いた

 

宴と言っても大規模な物ではなく火を囲んでのささやかな物である

 

後数日、城に戻るまで頑張ってね! と言う意味合いが強いこの催し

 

呉の将達は部隊へ労いの言葉を掛ける為に、それぞれの部隊の所へ出向いて行った

 

そんな中、俺もなんとか亞莎に助けてもらいながらその役目を終え

 

人目の少ないところまで来ていた

 

「疲れた……明日は筋肉痛か」

 

ふと心に思っていた言葉が出る

 

鍛えているとはいえ、流石に疲労が溜まっているのがわかる

 

筋肉痛が来るようじゃまだまだか……明日からのトレーニング内容考えないとな

 

そんな事を考えながらその場へ座り込み刀の手入れを始める

 

今日、この瞬間も心臓が動いているのもこの刀があったからこそ

 

感謝の念を込めながら刀の手入れをする

 

 

 

「それにしても、今日の一刀は凄かったですね!」

 

目を爛々と輝かせながら話すのは我が主、蓮華様

 

「はいー最後は危ないところでしたけどねー、あれだけの数を前に戦線を維持できたのは凄いです~」

 

胸の上に杯を置きながら同意するのは、穏

 

「まぁ、一刀にしては上出来じゃない? あ、冥琳、もう一杯」

 

この酒と同じように辛口なのは呉の王、雪蓮様

 

「儂にも一杯貰おうかのう、後、策殿、少し辛口やすぎないかのう」

 

「もうありません、城まで我慢してください、後、祭殿に賛成です」

 

呉の軍師周瑜殿と祭殿が一刀の肩を持つ

 

「え~もう無いの~、なによー冗談よ冗談」

 

不満そうな顔をなさりながらも心なしか嬉しそうな雪蓮様

 

ぐいっと杯の底に残った滴を煽られる

 

「でも、遠くから見ても一刀さんの動きは凄かったです! ね、亞莎」

 

「うん」

 

二人並んででチビチビ啄んでいるのは明命と亞莎

 

「思春は?」

 

「わ、私ですか」

 

「そうよー彼を連れてきた思春はどう思うのよー?」

 

「……一刀にしては問題無かったかと」

 

「思春が褒めるなら納得じゃろ?」

 

「えーでも思春、一刀に甘々だからなー」

 

「な!? 何を言い出すのですか雪蓮様!」

 

「だってそうじゃん! 一刀にはご飯ご馳走したりしてたんでしょー?」

 

「な!? そ、それは一刀がお金が無かったから貸という形で……」

 

「そういえば思春殿、途中から一刀って呼んでましたよね」

 

「な、何を言い出す明命!」

 

「だって今さっきも一刀って、昨日まで北郷だったのに」

 

「そういえば……」

 

「あ、あれは勢いで……」

 

「どういう勢いなのか、私に教えなさい」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながら近づいてくる雪蓮様

 

「でも、気持ちは分かります、今日の一刀様は凄く格好良かったです」

 

顔を真っ赤にした亞莎が急にそんなことを口走る

 

何の気持ちだ

 

「亞莎は今まで一刀さんを一番近くで見てたもんねー」

 

「よね、明命!」

 

「うん!」

 

若い二人が意気投合する、いや私もこの中では若い部類に……

 

祭殿と目が合う

 

「思春」

 

「はっ!」

 

「言わずとも良い、今日のあ奴は誰が見てもいい男だったぞ」

 

……何か勘違いしているようだが、良いだろう

 

さっきの考えを知られるよりは

 

「思春もそう思う?」

 

蓮華様が心配そうに聞いてくる

 

「はい、私もそう思います」

 

「よ、良かったー」

 

 

「でも一刀って客将なのよねー、いつか出て行っちゃうのよねー」

 

シーン

 

さっきまで盛り上がっていたのがウソのように静まる

 

「あ、あれ?」

 

「雪蓮……」

 

「な、何よ冥琳! その眼は」

 

沈黙が続く

 

やはりそれぞれ思う気持ちがあるのであろう

 

今の沈黙でそれが分かった

 

「な、何よ静かになっちゃって! だ、大丈夫考えがあるから」

 

「ほう、それはなにかな?策殿」

 

期待をしていなさそうな祭殿

 

「一刀が呉で家庭を作ればいいのよ! それなら妻を置いてここから出ていくなんてこともないでしょ!」

 

それぞれが反応をする

 

同じなのは、それぞれが負の表情では無いと言う事だけである

 

「なるほどのぅ」

 

その手があったか! と言わんばかりの反応をする祭殿

 

「つ、妻……」

 

顔をさらに真っ赤にする亞莎と明命

 

隣の蓮華様を横目で見る

 

蓮華様も顔を真っ赤にしてなにか呟いている

 

冥琳殿と雪蓮様はふふ、と笑いながら高みの見物を決め込んでいらっしゃる

 

「そもそも、一刀さんって好きな人いるんですかね~?」

 

瞬間、胸が高鳴る

 

一刀の好きな人

 

それを考えるだけで、胸が張り裂けそうになる

 

なんなのだ、この気持ち

 

「思春、一刀を探してきなさい」

 

「はっ」

 

雪蓮様の一声により一刀を探す

 

 

 

 

途中、この気持ちの正体に気付く事は無かった

 

 

刀の手入れがひと段落つき、空を見上げる

 

張角姉妹を生け捕りにし、黄巾の首謀者が倒れた以上

 

この黄巾党の騒ぎも沈静化するだろう

 

歴史通りに行けば、そろそろ群雄割拠の時代に突入する

 

「どうした? こんな所で」

 

急に声を掛けられる

 

「うぉっ!」

 

振り返るとそこには、思春がいた

 

「どうしてこんな所に居る」

 

何故かちょっとご立腹な思春、なにかあったのか?

 

「ちょっと1人になりたくてね」

 

「そうか」

 

隣に立つ思春

 

「……」

 

「……」

 

座っている俺の横に、立っている思春

 

このシーンはどこかで見た気がする

 

そう、俺が呉の町で仕事が見つからず困っていたときの事だ

 

野宿しよう、そう思っていた所に思春はやって来てくれた

 

あの後食べさせてくれたごはんの味、今でも鮮明に思い出すことができる

 

それから色々な事があり、色々な人と出会うことが出来、そして色々な事を学ぶことが出来た

 

自然と呉での生活の事を思い出す

 

目が熱くなり始めたので考えるのを止める

 

流れる沈黙、このままこうしているのも悪くは無いが

 

何か用が合ってここに来たのであろう

 

話を振る

 

「思春はどうしてここに? 蓮華の護衛は良いのか?」

 

「あぁ、蓮華様なら他の将達と飲んでいる」

 

「そうか、思春は良いのか?」

 

「北郷を呼びに来たのだ、皆北郷が来るのを楽しみにしているぞ」

 

「そうか、それは皆に悪いな」

 

腰を上げる

 

「なぁ、北郷」

 

「ん?」

 

「このまま、呉にいないか?」

 

 

 

中腰になったまま思春の顔を見つめる

 

「な、なんだそんなに見つめて」

 

「いや……驚いただけだ」

 

浮いた腰を地面に付ける

 

思いがけない言葉を掛けられ、動揺を隠すのが精一杯だ

 

「……で、どうなんだ?」

 

話を続ける思春

 

「どうって言われても」

 

「私は、北郷に居て貰えると嬉しい」

 

思わぬ言葉に彼女を見上げる

 

真っ直ぐで真剣な目で見られて心拍数が上がるのを感じる

 

「はは、思春にそう言って貰えてうれしいよ」

 

表情には出さないが内心かなり嬉しい

 

このタイミングで、あの思春にここまで言われて心が揺れ動かない人間がいたら教えてほしい

 

「それじゃあ……!」

 

嬉しそうな思春

 

「思春、北郷は見つかったか」

 

祭さんが思春を見つけてやってきたようだ

 

ナイスタイミング祭さん!

 

「祭さんが呼んでる、行こう思春」

 

さっと立ち上がり、思春の手を取って祭さんの所へ向かう

 

「あ、お、おい!」

 

「早く思春!」

 

ギュッと手を握られ、手に温もりが一層強く伝わる

 

溢れ出しそうになった感情を抑え、祭さんの所へ向かう

 

もう、限界かもしれない

 

 

 

拷問のような事情聴取をなんとか逃れ

 

明日の為に皆がそれぞれ幕舎に戻った時を見計らい雪蓮の幕舎へ出向いた

 

「雪蓮、入るぞ」

 

「来る気がしてたわ、一刀」

 

ニッコリ、という言葉が似合うように笑う雪蓮

 

「なに? そんな真剣な顔して、夜這にでも来たの?」

 

俺の顔を確認して冗談交じりにそんな事を言う雪蓮

 

呉での初日の出来ごとを思い出す

 

「はは、冗談は止めてくれ、そんな事したら返り討ちだって」

 

「ふふ、私は構わないけど」

 

挑発してくる雪蓮

 

もし仮に、これが昨日までだったらその誘いに乗ってしまっていたかも知れない

 

だけれど、

 

「雪蓮」

 

真剣な顔を雪蓮へと向ける

 

今から言う事をふざけた顔して言う、という気持ちにはなれない

 

「それで、何の用なのかしら?」

 

察してくれた雪蓮が王の顔へと戻る

 

そして俺は呉の生活にピリオドを打つ

 

 

「そろそろ呉を離れようと思う」

 

「あら、それは残念ね、このまま呉にずっといても良いのに」

 

「これ以上居たら多分呉から離れられなくなる」

 

王を目の前に偽りのない本音を告げる

 

「それは、褒められてるって事で良いかしら?」

 

雪蓮が尋ねる

 

「あぁ、褒めてるよ」

 

即答し、一呼吸を置く

 

「俺は大陸を回ってやらなきゃならない事がある、だから呉に骨を埋める訳にもいかない」

 

「そう、それじゃあその“やらなきゃいけない事”が終わったら戻ってくるのかしら?」

 

「戻ってくるかもしれないし、戻ってこないかもしれない、俺には分からないよ」

 

本音を曝け出す

 

これ以上は俺の意思でどうにかなる訳でも無い

 

「あら、呉を見放したと言う訳ではいのね」

 

「あぁ、それは絶対無い」

 

このままでは倭の使者として正確な判断が出来なくなりそうで怖い

 

自分の判断が、倭のこれからを決めてしまう

 

自分の生まれた国の将来が決まってしまう

 

「もし何処かで会ったらよろしくな」

 

「もし敵として会ったら容赦しないわよ」

 

「そうならないように気を付けるよ」

 

こう会話してるだけでも、呉から、そして呉の皆から離れたく無くなる

 

「それじゃあ、そろそろ行くよ」

 

「まだ夜だけど?」

 

「皆の顔見たら決心が鈍る」

 

本音をぶちまける

 

「そう、それじゃあ馬をあげるわ、好きなの一頭連れて行きなさい」

 

「ありがとう、雪蓮……武運を祈ってるよ」

 

「えぇ、そうして頂戴」

 

「それじゃあ、またいつか」

 

踵を返す

 

「あ、一刀」

 

「ん?」

 

「部屋はそのままにしておくわ、いつでも帰って来なさい」

 

「……あぁ」

 

振り向かずに返事をする

 

振り向く訳にはいかなかった

 

天幕を出る、

 

上を仰ぐ

 

夜空に光る星は、涙を反射させるには充分であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬を留めて居る所に着き、毛並みがいい1頭を拝借する

 

星から方角を探る

 

俺は慣れない馬に乗り、陣をあとにする

 

目指すは都、洛陽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---以下 あとがき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、済みませんでした

 

言い訳はありません、屑っぷりが露呈した四か月でしたね

 

全然文章を書いていなかったのでタダでさえ低かった文章力がさらに低く……

 

匿名でも構いませんので、改善点アドバイス誤字脱字等々ありましたらよろしくお願いします

 

それでは、次回からは都、洛陽編

 

 

 

 


 
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