No.504893

魔法戦記リリカルなのはmemories 閑章 第七十九話

J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

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2012-11-05 23:13:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1227   閲覧ユーザー数:1172

 数時間後、聖王家の城内にある広間に聖王家として仕えている兵士によって埋め尽くされていた。

 先ほどネネに伝えてあった通り、聖王家の兵士をある時間までに広間に集まるように全員呼び出して、その時間になる数分前の状況だ。

 広間の二階からは広間を見渡せるほどのスペースがある。そのスペースに繋がる部屋にてオリヴィエは待機しており、時間通りになったらスペースに現れて集めた理由を皆に伝えるつもりであった。

 

「大体集まっているようだな」

「そのようですね。ほとんどの人間がもう集まっているかと」

 

 オリヴィエが居る部屋からも、全体ではないけども少し見渡せる事が出来、見渡せる部分の人口密度から考えてかなりの人数が集まっているのだろうと察した。

 オリヴィエは時間を確認し、あと数分で予定の時間になる事に気づいた。オリヴィエの近くには側近とネネが部屋におり、側近はオリヴィエの姿に何か変なところがないか確認して、つい先ほどまで直していた。

 

「しかしオリヴィエ聖王女、本当によろしいのですか?」

「あぁ、さすがに今回は私の命令で彼らを動かせるのはどうかと思ってな。それでも私について来る人間もおるとは思うが、今回に限っては私について来ないで欲しいんだ」

 

 ネネはオリヴィエがこれから話そうとすることを先に聞いていた。だからこそオリヴィエの発言には心底驚いており、何故ならばこれからオリヴィエが言う内容は王が言う様な発言では絶対に無いからであった。

 その内容をネネが聞いたとき、最初はオリヴィエに対して怒鳴りながら言い返して発言を撤回するようにもちろん言った。しかしそれでもオリヴィエは発言を撤回することはなく、ネネの言葉を聞いたけども意志を変えず、これ以上言っても意志は変わらないだろうと思い、結局ネネの方が言い負けてしまったのだ。

 多分、ネネみたいに思う人は広間に居る人間も多数存在するだろう。それでもオリヴィエは変えるつもりはなかったし、このような思いをするのは自分一人だけで良いと思っていた。

 

「時間だな。それでは行ってくる」

「はい、分かりました」

 

 予定の時間になったのを確認し、オリヴィエは歩き、兵士たちの前へと姿を現した。その後ろ姿をネネは見ていたが、本当にこれでいいのかと思っていた。

 オリヴィエの姿が兵士たちから見えると、大きな歓声が上がる。ここ最近オリヴィエがこのような広間で顔を出すことは戦争中の時とかしかなく、久しぶりという事もあっていつもより歓声が大きかった。

 少しして歓声が静まり返り、その後オリヴィエは一度兵士たちを見渡し、それから話し始めるのだった。

 

「今日、ここに集めたのは一つ理由がある。ここ最近私たち聖王家と敵対している国々が同盟を組み、特にここ最近は多数の無関係者が亡くなっていると聞いた。そして私もつい先日、一人になっていたところを襲われた」

 

 オリヴィエの言葉に動揺が走る。オリヴィエが襲われた事を知っているのはあの時一緒に居た部隊だけで、他の部隊には伝えられていなかった。伝えられていなかったという事もあり、聖王家でも一番強いオリヴィエが負けたという事はさすがに驚きを隠せなかったのである。

 またこの時オリヴィエは戦意をかなり失うと思って言わなかったが、シグナムに襲われたとき本来ならば死んでいた筈だった。この場に居ることも向こうが生かしていたからこそオリヴィエは存在する訳だ。

 

「今回の敵はいつものような敵ではない。侮ると簡単に負けるような敵だ。だが私はこれからある事を伝える」

 

 オリヴィエはそこで一間開けて、そして言い放つ。

 

「……これから私は聖王のゆりかごを使って、敵国すべてを次々に倒していくつもりだ。だが、聖王のゆりかごに乗るのは私一人だけにするつもりだ。他のみんなは、全員この付近の次元世界から遠くへ逃げてくれ」

 

 その言葉は先ほどの動揺よりも動揺が走った。要するにオリヴィエが言った事は聖王家をオリヴィエの代にて終了させ、聖王家に仕えていた兵士は生き残るために遠くへ逃げろという事だった。

 彼らにとって余りにも唐突だった。彼らはオリヴィエがこれからの行動を話すのかと思っていたのだが、そうではなく自分たちは逃げろという事であった為に、どうすればいいのか理解できていない状況でいた。

 

「多分、私が行っている事に理解しかねる者は多いと思う。だが聖王のゆりかごならば私一人で動かせるし、それならば私以外に無駄死にさせる意味がない。だから、私以外は全員この辺りから逃げて欲しんだんだ。この通り頼む」

 

 オリヴィエが頭を下げた事にさらに動揺が走る。一国の王が兵士たちに向かって頭を下げるなんて今まで聞いたことがないし、驚きを隠せないくらいだった。

 それから少ししてオリヴィエは頭を上げ、兵士たちにさらに言う。

 

「……急に言われても困るだろうなのは承知の上だ。三日間の猶予を与えるから貴重品などの荷物を持ってこの国から立ち去って欲しい。もちろん兵士たちだけではなく国民たちも共に連れて行くように伝えておいてくれ。以上だ」

 

 オリヴィエはそれから背を向き、ネネが居るところへと戻っていくのだった。オリヴィエの姿が無くなると、広間は兵士たちの声で騒ぎ立っていた。

 

「本当に意志は変えないのですね」

「あぁ、変えないつもりだ。それと、この事はクラウスの国にも伝えておいてくれ。この周辺の世界から逃げるようにと」

「……分かりました。すぐに準備してきます」

 

 ネネはオリヴィエから伝言を聞くと、すぐにクラウスへの国に行くためにもオリヴィエから離れて準備に取り掛かる事にした。

 それから側近たちと一緒に自分の部屋の前へと戻り、側室を部屋の外で待機させるとオリヴィエ一人で部屋へと入る。入ってすぐに部屋にある窓の方へ向かい、窓を開けてその窓から空を見上げた。

 

「……犠牲になるのは私一人だけで良い。もし私が成し遂げずに殺されたとしても、そのときはクラウスが上手くやってくれるだろう」

 

 正直どれくらい向こうの戦力があるのか詳しく把握しきれていないので、聖王のゆりかごを使っても勝てるかどうかという事は微妙だった。余り向こうは戦力を敵に見せずに行動している節があるため、実際どれくらい戦力を持っているのかは把握しきれていない。さすがに聖王のゆりかごが負けるというところまでするのは過大評価しすぎなのかもしれないが、過大評価ぐらいしていないとまた簡単なところでミスを犯す可能性が高かったからだ。だからオリヴィエはリンカーコアを徴集されるようなへまなどを二度としないつもりで挑もうと思っていたのである。

 

「……とにかく、この三日間で聖王のゆりかごの整備でもしておかないとな」

 

 そう思ったオリヴィエは、すぐに部屋を後にしようと聖王のゆりかごを止めてある座標へと魔法で移動するのだった。


 
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