No.490479

超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第二十二話 再戦

神次元の方で新作を始めました。
作品名は【神次元ゲイムネプテューヌV CODE:Joker】です。
今回はドラマ、SPECとのコラボ作品です。
ただ、SPECを知らない人もいるでしょうから、SPECを知らない人にも楽しんでいただけるように精進いたします。
新作とこの作品、合わせて楽しんでいただけると嬉しいです!

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2012-09-30 18:12:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1569   閲覧ユーザー数:1510

 

現在ラステイション

 

「はあッ!」

ブラックハートが大剣を構え、バックプロセッサの推進力を活かしてブレイブへと飛び込んだ。

自信気な真正面からの斬り込みにブレイブは笑みを浮かべながら同じく大剣を構え、ブラックハートの一撃を迎え撃つ。

「うおおッ!!」

ガキィン、とぶつかり合う2つの刃が奏でる硬質な音がラステイションの市街地に響く。

一撃を止められたブラックハートは反射的に後方へ飛び、勢いそのままにブレイブの周りに乱立する建築物の間を高速で旋回し、ブレイブのリズムを乱してはまた飛び込むを繰り返していた。

戦いはまさに互角の攻防だった。

ブラックハートの凄まじいスピードと手数はブレイブをその場に留まらせ、連撃を与え続けるのに十分な効果を誇っていた。

だがブレイブもまた、その豪快な一撃とパワーでブラックハートを休むことなく動き続けさせていた。

力とスピード、相反する二つのぶつかり合いは均衡を保ったまま崩れようとはしなかった。

(ブレイブは、あの時……。)

そんな2人を尻目にブラックシスターの動きは機敏としていなかった。

ブレイブの一閃が迫る度に、ブラックシスターは寸でのところで思い出したかのように飛びのいた。

自らの背丈ほどもある銃剣を支える両腕も微かに震えていた。

ブレイブに向ける目はもはや敵を見る目では無くなっていた。

だがそんな戦意を失ったブラックシスターを、ブレイブは格好の獲物と捉えることしかしなかった。

「隙ありッ!!」

ゴオッと風が鳴り、ブラックシスターの正面から大剣が勢い良く振り下ろされる。

――しまった、油断した!!

ブラックシスターがそう気付く頃には、大剣は既に彼女の目の前まで迫っていた。

咄嗟にブラックシスターは目を瞑り、次に襲うであろう衝撃に恐怖した。

そうして全てを諦めかけた刹那、耳に飛び込んできたのは彼女が最も聞きなれた声だった。

「ユニッ!」

その声が耳に飛び込むと同時にユニに加わったのは正面からの衝撃ではなく、横からの軽い衝撃だった。

最愛の妹の危機を目の当たりにしたブラックハートは全てを投げ捨て、妹の体を自分の体を押し当てて横にずらした。

「くゥッ!!」

直後に襲い掛かったブレイブの大剣がブラックハートの顔を歪ませた。

何とか自らの大剣の腹を相手に向け、直撃こそ避けたものの、そこから伝わる凄まじい衝撃は彼女の体をいとも簡単に空中からアスファルトの地面へと叩き付けた。

「うッ………。」

悲痛な喘ぎ声と共に、プロセッサユニットに包まれたブラックハートの体はアスファルトの地面に傷をつけながらゴム鞠のように跳ね飛び、砂煙を上げながら地面を滑った。

「お姉ちゃん!!!」

我に返ったブラックシスターは姉に目を向けると、自身の持てる全力のスピードで駆け寄り、地面に膝をつけて姉の状態をうかがった。

「ぐッ……あゥ………。」

左手で右の肩を押さえながら、ブラックハートは苦しそうに声を上げた。

黒をベースにしたプロセッサから覗かせる白く美しかった肌はその殆どを土色に染め、所々からは鮮血が滲んでいた。

特に右腕を激しく打ったのか、右の肩に添えられた左手は一向にその場を離れなかった。

しかし、それでも右手に大剣を持ち続けて離さないその精神力と体力はさすがは女神、と言った所であろう。

「しっかりして、お姉ちゃん!」

「くっ……今1番しっかりしなきゃいけないのは……あなたの方よ、ユニ…。」

苦痛に見舞われながらもブラックハートはしっかりとその瞳を妹の瞳と重ね合わせ、声を上げた。

言葉を受けたブラックシスターは姉から目を逸らし、苦渋の表情を見せた。

すっ、とブラックハートの左手が右肩を離れ、妹の頬に添えられた。

「あなたがあいつを思う気持ちは分かるわ。でも今のあいつはあなたが知ってるあいつじゃない。全力で倒さないとあなたの命が危ないのよ?」

「でも……。」

視線を合わそうとしないブラックシスターは更に表情を暗くした。

銃剣を支えている両腕の震えは一向に留まる気配を見せない。

そんな妹の姿を目に焼き付けながら、ブラックハートは頬に添えた左手を再び右肩に移し、よろよろと立ち上がった。

「私が先に突っ込むわ。あなたはその間、力を溜めておいて。」

妹の返事を聞く事も無く、ブラックハートは肩で息をしながらブレイブを睨みつけた。

待ちくたびれたぞ、とでも言わんばかりにブレイブは余裕の表情で大剣の先をブラックハートへと向けた。

それを受け、ブラックハートは右肩から手を離すと血が滴り落ちる右手で自らの大剣を強く握り締めた。

「おおッ!!」

先に動いたのはブレイブだった。

ブレイブは大剣を頭上に振りかぶると重々しい一撃をブラックハートへ向けて叩き込んだ。

だが振り下ろされる大剣よりも速く、ブラックハートの体は宙に舞った。

轟音を上げて地面を抉る一撃の先には砂煙とはがれたアスファルトの残骸のみが残されていた。

ブラックハートはブレイブの背後へと回りながら、大剣を握る右腕に力を込めた。

(この一撃に賭ける!)

黒い稲妻と化したブラックハートはブレイブが体制を戻そうと大剣を持ち上げる前に、既にブレイブの背後を取っていた。

刹那、ブラックハートの握る大剣が神々しい光に包まれ、その姿を倍化させた。

高密度エネルギーに包まれた巨大な大剣は横目にそれを捉えたブレイブの背筋をも凍らせた。

「トルネレイド・ソード!!」

叫びと共に電光の速さで巨大な光剣が弧を描いた。

それと同時に響くのは轟音と機械の体から漏れる鈍い音。

それは全て、ブレイブに与えたダメージの凄まじさを物語っていた。

「はあっ……はぁっ……。」

だが一閃を放ち、確かにブレイブに大ダメージを与えたブラックハート本人も、今の一撃で相当の体力を消費し、先ほどよりも激しく肩で息をした。

直後にブラックハートの右手で光る巨大な光剣は2撃目を放つことなく、エネルギーを四散させて元の大剣へと姿を戻した。

ブラックハートは右手に入る力が抜け落ちるのを感じながらも、目の前のブレイブへと目を向けた。

だがこの時、ブラックハートの中で誤算が生じた。

「ぐおおッ……ぐッ、うおおぉぉおおおおッ!!!」

背中に残る深い斬撃の跡からは、とてもではないがブレイブは動けないだろうと踏んでいた。

だがブレイブは襲いかかる激痛と衝撃を耐え抜き、苦し紛れではあるが、ブラックハート目掛けて地面にめり込んだ大剣を引き抜き、横へと振るった。

ブラックハートが万全のコンディションであれば、反撃を許す事は無かっただろう。

だが彼女の右腕の傷が、それに値する威力を奪い取ってしまったのだ。

(!!……くっ、もう…腕が……。)

一撃を防ごうとブラックハートは右腕に再び力を込めようとしたが、負傷した腕に先ほどの一閃は思いのほかに負担が大きかった。

右腕は意志に従わず、力なく震えながら肩にぶら下がるのみであった。

その間にも、大剣は風を切りながらブラックハート目掛けて弧を描いていた。

もはや今の体力では回避すら不可能だった。

ブラックハートは迫り来る大剣を視界に捉えながら、自らの血液が熱を失っていくのを感じた。

――ごめんなさい、ユニ…ネプテューヌ……。

ブラックハートは心の中で2人に謝罪し、ゆっくりとそのまぶたを閉じた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらラステイション。予定通り、接触しました。」

住民の避難が完了し、近くから戦闘の轟音が響く市街地のビルの陰。

そこにその男はいた。

黒のジャケットに黒いズボン、黒いニット帽を被った男の姿は、表通りで会えば誰もが不信感を抱くのではないかと思わせるほど、その姿は不気味な気配に包まれていた。

黒い服装が邪魔をしてか、はたまたビルの陰のせいか、男の表情をうかがい知る事は不可能だった。

黒ずくめの男は右手に持った携帯を耳にあて、一人呟くように言葉を紡いだ。

「あーそー、ご苦労様。ルウィーとリーンボックスはまだみたいだけどね。」

黒ずくめの男が持つ携帯から聞こえてくる声はまだ幼さを感じさせる少年の声だった。

その声はまさしく、あの時四天王を再生させた少年の声と合致していた。

黒ずくめの男は左手をポケットに入れると、地面を見つめながら再び口を開いた。

「このまま監視を続けますか?」

「うん、そのままお願い。あ、くれぐれも変な事が起きないように見張っててね♪」

「ハッ。」

耳から伝わる少年の軽い口調にも、黒ずくめの男は敬意を込めて答えた。

やり取りが終わると黒ずくめの男は耳から携帯を離し、無造作にその蓋を閉じてポケットに仕舞い込んだ。

ビルを吹き抜ける生暖かい風を浴びながら、黒ずくめの男は片目をビルの壁から通りへと突き出し、未だに戦闘を続けるブラックハート達をその片目の視界に捕らえた。

その片目に宿る凶々(まがまが)しい邪光にブラックハートが気付くことは無かった。

 

 


 
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