第百二十技 情報再検討
キリトSide
まず俺達は
プレイヤーが死んでいるので『完全決着モード』なのは間違いない。
そこでアスナがウィナー表示はどこに出るのかを聞いてきた。
その問いにはヒースクリフが答える。
決闘者二人の中央、10m以上離れている場合はそれぞれのすぐ側に表示されるということらしい。
それを考えると広場か犯人が居たとされる建物内にはウィナー表示が出るはずだが、それは出なかった。
「デュエルじゃない……ということになるな…」
「じゃあ二つ目の、システム上の穴だけだね」
アスナの言葉に俺達は頷いた。それを考えるにあたり、『貫通継続ダメージ』が鍵ではないかと彼女は言った。
≪
転移した時のダメージはどうなるのか、とアスナが疑問を口にした。
ヒースクリフはダメージは止まると即座に答えた。
街の遥か上空にまで『アンチクリミナルコード』は適用されている、と。
「は~~~」
「なるほどなぁ~」
様々な問いに瞬時に答える団長殿にアスナも俺も感嘆の声を上げた。
俺はそれらを踏まえて、一つの考えを言ってみた。
「HPバーが0になった時は、一気に消滅せずに端から削れていくよな?」
俺の問いに二人が頷く。
「圏外でカインズ氏のHPを0にし、あらかじめ座標をあの建物に指定した回廊結晶で転移、
カインズ氏を吊るしたとは考えられないか?」
「で、でも、彼の装備をみたところ
アスナの疑問は当然だ。俺はその疑問に答える。
「別に全快の状態じゃなくても、MPK(モンスタープレイヤーキル)の要領でモンスターをおびき寄せて、
彼のHPを減らしてから不意を突いてドスッといけるんじゃないか?」
「た、たしかに……」
「…それならば不可能ではないな」
俺の案にアスナとヒースクリフは納得した様子だ。けれどこれには欠点がある。
「ただこれはヨルコさんが犯人、または共犯者の場合のものだ」
「え?」
「そうだな…」
アスナは案を提示した俺自身が否定したので困惑している。
ヒースクリフは俺の言葉にすぐに理解したようだ。
「アスナ、ヨルコさんはカインズ氏が死ぬ直前まで一緒にいたんだ。
それを僅か数分後にあの状態に持っていくには彼女が犯人で、嘘を吐いてないといけない」
「あ、そっか…」
けれどあの状態のヨルコさんを見る限り、その可能性は低いだろう。
交際していたのならなおさらだ。話し合いが詰まったそんな時、
「おまち」
店の店主が『アルゲードそば』を三つ持ってきた。それをみたアスナとヒースクリフは硬直した。
「なに、これ…」
「ラーメンに似た何かだ」
俺は割り箸でアルゲードそばを啜る。二人もなにか諦めたようで、それを食べ始めた。
数分後、食事を終えた俺はヒースクリフに訊ねた。
「アンタはなにか考え付いたか?」
「これは断じてラーメンではない」
元の鉄面皮を僅かに歪めながらそう言った。こいつのこんな表情を見るのは初めてだ。
「だろうな」
「では味の分だけ答えようではないか」
彼は今回の事件において確実な情報といえるのは見聞きした一次情報だけだ、と言った。
このデジタル世界においては見聞きした情報に幻覚や幻聴は絶対にないらしい。
事件を解決するのならば、自身の脳が直に受け取ったデータだけを信じろ、そう言った。
それを最後に、彼は俺に礼を告げてから店を出た。俺とアスナも追って店を出る。
その際にヒースクリフが、
「何故こんな店があるのだ……」
という言葉が耳に入る。アーガスの製作者達に言え、と俺は思った。
「うん、私決めた!」
「なにを?」
いきなり意気込んだアスナに疑問符を浮かべる。
「あれを食べて思ったの……絶対に醤油を作るわ、私!」
「あ~、まぁ、頑張れ……(苦笑)」
変なもの食わせた結果がこれか、少しだけ自己嫌悪。
そんなことを思いながらも俺は次の行動を行う事にした。
「とりあえず行くぞ、アスナ…」
「何処に?」
「ヒースクリフが言っただろ?
一次情報だけが確実だって。なら『黄金林檎』の指輪事件は信憑性が薄くなる。
だから、聴きに行くんだよ……もう一人の命を狙われそうな奴に…」
「え、ま、待ってよ!?」
歩き出す俺にアスナも付いてくる。目指すは56層……ギルド『聖竜連合』の本部だ。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
偽ラーメンこと『アルゲードそば』により、ヒースクリフは顔を歪めたw
それから本作のアスナは鋭くないのではなく、キリトが鋭すぎるだけですので。
それでは次回で・・・。
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第百二十話です。
ついにきた・・・ラーメン(偽)の登場だ!
では、どうぞ・・・。