No.493750

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第二十四話 地上本部へ…

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-10-08 18:06:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:40109   閲覧ユーザー数:35824

 「「「「ゴメンなさい」」」」

 

 あの後、俺が目を覚ますのに約3時間程かかった。

 空も少しずつ暗くなり始めている。

 

 「俺としてはもう少し冷静に状況を見定めてほしいんですけどね。ついでにこっちの話もちゃんと聞いてくれるとなお嬉しいんですけどね」

 

 「「「「おっしゃる通りです」」」」

 

 リビングのソファに座る不機嫌な俺。左側には無言で状況を見ている亮太。そして正面には土下座して俺に謝るシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。

 流石に今回は自分達が悪いと思ってくれたのか素直に謝っている。

 これで逆ギレなんかして反論する様ならいくら家族と言えども本気で怒らざるを得なかったが、その心配は無い様でちょっと安心した。

 

 「…もういいから顔上げてくれ。反省してくれるなら許すから。今後は同じ過ちを二度としない様に十分に注意してくれ」

 

 「「「「はい、本当に申し訳ありませんでした」」」」

 

 最後にもう一度謝って顔を上げる四人。

 

 「じゃあそろそろ説明した方がいいんじゃないかな?」

 

 沈黙を保っていた亮太が口を開く。

 

 「その前に亮太、家に帰らなくていいのか?もう6時半過ぎたぞ?」

 

 普通の小学生が一人で外を出歩くには少し遅い時間帯だと思うのだが。

 

 「そうだけど…」

 

 「説明するだけなら俺一人でも出来るし、明日は土曜で学校は休みだ。気になるなら明日また来てくれたらいいから」

 

 「…じゃあ説明は任せていいかな?後、明日と明後日は僕用事があって来れないから週明けの月曜日にでも何話したか教えてよ」

 

 「分かった。言う必要無いと思うけど気を付けて帰れよ」

 

 「じゃあ、僕はこれで。シュテルさん、レヴィさん、ディアーチェさん、ユーリさんもまたね」

 

 「「「「気を付けて帰って下さい(帰りなよ)(帰るのだぞ)」」」」

 

 俺達に軽く頭を下げ亮太は帰っていった。

 

 「さて、んじゃあの三人の事について説明するか」

 

 そして俺は無人世界での出来事を話した………。

 

 

 

 「…じゃああの三人は違法研究所で襲われ、重傷を負っていたのをユウキと亮太が助けたという事ですか?」

 

 「あれ?でもさっきの三人は全然怪我なんてしてなかったよ?」

 

 「…修正天使(アップデイト)使って助けた」

 

 「「「「えええっ!?」」」」

 

 俺の発言に反応する四人。

 

 「待って下さいユウキ!勝手に修正天使(アップデイト)を使ったのですか!?」

 

 「ユウ!!大丈夫なの!?」

 

 「この馬鹿者!!あの力を使う時は『必ず我等に相談して許可を出してから』と約束したではないか!!」

 

 「そうです!!以前修正天使(アップデイト)を使った後でユウキの目が視えなくなったと知った時は本当に心配したんですからね!!」

 

 皆それぞれ口を開きながら俺に詰め寄ってくる。

 

 「勝手に使ったのは悪いと思う。けど修正天使(アップデイト)使わないと絶対にあの三人は助けられなかった」

 

 これは本当の事だしな。傷口からどんどん血が流れて青白い顔色をしていたゼスト、クイント、メガーヌ。

 

 「もう普通の治療魔法では絶対に回復が追いつかない状態だったんだ。あのままだと確実に三人は死んでいた」

 

 俺の言葉に四人は口を挟まず静かに聞いてくれる。

 

 「だから『お前等に相談・許可を得てから使う』という約束を破って修正天使(アップデイト)を使い三人を助けた。助けられる力があるのにソレを出し渋って三人を死なせてしまったら俺は絶対に後悔してただろうから」

 

 言いたい事を言ってから俺は一口ジュースを飲む。

 

 「じゃあ今後も同じ様な状況に出くわしたら勝手に修正天使(アップデイト)を使うのですか?」

 

 「ああ」

 

 シュテルの質問に俺は間髪入れず即答する。

 

 「…それって私達と約束した意味が無いじゃないですか」

 

 「あくまでそんな状況になった時だけだ。普段から当たり前の様に使う訳じゃないって」

 

 「……本当だろうな?」

 

 ディアーチェの問いに頷く。

 

 「それで今回は何が『代償』になったの?」

 

 「『味覚』だな。さっきから飲んでるジュースの味がしない(・・・・・)、というより感じられない(・・・・・・)

 

 「味覚…まだ視力や聴力が下がるのに比べたらマシですね」

 

 「だけど料理はしばらく出来ないな。シュテル、ディアーチェ、味覚が戻るまでお前等に料理を任せてもいいか?」

 

 「「分かりました(分かった)」」

 

 シュテルとディアーチェは頷いて立ち上がり、夕食の支度をするためキッチンに向かう。

 

 「それでユウキ、あの三人はどうするのです?」

 

 ゼスト、クイント、メガーヌの三人は既に客間に運んで布団に寝かせている。

 バリアジャケットは解除され、今は管理局の制服姿になっていた。

 

 「とりあえず目が覚めるのを待つしかないな」

 

 「???クロノ達に連絡はしないのですか?」

 

 「連絡は待ってくれユーリ。俺の勘だけどしない方がいいって思うんだ」

 

 ここでクロノ達に連絡すると面倒な事になるし。

 

 「勘…ですか?」

 

 「勘だ」

 

 「……分かりました。ユウキの勘って意外に的中する事が多いですから私は黙っておきます」

 

 「ありがとユーリ。レヴィも黙っててくれよ?お前が一番心配だ」

 

 「大丈夫だよユウ!僕は口が堅いからね」

 

 …心配だ。念の為に釘を刺しとくか。

 

 「もし喋ったらレヴィはおやつ食べるの禁止な」

 

 「そんな!?酷いよユウ!!ユウは僕に『死ね』って言うの!?」

 

 おやつ食えんだけで死ぬんかいお前は。

 

 「誰にも喋らなければいいだけだ」

 

 「絶対に喋らないって約束するよ!!」

 

 これで大丈夫…だよな?

 

 「…まあレヴィの事は信用するとして、後は三人が目を覚ますのを待つだけだな」

 

 それからシュテルとディアーチェが作った夕食を食べ、風呂に入ってから眠りにつくまでの間、客間に寝かせている三人は目を覚ます事が無かった………。

 

 次の日の朝、いつもより早く起きた俺は冷蔵庫を開け、牛乳が無い事に気付きコンビニに出かけ牛乳を買って家に戻ってきた。味覚が極端に低下しているので味は感じられないが。

 リビングで牛乳を飲んでから客間に寝かせておいた三人が目を覚ましていないか確認するため客間に向かうと部屋の方から声が聞こえる。

 ……三人共目を覚ましているのか。なら丁度良いか。

 昨日の出来事を何回も説明せずに済むし。

 俺は部屋の前で軽く深呼吸し、扉をノックしてから部屋の中の三人に声を掛け部屋に入る。

 

 「失礼します」

 

 

 

 ~~ゼスト視点~~

 

 「ううっ…」

 

 俺はゆっくりと目を開ける。

 

 「ここ…は?」

 

 最初に目に入ったのは見覚えの無い天井だった。

 俺達は戦闘機人の生産プラントに突入し、分隊長であるクイント、メガーヌと別れ部下を何名か引き連れてプラントの奥に入り込んだ。そこで遭遇した戦闘機人と闘ったはずだ。

 だが、そこで俺の記憶は途切れている。

 …いや、戦闘機人に深手を負わされその場で意識を失った筈だ。

 だが今の俺の身体にはそんな深手など負っていなかった様に完全に治っている。

 

 「どういう事だ?」

 

 体を起こし確認するがこれといって以上は見当たらない。

 

 「「う…ううん……」」

 

 俺のすぐ隣から声がするので声の聞こえる方に向くと

 

 「クイント!メガーヌ!」

 

 俺の部下の二人、クイントとメガーヌが居た。

 

 「え…?隊長?」

 

 「どうして隊長が?」

 

 「お前達こそ」

 

 俺は二人と別れた後にプラントで何があったのかお互いに情報を交換していた。

 どうやら俺と別行動になった後で二人も謎の機械兵器の群れに襲われ、致命傷を負って意識を失ったらしい。

 だから自分達が何故傷跡も何も無い状態でいるのかは分からないらしい。

 

 「それで…ここは一体何処なんです?」

 

 「何故私達は布団に寝かされていたんでしょうか?」

 

 「分からん。俺も今、目を覚ましたばかりでな」

 

 改めて部屋を見渡す。

 見た所普通の部屋でマメに掃除されているのか室内は綺麗に保たれていた。

 特に監視されている様子は無く、部屋にある扉は一つしかないが扉の向こう側に見張りがいる様子も無い。

 布団のすぐ側には俺達のデバイスも待機状態で置かれている。

 

 「…いつまでもここにいるだけでは何も分からんな。とりあえず……」

 

 『部屋を出て情報を集めよう』といいかけた所で足音が聞こえてきた。

 

 「「「っ!!」」」

 

 俺達はすぐさま自分のデバイスを手にし、警戒を強める。

 足音はこの部屋の扉の前で止まる。

 

 コンコン

 

 扉がノックされる音が聞こえ

 

 「失礼します」

 

 扉が開くと同時に声の主の姿を見て

 

 「「「(子供!?)」」」

 

 俺とクイント、メガーヌは驚きの表情を隠せないでいた。

 

 

 

 ~~ゼスト視点終了~~

 

 部屋に入るとやはり三人共目覚めてはいたが

 

 「(何で驚いてるんだ?)」

 

 何か予想外のものでも見たかの様に三人の表情が変わっている。

 …まあ、いいか。今は色々説明しないといけないし。

 

 「えっと…身体の方は大丈夫ですか?完璧に治療したつもりなんですけど」

 

 修正天使(アップデイト)によって完治しているだろうけど一応聞いておく。

 

 「!!確かに我々は重傷を負っていたが君が治してくれたのか!?」

 

 ゼストの問いに俺は頷く。

 

 「そうか。おかげで我々はこうして生きている。礼を言わせてくれ」

 

 『ありがとう』と声を揃えて三人が言う。

 

 「所でここは何処なんだ?俺達は違法研究所にいた筈なんだが」

 

 「ここは俺の家で、違法研究所で瀕死の重傷を負っていた貴方達を俺と俺の友達が運んできました」

 

 それから俺は違法研究所での事を説明する。ついでにお互い自己紹介も済ませる。

 …と言っても俺と亮太が突入して三人を助けたぐらいの事しか話す事が無かったが。

 

 「…そうか。だが、俺が意識を失う直前の記憶が正しければ戦闘機人は三人いたのだがそれを一人で圧倒するとは…」

 

 「それに私達を囲んでいた機械兵器も相当に厄介な相手だった筈なのに」

 

 「AMF…アレのおかげで魔法がろくに使えなかったもの」

 

 「まあ俺も亮太もレアスキルがあるんで正直、AMFが有ろうが無かろうが関係無いですけどね」

 

 亮太のレーザーは魔法じゃないからAMF内でも問題無くブッ放せるし、俺だって唯我独尊(オンリーワンフラワー)でAMFを無効化出来る。まあAMFを無効化しなくても王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)天火布武(テンマオウ)で攻撃は出来るし鋼鉄乙女(アイアンメイデン)天目反射(サードアイ)があるので防御面も心配は無い。

 

 「まあ、研究所から今ここにいるまでの出来事は俺が話した通りです。それでこれからの事なのですが…貴方達はこれからどうするおつもりで?」

 

 今後の方針について尋ねてみる。

 

 「俺は地上本部へ行き、今回の件がアイツの…レジアスの指示だったのかを確かめる」

 

 「「っ!!」」

 

 ゼストさんの言葉に反応するクイントさんとメガーヌさん。

 気持ちは分からなくもないなー。この頃のレジアスって良くない噂が囁かれてた時だし。

 で、レジアスが『別の案件に回れ』って指示したからゼストさんは戦闘機人プラントへの捜査を強行したんだよな。

 それで原作では……

 

 「うーん、地上本部に行くのはいいですけど正面から堂々とは行かない方がいいと思いますよ?」

 

 「???どういう事だ?」

 

 「昨日管理局のデータベースにハッキングして貴方達三人の身元とか調べてたんですけど三人共既に『死亡確認』と記載されていましたから。死亡扱いされてる人が正面から行ったら局員達がパニックになりますよ」

 

 昨日の今日で局員全てにその情報が知れ渡っているとは思わないけど上の方の偉い人達は確実に知ってるだろうし、当然レジアス本人も…。

 

 「待て!それ以前にハッキングは犯罪だぞ!!」

 

 「管理局にバレなければ問題無いです」

 

 「目の前にいる私達がその管理局員なんだけど?」

 

 「もう死亡扱いされてるから正規の局員とは言えないのでは?」

 

 「……それにしても私達の『死亡確認』っていう記載はおかしくない?私達の遺体を確認した訳でも無いのに。普通なら『MIA(戦闘中行方不明)』だと思うのだけれど…」

 

 メガーヌさんの意見は尤もだ。

 

 「俺の推測ですけどゼストさん、クイントさん、メガーヌさんの状態は誰が見ても『助かる訳が無い』と思う程の深手でした。多分、相手の戦闘機人もそう思って俺達が三人を回収した後に『今更助けようとしても間に合う訳が無い』と思い込んで管理局に報告したのでは?」

 

 「管理局に報告だと!?」

 

 「誰かが報告でもしないとこんなに早く『死亡確認』と断定できないと思います。問題は戦闘機人側と管理局員の誰が繋がっているかって事ですね。さっきゼストさんが言ったレジアスって人かもしれませんし別の人という可能性もありますし…」

 

 この世界はあくまで原作に似てるだけの世界。最高評議会とつながっているのがレジアスだけとは限らないし。

 

 「とにかく正面から会いに行くなら認識阻害の魔法使うなりして局員にバレる事無く会いに行くのがいいと思います」

 

 そう言うと黙って考え始めるゼストさん。

 しばらくは悩んでいた様だが、俺の提案通り認識阻害の魔法を使って会いに行くと決意した。

 

 「だが俺はそういった類の魔法は使えんのだが…」

 

 「クイントさんとメガーヌさんはどうなんです?」

 

 俺は二人にも聞くが二人共揃って首を横に振る。

 

 「じゃあ俺が付いて行きます。そういった魔法は使えますので」

 

 「君がか!?確かに認識阻害の魔法が使えるなら付いてきて貰いたいとは思うが君は戦闘機人事件とは何の関係も無い民間人だろう?そこまでして貰うわけには…」

 

 「俺と俺の友達がゼストさん達を助けた時点で関わってる様なモノですよ。気にしないで下さい」

 

 「しかし…」

 

 「彼にも協力して貰いましょう隊長」

 

 「クイント!?」

 

 「レジアス中将に会うには彼に協力して貰うのが一番手っ取り早いと思います。私達は認識阻害の魔法が使えませんし人目につかずに会おうとすれば時間もかかってしまいますし」

 

 「確かにそうだが…」

 

 「彼本人が良いといってるのです。なら遠慮しなくていいのでは?それに私もこの事件の真相が知りたいですし」

 

 「メガーヌ…お前も……いや、分かった。長谷川、済まないが我々に付き合ってくれ」

 

 「俺の事は名前で呼んで下さい。貴方達の事は名前で呼ばせて貰ってますから」

 

 こうして俺は三人と共に地上本部へ行く事になった。

 この後の展開がどうなるかはゼストさん達次第だけど………。

 

 

 

 あの後リビングに三人を連れてくつろいでいると最初にシュテルが起きてきた。

 シュテルが三人と軽く自己紹介を済ませ朝食を作りにキッチンへ行くのと入れ替わるようにレヴィ、ディアーチェ、ユーリも順にリビングに顔を出す。

 父さんは……俺が起きた時点で家に居なかった。三人の事を紹介しとかないといけないなと思ってたのだが…あの人、海鳴に帰ってきてから自由を満喫し過ぎだろう。

 まあ、そろそろ香港に戻って警防の仕事するって言ってたし、海鳴にいる間ぐらいは何してくれても別に構わんのだけどね。

 で、朝食を皆で食べた後にすぐ出発する事になったので俺は庭で転移用の魔法陣を描きシュテル達に『行ってくる』と挨拶を済ませた。

 

 「じゃあ転移しますね」

 

 三人が頷き、魔法陣の中にちゃんと入っているのを確認して俺達はミッドチルダへ転移した。

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 「到着っと」

 

 俺達が転移してきたのは地上本部……の屋上。

 到着と同時に俺は認識阻害の魔法を発動させ、俺達を誰にも視認出来ない様にする。

 

 「それでレジアスって人は何処にいるんです?」

 

 「俺が案内しよう。こっちだ」

 

 ゼストさんを先頭にクイントさん、メガーヌさん、俺と後に続く。

 屋上から階段を下り、本部内に入る。

 途中廊下で局員の人と何度かすれ違うが誰も俺達に気付く様子は無い。

 認識阻害がちゃんと効いている様で安心した。

 やがて一つの重厚な扉の前でゼストさんが立ち止まる。

 

 「ここだ」

 

 どうやらこの奥に地上本部のトップ、レジアス・ゲイズがいるらしい。

 俺は周囲を見渡し、他の局員がいないのを確認してから全員に掛けている認識阻害の魔法を一旦解く。このまま魔法を解かずに部屋に入ったら意味が無い。レジアス本人は俺達の姿が見えないだろうからな。

 ゼストさんがドアノブに手を掛け

 

 ガチャッ!!

 

 扉を開けて部屋の中に入って行った。

 俺達もゼストさんに続き、室内に入る。そして改めて認識阻害の結界、ついでに防音と人払いの結界も張っておいた。

 中に入るとゼストさんの姿を見て固まっている人物が二人。

 レジアスとレジアスの娘であるオーリスだ。

 

 「ゼ…ゼスト?馬鹿な!お前は死んだと…」

 

 「確かに俺も、クイントもメガーヌもあのままでは死んでいた。だが、そこにいる少年、長谷川勇紀とその友人のおかげで一命を取り留めた」

 

 レジアスとオーリスの瞳がこちらに向く。

 どうすれば良いのか分からないのでとりあえず軽く頭を下げて会釈しておく。

 

 「レジアス、俺はお前に聞きたい事がある」

 

 ゼストさんの声に反応し再び視線がそちらに戻る。

 

 「俺達と闘った戦闘機人…奴等と繋がりがあるのはレジアス、お前で間違い無いな?」

 

 「……………………」

 

 ゼストさんの質問に黙秘するレジアスだがその表情が答えを語っている。

 

 「そして俺達の口を封じるために奴等に指示を出していたのもお前だな?」

 

 「違う!!ワシは…っ!!」

 

 何かを言いかけてその言葉を飲み込む。

 だけどもうここにいる全員は確信した。『レジアスが戦闘機人と関わりを持っている』と。

 

 「何故だレジアス!?かつて俺はお前と誓った!!共にミッドの平和を守っていこうと!!あの時の誓いは嘘だったのか!?それとも犯罪行為に手を染めてまでする事が俺とお前の誓いだったというのか!?」

 

 「分かっておる!分かっておるのだ!!だが他にどうしろというのだ!!」

 

 さっきまでゼストさんに詰め寄られていたレジアスも遂に声を荒げて反論する。

 

 「有能な魔導師は全て本局(うみ)の連中が持っていき、地上(おか)の人材不足は本局(うみ)以上に深刻だ!!おかげで現場に投入されるのはまだ実力も伴わず経験の浅い魔導師ばかり!!中には本局(うみ)の連中が見落とした魔導犯罪者がミッドで事件を起こし命を落とす局員もいる!ゼスト、お前も憶えているだろう!?大勢の局員と民間人が犠牲になったあの事件の事を!!」

 

 『何か事件あったんですか?』と小声でクイントさんに聞いた所、クイントさんは頷き、その時の事件の詳細を教えてくれた。

 何でも本局の連中が追っていた魔導犯罪者がミッドに逃げ込み、そこで事件を引き起こした。結果的に犯罪者は逮捕されたがその事件で25人もの死者を出し、その内11人が民間人であったという。

 

 「お前の言い分は分かる!確かに人員も戦力も地上(おか)本局(うみ)と比べると圧倒的に足りない。だがな、ミッドを守るべき立場にあるお前が罪を犯してどうする!?そうまでして戦力を増やしてほしいと地上本部の局員の誰が願ったのだ!?」

 

 どんどんヒートアップしていく二人。

 …遂にはお互いに言いたい事をいいながらの殴り合いにまで発展していく。

 流石に止めた方がいいと思ったがクイントさんに止められた。

 『二人の気が済むまでやらせてあげましょう』と。メガーヌさんも止める気が無いみたいだしオーリスは割り込みたくても割り込めないみたいだ。

 しかしここでボーっと二人の喧嘩を眺めてるのもアレだし

 

 「クイントさん、メガーヌさん。少しここ離れても大丈夫ですか?結界はこのまま維持しときますから」

 

 「???構わないけど何処かに行くの?」

 

 「ミッドの探索ですかね。ついでにシュテル達に何か買って帰ってやろうかと」

 

 「…この状況を放っておいて『買い物に行く』なんてよく発言出来るわね?」

 

 「でもあの二人の気が済むまでやらせるんですよね?ならここに居ても特にする事無いですし、時間は有意義に使いたいですから」

 

 「…まあ確かにね。分かったわ、私達はここに居るから。もしあの二人の喧嘩が終わったら念話で連絡っと事でいいかしら?」

 

 「お願いします」

 

 俺は部屋を後にしてすぐに拒絶観測(キャットボックス)を使い俺達が転移してきた屋上に行く。

 

 「ユウくん、どうして屋上に?買い物に行くんじゃないの?」

 

 「あれは部屋を抜け出る口実。今の内に会いに行こうと思ってな」

 

 「会いに…って一体誰に?」

 

 「8年後に事件を引き起こすドクターとその娘達にな」

 

 「ええっ!?スカリエッティとナンバーズに!?何で!?」

 

 「今ここでアイツ等を管理局に突き出すなり自首させるなり、もしくは前世の頃読んでいた二次小説の展開みたいに味方にする事が出来れば原作でのJS事件が起きなくなるからな」

 

 そう…原作が起きなければ(・・・・・・)いくら原作介入体質な俺であっても原作介入せずに済む。

 俺なりに考えた原作介入を避ける方法だ。

 

 「まだ原作介入を避けようと思ってたんだ」

 

 「まあな。そういう訳でスカリエッティに会いに行こう。ナンバーズと闘う事になっても何とかなるだろうし」

 

 「ユウくんの考えは分かったよ。でも肝心のスカリエッティが何処にいるのか知ってるの?」

 

 「聖王のゆりかごかアジトのどっちかだと思う。とりあえずゆりかごから行こうと思うんだが…ダイダロス、ゆりかごのある正確な場所って知ってる?」

 

 「知ってるよ」

 

 「じゃあ案内頼むな」

 

 そう言って俺は拒絶観測(キャットボックス)を使ったまま飛行魔法を使い、ダイダロスに先導されながらゆりかご目指して飛んでいった………。

 

 

 

 ~~???視点~~

 

 「トーレ、クアットロ、チンク。調子はどうだい?」

 

 私は部屋の椅子に腰かけ調整の終わった三人に話し掛ける。

 

 「「「問題ありません」」」

 

 「それは良かった。しかしオーバーSランク魔導師にも勝てる程の実力を持つチンクを一撃で倒し、トーレのライドインパルスに楽々と追いつき、さらには魔法と違った光線でクアットロを沈めたとは…。しかもそれが子供とは信じ難い話だね」

 

 「ですが事実ですわドクター」

 

 「私もチンクも油断してはいませんでした。管理局の増援だと思い逆に警戒していましたから」

 

 「本人も『局員ではない』と言ったそうだね。なら無人世界で一体何をしていたのか……」

 

 「どうしますかドクター?その少年について調べますか?」

 

 「…いや、今はまだいいよウーノ。少年の件については後回しでいいだろう。それよりドゥーエの方で何か進展は?」

 

 「いえ…特には」

 

 「そうか…。彼女には負担をかけるな」

 

 「ドクター…」

 

 「そう心配そうにしないでくれウーノ。ドゥーエならばきっと見つけてくれるさ。評議会が私に付けた『枷』を外す方法を」

 

 「申し訳ありませんドクター。我々では何の力にもなれず…」

 

 「君が謝る必要は無いよトーレ」

 

 「そうですよトーレ。今はドゥーエを信じて私達は私達に出来る事をしましょう」

 

 「…分かった」

 

 「では私は引き続き後継機の製作に取り掛かろう」

 

 そう言って椅子から立ち上がった所で

 

 「何だかアンタにも事情があるみたいだな」

 

 扉の方から聞き覚えの無い声が聞こえてきた。

 私達の視線が一斉にそちらに向くと

 

 「初めましてジェイルスカリエッティ。そして戦闘機人の皆さん」

 

 見知らぬ少年が扉の前に立っていた………。

 

 

 

 ~~???視点終了~~

 


 
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