No.492758

SAO~黒を冠する戦士たち~ 第九十三技 速きこと風の如し

本郷 刃さん

第九十三話です。
皆様お待ちかねのヴァル君による執行タイムですw

では、どうぞ・・・。

2012-10-06 09:24:43 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:11454   閲覧ユーザー数:10717

 

 

 

 

 

第九十三技 速きこと風の如し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シリカSide

 

まさかヴァル君が攻略組の…しかも『ビーター』だったなんて。

 

「ロザリアさん、どうしたら…」

 

「こんなところに攻略組がいるわけ…」

 

「先程言いましたよね。『シルバーフラグス』のリーダーの方は最前線(・・・)で仇討ちできる人を探していたと…」

 

仲間の男の人に言われてロザリアさんは否定しようとしたけれど、ヴァル君がそれを遮って言った。

 

その言葉に彼女は顔を歪めたけれど、それをすぐに笑みに変えて喋り出した。

 

「だからってこっちはこの人数。あんた達、相手は一人だよ! 囲んで始末しちまいな!」

 

彼女がそう指示を出すとヴァル君を囲みながら七人全員で斬りつけ始めた。

 

「死ねやーーー!」

 

「おらぁーーー!」

 

「うりゃーーー!」

 

「はぁーーー!」

 

「消えろーーー!」

 

「終われーーー!」

 

「だぁーーー!」

 

「……………」

 

全員の攻撃にヴァル君は黙ったまま何もできないでいる。何度も何度も武器で刻まれていく。

 

あたしが…あたしが助けないと。だけど、ダガーに添える手が震えてしまう。

 

怖い……でもどうしたら。その時、あたしはそれに気付いた。

 

減っていたはずのヴァル君のHPバーが一瞬で全回復したのだ。

 

「ど、どういう事!?」

 

そして、度重なる攻撃を加えていた人達は疲労で動きが鈍くなり動きを止めた。

 

全員息を切らして、肩で呼吸を始めている。

 

「な、なんでHPが減らねえんだよ…」

 

「あんたらなにやってんだい! さっさと殺しちまいなよ!」

 

彼女の表情からも焦りの色が出てきている。けれど他の人達は困惑している。

 

「10秒あたり400…。それが、貴方達七人が僕に与えるダメージの総量です。

 僕のレベルは72。HPは13200。

 戦闘スキル《バトルヒーリング》による自動回復量は10秒で600ポイントです。

 いくらやったところで、僕にダメージを与える事はできませんよ」

 

あたしは現実というものを知った。つまりこれが、攻略組の能力の高さなんだ。

 

「そ、そんなのありかよ…」

 

「現実ですよ。数字が上がるだけで起こる理不尽。それがレベル制MMOの不条理なところなんです」

 

「くっ…」

 

「チッ…」

 

彼の宣言に、男の人やロザリアさんが苦悶の表情をした。

 

レベルが上がるだけ、数字が上がるだけで、どんな事も覆してしまうなんて…。

 

するとヴァル君は懐を探り始めた。

 

取り出したのは≪転移結晶≫に似た、それよりも少し大きい結晶だった。あれは一体…?

 

「これは依頼人の方が全財産をはたいて購入した≪回廊結晶(コリドークリスタル)≫です。

 これには『黒鉄宮』の監獄エリアが出口に設定されています。貴方達にはこれで牢獄まで飛んでもらいます」

 

ヴァル君は説明しながら全員を睨みつけていく。ロザリアさんは睨まれると武器を構えた。

 

「なら…あんたの持つその結晶だけでも奪えば!」

 

彼女がそう言うと他の人達も武器をもう一度構えた。

 

「なら……仕方ありませんね…!」

 

彼が言った次の瞬間。

 

―――シュンッ!

 

ヴァル君の姿が消え、一人の男の目の前に現れた。彼はもの凄い速さで移動したのだ。

 

―――バキャンッ!

 

「なっ!?」

 

ヴァル君は槍を振るって、一撃で両手剣を破壊した。さらにその隣にいた男に近づき、

 

―――ビキャンッ!

 

「うっ!?」

 

今度は片手剣を破壊。続いてその隣にいたダガーと盾を持った男に攻撃を加えて、

 

「くっ!?」

 

―――ガギャンッ!

 

両方を同時に破壊しました。それをみて片手用の斧と盾を持っていた人が距離を取ろうとしたけどすぐさま近づいて、

 

「ふっ!」

 

「うわっ!?」

 

単純な二連続の攻撃で斧を壊して、そのまま盾も壊しました。

 

「「「おおおぉぉぉぉぉ!」」」

 

そこに残った三人が一斉に突撃を仕掛けていくけど、

 

「疾っ!」

 

ヴァル君は三人とすれ違うように反撃をしていき、

 

―――ガシャンッ!

 

―――ガガンッ!

 

―――ズギャンッ!

 

三人が持っていた両手剣、曲刀、片手用の斧と盾が一気に破壊されていく。

 

自分達の武器が破壊された事で全員が顔を青くさせて、腰を抜かしたように座り込みました。

 

「ふぅ…《武器破壊(アームブラスト)》は【黒の剣士】さんほど、うまくはないんですけど……なんとかなりましたね」

 

彼はまるで風になったように一瞬で全員を倒してしまった。す、すごい…。

 

あんな上級テクニックをこんな場面で使うなんて。それなのにうまくないって…。

 

「それで……貴女はどうしますか? ロザリアさん…」

 

「グ、グリーンのわたしを傷つければアンタがオレンジになるんだよ!」

 

彼がロザリアさんに聞くけれど、彼女は思い至ったように答えた。しかし…、

 

「それがどうかしましたか?」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

ヴァル君の言葉にあたしを含めて全員が驚いた。そして彼女が驚いた隙を突いて近づき、

 

―――バギャンッ!

 

「あっ!?」

 

一撃で彼女の槍を粉々に粉砕してしまった。ロザリアさんはその衝撃で地面に倒れた。

 

「そうですね…。折角ですから、貴方がたも死への恐怖を味わってみますか?

 犠牲になった『シルバーフラグス』の皆さんのように…」

 

「あ、あぁ……、や、やめて…。おねがい…だから……」

 

「それでは結晶に入ってくれますね?」

 

その言葉が止めとなって全員が一斉に頷く。ヴァル君が結晶を開くと我先にと駆けこんでいった。

 

よほどヴァル君が怖かったんだと思う。こうしてこの一件は終わりとなった。

 

シリカSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

ヴァル君の執行タイムは如何でしたか?楽しんでいただけていれば幸いですw

 

それとなぜ、一撃で武器が破壊できたかというと、それは最前線と中層クラスのレベルの違いということです。

 

ヴァル君の《神速》の一端も垣間見ることができましたしw

 

さて、次回で「黒き閃光編」はおしまいです。

 

本来の時間軸に戻って話が進みます。

 

それでは、また・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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