No.490267

真・恋姫†無双 ~我天道征~ 第13話

seiさん

無事、秋蘭達を助けた一刀と華琳。
そしてその町で義勇軍をしていた、凪・真桜・沙和の三人を仲間にすることができた。

しかし、そんな良いことばかりではなかった。
そんな一刀達に、黄巾党の大部隊が迫っているとの報告が。

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2012-09-30 05:29:39 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:5610   閲覧ユーザー数:4409

 

 

 

 

 

 

 

注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。

 

   そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄巾党3万。

その報告は他の者にも聞こえてしまい、あたりは騒然としだす。

 

「さ、3万の黄巾党・・・」

「か、数が違いすぎる。」

「せっかく、追い払えたと思ったのに。」

「お、終わりだ。そんな大人数になんて、勝てっこない。」

 

兵や民、全員が動揺し、あたりが混沌とし始めた。

 

 

「静まれ!!」

 

そこに、凛として威厳に満ちた声が響き渡る。

華琳だ。

そんな華琳の一声で、騒がしかったまわりは一気に静まりかえる。

 

「賊どもの動きは?こちらへ進軍中なの?」

「はっ!い、いえ、日も暮れはじめたこともあり、今日はその場で待機する形をとるようでした。」

「そう。だけど、残党共と合流したとなると、確実にこの町の場所は伝わっているでしょうね。

 距離から考えて、明日の日中、という所かしら。」

 

華琳はまわりの騒ぎを鎮め、兵士からの報告を促す。

そして冷静に、その状況を分析し始めた。

 

 

「すぐに軍議を行う。

流琉、凪、真桜、沙和に、すぐ私の所に来るよう伝えなさい。」

「「「ぎょ、御意!」」」

 

華琳は、近くにいた兵士に四人を集めるよう指示を出す。

その声に、固まっていた兵士たちは我を取り戻し、すぐさま駆け出していった。

そんな華琳堂々とした態度に、まわりの人達は。

 

「さすがは曹操様。こんな状況でも、まったく臆しておられない。」

「そうだ。我々には、あの曹操様がついておられるのだ。」

「きっと守ってくださる。」

「あんな奴らに、曹操様が負けるわけはない!」

 

さっきまでの不安が嘘のように消え、あちこちから安堵の声や称賛の声があがる。

 

 

さすがは華琳。

混乱しそうだったこの場を、たったあれだけで鎮めちまうなんてな。

あのまま放っておいたら、脱走や暴徒化する者が出てもおかしくなかった。

まわりの兵も民も、華琳、いや曹孟徳という存在に、一心に期待を向けている。

 

「一刀、聞いていたでしょ。軍議を始めるから、貴方もついてきなさい。」

「あ、ああ。」

 

華琳は余裕たっぷりの顔で、俺についてくるよう促す。

傍から見れば、落ち着き、不安も焦りもないように映っているのだろう。

だが・・・

 

 

 

 

軍議は、比較的損傷の少なかった建物の一室を借りて行われることになった。

少し待つとその場に、流琉・楽進・李典・于禁が現れ、それぞれ席へと着いた。

 

「華琳様、黄巾党の大部隊がこちらに向かって来てるというのは、本当なのですか?」

 

呼ばれた時に聞いたのだろう、流琉が席から立ち上がり質問をしてくる。

他の三人も同様らしく、口にこそしないが、不安そうな顔でその様子を窺っている。

 

「それについては、今から話をするわ。だから、まずは席に着きなさい、流琉。」

「は、はい。申し訳ありません。」

 

華琳はそんな流琉を軽く窘め、席につかせる。

 

 

「既に聞いているとは思うけど、先ほど流琉が言った通り、黄巾党の部隊がこちらへと向かって来ているわ。」

「ちなみに華琳様。その部隊というのは、どれくらいの数なのでしょうか?」

「細作からの報告によると、ここを襲っていた残党も合流し、おおよそ3万と聞いているわ。」

「なっ!?」

「さ、3万て、いくらなんでも、そりゃ集めすぎやで。」

「そんなにいるんじゃ、いくらなんでも勝てないないのー。」

 

やはり、この戦力差はみんなにも衝撃が大きいようだ。

それぞれが、その事実に動揺していると、

 

「落ち着きなさい!将である貴方達が動揺しては、下の者にまで要らぬ不安を与えるわ。」

「も、申し訳ありません。」

 

華琳の一喝に、騒がしかった場が静まりかえる。

 

 

「それに、今すぐ奴等が来るわけではないわ。」

「えっ、そうなのー?」

「奴等は、ここから西に四十里(約20km)ほどの所にいるけど、今日はもう動く気配はないらしいわ。」

「なんや、あせったわー。」

 

今すぐではないことに李典は安堵していたが、それに対し流琉は険しい顔をしていた。

 

「だけど、華琳様。その距離だと。」

「ええ、日の出とともに動きだすと考えれば、早くて明日の日中にはここに着く計算になるわね。」

「どちらにしても、あまり時間はないですね。」

「だからこそ、こうして集まってもらったのよ。少しでも、有効な策を考えるためにね。」

 

そこまで話をして、各々が今の状況を理解する。

そして、この状況を打破するための策を考え始める。

 

 

「救援の方は、どうなってるんですか?」

「すでに城へと早馬をとばしたけど、ぎりぎり間に合わないでしょうね。

 なにより今現在、部隊を率いることができる将が城にいないわ。」

 

流琉は増援を期待するが、華琳の口から出た言葉は、それを否定するものだった。

 

「な、ならー、それまで、また籠城してれば。」

「それも、難しいわね。」

「な、なんでなのー?」

「既に、我々や町の者たちは籠城をしてきた。いくら華琳様の兵がいるとはいえ、限界だろう。」

「人だけやないで、すでに各場所の門もぼろぼろや。さすがに、そない団体さんで来られたらもたんわ。」

「そ、そんなー。」

 

于禁の案も、時間稼ぎという意味では間違いではないが、連戦という今の状況と、圧倒的な戦力差からみても、やはり可能性は低いだろう。

 

 

その後も、いくつか案が出されるが、そのどれもあまり有効な案とは言えず、全滅する可能性しかなかった。

無情に時間だけが過ぎ、辺りに重苦しい空気が漂い始める。

 

「一つだけ、策がないわけではないわ。」

 

そんな重苦しい空気が、華琳の発した言葉により払われ、全員が期待のこもった瞳で華琳を見つめる。

 

「一部の部隊が黄巾党を足止めし、その間に他の部隊が町の住人達を連れ、こちらに向かっている援軍と合流するのよ。」

 

しかし華琳の口から出た言葉は、希望などではなく、非情な選択だった。

 

 

「で、でも、それじゃ」

「全滅するよりは、ましな筈よ。」

 

流琉が反論しようとするも、華琳の正論によってあっさりと黙らされてしまう。

確かにこのまま闘っても、物量で押し切られて町の人達もろとも全滅だ。

だけど華琳の案を実行すれば、少なくとも町の人達は助けられる。

3万もの大軍を足止めする部隊がどうなるかは、言わずもがなだけど。

簡単に言ってしまえば、他の者を助けるために囮役になれ、ということだ。

 

 

その案に皆が押し黙る中、楽進が意を決した顔で言葉を発する。

 

「ならばその役、この「私がやるわ。」なっ!?」

 

しかしその言葉は、華琳の言葉で遮られてしまう。

そしてその言葉に全員が驚き、華琳へと視線が集まる。

 

「か、華琳様、今なんとおっしゃったんですか?」

「足止めの役、私が引き受けると言ったのよ。」

 

流琉はその言葉を聞き間違いと思ったのか、華琳へと聞きなおすが、当の本人は何でもないという顔で答える。

 

 

「あ、あかんて。華琳様にそんな危険な役をやらせるわけにはいかへんて。」

「真桜の言うとおりです。それにその役なら、この私が。」

「凪ちゃんもだめなの。そういうのは、役に立てない沙和が行くの。」

 

それを仲間になったばかりの三人が止め、自分達が行くと言いだす。

本当に良い子たちだと思う、けど今回は、

 

「三人とも駄目よ。」

「な、何故ですか?」

「まだこの軍に入ったばかりの貴方達では、私の兵を指揮することはできないでしょ。」

「そ、それは」

 

そう、三人がいくら軍に編入されたとはいえ、入ったばかりの彼女らに軍の指揮なんてできない。

 

 

「だ、だったら、私が残ります。」

「それも駄目よ。」

「何でですか?私なら、部隊の指揮も問題ないはずです!」

「いくら指揮ができても、貴方はまだまだ未熟。充分な時間を稼げるとは思えないわ。」

「・・・そ、それでも、華琳様にそんなことをさせるわけにはいきません!」

 

次に流琉が名乗りでるが、それも華琳によって否定される。

流琉も自身の未熟さを理解しているのか言葉に詰まっていたが、どうしても納得できず、涙交じりに説得をしようとしていた。

 

 

「ありがとう、流琉。だけど、私が出るのが一番助かる可能性が高いの、それはわかるでしょ?」

「・・・はい。」

 

華琳はそんな流琉をあやすように、優しく言い聞かせる。

 

「安心なさい、私もむざむざ死ぬつもりはないわ。ある程度時間を稼いだら、きちんと退却するつもりよ。」

「・・・・・。」

「だから貴方や凪達には、町の住人達を守ってほしいの。やってくれるわね?」

「・・・わかりました。」

「良い子ね。」

 

流琉は、そんな華琳の言葉に頷くしかなかった。

そして華琳は、そんな流琉に微笑みかけるのだった。

 

 

「策は決まったわね。凪、真桜、沙和、貴方達は今すぐ町の住人全員に、脱出の準備をさせなさい。

 出発は明朝、日の出とともに陳留のある東へと移動を開始する。」

「「「御意(なの)!」」」

 

流琉が納得したのを受け、華琳はすぐさま楽進達三人に指示を出す。

それを受けた三人は、それ以上何も言わず、その命令を実行しに出ていった。

 

「流琉、貴方には兵の指示を頼むわ。兵3千で私は出る、残りは住民達の護衛にあたらせるわ。」

「・・・御意。」

 

流琉は今だ俯いたままだが、返事だけはしていた。

それを確認すると、華琳は部屋を出ていった。

 

 

 

 

部屋の中には、俺と俯いたままの流琉の二人だけが残った。

 

「流琉。」

「!」

 

俺は流琉に近づき、声をかける。

それに気づいた流琉は、そのまま俺へと抱きついてきた。

 

 

「兄様、私なんでこんなに弱いんですか?」

「そんなことは」

「大事な人も守れない。私、華琳様をお守りする親衛隊のはずなのに、こんな時に側にもいられない。」

「流琉。」

 

流琉のそんな悲痛な叫びが、部屋に響く。

俺はそんな流琉の頭を優しく撫でて、落ち着かせる。

 

「私にもっと力があったら、華琳様の代わりになれるのに。」

「・・・力、か。」

 

俺はそう呟き、ある決意をする。

 

 

「なあ、流琉。」

「・・・なんですか?」

「華琳は、こんな所で死んでいい人間なんかじゃないよな?」

「もちろんです!」

 

俺の言葉を聞いて、流琉は泣き顔のまま俺を見上げる。

俺はそんな流琉の涙を指で拭ってあげながら、微笑みかける。

 

「守るって、約束したもんな。」

「兄様?」

「流琉、華琳からの命令、少し待っててくれ。」

「あ、兄様・・・」

 

俺はそれだけ言うと、部屋を急ぎ出ていった。

 

 

 

 

 

【side 華琳】

 

明日のための指示を出し終えた私は宿の一室に戻り、備え付けられた椅子へと腰を下ろす。

明日になれば、私は戦場へと赴く。

約10倍近い黄巾党どもを足止めするために。

流琉にはああ言ったけど、さすがにこれだけ戦力差があると・・・

 

 

コンコン

 

そんなことを考えていると、部屋の扉がのっくされる。

 

「入りなさい。」

 

誰なのかなど、確認しなくてもわかる。

こんなことをする人間を、私は一人しか知らない。

 

「何か用かしら、一刀?」

 

部屋へと入ってきたのはやはり一刀で、そのまま私の近くへとやってくる。

そんな一刀に、私はいつも通りの態度で話しかける。

 

 

「ああ、明日のことでな。」

「何、あなたも反対とか言うのかしら。さっきも言ったけど、これが一番全滅の危険性が少ないのよ。」

「でもそれで華琳が死んだら、みんなどうすればいいんだよ?」

「勝手に殺さないでくれるかしら。私は死ぬつもりなんて」

 

一刀との問答を繰り返す、そう、いつもと変わらぬ私で。

そう思っていた。

 

 

「だったら、なんでずっと震えてんだよ!」

 

一刀に言われ、そこで初めて気付く。

私の手は、小さくだが確かに震えていた。

なぜ?何に怯えているというの?

 

「報告を聞いた時からそうだ。町の人達と話してた時も、流琉達との軍議の時も、そして今も!」

 

そうか。 報告を聞いた時から、ある程度予想していたのかもしれない。

死を。

そんなもの、覇道を歩むと決めた時から覚悟していたことなのに。

次第に私の震えは大きくなり、広がっていった。

 

「生きて帰れると思ってないんだろ?死ぬのが怖いんだろ?」

(なんで、私自身も気がついてなかったことを、貴方は解ったの?)

 

もう、限界だった。

 

 

「ええ、そうよ、怖いわ。敵はこちらの約10倍、ほぼ絶望的でしょうね。

 だったら、どうしろというの? 泣いて、騒げば良かったとでもいうの?」

「・・・・・。」

 

私は堰き止めていた決壊したように、一刀へと八つ当たりする。

そんな私の言葉を、一刀は何も言わず黙って聞いていた。

 

「こんな事態になってしまったのも、全ては私の考えの甘さが原因。

 それなのに、他の者をそんな死地へと向かわせ、私だけがのうのうと逃げのびるなんてことをすれば、私は二度と覇道を歩むことはできない。

 いえ、歩む資格なんてないわ。」

「・・・華琳。」

 

私は母が死んで以来、初めてだろうか、人前で弱音を吐いた。

母に代わり陳留を治めるようになってからか、人を頼ってはいけない、弱みを見せてはいけないと、そう考えるようになっていた。

 

「そんなことになったら、これから私はどう進んでいけばいいの? だから、私自身が行くしかないの!

 それに、奴等の狙いはきっと私。私が死ねば、少なくともこの町の住人や流琉達は」

 

 

ギュッ

 

そこで私の言葉は遮られる。

一刀が、私のことを抱きしめたのだ。

 

「もういい、もういいんだ、華琳。 華琳が身代わりになる必要はない。

 これ以上、華琳が背負い込む必要はないんだ。」

「・・・言ったでしょ。

 そんなことをすれば、私はもう二度と覇道を歩むことは「だったら、歩まなければいい。」 なっ!?」

「そんな道を歩くために華琳が死ぬんだったら、そんな道行くな。

 春蘭や秋蘭、桂花に季衣、流琉もみんな、華琳が覇道のために死ぬより、生きていてほしいと思ってる。

 進む道がわからないんだったら、新しい道を行けばいい。 俺や皆が、一緒に探してやる。」

「・・・一刀。」

 

そう言って一刀は、さらに強く私を抱きしめる。

 

一刀の優しさが、私の孤独を包み込んでくれる。

一刀の温もりが、頑なだった心を溶かしてくれる。

一刀の存在が、見えなかった新たな道を照らしてくれる。

私はそれらをもっと強く感じようと、一刀を抱きしめ返した。

 

 

 

しばらくそのままでいたが、私は気になったことを一刀へと質問する。

 

「だけど、黄巾党はどうするつもり。もし、流琉や凪達にさせるというなら」

 

そう、根本的な問題は解決していない。

もし彼女たちを犠牲にするなら、そう思ったが、一刀の口から出た言葉は、私の予想を超えるものだった。

 

「俺が行く。」

「えっ!?」

「俺が、一人で行く。」

 

私は思わず一刀の体から離れ、彼の顔を見上げてしまった。

 

 

「貴方こそ、何を言っているの。一人で3万もの大軍を相手にするなんて。」

「華琳も、俺の強さは知ってるだろ?」

「それとこれとは話は別よ!

 何、私に死ぬなとか言って、自分が身代わりにでもなるつもり? そんなこと許さないわよ。」

「そんなつもりはないよ。本気を出すのに、一人のほうが都合がいいんだよ。

 それに最悪の場合、一人の方が身を隠したりしやすいからさ。」

「でも」

 

一刀は本気だ。

本気で、3万もの黄巾党と対峙しようとしている。

いくら一刀が強いとはいえ、そんな数相手に無事でいられるはずない。

それこそ、死ぬことさえ・・・

そんなの嫌だ!

そんな考えが頭に浮かんでしまい、私は必死に一刀を引きとめようとする。

 

 

「華琳。」

 

そんな私を一刀はゆっくりと引き離し、目線を合わせる。

 

「俺を、信じてくれ。」

 

一刀が、私の瞳をじっと見つめる。

 

「本当に、大丈夫なのよね?」

「言ったろ、好きな子とは一緒に生きていきたいって。」

 

そういって一刀は、いつもと変わらぬ笑顔を私に向ける。

 

 

私はそんな一刀の頬に両手を添え、顔を近づける。 そして、

 

「かり・・ン!?」

「ン・・・ちゅ、・・んぅ・・」

 

口づけをした。

 

どれくらいしていたのだろう。

そんな時間の間隔もわからなくなってきた頃、私は一刀からそっと離れる。

 

「か、華琳?」

「はぁ。 一刀、約束なさい。 絶対、死んだりしないと。」

 

突然のことに驚いていた一刀だが、すぐに真剣な顔つきへと変わり。

 

「ああ、約束する。 絶対、華琳の所へ帰るよ。」

 

そして私達は、再び口づけを交わした。

 

 

 

その後一刀は、流琉を待たせていることを思い出し、私にそのことを告げる。

 

「あきれた。まさか私の命令を勝手に取り消してるなんて。」

「あ~、悪い。まあ、緊急事態だったってことで、勘弁してくれよ。」

 

私があきれた様に言うと、一刀は悪びれる様子もなく謝る。

 

「まあ、要らぬ混乱を避けれたことだし、今回は許すわ。」

「助かる。それじゃ、流琉に作戦の変更を伝えてくるよ。」

 

一刀はそう言って、部屋を出ていこうとする。

 

 

「一刀。」

「ん?なんだ?」

 

私は、そんな一刀を思わず呼び止めてしまった。

 

「あ、その、そう、もし今回のことが上手くいったら、貴方に何か褒美をあげないといけないわ。

 何か、望むものはあるかしら?」

「褒美? 別にそんなの要らないけど。」

「上に立つ者として、そういう訳にはいかないのよ。」

 

思わずそんな誤魔化しをしてしまったが、相変わらず一刀は欲がないわね。

しかしそんな一刀から、まさかあんな褒美を要求されるとは。

 

 

「うーん、じゃあ、今日の続きってのは駄目かな?」

「なっ!?」

 

一刀のいきなりの言葉に、私は顔を真っ赤にしてしまった。

私が、それに対し何かを言おうとする前に、一刀は扉を開け部屋の外へと出てしまう。

 

「ははは、冗談だよ。 華琳、おやすみ。」

 

そして、それだけ言うと、走っていってしまった。

 

 

そんな一刀を見送った私は、まだ収まらない鼓動のまま、寝台へと入る。

明日のことを考えれば、不安がないわけではない。

でも、一刀が信じろと言った。

なら、私はそんな一刀を信じるだけだ。

私はそう考え、静かに瞳を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

【語り視点】

 

翌日、華琳達は日の出とともに町の住人達を連れ、陳留の方向へと移動を開始していた。

すでに移動を開始して随分と時間が経っており、日も高くなっていた。

 

「そろそろ、ね。」

 

華琳は時間的に考え、そろそろ一刀と黄巾党が対峙している頃だと考える。

 

 

「華琳様、もうすぐ賊達が町に着く頃だと思うんですけど、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

流琉は、後方から迫ってきているであろう黄巾党を気にする。

華琳は、流琉達に本当のことを話していなかった。

あくまで、別の策を用いて時間を稼いでいるということにした。

 

一刀一人で足止めしているなんて、知らぬ者からすれば不安でしかない。

流琉に至っては、自分のせいだと助けに行ってしまうかもしれない、そう考えたからだ。

 

 

「ええ、大丈夫よ。信じなさい。」

 

誰を、とは言わない。

華琳は一人、黄巾党に立ち向かっている男の身を案じるのだった。

 

 

 

その頃町の東の方では、大量の砂煙をあげ、3万という数の黄巾党が、華琳達がいた町を目指して移動を行っていた。

 

「こっちの方向であってんだろうな。」

「へい。間違いありません、程遠志様。」

 

その本陣では、周りの者よりしっかりとした装備をし偉そうにしている男が、手下に町の方向が正しいか尋ねていた。

その態度や身形から、程遠志と呼ばれたものが、この部隊のトップだと考えられる。

 

 

「しかし、小娘一人片づけるのに、これだけの大部隊を動かすとは。」

「この辺りを、大陸制覇の足がかりにするのだ。そのため、念には念をいれたのだろう。」

「慎重な方なのですね。」

「俺は必要ないと言ったのだがな。 ん?前衛の奴等の動きが止まっているな。

 

そんな会話をしていた程遠志達だが、前方の足が止まっているという異変に気付く。

そして何かあったのかと思い、そのまま前衛まで移動をする。

 

 

「お前ら、何を止まっていやがる!」

「い、いや、それが、前になんか変な奴がいて。」

「変な奴だ?」

 

そう聞いて視線を向けると、確かに一人の人物が自分達の進行を邪魔する様に立ちはだかっていた。

普段なら、そんな奴がいようが構わずに潰していってしまうのだが。

 

その人物は、口元を白い布で覆っているため、顔の判別はできなかった。

しかしその身には、日の光を反射しキラキラと輝く白銀の衣を纏い、その右手にもまた、武器とは思えぬ美しさを持つ白銀の刃を握っていた。

そんな神々しいとすら感じる姿に、黄巾党の者たちは足を止めてしまっていたのだ。

 

 

しばらくそのままの状態が続いていたが、その人物が口を開く。

 

「我、天の御遣いなり! 大陸に混乱と禍を齎す黄巾党どもよ。今すぐ悔い改めよ!

 さもなくば、天の御遣いの名において、天よりの裁きを下す!!」

 

辺り一面にそんな声が響き渡る。

こうして、天の御遣いとして初めての戦いが、開かれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

sei 「第13話、また引っ張る様な形で終わりとなりましたが、いかがだったでしょうか。

 

   本編は、けっこうシリアスな展開になってきましたね。

   但しこのあとがきは、そんなの無視して今後も平常運転でいこうと思ってますので、

   その差に、「ふざけんなよ性獣が!」とか、「とっとと本編進めろや、( ゚Д゚)ゴルァ!!」とか思っちゃう方は、

   このあとがきをとばすことをお勧めします。

 

   今回は、一刀が華琳を説得するという話がメインとなりました。

   こうしてみると、華琳がメインヒロイン的な立ち位置になってしまってますね。

   まあ、自分の愛が暴走しすぎた結果ですね。

   好きなんだから、しょうがないですよね。

 

   さてさて、そんなぶっちゃけも済んだとこで、今回のゲストを紹介します。

   三国一の発明王、絡繰は爆発だ!の真桜さんです。」

 

 

真桜「なんや、後半の説明は余計な気がするで。」

 

sei 「え?真桜の発明の半分は、爆発で出来ていると思ってましたよ。」

 

真桜「只の失敗や!うちかて、したくてしとるわけやない!」

 

sei 「でも、わざとじゃないかってくらい爆発してますよねー。」

 

真桜「えーい、やめややめや、とっとと話すすめんで。」

 

 

真桜「本編の最後に、隊長がきめきめで登場したけど。

   なんで隊長、都合良く制服なんて持ってたん?」

 

sei 「えーと、一刀はこんな事態も起こるんじゃないかなーと予見しており、その時のために一応制服を持ってきていた、という設定です。」

 

真桜「ご都合主義やな。」

 

sei 「ええ、ご都合主義ですが、何か?」

 

真桜「うわ、開き直りおったでこいつ。」

 

sei 「そこまで気にしてたら、俺の力じゃ何も書けないんだよ、ちくしょー!」

 

真桜「今度は、駄々こねだしおった。めんどくさい大人やわー。」

 

sei 「ううう。」

 

 

真桜「お次はコメントについてやけど、3万もの黄巾党を見つけられんてどうなん?って質問やね。」

 

sei 「うう、これも痛い所ですね。」

 

真桜「実際どう思ってるん?」

 

sei 「あまり詳しくないので、この時代どれくらいの範囲に偵察を送ってどれくらいかかるかとか、

   まったくわからなかったので、話の都合に合させてもらいました。」

 

真桜「つまり、これもご都合主義やと。」

 

sei 「ですね。まあ大部隊がいた所は、黄巾党たちも逃げていった方向だったので、

   それらに見つからないよう慎重に後をついて行った結果、こんなに時間がかかってしまったのだと、

   そんな感じでお願いしたいと思います。」

 

真桜「今回は、随分と言い訳が長いわ。」

 

sei 「・・・言い訳って言わないでください。」

 

真桜「そういえば、桂花に渡したもんのヒント出すん?」

 

sei 「そうですね。第2のヒントとしては、以前までに投稿した話の中で、ちょろっとだけど出てきた物ですね。」

 

真桜「え、そんなんあった?」

 

sei 「まあ、本当にちょろっとですし、後でわかるから、あんま気にしないでください。」

 

 

真桜「今回は、sei の言い訳が多かったけど、これで終わりやな。」

 

sei 「一言余計ですが、そうですね。」

 

真桜「次回はどうなるん?」

 

sei 「次回は、まあそのまんまですが、一刀 vs 黄巾党の戦いですね。」

 

真桜「まあ、そうなるわな。」

 

sei 「ということで今回はこの辺で、さよなら~。」

 

 

 

真桜「・・・ところで、sei 」

 

sei 「はい、なんでしょう?」

 

真桜「前回といい、今回といい、うちの出番少なない?」

 

sei 「えっ?」

 

真桜「どうせ、次回も少ないんやろ?」

 

sei 「えーと、まあ、・・・はい。」

 

真桜「ちょっと、話しあう必要がありそうやな。(ウィンウィンウィンウィン) 」

 

sei 「・・・なんですか、その手の中で異音を放つ妖しげな物体は?」

 

真桜「これ?これこそ、うちが改良に改良を重ねた最新作、グレートお菊ちゃんZZカスタムや!」

 

sei 「なんですか、その機動戦士とスーパーロボットを足した様な名前は!」

 

真桜「これのすごい所はな、うちの気に反応して、高速回転するんよ。(ギュイーーーーーン!) 」

 

sei 「ほ、ほーう、それはすごいですね。 して、それをどうしようと?」

 

真桜「ふっふっふっ、そりゃもちろん。」

 

sei 「なんで、にじり寄ってくるんですか?」

 

真桜「大丈夫、すぐに良くなるって。

   それに、この展開を期待してる人もおったんやし、ファンサービスってやつや。」

 

sei 「そんなサービスは、受け付けてなーい!!(脱兎)」

 

真桜「あ、待ちー、逃がさへんで。」

 

sei 「ぎゃーー、もし無事だったら、また次回ー・・・・・」

 

 

 


 
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