No.490052

勇者伝説セイバスター 第6話「最後の勇気」

紅羽根さん

アニメ『勇者シリーズ』を意識したオリジナルロボットストーリー。中学生の頃に書いていた作品なので、文章の稚拙さが著しいのでご注意を。

2012-09-29 21:55:40 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:364   閲覧ユーザー数:364

 

第6話「最後の勇気」

 

 それはファイナルが地球に飛来してくる少し前の事だった。

「私が、『勇気』を?」

 ファイナルは聖勇者になるための厳しい下積みを終え、聖勇者となったその時に突然『大いなる意志』から『勇気』を司る聖勇者に命じられたのである。

「そうだ。お前は『勇気』を司る聖勇者として十分にふさわしい素質を持っている」

「しかし、すでに『勇気』を司る聖勇者は……」

 ファイナルはその事があまりにも唐突だったので戸惑いを隠す事ができない。

 聖勇者の中で力を司る事ができるのはほんのわずかしかいない。それも、力を司る事ができる聖勇者は先天的な素質を持っているものがほとんどであった。

 中でも『勇気』を司る聖勇者は、聖勇者の中で群を抜いて全ての能力が高かった。『勇気』を司る聖勇者は、まだ見習いである勇者達にとってまるで雲の上のような存在なのであった。

「わかっている。お前が司る『勇気』とは、『最後の勇気』の事だ」

「『最後の勇気』……?」

「そう。ファイナル、お前の名前と同じ意味を持つ『最後の勇気』がお前の力となるのだ」

「私の名前と、同じ意味を持つ……」

 ファイナルは大いなる意志の言葉を心に深く刻み込むように自分で繰り返す。

「では、その『最後の勇気』とは、一体どんな力なのですか?」

「それは……」

 大いなる意志から『最後の勇気』について語られた。

 

 

「っ!?」

 HBCフォースオーダールームで、ファイナルは車モードのまま目覚めた。そう、さっきの事はファイナルの記憶が夢としてあらわれたものなのだ。

(夢……か……)

「ファイナル、どうかしたのか?」

 その時、戦闘機モードのヴァリアントがファイナルに話しかけてきた。その光景は少し異様な雰囲気を感じてしまう。

 何せ車と戦闘機が会話をしているのだから、普通の人が見ればそれはなんとも奇妙であろう。

「いや、何でもない」

「そうか」

 ヴァリアントはそういい終えると再び沈黙する。

 超AIは『睡眠』という行動が不必要なので、夜の間は機能を一時停止にしている。だが、何か異常が起きたとき、超AIは起動して意識が目覚めるのだ。

 さっきの行動はその例である。

「…『最後の勇気』、か……」

 ファイナルは自分の夢で出てきた言葉をふと思い返す。

 その言葉は今までファイナルが発した言葉の中で一番、重みがあるように聞こえた。

 

 

 ある晴れた日の放課後。明日ヶ丘市立南立葉(みなみたては)小学校の5年2組の教室で空人達生徒は下校の準備をしていた。それだけではなく、中にはいろいろと話も聞こえてくる。

「でさ、あの赤いロボットが……」

「黄色い方も……」

「ライオンみたいなロボットの方がかっこいい……」

 その話の話題の約半分は勇者達の活躍についてだった。

 それもそのはずである。勇者達は、突然現れては破壊活動をする魔物たちを次々と倒し、人々を救っているのだ。そんな活躍をしている勇者達が子供たちの話題にならないはずがない。

「絶対あれはどこかの会社が有名になるためにやった事だって……」

 もちろん、中には勇者の存在を否定する者もいるが……

「空人、お前はどう思う?」

「え、何が?」

 もちろん、空人と晴香もその話題に参加していた。

「何言ってんの。もちろんいつも私たちを助けてくれるロボットの事に決まってるじゃないの」

 いかにも世間話が好きそうな感じのする少女、『野上恭子(のがみきょうこ)』は空人に向かって少し口を尖らせたように言う。

「ああ、そうだったね」

「お前、大丈夫か? いつもならこんな話をすれば「勇者だ! 勇者だ!」ってうるさいのによー」

 少しがっしりとした体つきをしている少年、『中田力也(なかだりきや)』はそういいながら空人を疑うような眼で見る。

「いや、あまりにも近くで勇者が活躍してるから驚いちゃってうまく気持ちを表せないんだよ……」

「ふ~ん……」

 空人は必死に言い訳をするが力也に怪しい目つきをされてしまう。

「それで、何の話をしてたんだっけ?」

 晴香がいいタイミングでいつもの天然ボケな発言を出す。そのせいでその場にいた3人はおもわずズッコケてしまった。

「は、晴香……さっきから話題は変わってないのにそれはないでしょ」

「まったく、いつものこれにはついていけないぜ……」

 力也は思わずため息をつく。

「私たちをいつも助けてくれるロボットの事を今話してるの。わかった?」

「うん」

「それで、「また忘れた」とかいうなよ?」

 晴香の元気のいい返事をいまいち信用する事ができない力也は晴香に念を押す。

「あ、もうこんな時間。そろそろ帰らなきゃ。行こう、空人」

「わかった。じゃーね」

 空人は晴香と共に力也たちに手を振り、教室を出て行く。

「おう、じゃーな」

「また明日ね」

 力也と恭子もそんな空人達に向かって手を振る。

 これが、5年2組のいつもどおりの光景だった。

 

 

 数十分後。明日ヶ丘市内は戦場と化していた。そう、例によって魔物が街中に現れ、勇者達はその魔物を倒すために闘っていたのだ。

 だが、その戦闘も長く続く事はなく、勇者達の活躍によって魔物は倒された。

 

 

 HBCフォースオーダールーム。戦闘を終えたファイナル達及び空人達が戻ってきて一息ついていた。

「今日の地球外知生体、やけに弱かったな」

「ああ、怪しいぐらいにな」

 瞬治はタオルで汗を吹きながら誠也の言葉に答える。

「でも、その方がいいんじゃない? ファイナル達も苦労しなくてすむから……」

 それを聞いた空人は瞬治に向かって誠也をフォローするような感じで言う。

「まあな。だけど、日々強くなっているはずの地球外知生体がいきなり弱くなるというのも考えづらいな」

「どうせ力でも尽きたんじゃないのか?」

「それはないと思う。俺の勝手な想像だが……」

 そういって瞬治と誠也は空人には理解しがたいような会話を始めた。

「………………」

 空人はそれについていけず、仕方なくファイナルの方に向かっていった。

「ねえ、ファイナル」

「どうした? 空人」

「ちょっと話でもしない?」

「…ああ」

 ファイナルは空人の言葉を聞いて少し考えるが、すぐに返事をして空人との会話をしばらく楽しんだ。

 

 

「……ファイナル。僕とファイナルが初めて会ったときにファイナルは「勇気を与えてくれ」って言ったよね?」

「ああ」

「それって、僕が他の人たちよりも『勇気』があったからなの?」

 空人はファイナルに向かってかなり真剣な顔で質問する。

「……それもある」

 ファイナルのその答えはさっきとは全く違うトーンで返ってきた。

「え……他にもあったの? 例えば僕にしかない『何か』とか……」

「……その前に、空人、わたしの事について少し話させてくれないか?」

「うん、いいよ」

 空人がうなずく。それを確認したファイナルは自分の事について話し始めた。

「私は、大いなる意志の命を受けて『闇』からこの星を守るためにやってきた、『最後の勇気』を司る聖勇者なのだ」

「『最後の勇気』? 普通の勇気とは違うの?」

 空人はファイナルに質問する。

「普通、勇気とは守るためにあるのだ。戦うときは、何かを守るために戦う。だから戦うときに見せる『勇気』も守るための勇気だ」

「ふ~ん……」

「私の司る『最後の勇気』とは、基本的には普通の勇気とあまり変わらない。だが、最後の勇気は窮地に陥ったとき、本当の力を発揮するのだ」

「………………」

 空人は真剣な表情でファイナルの話に耳を傾けている。

「窮地に陥るとき、それはその場面の最後が多い。その事からその勇気は『最後の勇気』と呼ばれるようになったのだ」

「その、最後の勇気があったから僕はファイナルと出会えたんだ」

「ああ。だが、それだけではない」

「他に、何かあるの?」

「最後の勇気は、使い方を間違えれば邪悪な力にもなってしまう。最後の勇気が聖なる力となるには『純粋な心』が必要なのだ」

「純粋な心……」

「純粋な気持ちで何かを守りたいと思うこと、それが最後の勇気を聖なる力に変えるのだ」

 ファイナルのその言葉は、一字一句全てがすべてを悟っているようだった。

 ファイナルの司る力『最後の勇気』、それを聖なる力にする『純粋な心』、その二つの言葉は空人の心に深く刻み込まれたであろう。

「『最後の勇気』と『純粋な心』。その二つを空人は誰よりも強い輝きとして持っていたのだ。だから私は空人を選んだのだ」

「………………」

「空人。これからも辛い事や苦しい事が待っているかもしれない。それでも、私と共に戦ってくれるか?」

「……僕ががんばって地球が平和になるなら、ファイナルと一緒に戦うよ。だってファイナルのおかげで石橋さんや瞬治さん達に出会う事ができたんだから!」

 ファイナルのその問いかけに空人は元気に即答した。

 自分も勇者だから、自分も戦えるから、だから共に戦う。空人はそんな事も伝えるようにファイナルを輝いた眼で見つめる。

「ありがとう、空人」

「いい話じゃねーか」

 ファイナルが礼を言った瞬間、空人の後ろから瞬治と誠也が前に出てくる。

「しゅ、瞬治さん! それに誠也さんも……」

「話は大体聞かせてもらった。ファイナル、俺達もできる限り協力するからな」

 瞬治はそういってサムズアップをする。

「そうだぞ。俺達だって立派な『勇者』なんだからな」

「ありがとう」

 ファイナルが再び礼をいったその時、

 

ビーッ! ビーッ!

 

「うわっ!」

 空人達の会話に水を差すようにフォースオーダールームに非常警報が鳴り響いた。

「また地球外知生体か!?』

「行くぞ!」

「はい!」

 空人達三人は急いでグレートオーダールームへと向かっていった。この戦いが今までよりも過酷なものとなるのを知らずに……

 

 

 明日ヶ丘市と同じ県内にある陸島(おかしま)市の街中。そこに現れたのは魔物ではなく、背中に剣を背負った、騎士のような姿をした『ロボット』だった。

「ククク……なんとも気分のいい光景だ……」

 ロボットの操縦席でソルダーズは逃げ回る人々を見ていやな笑みを浮かべていた。そう、そのロボットの操縦者はソルダーズだったのである。

 そのロボットの操縦席は何もない、ただ真っ暗な空間であった。だが、ソルダーズが動けばそのロボットも同じように動く。

 どうやら地球上にないシステムでそのロボットは動くようだ。

「さあ、破壊をはじめようではないか、『キルエッジ』よ」

  そういってソルダーズが背中の剣を抜くとロボット『キルエッジ』も同じように剣を抜く。

「『空の太刀』よ、その力を竜巻に変えて全てを破壊せよ……」

 ソルダーズが呪文を唱えていくとキルエッジの手に握られている剣が風を巻き起こしていく。

「破壊の竜巻、『トルネードカッター』!!」

 その言葉と同時に剣を横に振ると、竜巻が発生した。

 その竜巻は周りのものを巻き込むばかりでなく、竜巻にふれたものを全て切り裂いてしまうと言う恐ろしい力を持っていた。

 竜巻が通っていった後はあらゆる物が恐ろしいほど切り裂かれ、異常な光景となってしまった。

「ハァーッハッハッハ!! どうだ! 我が『鎧』の力は!」

 人々が必死になって逃げている姿を見てソルダーズは激しく高笑いをする。ソルダーズのその姿は、どこか発狂したようにも見えた。

 と、その時、いつものように勇者達がその場に現れてきた。

「現れたか、勇者ども……」

 ソルダーズはそれを見て笑みを浮かべる。

 

 

「まさかロボットだとはな……」

 誠也はキルエッジを見て思わず険しい顔になる。

「いくよ、ファイナル!」

「ああ!」

 ファイナルは返事をするとすぐに変形してロボットの姿になる。

「ファイナル・ブレイブ!」

 空人が力強く叫ぶ。すると、ファイナルの体が強く輝きはじめる。

「セイバードラゴン!!」

 ファイナルが空に向かってそう叫ぶと胸の飾りから1本の光が飛び出す。その光の先から竜の姿をしたメカが姿を現わす。

 そのメカ『セイバードラゴン』とファイナルの合体が始まる!

 

 セイバードラゴンの前足の上腕部分のみが上に回転する。 足の前についている爪が下にさがり、後ろについている爪が上に折りたたまれる。

 そして前足の下腕部分が伸び、前足全体が横に回転して腕を形成する。

 次にセイバードラゴンの膝の部分が前に倒れる。その形は足をさかさまにしたようだ。

 そして今まで腰の真横についていた足が移動して腰の下へ移動する。腕の時と同じように前についている爪が下にさがり、後ろについている爪が上に折りたたまれる。

 足を逆さにしたようなすねの部分が縦に回転し、下半身全体が横に半回転して足を形成する。

 背中の翼が起き上がるとそこには一つのくぼみがあった。

「とうっ!」

 ファイナルが飛び上がると車へと変形し、そのくぼみと結合する。そして翼が元に戻ると両腕から手が現れ、背中にあったキャノン砲が前に回転して砲口が正面を向く。

 最後に竜の顔が首から分離し、胸と結合する。そして首が後ろに倒れると機体から顔が出現する。

「火焔合体!!」

 ファイナルが叫ぶと同時に額に竜の翼のような飾りが出現する。

「ファイナルセイバスター!!!」

 ファイナルセイバスターが両腕を振り上げ、気合いを入れるように腕を振り下ろして構えのポーズを取る。

 

「俺達もいくぞ!」

「了解!」

 同じようにヴァリアントは返事をすると同時に変形してロボットの姿になる。

「VALIANT・DRIVE! Come on、THUNDERJET!!」

 瞬治がキーワードを叫びながら指を鳴らす。すると空の彼方からサンダージェットが現れた。

 サポートメカ『サンダージェット』とヴァリアントの合体が始まる!

 

 サンダージェットの後部、エンジンとなっている部分が左右に分かれる。その左右に分かれたエンジン部分が半回転し、半分から外側が下にさがると上半身を形成した。

 上半身の左腕についていた翼が分離して右の翼と結合する。それは『V』の形をしている装飾品となった。

 次にサンダージェットのコクピット部分が分離し、機体の前部が戦闘を中心にして前に回転する。完全に前に来ると横についていたパネルが開き、回転の中心となっていた部分を閉じた。

 そして前に降りた機体前部が二つに分かれ、爪先が降りると足を形成する。

 今まで機体後部の位置の横にあった翼が分離してボディの背中と結合する。

 その機体は胸の部分が欠乏していた。

「はっ!」

 ヴァリアントがその胸の部分に向かって飛んでいく。するとその姿を変形させて機体の胸へと結合した。

 それが終わると同時に機体の腕から手が現れる。

「VALIANT、Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)

 瞬治がそう言うと機体から顔が現れた。

「雷光合体!!」

 ヴァリアントは叫ぶと同時に顔の前で腕を交差させ、

「ヴァリアントセイバスター!!!」

 腕を振り下ろし、構えを取ると背中の翼にもう一つ、V字の翼が現れた。

 

「グランドレオン!」

「まかせろって!」

 ファイナルやヴァリアントと同じように、グランドレオンは返事をすると同時に変形してロボットの姿になる。

 

 

 三人の勇者とキルエッジが相見えていた。

「……さあ、戦いをはじめようか!!」

 先に攻撃を仕掛けてきたのはソルダーズだった。

 キルエッジは勇者達に向かってものすごい勢いで剣を振る。

「なに!?」

 すると、剣が描いた弧状の刃が勇者達に向かって飛んでいった。

「くっ!」

 勇者達はすかさずその刃をかわしたが、その刃は勇者達の後ろにあった建物を両断した。

「なんて鋭い刃だ……」

「うかつに近づけないな……」

 瞬時は思わず冷や汗をたらす。その刃を受けてしまったら、いくら勇者と言えどもダメージは大きいだろう。

「どうだ、この『空の太刀』の威力は」

 その勇者達の焦りを見てソルダーズは笑みを浮かべながら再び剣を構える。

「くるよ!」

「そうはさせるか!」

 グランドレオンはキルエッジが攻撃をする前に突進していった。そして、

「レオンクロー!!」

 手の甲に装着された爪で攻撃しようとする。

「嵐の防壁、『ストームシールド』!!」

 だが、キルエッジがグランドレオンに向かって剣をかざすと嵐が発生し、グランドレオンの攻撃の軌道をそらす。

「うお!?」

ドゴォッ!!

「ぐはっ!」

 それだけでなく、グランドレオンを空中に巻き上げて地面に叩き落した。

「くそ!」

「ヴァリアントエッジ!!」

 ヴァリアントセイバスターはすかさず右腕をキルエッジに向かって突き出すと、右腕についていたV字の刃がキルエッジに向かって飛んでいく。

「くだらん……」

 ソルダーズはあきれたような、あざ笑うかのような感じでヴァリアントエッジを剣で弾き返そうとした。だが、

「上だ!」

「なっ!?」

 ヴァリアントエッジは空の太刀と触れる直前に上へ急上昇し、その直後に引力に従うように急降下してキルエッジの真上に直撃した。

「ぐうっ!」

 思わぬ一撃により、キルエッジは思わず体勢を崩してしまう。

「ドラゴンバーン!!」

 そして、まさにキルエッジの隙を突いたかのようにファイナルセイバスターがキルエッジに向かって攻撃する。

「ぐわっ!」

 ソルダーズは防御するひまもなく、ファイナルセイバスターの攻撃をも受けてしまった。

「どうだ! お前もたいしたことねーな」

 その姿を見て、誠也は思わずソルダーズを挑発するような事を口にした。

「私を……私を侮辱するなぁ!!」

 

ズドオォォォォォォォォン!!

 

「なに!?」

 その瞬間、キルエッジから激しい光が放たれ、勇者達の目をくらます。

「くっ!」

 勇者達はとっさに腕を目の前にかざし、光が直接目に入り込まないようにする。一方、空人達も同じように光を回避していた。

「………な!?」

 次に勇者達が目を開けて見えた光景は、邪悪なオーラを発するキルエッジだった。

「私ハ、コノ宇宙デ最強ノ騎士……私ニ勝ル者ハ、イナイ……」

 ソルダーズは怒りによって性格が豹変し、心の中は怒りや憎しみに支配されていた。その姿はもはや『空騎士』の冠は似合わず、『狂戦士(バーサーカー)ソルダーズ』というしかなかった。

「私ガ、勝ツ!!」

「くる!」

 そして、その怒りによる攻撃が始まった。ソルダーズが最初に選んだターゲットはグランドレオンだった。

「俺がこんなやられる……うお!?」

 キルエッジの剣による攻撃はグランドレオンの予想に反して異常なほどに速く、また、正確にグランドレオンをとらえていた。

ズガッ!

「ぐはっ!」

 その一撃はグランドレオンを切り裂きはしなかったものの、ダメージを与えるには十分すぎる力を持っていた。そのため、グランドレオンは衝撃によって激しく吹き飛ばされてしまった。

「大丈夫か!? グランドレオン!」

「く……なんて速さだ。さっきとは大違いだぜ……」

「くそ! いくぞ、ヴァリアン……なに!?」

 瞬時が前を振り向くと、瞬治の目の前にはキルエッジが今まさに剣を振りおろそうとしている瞬間が映し出されていた。

「サンダーシールド、オン!!」

 その一撃はサンダーシールドによって防ぐ事はできた。だが、キルエッジはすぐに剣を戻し、剣を縦にして構えをとった。

「空ノ太刀ヨ、力ヲ暗黒ニ変エテ全テヲ押シツブセ……」

 ソルダーズが呪文を唱えると、剣から暗黒のオーラが発していく。

「! まずい! みんな逃げるんだ!」

 ファイナルセイバスターのその言葉に、全員はその場から離れていった。

「暗黒抹殺、『ダークプレッシャー』!!!」

 キルエッジはその剣を勇者達に向かって勢いよく振り下ろした!

 

ズッドオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

「ぐうっ!!」

 その瞬間、剣が振り下ろされた地面は押しつぶされ、さらに四方八方に余った力の衝撃が駆け抜けていき、それによってまわりの建物は破壊され、原形を止める事はできなくなってしまった。

「………………」

 勇者達はしばらく防御の構えのままでいたが、ゆっくりと目を開けて今の状況を確認した。勇者達の目に映ったのは、まわりの建物がほとんど破壊され、まさに地獄絵図と言った光景だった。

「強い……」

 瞬治の頬を冷や汗が流れ落ちていく。

「私ハ、最強ノ騎士……敗北ハ許サレナイ……」

 その時、キルエッジが再び動きはじめた。

「またくる!」

「そうはさせるかよ!!」

 それと同時にグランドレオンは全力でキルエッジに向かって走り始める。そして、

「トライアングルフィールド!!!」

 グランドレオンはキルエッジの目の前でジャンプし、キルエッジの真上に来るとからバリアを発生させてキルエッジをそのバリアの中に閉じ込めた。

「グ……」

「ファイナルセイバスター! ヴァリアントセイバスター! 俺がこいつを全力で抑える! だから二人でこいつを倒すんだ!」

「わかった!」

 ファイナルセイバスターはうなずくと同時に構えを取る。

「OK! VALIANT,Let’s go!」(ヴァリアント、行くぞ!)

 そういって瞬治は改めて正面を向きなおした。

「ヴァリアントボウガン!」

 ヴァリアントセイバスターはどこからかともなく銃を取り出し、右腕を上に突き上げる。するとその右腕に装着されていたV字の装飾品が飛び上がって銃に装着された。その形はまるでボウガンのようだ。

「ファイナルブレード!!」

 ファイナルセイバスターが腰についていた剣の柄をつかみ、剣を抜く。そして魔物に向かって構えると刃が炎に包まれた。

「いくぜ……」

 瞬治はそういいながらヴァリアントボウガンの照準をキルエッジに合わせる。

「THUNDERARROW,FIRE!!!」(サンダーアロー、発射!!!)

 瞬治がそう叫ぶとヴァリアントセイバスターはすかさず引き金を引く。

 

ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

 その瞬間、銃声と共にヴァリアントボウガンから雷の矢がキルエッジに向かって飛んでいった!

 

ズドオッ!

 

 サンダーアローはキルエッジに突き刺さるとすぐに消えたが、サンダーアローのダメージはかなり強烈だったのでキルエッジの動きを完全に止めるには十分だった。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 そこへすかさずファイナルセイバスターが激しく咆哮しながらキルエッジに向かって走り出す。

「ドラゴンスラッシャー!!!」

 ファイナルセイバスターがキルエッジの手前で飛び上がり、はるか上空から炎に包まれた剣でキルエッジを一刀両断する!

「ワ、私ハ、最強、ノ、騎士……コノ宇宙、デ……サイ、キョ、ウ……」

 ソルダーズがさっきと同じ言葉を、何度も何度も繰り返す。その状態は完全に「壊れて」いた。

 

ドオォォォォォォォォン!!

 

 そしてキルエッジは爆発した。

「I wish you go to the heaven」(お前が天国に行くことを願っておいてやる)

「やったあ!」

 それによって誰もが勝利に喜んでいたその時、

 

ズッドオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

「な!?」

「え!?」

 キルエッジが二回目の爆発を起こした。しかも、とんでもないほどの衝撃波を持ちながら。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 その衝撃波によって空人は激しく吹き飛ばされてしまい、後方にあった建物に衝突してしまった。

「空人!!」

 爆発による衝撃波がおさまると、誠也は急いで空人を抱き上げる。

「!!」

 誠也は空人を見て驚いた。空人の頭からは血が流れ、ぐったりとして全く動かなかったからだ。

「おい、空人! 返事しろ! お前が倒れてどうすんだよ!!」

 その呼び掛けにもむなしく、空人は返事をしなかった。

「落ち着くんだ、誠也! 取り合えず空人をHBCに運ぼう。治療が先決だ」

「……わかった。ファイナル、空人を頼む」

「ああ」

 合体を解除したファイナルはすぐに車へと変形する。そして誠也がファイナルに空人を乗せるとファイナルはすぐさま走り去っていった。

「俺達も行くぞ、誠也。せ……」

「くそ!」

 誠也は拳を握り、そのまま地面に向かっていきおいよく振り下ろして地面を殴った。

 空人を助けられなかった悔しさなのか、それとも異常なほどの衝撃波を持った爆発に対しての怒りなのか、それは誠也にしかわからなかったであろう。

 

 

 一方、戦地となった場所のはるか上空では、謎の男がソルダーズを脇に抱えてその光景を黙って眺めていた。

「やはり『人形』にこの任務を任せたのは失敗だったか。ヘルゲイズ様もとんだミスをおかしてしまったな」

 謎の男はソルダーズを眺めながら何やら意味の深そうな独り言をつぶやく。その時、ソルダーズの仮面が外れて下に落ちていった。

「まあ、『魂』が残っていればまだ使える。使えるときになるまで封印しておくか」

 そういって謎の男はさらに上空へと向かっていった。脇に抱えたソルダーズの『素顔』は機械で作られたような、というよりもそれは『機械の顔』だった。

 

第7話に続く

 

 

次回予告

 

よっ! 誠也だ。俺達の次の任務を教えてやるぜ。

 

空人が怪我を負ってしかも気絶しているときた。これじゃ、ファイナルは出撃不可だな。

こんな時に、もし地球外知生体が襲ってきたら……

こうなったら、グランドレオン! お前も勇者なら合体するんだ! お前なら絶対できる!

勇者なら根性とガッツで何とかなるだろ!

…なに? 合体するためにはお前の仲間を甦らせないとだめなのか?

よし、空人のためにもお前の仲間を見つけて復活させてやる!

そして合体してお前も『セイバスター』になるんだ!

 

次回、勇者伝説セイバスター『飛翔の獅子』

 

いくぜ、セイバスター! お前達の力を見せてやれ! ……今度はオッケーだろ?


 
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