No.504131

真恋姫†夢想 弓史に一生 第五章 第四話 異民族

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

前話では新たに二人のキャラの真名が登場しました。


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2012-11-04 01:10:00 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1871   閲覧ユーザー数:1686

~聖side~

 

 

今は三人を連れて玉座の間で詠と話をしている。

 

 

「で? この三人も軍に入れるって言う気?」

 

「少しの間で良いんだ…。頼めないか?」

 

「……まぁ、アンタの下に置くぐらいならしてあげるわ。ただし、アンタがしっかり面倒見なさいよ。」

 

「分かった!! ありがとな、詠。」

 

「ふんっ、使えなかったら直ぐにでも追い出すわよ!!」

 

「ご期待にそえますように、張り切らせていただきます。」

 

「聖のお頭の下で働けるんだぁ、全力でやらせてもらいやすぜぇ!!」

 

「……頑張る。」

 

「…皆もこんだけやる気になってるんだ。使えないなんてことはないと思うぞ。」

 

「それは結果がはっきりと示してくれるわ。じゃあ、馬良と伊籍は政務を手伝って。近藤はアンタのとこの五百人を纏めて、ボク達の軍に組み込んでおくこと。いいわね!?」

 

「はい。(了解でさぁ!!)『……。(コクン)』」

 

 

今この場に董卓軍は詠しかいない。

 

他の人は何かしらの仕事があるらしく、朝から廊下をあわただしく走っている。

 

普通、客将の仲間が来たとしたら、内部から侵略、乗っ取りがあるのか、と危惧するものではないのだろうか…。

 

それとも、そんなことするはずも無い。と信頼されているのだろうか…。

 

正直、今のこの玉座の間を制圧するだけなら、蛍一人でも可能である。なんと言っても詠を抑えるだけでよいのだから。

 

まぁ、そんなことはしないし、恩を仇で返す気も無いけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン!!

 

 

 

 

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

 

 

皆が一斉に扉の方を向く。

 

 

 

「賈駆将軍!!大変です!!」

 

「どうしたの!? 一体何が!!?」

 

「き…北門に…五胡の者が現れました!!」

 

「何ですって!!!!!」

 

 

 

五胡……。

 

それは、ここ中国の周りに位置する近隣の民族のことで、それらを総称して五胡と呼んでいる。

 

つまり、漢民族が主体である漢王朝からしてみれば異民族が訪れたと言うことになる。

 

 

 

「数は!? 数は一体何人!?」

 

「はっ!! それが…たった一人で北門を訪れまして…。」

 

「一人!!? ……一体、何が目的で…。」

「もう一つ報告が…。 実はその者は、この町に居る天の御使い(・・・・・)徳種聖(・・・)を出せと言ってきております…。」

 

「「「「「なっ!!!!」」」」」

 

 

天の御使いであると言うことだけでなく、俺の本名まで知っている人物が訪ねてきた…。

 

じゃあ、北からの訪問者って言うのはこいつのことか…?

 

 

「直ぐに追い返しなさい!! そんな奴、ここには居ないと言って早く…!!」

 

「そうです!! 直ぐにここから追い払ってください!! あまりに、不気味過ぎます!!」

 

「くそ~!!! 聖のお頭には指一本触れさせねぇぜ!!!!」

 

「……ご主人様、守る!!」

 

 

 

皆は俺が会うのには反対のようだな…。でも…。

 

 

 

「皆ありがとう。でも、俺はそいつに会いに行くよ。」

 

「なっ!!正気!? アンタ馬鹿なの!? あんたの正体知ってる奴なのよ!? いくらアンタが強いといっても、殺されるかもしれないのよ!!」

 

「あぁ、そうだな。もしかしたら殺されるかも知れんな。 …でもな、せっかく俺を訪ねてここまで来たんだ…顔くらいは確認してもバチは当たらないと思うぜ。」

 

「そうは言いましても、ご主人様…。やはり危険すぎます、お考え直しを…。」

 

「そうはいかない。俺はもう決めたんだ。それに、刺客だとして…無理に追い返したほうが後々危ない…。今の内に捕まえる、若しくは顔を確認した方が良いだろう?」

 

「それは…そうでございますが…。」

 

「聖のお頭は俺達の大将ですぜぇ!! 大将を危ない目にあわせるのは部下として出来るわけがないでしょうよ!!」

 

「じゃあ勇、お前も来い。それで危なくなったらお前が俺を守ってくれ。それで良いだろ?」

 

「いやっ…まぁ…。」

 

「……得体が知れない…ご主人様危ない…。」

 

「…蛍も反対か?」

 

「……。(コクン)」

 

「そうか…。でも、俺も引き下がるつもりは無い…。もし駄目と言うなら、俺は力づくにでも通してもらうぞ。」

 

「……どうして、そこまで拘る??」

 

「……何となく、会わなきゃいけない気がするんだよ…。」

 

「「「「……。」」」」

 

「今こいつに会わなければ、多分一生会う機会が無くなる…。そんな気がするんだ…。」

 

「……はぁ、まぁ、そんなに会いたいなら会えば…?」

 

「…良いのか、詠?」

 

「止めても駄目なんでしょ? だったら気が済むまで会ってくると良いわ。しかし、町の外で、護衛をしっかりつけた状態で会うこと…。良いわね!?」

 

「…あぁ、詠。それで十分だ。」

 

 

 

 

玉座の間を出て、俺は護衛の兵数人と勇と一緒に北門に向かう。

 

果たして、俺を訪ねてきた奴はどんな奴なのか…。

 

ただ一つだけ言えるのは、俺にとっては敵かもしれないと言うこと…。

 

しかし、他国の人が俺の名前や天の御使いのことを知っているとは思えない…。それぐらい厳重に情報制限をしていたのだ。

 

では一体誰だ……………駄目だ、考えても埒が明かない…。

 

もうここまできたら後はなるようになるしかない。

 

もし俺に天運があると言うなら、俺はここで死ぬようなことは無いだろう。寧ろ、仲間が増えるなどのような、自分に都合の良い状況が起きるはずである。

 

では、五胡が俺達の仲間になってくれると言うことなのだろうか…。

 

 

 

あれこれ考えていると、気付けばもう目と鼻の先に北門が迫っていた。

 

 

 

肌にジワリと汗をかく。

 

熱さなどで掻く汗でなく、緊張などで掻くジワリとした嫌な汗。

 

俺は少し緊張した面持ちで北門に常駐している董卓軍の人に話しかけた。

 

 

「すいません。北門に俺を訪ねてきた人が居るって聞いたんですが…。」

 

「おぉ、アンタかい。実は言伝があってね。」

 

「その人は何て…?」

 

「『この先の森の中にある小川にて、二人で話がしたい。』だったかねぇ?」

 

「…分かりました。」

 

 

俺は一緒に来た兵と勇の方を見る。

 

 

「悪いけど、俺は一人で行ってくるよ。向こうもそれを望んでるしね…。」

 

「でもお頭!!それじゃあ、警護についてきた意味が…!!」

 

「大丈夫だ。一対一ならそう簡単には負けねぇよ。 …そうだな。お前達は小川の周りに他に誰か居ないかどうかだけ探ってくれ。それ以外は俺がどうにかするから…。」

 

「…ちっ、分かったよお頭…。」

 

 

勇たちと離れて一人で森を進む。

 

 

 

しばらく歩くと小川のせせらぎが聞こえてくる。

 

その音のするほうに足を向けると、木々を抜けた先に小川が広がっている。

 

 

 

 

その川辺に……少女が居た。

 

 

 

 

 

 

 

袖の長さと対比するぐらい短いパンツはピンク地の着物調。

 

奇抜な明るいファッションに対比するくらい深めの紫の髪は腰まであるくせ毛調。

 

顔は優しそうな顔をしている。

 

特徴的なところが多いその少女だったが、俺の目が一番引き付けられたのが、その瞳。

 

漢民族は言ってもアジア人。

 

その瞳は黒か少しくらい茶色いかのどちらかが普通である。

 

しかし、この少女の瞳は青い。

 

淡い青、しかし、その色は引き込まれそうな程深い深い青。

 

 

 

 

俺を訪ねてきたのはこの娘だろう。

 

一目見ただけでも、この娘が異民族であることが分かるからだ。

 

瞳が青いってことはロシアとかそちらの方出身なのだろうか…。

 

 

 

……でも、なんだろう。

 

 

 

会ったことないはずなのに、何か変だ…。

 

 

 

この気持ちを正しく言葉に表すのは難しいのだが、強いて言うなら、懐かしさに似ている…。

 

 

 

「…よく、おいでくださいました。」

 

 

 

よく通るような声でそう言った少女。

 

その声は今まで聞いたことが無い。

 

 

 

「あなたが俺を訪ねて来た…。」

 

 

「はい…。天の御使い(・・・・・)である徳種聖(・・・)さんを訪ねて参りました。」

 

 

 

間違いなくこの娘であろう。

 

 

しかし、どうしてそれを知っているのだろうか…。

 

 

 

「…どうして、俺の呼ばれ名と本名を知っているのかな?」

 

「それは…言えません。」

 

「…じゃあ、目的は何かな?」

 

 

 

あくまでも冷静に、しかし気を緩めることをせずに会話をする。

 

間違いなく、この娘は危ない…。

 

 

 

「…一目お会いしたくて参りました。」

 

「…俺に?」

 

「…はい。」

 

「何でまた俺なんかに会いに来たのかな?」

 

「…言えません。」

 

 

 

さて、困った…。何しにこの娘がきたのか分からない。

 

いやっ、もしかしたらそれが狙いなのかもしれない。

 

俺があれやこれや考えて混乱してる間に、少しでも隙を見せれば殺すことを考えているのかもしれない。

 

 

 

 

でも、何だろう…。やはり先ほどから拭えない何か違和感を感じる…。

 

 

 

それは、真っ白な紙にたった一点だけ打たれた点の様に…。遠めに見れば何も気にしない程度なのに、妙に存在感のあるその点の様に…。俺の心に染み付いている。

 

 

 

「君は…この国の人じゃないね?」

 

 

 

そういった瞬間、その娘の体が強張る。

 

 

 

「……はい。」

 

「その割には言葉が通じるようだけど…。」

 

「……私はこの国の人と五胡の人との間に生まれた子供でございます。なので、言葉についてはどちらの言葉も話せます。」

 

 

 

成程、つまりこの娘はハーフということか…。どおりで話も出来れば、雰囲気なんかも少し漢民族らしさが出ている。

 

 

 

「……。」

 

「……異民族とでも言いたそうですね。」

 

「いや…。俺はそんなところは気にしないさ。」

 

「大丈夫でございます。 ……昔からそういう扱いには慣れていますから。」

 

「そんなこと言うな!!」

 

「えっ…。」

 

「そういうのは慣れちゃいけないんだよ!! 言いたい奴には言わせておけば良いさ!! でもな、その影で君が苦しむことは無いんだ!!」

 

「……。」

 

「……少なくとも、俺は君が異民族だろうと関係ない。俺と同じ一人の人間じゃないか。」

 

「……不思議な方でございますね。でも、あなた様らしいです。」

 

「…まぁ、俺も漢民族ではないしね。」

 

 

 

俺だって漢民族ではないんだから、普通なら異民族として排除されるのではないか。

 

でも、天の御使いとして優遇されている。

 

そんな一方でこの娘が排除される? そんなの許せるわけないよな。

 

 

 

 

……なんだろう…先ほどよりも違和感が強くなる…。

 

この会話、どこかでしなかっただろうか…。

 

 

 

 

「……ありがとうございました。」

 

「えっ!?」

 

「私は一目あなた様を見ておきたかっただけでございます。」

 

「……そうか。」

 

「…もう二度と(・・・)会うことは無いでしょう。それでは…。」

 

 

 

 

少女は踵を返し、俺に背を向けた。

 

 

 

しかし、俺には見えてしまった…。

 

 

 

その少女の頬を伝う涙の痕を…。

 

 

 

 

 

 

 

何で泣いている?? 

 

 

 

俺は何かしたのか…?? 

 

 

 

したことと言えば話をしたぐらい…。

 

 

 

 

その話の内容をとってしても特に不思議な点は…。

 

 

 

 

 

 

待てよ…。

 

 

先ほど少女は「あなた様らしい(・・・・・・・)」と言った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして俺を知っている??

 

 

 

やはり、この娘と何処かで俺は会っている??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺を知るこの少女。

 

 

 

 

異民族の娘。

 

 

 

 

そして、誰かとしたであろう会話とこの娘との会話の違和感。

 

 

 

 

それが示すものとは…???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクンッ!

 

 

『あのね……。これから先、ひーちゃんは色んな人に会っていくと思うんだけど…どんな人でも、人種差別とか関係無しに見てあげて?』

 

 

ドクンッ!!!

 

 

 

『お願い…。お願い…。』

 

 

 

ドクンッ!!!!!

 

 

 

『絶対だよ!! 絶対…。』

 

 

 

ドクンッ!!!!!!!

 

 

 

『そうだよね…。うん!! ひーちゃんなら大丈夫だよね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何であんなに必死だったのか……。それが今分かった…。

 

 

 

 

見た目、声、雰囲気…。それはどれもが彼女とは似ていない…。

 

 

 

 

でも、そうでないと説明できないことが多い…。

 

 

 

 

……そうだよ、それならこの娘が俺のことを知っていたのも理由がつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは…ごきげんよう…。」

 

 

そう言って去ろうとする少女。

 

 

その背中は悲壮感に満ちてるように見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が気付いてあげれなかったから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿だよな………俺のために来てくれたのに………。

 

 

 

 

 

 

俺は少女の背を追い、後ろから抱き締める。

 

 

 

「っ!!? 一体何を…!!?」

 

「…ゴメンな。俺、全然気付かなかった…。」

 

「……。」

 

「見た目、声、雰囲気、そのどれもが違ってた。」

 

「……。」

 

「正直気付かないままになるところだった…。だって…こんなに変わっちゃったら普通は信じられないだろう。」

 

「……見た目とか、声とかで気付かれないようにされましたから。」

 

「そしてその言葉遣い…。違和感の正体はここにあったんだね…。」

 

「……気を付けたから…。」

 

「でも、あなた様らしいって言葉が一番引っかかってた…。何で知ってるんだろうって…。」

 

「……ちょっとヒントになりすぎたかな…?」

 

「あぁ、大きなヒントになったよ。」

 

「……そっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は俺の方を振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

その顔に俺の知る彼女の顔を重ねる。

 

 

 

 

 

 

………やっぱり、似てない………。

 

 

 

 

 

でも………やっぱり彼女だ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり、そしてようこそ、『雅!!』」

 

 

 

 

 

 

俺は、満面の笑みでこの少女に向き直った。

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ、よろしくね……ひーちゃん♪」

 

 

 

 

雅は泣きながらも、眩しいくらいの笑顔を見せて、胸に飛び込んできたのだった。

 

 


 
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